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第八章 真なる聖剣
987 傭兵団に連行される
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とりあえず、メルリルのおかげで、速攻でミディの父親との和解が成立した訳だが、そのままめでたしめでたしで終わることはなかった。
「あー。どうやら話はついたようだが、ここでは闘争を行うこと自体がご法度となっている。すまないが、全員詰所に来てもらえないかな?」
村の警護の傭兵にしょっぴかれることとなったのだ。
まぁこれは仕方ない。
「なんだと! 俺達は悪くないだろうが!」
「こら、一応両方から話を聞かないと判断出来ないからだろ。この人等もお役目なんだからごねるな」
勇者が抗議を口にしたが、慌ててなだめる。
問題が発生した場合、貴族相手と商人相手では対応の仕方を変える必要があるのだ。
貴族の私兵相手なら、ある程度力押しで自分達の正しさを押し通すことが出来る。
正しさを力で認めさせるのは、貴族の基本姿勢だ。
貴族にとって敗北は恥でしかないので、敗北したことを外に漏らしたりはしない。
だが、商人は違う。
商人に一度目をつけられると、あっという間に要注意人物として覚書が回ってしまうのだ。
商人と付き合うときに肝に銘じるべきなのが、駆け引きはしてもいいが、力でねじ伏せるようなことをしてはならないということである。
彼らは自分達の流儀の外からの攻撃に対して、結束するからだ。
物流と金を牛耳る商人連中を敵に回すのは、あまりにも危険過ぎる。
「むー、師匠がそう言うなら仕方がないな……」
勇者はぶつぶつ言いながらも、警護の傭兵に従うことにしたようだ。
そのほかの馬車のなかにいた仲間達も外に出て来る。
勇者パーティの雰囲気に、何かただならぬものを感じたのか、あるいは、馬車と身なりから貴族と判断したのか、傭兵達にはどこか焦りのようなものが見えた。
だが、俺達を連行するという意思は揺るがず、包囲にほころびはない。
俺は傭兵というのは、もっとだらしない集団と思っていたので、これは意外だった。
実際、今まで仕事などでかち合った傭兵団は、規律もゆるく、粗暴な者が多い印象だ。
ここの傭兵達が特別統制が取れているのかもしれない。
「すまないが、馬車が壊れてしまった。どこか修理が出来るところを知らないか? 魔道を使った特殊な馬車だが、壊れたのは車輪だけだ。鍛冶師ならなんとかなるかもしれないと思う」
「ま、魔道の馬車……」
俺が馬車のことを説明すると、警護の傭兵はひどく焦っていたが、「なんとかしてみる」とうなずいてくれた。
「すまない。金の心配は大丈夫だ。もしどうにもならないようなら、この地の教会に連絡して欲しい。勇者一行の馬車を預かってもらえないか? とな」
「ゆ、勇者一行!」
傭兵の男は、仰天したように俺達をしげしげと見て、汗を流したが、ひたすら唇を引き結んでしっかりとうなずいてみせる。
さすがに傭兵だけあって、下手な貴族の兵士より肝が座っているな。
俺は感心しつつ彼らに付き従った。
そんなやりとりの間に、少し離れた場所ではミディとその父が再会の抱擁を交わしている。
隣でメルリルが簡単に事情を説明しているようだ。
あっちは任せておいていいだろう。
俺は万が一にも勇者が暴発しないように見張っておかないといけないからな。
勇者が気にしなくても、ときどき目覚めてはろくでもないことをしでかす若葉もいる。
周囲に一般人がいるときには細心の注意が必要だ。
若干の緊張感と共に傭兵団の詰所に到着すると、俺と勇者、聖騎士とモンクと聖女、メルリルとミディとその父親、という風に分かれて小部屋に通された。
なぜ引き離すのか? 仲間に危害を加えると大変なことが起きるぞ、などと半分脅しつつ尋ねたが、どうやら話を聞くための部屋が狭いため、人数を絞るしかなかったようだ。
詰所に着いた段階で、俺達を案内してくれた戦士風の女性は、勇者に睨まれて少し涙目になりつつ説明してくれた。
ちょっと脅かし過ぎた、とさすがに罪悪感にさいなまれてしまう。
メルリルをミディ親子と一緒にしたのは、森人だからだろうな。
「あまりうちの接客担当をいじめないで欲しい」
がっしりとした、いかにも傭兵という体つきの男が俺達のいる小部屋に入って来るなりそう言った。
「あれでも、うちの連中のなかでは外面がいいほうでな。がたいはそこそこいいが、肝っ玉はちと小さめなんだ。だが、飯が美味い。それが決め手となって傭兵団入りした奴よ」
「あー。正直悪かった。こっちとしても仲間と分断されると不安があるんでな」
男の抗議に、俺は素直に謝った。
しかし、これはまた、いかにも傭兵という男が出て来たな。
目つきも鋭いし、何より、顎から首にかけて大きな傷跡がある。
この傷を受けてよくもまぁ生きていたものだ。
傷の治り具合から見て、教会から遠い場所でケガをして、簡単な処置だけをした、という感じだろう。
