60 / 233
迷宮狂騒曲
その五
しおりを挟む
台所からいい匂いが漂って来ている。
誰がどう考えても、空腹状態の人間ならそちらが気になるのは当たり前だと思うんだ。
だが、なぜか、俺は現在自分の家の台所を覗くことを禁止されているのである。
なので仕方なく、漏れ聞こえてくる会話を聞くとはなしに聞いているのだが、
「どうして肉や玉葱を先に炒めるのですか?」
「そうね、玉葱は炒めると甘くなるの、玉ねぎの甘さはカレーにコクを出すのよ。長く炒めて、飴色になるぐらいまで炒めるのが一番美味しいって言われているわね。お肉は、先に表面に火を通しておくと美味しさの成分が逃げないの」
実に楽しそうだ。
なんとなく母と子のお料理教室になっているような気がするが、まあ由美子が料理を勉強などしたことが無いのは俺もよく知っている。
あいつは時間があれば呪符や術式の勉強と研究に明け暮れていたからな。
女の子としては少々遅めのような気もするが、こういう家事なんかに興味が出て来たのならいいことには違いない。
「この茶色い泡みたいなのはなに? 食べられるのですか?」
「それはアクだから掬って捨てるの。そのままにしておくとえぐみになっちゃうから」
「アク? 悪者なのか?」
「う~ん、美味しさを邪魔するんだから悪者ではあるかもね」
「ならば滅殺の陣で!」
「こら! ユミ! 小学生かお前は!」
思わず台所に飛び込んだら、伊藤さんがびっくりしたように俺を見た。
由美子の手には何も無く、ニヤリと悪戯っ子のような顔で笑ってみせる。
「冗談に決まっているのに、兄さんは心配性なんだから」
くっ、ひっかけやがった。
由美子は普段は生真面目なのに、時々考えられないようなことをやらかすんだよな。
それもその標的は主に俺だ。
もしかして嫌われているのか? 俺。
しかし、そのやりとりがどうやらツボにハマったらしい伊藤さんは、ターナーを片手に口許を押さえて笑いを堪えていた。
「それに、女同士の会話に聞き耳をたてるなんていやらしい」
追い打ちを掛けるように、由美子が軽蔑したようなまなざしでそんな風に言って来る。
な!
「別に聞き耳たてなくても聞こえて来るだろ! うちは狭いし部屋の仕切りに防音なんかないんだぞ!」
「兄さん、冗談で言ったのにそんなにムキになるなんて、」
「あのな!」
「あはは、ほんとに兄妹仲がいいんですね。いいな」
「いやいや、どう見ても俺が虐げられていますよね?」
「いわれの無い誹謗中傷を兄さんから受けた」
「あはは、あ、いけない、そろそろ火を弱めてルーを入れましょう。木村さんはお部屋で待っていてくださいね」
くっ、追い払われた。
ここの家主は俺のはずなのに……。
しかも、蝶々さんまで由美子の式である蝶につられて台所の中を巡回してるし、前にも疑ったが、あの式神、本当に命令式の書き換えが出来るんじゃあるまいな?
ともかく、そんな感じで俺はひとりでぽつんとテレビジョンを観ることとなってしまった。
うう、普段なら当たり前なのに、今日は周囲に誰もいないのが辛いな。
しかもテレビでは今話題沸騰だとかで例の迷宮を特集していて、不愉快この上ないことを思い出させてくれるし。
なんかこう、天国と地獄をいっぺんに味わっているような心地だ。
『鉱物資源や化石燃料の埋蔵量の乏しい我が国としては、この迷宮は正に降って湧いた恩恵ですよ』
『しかし、危険な場所には違いないのでしょう? そんな場所が都内の中心部に存在するというのはやはり問題があるのでは?』
『そこは、政府がきっちりと管理すれば良い話ですよ。中に入るのはハンターや冒険者、軍隊に任せておけばいい』
『そこですよ! 軍隊はともかくそんなゴロツキが街中を闊歩するようになるんですよ! 治安の問題があるでしょう!』
『治安こそ、警察や軍の管轄ではないですか』
『なにもかも軍まかせですか? ならあんたの老後も軍に面倒を見てもらえばいいんじゃないですかね? 後腐れの無いように始末してくれるかもしれませんから』
『なんだと!』
『まあまあ、お二人共落ち着いて』
最近のテレビは過激だな。
コメンテーター同士が取っ組み合いを始めるとか、テレビを観ている子供に、大人は自分の意見が通らないとすぐ暴力に訴えるとか思われたらどうすんだ?
