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ハンターの卵たち
連携と連戦
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アキラ達は出来るだけ音を立てないように移動していたが、微かな音にも敏感な宝玉の樹は、何かを感じ取ったのか、ゆらゆらと近づいて来ている。
「三体、来てるな。引き離して戦うか?」
「わかった。釣りは任せる」
フロア全体に霧がかかったようになってしまっていて、アキラ達にとって圧倒的に不利だ。
宝玉の樹には目がないので目視で見つかることはないが、音に敏感という特徴がある。
見通しがほとんどきかないこのエリア自体が、宝玉の樹有利な専用フィールドと考えていいだろう。
群れの真ん中で戦闘を開始するというのは愚の骨頂なので、アキラ達は、群れから数体を引き離して戦うことにした。
その辺は、長いこと共にパーティを組んで来た仲間との連携である。
今回初参加の祭にとっては、戸惑う部分だ。
アキラは宝玉の樹のなかでも、回復を担う水属性の宝玉を実らせた樹を狙い、風のブーメランを投擲する。
ヒットと共に怒りを刺激された水の宝玉の樹が、ゆらゆらと移動して来た。
近くにいた、火の宝玉の樹と、土の宝玉の樹もそれにつられるように移動する。
適切な距離を離したと判断した地点で、戦闘開始だ。
アキラは回避盾として適度な怒りを稼ぎつつ敵の動きを牽制する。
その間にまずはやっかいな水の宝玉の樹を撃破すべく、祭が魔銃を放つ。
属性優位を狙う必要がある属性付きの攻撃は避け、属性のないノーマル攻撃だ。
敵が少し弱ったところに、賢者である祐希が惑乱の魔法を放ち、動きを止め、幸子がインパクトヌンチャクで攻撃を加えた。
ヌンチャクがヒットすると、小規模な爆発が発生して、切り倒しモーションと共に、水の宝玉の樹が倒れる。
インパクトヌンチャクは、物理攻撃のように見えるが、炸裂というれっきとした魔法攻撃が乗っているため、攻撃が通るのだ。
「やっぱ、ある程度リーチがあるほうが楽だね」
「にゃんこのメリケンサックのときはハラハラしたよ」
幸子の感想に、ゆえりが応じる。
親友同士なので、お互いをカバーするように動くのが上手い。
ポジションも前衛と後衛なのでバランスがいい二人だった。
「おっと、俺から目を反らしたら痛いぜ?」
水の宝玉の樹が倒されたことで、残り二体の怒りが一気に幸子へと向かう。
そこへ、アキラが軽業師のスキルの一つのかんしゃく玉を発動。
パン! パン! パン! という、爆発音が聴力特化の宝玉の樹に効果的にヒットする。
この攻撃、戦闘外の敵を引き寄せそうなものだが、なぜか戦闘中の攻撃音は、周辺の敵の注目を集めない、という特徴があった。
「音で体力が削れるってどういうことなんだろうな」
自分で使っていながら、アキラは不思議そうに呟いた。
誰も聞く者のいない独り言である。
そこへゆえりが止めを刺す。
「灼熱の監獄!」
鳥かごのような炎が、残り二体の宝玉の樹を閉じ込め、その内側を地獄の業火のような炎が暴れ、敵を焼き尽くした。
「よし、まずはうまく連携が取れたな」
「斉木が入ったおかげで手数が増えて安定した感じだ」
「そ、そうか?」
祐希とアキラの評価に、MMORPGの連携プレイに慣れない祭が不安そうにする。
「うんうん、やりやすかったよ!」
そんな祭の背を、幸子が気軽に叩いた。
「う、うわっ! 何するんだ!」
「あ、バカ」
女子との触れ合いに慣れていない祭がうっかり大声を上げたおかげで、少し離れたところにいた宝玉の樹が反応して寄って来た。
連戦の始まりだ。
「ふーっ」
「す、すまん」
結局、ボス以外の宝玉の樹は混戦気味の連戦となってしまった。
意図しない連戦を行ったため、全員少々バテ気味で座り込む。
「いやいや、こういう経験は大事だから。余力がある状態で、アクシデントが起きたときにどう処理するかという経験がないと、本当に危ないときにパニックに陥りかねないからね」
原因となった祭がすまなそうにするのへ、祐希が安心させるように言った。
リップサービスではなく、本気でそう言っているのがわかるので、祐希の言葉には説得力がある。
人徳でもあるよな、と、アキラは思った。
「お、おう、必要以上に気にしないようにするぜ」
そんな祐希の気持ちを受けて、祭も前向きな発言をする。
ゲームが現実になった今では、パーティ戦闘での一人の迷いが、ケガや死に直結してしまう。
全員の意思統一が大事だということに、祭も気づいて来ていたのだ。