こういう強運の人間は、だいたいにおいて手強い。
「じゃ、話を聞かせてもらおうか。賃金分の仕事をするのが傭兵の誇りって奴だからな」
男はそう言って、ニヤリと笑ってみせたのだった。
「あー。どうやら話はついたようだが、ここでは闘争を行うこと自体がご法度となっている。すまないが、全員詰所に来てもらえないかな?」
村の警護の傭兵にしょっぴかれることとなったのだ。
まぁこれは仕方ない。
「なんだと! 俺達は悪くないだろうが!」
「こら、一応両方から話を聞かないと判断出来ないからだろ。この人等もお役目なんだからごねるな」
勇者が抗議を口にしたが、慌ててなだめる。
問題が発生した場合、貴族相手と商人相手では対応の仕方を変える必要があるのだ。
貴族の私兵相手なら、ある程度力押しで自分達の正しさを押し通すことが出来る。
正しさを力で認めさせるのは、貴族の基本姿勢だ。
貴族にとって敗北は恥でしかないので、敗北したことを外に漏らしたりはしない。
だが、商人は違う。
商人に一度目をつけられると、あっという間に要注意人物として覚書が回ってしまうのだ。
商人と付き合うときに肝に銘じるべきなのが、駆け引きはしてもいいが、力でねじ伏せるようなことをしてはならないということである。
彼らは自分達の流儀の外からの攻撃に対して、結束するからだ。
物流と金を牛耳る商人連中を敵に回すのは、あまりにも危険過ぎる。
「むー、師匠がそう言うなら仕方がないな……」
勇者はぶつぶつ言いながらも、警護の傭兵に従うことにしたようだ。
そのほかの馬車のなかにいた仲間達も外に出て来る。
勇者パーティの雰囲気に、何かただならぬものを感じたのか、あるいは、馬車と身なりから貴族と判断したのか、傭兵達にはどこか焦りのようなものが見えた。
だが、俺達を連行するという意思は揺るがず、包囲にほころびはない。
俺は傭兵というのは、もっとだらしない集団と思っていたので、これは意外だった。
実際、今まで仕事などでかち合った傭兵団は、規律もゆるく、粗暴な者が多い印象だ。
ここの傭兵達が特別統制が取れているのかもしれない。
「すまないが、馬車が壊れてしまった。どこか修理が出来るところを知らないか? 魔道を使った特殊な馬車だが、壊れたのは車輪だけだ。鍛冶師ならなんとかなるかもしれないと思う」
「ま、魔道の馬車……」
俺が馬車のことを説明すると、警護の傭兵はひどく焦っていたが、「なんとかしてみる」とうなずいてくれた。
「すまない。金の心配は大丈夫だ。もしどうにもならないようなら、この地の教会に連絡して欲しい。勇者一行の馬車を預かってもらえないか? とな」
「ゆ、勇者一行!」
傭兵の男は、仰天したように俺達をしげしげと見て、汗を流したが、ひたすら唇を引き結んでしっかりとうなずいてみせる。
さすがに傭兵だけあって、下手な貴族の兵士より肝が座っているな。
俺は感心しつつ彼らに付き従った。
そんなやりとりの間に、少し離れた場所ではミディとその父が再会の抱擁を交わしている。
隣でメルリルが簡単に事情を説明しているようだ。
あっちは任せておいていいだろう。
俺は万が一にも勇者が暴発しないように見張っておかないといけないからな。
勇者が気にしなくても、ときどき目覚めてはろくでもないことをしでかす若葉もいる。
周囲に一般人がいるときには細心の注意が必要だ。
若干の緊張感と共に傭兵団の詰所に到着すると、俺と勇者、聖騎士とモンクと聖女、メルリルとミディとその父親、という風に分かれて小部屋に通された。
なぜ引き離すのか? 仲間に危害を加えると大変なことが起きるぞ、などと半分脅しつつ尋ねたが、どうやら話を聞くための部屋が狭いため、人数を絞るしかなかったようだ。
詰所に着いた段階で、俺達を案内してくれた戦士風の女性は、勇者に睨まれて少し涙目になりつつ説明してくれた。
ちょっと脅かし過ぎた、とさすがに罪悪感にさいなまれてしまう。
メルリルをミディ親子と一緒にしたのは、森人だからだろうな。
「あまりうちの接客担当をいじめないで欲しい」
がっしりとした、いかにも傭兵という体つきの男が俺達のいる小部屋に入って来るなりそう言った。
「あれでも、うちの連中のなかでは外面がいいほうでな。がたいはそこそこいいが、肝っ玉はちと小さめなんだ。だが、飯が美味い。それが決め手となって傭兵団入りした奴よ」
「あー。正直悪かった。こっちとしても仲間と分断されると不安があるんでな」
男の抗議に、俺は素直に謝った。
しかし、これはまた、いかにも傭兵という男が出て来たな。
目つきも鋭いし、何より、顎から首にかけて大きな傷跡がある。
この傷を受けてよくもまぁ生きていたものだ。
傷の治り具合から見て、教会から遠い場所でケガをして、簡単な処置だけをした、という感じだろう。
こういう強運の人間は、だいたいにおいて手強い。
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