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高級マンションの部屋で
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副部長がエレベーターに乗り込むと、階数ボタンを押してもいないのにエレベーターが上昇する。
「未来すぎる……」
アキラの呟きは部員全員の心の声だった。
エレベーターは35階で止まる。最上階ではないが、低くもない階数だ。
35階ぐらいになると展望がすばらしいのは間違いないだろう。
エレベーターを降りて廊下を進む間も、部員一同はそのホテルのような内装に感心しきりだった。
そして鍵を開ける素振りもないのにそのままドアを開けて全員を招き入れる。
「どうぞ」
副部長の言葉に従ってぞろぞろ入った部員たちは驚愕した。
「玄関広い!」
「え? 靴箱ない?」
女子が騒ぎ出す。
アキラは自分のことではないのに恥ずかしさを感じた。
「靴はそのままでいいよ。シューズクロークは壁のところだけど……」
副部長がそこまで言うのと、女子が壁収納を勝手に開くのは同時だった。
「お前らやめろ」
さすがにアキラも注意する。
「すごい、カッコイイ」
「いいな~」
女子二人は反省もないようだ。
「あはは、いいけど、家探しはやめてね」
さすが神さま懐が深いとアキラは感心した。
「ごめんなさい」
「はしゃぎすぎました」
女子二人もさすがに謝る。
廊下の左側の扉を開き、そこに通される。広い、おしゃれ、片付いている、と三拍子揃った理想の住まいだ。十畳ぐらいあるだろうか。
広々とした窓があり、展望が素晴らしいが、それよりも驚いたのはちょっとした庭ほどもあるバルコニーだった。
よくリゾート地にあるようなテーブルセットが備え付けられている。
「ほおおお」
これにはさすがのアキラも興奮した。
「あの、神谷先輩、ご両親は? ご挨拶しなくて大丈夫ですか?」
正気に返ったゆえりが、緊張した面持ちで副部長に確認した。
そのとき部長が、いつものノリと違った表情を見せたのがアキラは少し気になる。
「ん~、あとで気まずい思いをするのもなんだから先に言っておくけど、ここは俺一人で住んでいる」
「え?」
ゆえりが驚いたように声を上げた。
アキラも、そして幸子も、同じような驚きを顔に浮かべる。
高校生でタワーマンションに一人暮らしってどういうことだろう。
部長を除く全員の目がそう言っていた。
「実はうちの両親、俺が中学の頃に離婚してね。親権を父が取ったんだ。だけど父は俺を育てる気はなかったようでさ、この部屋を充てがって、お手伝いさんを派遣して、その後はひと月に一度会うぐらいかな」
「え、そんな……」
副部長のヘビーな話に思わずといった風にゆえりが言った。
少し涙目だ。
「ああいや、俺はもう吹っ切れてるからみんなも気にしないでくれ。そういう訳だからまぁ気兼ねしなくていいよって話だから」
副部長は笑顔でそう言うが、さすがに、部員たちはその話を明るく笑い飛ばすことは出来なかった。
場の空気を変えようと、アキラが副部長に聞く。
「お手伝いさんがいるって凄いですね」
「高校に入ったらそれも断ったよ。自分一人で生活出来るからね。まぁ生活費貰っている身で偉そうなことは言えないけど」
「いやいや、それは当然でしょう」
神さまはやはり只人ではなかったと、アキラは思い、一人うんうんうなずく。
「それでさ、やたら豪華なおせちがあるんだけど、みんなで食べないか?」
「えっ、それはダメですよ」
今度声を上げたのは幸子だった。
「今、食料はすごく貴重です。大事にするべきです」
幸子の言うことは正しい。
交通機関やお店屋さんなどがこの先どうなるかわからない以上、食べ物は命綱だ。他人に振る舞っていいものではない。
「でも、冷蔵庫に入らないし、量は多いしで、早めに食べないと悪くなってしまいそうなんだ。今のおせちって昔のと違って常温保存に向いてないからさ」
そう言って副部長が持ち出して来たのは、とんでもない大きさの三段重だった。
「でかい」
部長が思わずうなる。
アキラも同感だ。
なかには伊勢海老やらイクラやらローストビーフやらがこれでもかと詰め込まれている。