しかしそうだよな、誰が考えてもわかる話だよな。
消滅せずに段階的に攻略出来る迷宮。
フリーのハンターや腕に覚えのある冒険者にとっては垂涎の的となるに違いない。
そういう連中が一稼ぎしようとこぞって集まって来るのは間違いないことだろう。
確かにそうなると治安については頭の痛い問題になるはずだ。
連中は軍の工作部隊程度には武装しているし、個々の戦闘能力は高い。
どう考えても現在の警察では荷が重いだろうな。
そう言えば、酒匂さん、ハンター協会のお偉いさんとやり合ってたが、その辺のことを交渉してたんだろうか?
そういやあの人、迷宮関連の責任者になったっぽいけど、それって出世したということなのかな?
補佐官から長になったんだから出世だよな?
よし、今度お祝いになんか美味い物でも持って行ってやろう。
と、頭の中で物色したのが悪かった。
食い物を思い浮かべたせいで猛烈に腹が減って来たのだ。
飯、……まだなんだろうか?
既にカレー独特の刺激的な匂いと、若い女性独特の炭酸の泡が弾けるような笑い声が、引き戸一枚向こうから漂って来ていて、俺の飢餓状態を煽りまくっている訳なんだが、……もはやこうなると拷問である。
思い余った俺は、キッチンとの間を隔てている薄い引き戸をそっと開けてみた。
「何をしているんですか?」
丁度その戸を開けようとしていたらしい伊藤さんと真正面から向かい合うこととなり、硬直してしまった俺を伊藤さんは不思議そうに見つめる。
「兄さんのムッツリ」
由美子よ、お前、どこでそんな言葉を覚えたんだ!
「あ、頃合いを見て戸を開けてくださったんですね。助かります」
伊藤さんは善意に解釈してくれたようで、納得したように頷くと、両手で鍋を抱え込み、こっちへとやって来た。
慌てて小さく開けていた戸を大きく開く。
カレーと伊藤さん、二種類の異なる香りが俺の傍らを通り過ぎた。
「兄さん手伝って」
ちょっとの間惚けていたのか、気づくと由美子が微妙な笑みを浮かべながら俺を促していた。
なんだその顔は、言いたいことがあるならはっきり言ったらいいだろ?
いや、ごめんなさい、嘘です。
今はっきりナニカを言われたら色々拙い気がする。
俺は大人しく言われるがままにライスの盛られた皿を運ぶ。
しかしなんだな、俺に好きな相手が出来たら由美子はやきもちぐらい焼いてくれるかと思ったが、さすがにそんなことは無かったぜ。
ああいうのはきっと架空の世界のロマンなんだろう。
「お皿は五枚あるのにスプーンは二本しかないね」
「あ!」
しまった! カレースプーンは盲点だった。
コーヒースプーンならカップとセットで付いてたんで五本あるのだが。
「いいよ、俺はフォークで食う」
「これはいかに兄さんに友人が少ないかを如実に現していると思う」
なんだと! その件に関してはお前のほうが酷いだろうが!
由美子は余程俺を同類認定出来たのが嬉しいのか、途端に機嫌がよくなった。
鼻歌らしきものまで聞こえて来たんだが、お前、それ、呪歌じゃなかろうな?