そして、このフロアのボスである、伝説の宝樹との戦いのために、気力と体力を回復させるべく、目を閉じて息を整えるのだった。
「三体、来てるな。引き離して戦うか?」
「わかった。釣りは任せる」
フロア全体に霧がかかったようになってしまっていて、アキラ達にとって圧倒的に不利だ。
宝玉の樹には目がないので目視で見つかることはないが、音に敏感という特徴がある。
見通しがほとんどきかないこのエリア自体が、宝玉の樹有利な専用フィールドと考えていいだろう。
群れの真ん中で戦闘を開始するというのは愚の骨頂なので、アキラ達は、群れから数体を引き離して戦うことにした。
その辺は、長いこと共にパーティを組んで来た仲間との連携である。
今回初参加の祭にとっては、戸惑う部分だ。
アキラは宝玉の樹のなかでも、回復を担う水属性の宝玉を実らせた樹を狙い、風のブーメランを投擲する。
ヒットと共に怒りを刺激された水の宝玉の樹が、ゆらゆらと移動して来た。
近くにいた、火の宝玉の樹と、土の宝玉の樹もそれにつられるように移動する。
適切な距離を離したと判断した地点で、戦闘開始だ。
アキラは回避盾として適度な怒りを稼ぎつつ敵の動きを牽制する。
その間にまずはやっかいな水の宝玉の樹を撃破すべく、祭が魔銃を放つ。
属性優位を狙う必要がある属性付きの攻撃は避け、属性のないノーマル攻撃だ。
敵が少し弱ったところに、賢者である祐希が惑乱の魔法を放ち、動きを止め、幸子がインパクトヌンチャクで攻撃を加えた。
ヌンチャクがヒットすると、小規模な爆発が発生して、切り倒しモーションと共に、水の宝玉の樹が倒れる。
インパクトヌンチャクは、物理攻撃のように見えるが、炸裂というれっきとした魔法攻撃が乗っているため、攻撃が通るのだ。
「やっぱ、ある程度リーチがあるほうが楽だね」
「にゃんこのメリケンサックのときはハラハラしたよ」
幸子の感想に、ゆえりが応じる。
親友同士なので、お互いをカバーするように動くのが上手い。
ポジションも前衛と後衛なのでバランスがいい二人だった。
「おっと、俺から目を反らしたら痛いぜ?」
水の宝玉の樹が倒されたことで、残り二体の怒りが一気に幸子へと向かう。
そこへ、アキラが軽業師のスキルの一つのかんしゃく玉を発動。
パン! パン! パン! という、爆発音が聴力特化の宝玉の樹に効果的にヒットする。
この攻撃、戦闘外の敵を引き寄せそうなものだが、なぜか戦闘中の攻撃音は、周辺の敵の注目を集めない、という特徴があった。
「音で体力が削れるってどういうことなんだろうな」
自分で使っていながら、アキラは不思議そうに呟いた。
誰も聞く者のいない独り言である。
そこへゆえりが止めを刺す。
「灼熱の監獄!」
鳥かごのような炎が、残り二体の宝玉の樹を閉じ込め、その内側を地獄の業火のような炎が暴れ、敵を焼き尽くした。
「よし、まずはうまく連携が取れたな」
「斉木が入ったおかげで手数が増えて安定した感じだ」
「そ、そうか?」
祐希とアキラの評価に、MMORPGの連携プレイに慣れない祭が不安そうにする。
「うんうん、やりやすかったよ!」
そんな祭の背を、幸子が気軽に叩いた。
「う、うわっ! 何するんだ!」
「あ、バカ」
女子との触れ合いに慣れていない祭がうっかり大声を上げたおかげで、少し離れたところにいた宝玉の樹が反応して寄って来た。
連戦の始まりだ。
「ふーっ」
「す、すまん」
結局、ボス以外の宝玉の樹は混戦気味の連戦となってしまった。
意図しない連戦を行ったため、全員少々バテ気味で座り込む。
「いやいや、こういう経験は大事だから。余力がある状態で、アクシデントが起きたときにどう処理するかという経験がないと、本当に危ないときにパニックに陥りかねないからね」
原因となった祭がすまなそうにするのへ、祐希が安心させるように言った。
リップサービスではなく、本気でそう言っているのがわかるので、祐希の言葉には説得力がある。
人徳でもあるよな、と、アキラは思った。
「お、おう、必要以上に気にしないようにするぜ」
そんな祐希の気持ちを受けて、祭も前向きな発言をする。
ゲームが現実になった今では、パーティ戦闘での一人の迷いが、ケガや死に直結してしまう。
全員の意思統一が大事だということに、祭も気づいて来ていたのだ。
そして、このフロアのボスである、伝説の宝樹との戦いのために、気力と体力を回復させるべく、目を閉じて息を整えるのだった。
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