「た、確かに常温保存は難しそうですね」
外気温の元だったらそれでも数日持つかもしれないが、副部長の部屋はエアコンが効いていて温かい。
高級食材を使ったおせちは足が早そうなものが多いので、持ってせいぜい二日、いや一日ぎりぎりではないかと思える内容だ。
「もしかしてこれってお父さんが?」
「ああ」
ゆえりの問いに、副部長は肩をすくめて答える。
それならということで、全員で豪華なおせちを突きながら、今回の狩りについての話し合いをすることとなった。
「緑茶でいい?」
「あ、あの、私、お茶淹れましょうか?」
「いいよ、お客様なんだからゆっくりしていて」
立ち上がりかけたゆえりをやんわりと副部長は断る。
そうして、めいめいに取り皿とお茶が配られて、食事と意見交換が始まった。
「とりあえず今回出た素材を全部集めよう」
みんなが自分のリュックからドロップアイテムを引っ張り出す。
今回の狩りにあたって、なるべくたくさんものが入るカバンを持ち寄るようにとのことで、ほぼ全員がリュック持参だった。
部長に至っては、本格的な登山用のザックを背負って来ている。
「敵が中級以下ってこともあって、ほとんどが初期、中盤用の素材だな。アイテムは五つか。あ、俺の荷物に入ってるの最初のラッキーモンキーのレアじゃん。あのときパーティ扱いだったのかな」
「ほんとだ。パーティの判断はどういうふうにされているのかな?」
アキラが自分の荷物から最初に倒したラッキーモンキーのレアアイテムを見つけて驚く。
あの時点ではてっきりゆえりとアキラはそれぞれソロプレイヤー扱いと思っていたのだ。
「その辺もちゃんと検証したいね。というか、ラッキーモンキーのレアアイテムって俺初めてだけど、武器なんだ」
「はい。中盤以降も使えるけっこう優秀な武器なんですよ」
アキラの手元にあるのは、いわゆるブーメランだ。
それもおもちゃっぽいものではなく、ずっしりとした黒々としたもので、素材は硬い木か、もしくは何かの骨か角のように見える。
「じゃあ、まずこれを鑑定するか。……鑑定」
副部長がレアのブーメランを鑑定した。
「お、属性ついてるぞ」
「ふおっ!」
いきなり念願の属性武器、しかもレア武器をゲットしてテンションの上がるアキラであった。
「未来すぎる……」
アキラの呟きは部員全員の心の声だった。
エレベーターは35階で止まる。最上階ではないが、低くもない階数だ。
35階ぐらいになると展望がすばらしいのは間違いないだろう。
エレベーターを降りて廊下を進む間も、部員一同はそのホテルのような内装に感心しきりだった。
そして鍵を開ける素振りもないのにそのままドアを開けて全員を招き入れる。
「どうぞ」
副部長の言葉に従ってぞろぞろ入った部員たちは驚愕した。
「玄関広い!」
「え? 靴箱ない?」
女子が騒ぎ出す。
アキラは自分のことではないのに恥ずかしさを感じた。
「靴はそのままでいいよ。シューズクロークは壁のところだけど……」
副部長がそこまで言うのと、女子が壁収納を勝手に開くのは同時だった。
「お前らやめろ」
さすがにアキラも注意する。
「すごい、カッコイイ」
「いいな~」
女子二人は反省もないようだ。
「あはは、いいけど、家探しはやめてね」
さすが神さま懐が深いとアキラは感心した。
「ごめんなさい」
「はしゃぎすぎました」
女子二人もさすがに謝る。
廊下の左側の扉を開き、そこに通される。広い、おしゃれ、片付いている、と三拍子揃った理想の住まいだ。十畳ぐらいあるだろうか。
広々とした窓があり、展望が素晴らしいが、それよりも驚いたのはちょっとした庭ほどもあるバルコニーだった。
よくリゾート地にあるようなテーブルセットが備え付けられている。
「ほおおお」
これにはさすがのアキラも興奮した。
「あの、神谷先輩、ご両親は? ご挨拶しなくて大丈夫ですか?」
正気に返ったゆえりが、緊張した面持ちで副部長に確認した。
そのとき部長が、いつものノリと違った表情を見せたのがアキラは少し気になる。
「ん~、あとで気まずい思いをするのもなんだから先に言っておくけど、ここは俺一人で住んでいる」
「え?」
ゆえりが驚いたように声を上げた。
アキラも、そして幸子も、同じような驚きを顔に浮かべる。