「私が無理矢理お邪魔したんですから、私がフォークでいいですよ。昔は自分の食器ぐらいは持ち歩いていたものですけど、私もすっかり都会に馴染んでしまったみたいで、最近は水筒とナイフぐらいしか携帯してないんです。申し訳ありません」
「駄目ですよ、お客様に不便を掛けるなんてとんでもない話です」
というか、マイ食器を持ち歩かないのは普通のことなので、謝る必要はありません。
伊藤さんって一見大人しそうなのに色々けっこうアグレッシブだよな。
まあ親御さんがハンターだったんだから当たり前か。
しかし、そうか、ナイフを携帯するぐらいはわりと普通の感覚なんだな。
俺も妙な遠慮をせずに今後は持ち歩くことにしておくか、この先、何が起こるかわからんし。
伊藤さん(と、由美子)の手作りカレーは驚く程美味かった。
特に肉が、びっくりするぐらい美味い。
確かスーパーで買ってたのはそんなに高くもない普通のブロック肉だったはずだけど、どうやったらこんな風に化けるのだろう?
「お肉とお野菜が少し余っていたので、明日の朝食とお弁当用のおかずも作って冷蔵庫に入れておきましたから食べてくださいね」
伊藤さんがにっこりと笑ってそう言った。
女神か? この世に女神が降臨したのか!
俺はかつてない戦慄に体が震えるのを止められずに目前の女性をしげしげと見つめ、そうしてすっかり食事の手が止まってしまったのを見咎めた妹に、思い切り腕をつねられるハメになったのだった。
誰がどう考えても、空腹状態の人間ならそちらが気になるのは当たり前だと思うんだ。
だが、なぜか、俺は現在自分の家の台所を覗くことを禁止されているのである。
なので仕方なく、漏れ聞こえてくる会話を聞くとはなしに聞いているのだが、
「どうして肉や玉葱を先に炒めるのですか?」
「そうね、玉葱は炒めると甘くなるの、玉ねぎの甘さはカレーにコクを出すのよ。長く炒めて、飴色になるぐらいまで炒めるのが一番美味しいって言われているわね。お肉は、先に表面に火を通しておくと美味しさの成分が逃げないの」
実に楽しそうだ。
なんとなく母と子のお料理教室になっているような気がするが、まあ由美子が料理を勉強などしたことが無いのは俺もよく知っている。
あいつは時間があれば呪符や術式の勉強と研究に明け暮れていたからな。
女の子としては少々遅めのような気もするが、こういう家事なんかに興味が出て来たのならいいことには違いない。
「この茶色い泡みたいなのはなに? 食べられるのですか?」
「それはアクだから掬って捨てるの。そのままにしておくとえぐみになっちゃうから」
「アク? 悪者なのか?」
「う~ん、美味しさを邪魔するんだから悪者ではあるかもね」
「ならば滅殺の陣で!」
「こら! ユミ! 小学生かお前は!」
思わず台所に飛び込んだら、伊藤さんがびっくりしたように俺を見た。
由美子の手には何も無く、ニヤリと悪戯っ子のような顔で笑ってみせる。
「冗談に決まっているのに、兄さんは心配性なんだから」
くっ、ひっかけやがった。
由美子は普段は生真面目なのに、時々考えられないようなことをやらかすんだよな。
それもその標的は主に俺だ。
もしかして嫌われているのか? 俺。
しかし、そのやりとりがどうやらツボにハマったらしい伊藤さんは、ターナーを片手に口許を押さえて笑いを堪えていた。
「それに、女同士の会話に聞き耳をたてるなんていやらしい」
追い打ちを掛けるように、由美子が軽蔑したようなまなざしでそんな風に言って来る。
な!
「別に聞き耳たてなくても聞こえて来るだろ! うちは狭いし部屋の仕切りに防音なんかないんだぞ!」
「兄さん、冗談で言ったのにそんなにムキになるなんて、」
「あのな!」
「あはは、ほんとに兄妹仲がいいんですね。いいな」
「いやいや、どう見ても俺が虐げられていますよね?」
「いわれの無い誹謗中傷を兄さんから受けた」
「あはは、あ、いけない、そろそろ火を弱めてルーを入れましょう。木村さんはお部屋で待っていてくださいね」
くっ、追い払われた。
ここの家主は俺のはずなのに……。
しかも、蝶々さんまで由美子の式である蝶につられて台所の中を巡回してるし、前にも疑ったが、あの式神、本当に命令式の書き換えが出来るんじゃあるまいな?