高校生でタワーマンションに一人暮らしってどういうことだろう。
部長を除く全員の目がそう言っていた。
「実はうちの両親、俺が中学の頃に離婚してね。親権を父が取ったんだ。だけど父は俺を育てる気はなかったようでさ、この部屋を充てがって、お手伝いさんを派遣して、その後はひと月に一度会うぐらいかな」
「え、そんな……」
副部長のヘビーな話に思わずといった風にゆえりが言った。
少し涙目だ。
「ああいや、俺はもう吹っ切れてるからみんなも気にしないでくれ。そういう訳だからまぁ気兼ねしなくていいよって話だから」
副部長は笑顔でそう言うが、さすがに、部員たちはその話を明るく笑い飛ばすことは出来なかった。
場の空気を変えようと、アキラが副部長に聞く。
「お手伝いさんがいるって凄いですね」
「高校に入ったらそれも断ったよ。自分一人で生活出来るからね。まぁ生活費貰っている身で偉そうなことは言えないけど」
「いやいや、それは当然でしょう」
神さまはやはり只人ではなかったと、アキラは思い、一人うんうんうなずく。
「それでさ、やたら豪華なおせちがあるんだけど、みんなで食べないか?」
「えっ、それはダメですよ」
今度声を上げたのは幸子だった。
「今、食料はすごく貴重です。大事にするべきです」
幸子の言うことは正しい。
交通機関やお店屋さんなどがこの先どうなるかわからない以上、食べ物は命綱だ。他人に振る舞っていいものではない。
「でも、冷蔵庫に入らないし、量は多いしで、早めに食べないと悪くなってしまいそうなんだ。今のおせちって昔のと違って常温保存に向いてないからさ」
そう言って副部長が持ち出して来たのは、とんでもない大きさの三段重だった。
「でかい」
部長が思わずうなる。
アキラも同感だ。
なかには伊勢海老やらイクラやらローストビーフやらがこれでもかと詰め込まれている。
「た、確かに常温保存は難しそうですね」
外気温の元だったらそれでも数日持つかもしれないが、副部長の部屋はエアコンが効いていて温かい。
高級食材を使ったおせちは足が早そうなものが多いので、持ってせいぜい二日、いや一日ぎりぎりではないかと思える内容だ。
「もしかしてこれってお父さんが?」
「ああ」
ゆえりの問いに、副部長は肩をすくめて答える。
それならということで、全員で豪華なおせちを突きながら、今回の狩りについての話し合いをすることとなった。
「緑茶でいい?」
「あ、あの、私、お茶淹れましょうか?」
「いいよ、お客様なんだからゆっくりしていて」
立ち上がりかけたゆえりをやんわりと副部長は断る。
そうして、めいめいに取り皿とお茶が配られて、食事と意見交換が始まった。
「とりあえず今回出た素材を全部集めよう」
みんなが自分のリュックからドロップアイテムを引っ張り出す。
今回の狩りにあたって、なるべくたくさんものが入るカバンを持ち寄るようにとのことで、ほぼ全員がリュック持参だった。
部長に至っては、本格的な登山用のザックを背負って来ている。
「敵が中級以下ってこともあって、ほとんどが初期、中盤用の素材だな。アイテムは五つか。あ、俺の荷物に入ってるの最初のラッキーモンキーのレアじゃん。あのときパーティ扱いだったのかな」
「ほんとだ。パーティの判断はどういうふうにされているのかな?」
アキラが自分の荷物から最初に倒したラッキーモンキーのレアアイテムを見つけて驚く。
あの時点ではてっきりゆえりとアキラはそれぞれソロプレイヤー扱いと思っていたのだ。
「その辺もちゃんと検証したいね。というか、ラッキーモンキーのレアアイテムって俺初めてだけど、武器なんだ」
「はい。中盤以降も使えるけっこう優秀な武器なんですよ」
アキラの手元にあるのは、いわゆるブーメランだ。
それもおもちゃっぽいものではなく、ずっしりとした黒々としたもので、素材は硬い木か、もしくは何かの骨か角のように見える。
「じゃあ、まずこれを鑑定するか。……鑑定」
副部長がレアのブーメランを鑑定した。
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「ふおっ!」
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