ともかく、そんな感じで俺はひとりでぽつんとテレビジョンを観ることとなってしまった。
うう、普段なら当たり前なのに、今日は周囲に誰もいないのが辛いな。
しかもテレビでは今話題沸騰だとかで例の迷宮を特集していて、不愉快この上ないことを思い出させてくれるし。
なんかこう、天国と地獄をいっぺんに味わっているような心地だ。
『鉱物資源や化石燃料の埋蔵量の乏しい我が国としては、この迷宮は正に降って湧いた恩恵ですよ』
『しかし、危険な場所には違いないのでしょう? そんな場所が都内の中心部に存在するというのはやはり問題があるのでは?』
『そこは、政府がきっちりと管理すれば良い話ですよ。中に入るのはハンターや冒険者、軍隊に任せておけばいい』
『そこですよ! 軍隊はともかくそんなゴロツキが街中を闊歩するようになるんですよ! 治安の問題があるでしょう!』
『治安こそ、警察や軍の管轄ではないですか』
『なにもかも軍まかせですか? ならあんたの老後も軍に面倒を見てもらえばいいんじゃないですかね? 後腐れの無いように始末してくれるかもしれませんから』
『なんだと!』
『まあまあ、お二人共落ち着いて』
最近のテレビは過激だな。
コメンテーター同士が取っ組み合いを始めるとか、テレビを観ている子供に、大人は自分の意見が通らないとすぐ暴力に訴えるとか思われたらどうすんだ?
しかしそうだよな、誰が考えてもわかる話だよな。
消滅せずに段階的に攻略出来る迷宮。
フリーのハンターや腕に覚えのある冒険者にとっては垂涎の的となるに違いない。
そういう連中が一稼ぎしようとこぞって集まって来るのは間違いないことだろう。
確かにそうなると治安については頭の痛い問題になるはずだ。
連中は軍の工作部隊程度には武装しているし、個々の戦闘能力は高い。
どう考えても現在の警察では荷が重いだろうな。
そう言えば、酒匂さん、ハンター協会のお偉いさんとやり合ってたが、その辺のことを交渉してたんだろうか?
そういやあの人、迷宮関連の責任者になったっぽいけど、それって出世したということなのかな?
補佐官から長になったんだから出世だよな?
よし、今度お祝いになんか美味い物でも持って行ってやろう。
と、頭の中で物色したのが悪かった。
食い物を思い浮かべたせいで猛烈に腹が減って来たのだ。
飯、……まだなんだろうか?
既にカレー独特の刺激的な匂いと、若い女性独特の炭酸の泡が弾けるような笑い声が、引き戸一枚向こうから漂って来ていて、俺の飢餓状態を煽りまくっている訳なんだが、……もはやこうなると拷問である。
思い余った俺は、キッチンとの間を隔てている薄い引き戸をそっと開けてみた。
「何をしているんですか?」
丁度その戸を開けようとしていたらしい伊藤さんと真正面から向かい合うこととなり、硬直してしまった俺を伊藤さんは不思議そうに見つめる。
「兄さんのムッツリ」
由美子よ、お前、どこでそんな言葉を覚えたんだ!
「あ、頃合いを見て戸を開けてくださったんですね。助かります」
伊藤さんは善意に解釈してくれたようで、納得したように頷くと、両手で鍋を抱え込み、こっちへとやって来た。
慌てて小さく開けていた戸を大きく開く。
カレーと伊藤さん、二種類の異なる香りが俺の傍らを通り過ぎた。
「兄さん手伝って」
ちょっとの間惚けていたのか、気づくと由美子が微妙な笑みを浮かべながら俺を促していた。
なんだその顔は、言いたいことがあるならはっきり言ったらいいだろ?
いや、ごめんなさい、嘘です。
今はっきりナニカを言われたら色々拙い気がする。
俺は大人しく言われるがままにライスの盛られた皿を運ぶ。
しかしなんだな、俺に好きな相手が出来たら由美子はやきもちぐらい焼いてくれるかと思ったが、さすがにそんなことは無かったぜ。
ああいうのはきっと架空の世界のロマンなんだろう。
「お皿は五枚あるのにスプーンは二本しかないね」
「あ!」
しまった! カレースプーンは盲点だった。
コーヒースプーンならカップとセットで付いてたんで五本あるのだが。
「いいよ、俺はフォークで食う」
「これはいかに兄さんに友人が少ないかを如実に現していると思う」
なんだと! その件に関してはお前のほうが酷いだろうが!
由美子は余程俺を同類認定出来たのが嬉しいのか、途端に機嫌がよくなった。
鼻歌らしきものまで聞こえて来たんだが、お前、それ、呪歌じゃなかろうな?
「私が無理矢理お邪魔したんですから、私がフォークでいいですよ。昔は自分の食器ぐらいは持ち歩いていたものですけど、私もすっかり都会に馴染んでしまったみたいで、最近は水筒とナイフぐらいしか携帯してないんです。申し訳ありません」
「駄目ですよ、お客様に不便を掛けるなんてとんでもない話です」
というか、マイ食器を持ち歩かないのは普通のことなので、謝る必要はありません。
伊藤さんって一見大人しそうなのに色々けっこうアグレッシブだよな。
まあ親御さんがハンターだったんだから当たり前か。
しかし、そうか、ナイフを携帯するぐらいはわりと普通の感覚なんだな。
俺も妙な遠慮をせずに今後は持ち歩くことにしておくか、この先、何が起こるかわからんし。
伊藤さん(と、由美子)の手作りカレーは驚く程美味かった。
特に肉が、びっくりするぐらい美味い。
確かスーパーで買ってたのはそんなに高くもない普通のブロック肉だったはずだけど、どうやったらこんな風に化けるのだろう?
「お肉とお野菜が少し余っていたので、明日の朝食とお弁当用のおかずも作って冷蔵庫に入れておきましたから食べてくださいね」
伊藤さんがにっこりと笑ってそう言った。
女神か? この世に女神が降臨したのか!
俺はかつてない戦慄に体が震えるのを止められずに目前の女性をしげしげと見つめ、そうしてすっかり食事の手が止まってしまったのを見咎めた妹に、思い切り腕をつねられるハメになったのだった。
0
お気に入りに追加
121
あなたにおすすめの小説
百合系サキュバス達に一目惚れされた
釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。
文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。
そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。
工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。
むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。
“特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。
工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。
兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。
工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。
スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。
二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。
零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。
かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。
ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。
デリバリー・デイジー
SoftCareer
キャラ文芸
ワケ有りデリヘル嬢デイジーさんの奮闘記。
これを読むと君もデリヘルに行きたくなるかも。いや、行くんじゃなくて呼ぶんだったわ……あっ、本作品はR-15ですが、デリヘル嬢は18歳にならないと呼んじゃだめだからね。
※もちろん、内容は百%フィクションですよ!
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話
釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。
文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。
そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。
工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。
むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。
“特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。
工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。
兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。
工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。
スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。
二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。
零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。
かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。
ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ニンジャマスター・ダイヤ
竹井ゴールド
キャラ文芸
沖縄県の手塚島で育った母子家庭の手塚大也は実母の死によって、東京の遠縁の大鳥家に引き取られる事となった。
大鳥家は大鳥コンツェルンの創業一族で、裏では日本を陰から守る政府機関・大鳥忍軍を率いる忍者一族だった。
沖縄県の手塚島で忍者の修行をして育った大也は東京に出て、忍者の争いに否応なく巻き込まれるのだった。
【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。
つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。
彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。
なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか?
それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。
恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。
その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。
更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。
婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。
生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。
婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。
後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。
「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる