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第八章 真なる聖剣
981 考え事は食事の後に
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「なんて言ってるの?」
モンクが、業を煮やして尋ねる。
子どもが傷つくのが嫌いなモンクは、早く事情を知りたいのだろう。
というか、モンクは不言実行タイプなので、俺達には何も言わずに、子ども相手に乱暴狼藉を働いていた連中を探し出して思い知らせる可能性がある。
一応無茶はしないように言っておかないと。
まぁさすがに殺しはしないだろうが……。
「落ち着けテスタ、師匠はとりあえず挨拶をしただけだ」
森人の言葉がある程度わかる勇者がモンクを諌めている。
珍しい構図だ。
まぁこの二人、猪突猛進タイプで似た思考をしているから、お互いの考えがわかりやすいんだろうな。
『疲れているだろ? とりあえず飯でもどうだ? 口に合うかどうかわからんが』
『え? そこまでしてもらうのは……』
そう答えた途端、少年ミディの腹からぐーきゅるるーと大きな音が響いた。
飯の話をしたからな、腹も空腹を思い出してしまったのだろう。
『あ、うう……』
ミディは、真っ赤になってうつむいてしまった。
「うん、今のは私でもわかる。お腹が空いてるんだね。本当はダスターのご飯が一番だけど、急ぎなら宿に食事を運んでもらといいかも?」
モンクが即理解して、やるべきことを考えて提案してくれる。
判断と行動の早さはモンクの持ち味だろう。
「じゃあ、宿の者に伝えよう。この宿には伝声管があるようだし、わざわざ降りる必要もない。スープがいいかな?」
勇者がさっと動く。
すっかり気が利くようになったなぁ。
「ああ。頼む。パンも、あったほうがいいかな?」
「わかった」
部屋の片隅は、水入れの置かれている台があるが、その壁から金属で花を象った筒状のものが伸びている。
これはただの飾りではなく、伝声管という、言葉を伝える道具だ。
魔道具ではなく、大地人発祥の技術らしい。
使わないときには、筒の口部分に蓋がしてあり、使うときにはその蓋を外して言葉を発すると、受け付けの人間に伝わる仕組みなのだ。
もちろん全部の部屋に設置してある訳ではなく、身分の高い者が借りるような豪華な部屋だけの特典である。
『あ、あの……』
『ああ。大丈夫よ。私達の仲間は、平野の神に選ばれた勇者さま一行なの。決して悪い人じゃないから』
ミディの不安を読み取ったメルリルが、安心させるように説明した。
『勇者さま!』
ミディはすごく驚いている。
そりゃあ驚くよな。
せっかくなので俺達の分の食事も取り寄せ、一緒にテーブルを囲む。
人付き合いでは、一緒に何かをやるというのはとても大事だ。
特に本能に訴える行動、まぁ飲み食いが代表的だな、そういうのを共にすると仲間意識が強くなる、とは、うちのギルドのマスターが言っていたことである。
ギルドの集会場が酒場を兼ねていることの言い訳だったんだと思うが、案外と人の本質を突いているのかもしれない。
『どうだ? 美味いか?』
『少し味が濃いですけど、森の恵みを感じます』
『それはよかった』
森の恵みというのは、森人的に言うと、生きてるありがたみ、みたいな言葉だ。
そうとう腹が減ってたんだな。
ミディは味が濃いと言うが、俺からしたら上品な味付けで少し物足りない。
だが、森人は調味料のたぐいはあまり使わないようなので、これでも濃いと感じるのだろう。
むむっ……メルリルは普段俺達の食事に合わせているが、濃い味付けを我慢して食べていたのかな?
今度ちゃんと話し合ったほうがいいかもしれない。
食事が終わり、茶はメルリルが張り切って淹れてくれた。
スッとした香りの舌に優しい茶だ。
疲れが取れるようにハーブをメインにしたのだろう。
「このお茶の香り、すっきりしますね。メルリルさん、ありがとうございます」
聖女が律儀に礼を言った。
メルリルは褒められてうれしそうだ。
「うん。俺達やミディに対する配慮が見える選択だ。もうお茶はメルリルに任せてしまってもいいな」
「ダスター、ありがとう」
俺も褒めると、ほんのりと頬を染めてメルリルが微笑む。
「俺は、師匠の淹れる茶が好きだぞ。……もちろんメルリルの茶に文句がある訳じゃないが」
相変わらず、雰囲気を察する能力の低い勇者が余計なことを言う。
まぁとってつけたようなフォローも入れているから、今回は何も言うまい。
なによりも、メルリルは勇者の言葉にうなずいたのである。
「私も、ダスターのお茶が好きですから!」
大丈夫だ。
メルリルばかりに押し付けたりはしないからな。
「俺の茶なんぞでいいならいつでも淹れてやるさ」
みんながニコニコしてうなずく。
そんな俺達の様子を、ミディは不思議そうに見つめるのだった。
モンクが、業を煮やして尋ねる。
子どもが傷つくのが嫌いなモンクは、早く事情を知りたいのだろう。
というか、モンクは不言実行タイプなので、俺達には何も言わずに、子ども相手に乱暴狼藉を働いていた連中を探し出して思い知らせる可能性がある。
一応無茶はしないように言っておかないと。
まぁさすがに殺しはしないだろうが……。
「落ち着けテスタ、師匠はとりあえず挨拶をしただけだ」
森人の言葉がある程度わかる勇者がモンクを諌めている。
珍しい構図だ。
まぁこの二人、猪突猛進タイプで似た思考をしているから、お互いの考えがわかりやすいんだろうな。
『疲れているだろ? とりあえず飯でもどうだ? 口に合うかどうかわからんが』
『え? そこまでしてもらうのは……』
そう答えた途端、少年ミディの腹からぐーきゅるるーと大きな音が響いた。
飯の話をしたからな、腹も空腹を思い出してしまったのだろう。
『あ、うう……』
ミディは、真っ赤になってうつむいてしまった。
「うん、今のは私でもわかる。お腹が空いてるんだね。本当はダスターのご飯が一番だけど、急ぎなら宿に食事を運んでもらといいかも?」
モンクが即理解して、やるべきことを考えて提案してくれる。
判断と行動の早さはモンクの持ち味だろう。
「じゃあ、宿の者に伝えよう。この宿には伝声管があるようだし、わざわざ降りる必要もない。スープがいいかな?」
勇者がさっと動く。
すっかり気が利くようになったなぁ。
「ああ。頼む。パンも、あったほうがいいかな?」
「わかった」
部屋の片隅は、水入れの置かれている台があるが、その壁から金属で花を象った筒状のものが伸びている。
これはただの飾りではなく、伝声管という、言葉を伝える道具だ。
魔道具ではなく、大地人発祥の技術らしい。
使わないときには、筒の口部分に蓋がしてあり、使うときにはその蓋を外して言葉を発すると、受け付けの人間に伝わる仕組みなのだ。
もちろん全部の部屋に設置してある訳ではなく、身分の高い者が借りるような豪華な部屋だけの特典である。
『あ、あの……』
『ああ。大丈夫よ。私達の仲間は、平野の神に選ばれた勇者さま一行なの。決して悪い人じゃないから』
ミディの不安を読み取ったメルリルが、安心させるように説明した。
『勇者さま!』
ミディはすごく驚いている。
そりゃあ驚くよな。
せっかくなので俺達の分の食事も取り寄せ、一緒にテーブルを囲む。
人付き合いでは、一緒に何かをやるというのはとても大事だ。
特に本能に訴える行動、まぁ飲み食いが代表的だな、そういうのを共にすると仲間意識が強くなる、とは、うちのギルドのマスターが言っていたことである。
ギルドの集会場が酒場を兼ねていることの言い訳だったんだと思うが、案外と人の本質を突いているのかもしれない。
『どうだ? 美味いか?』
『少し味が濃いですけど、森の恵みを感じます』
『それはよかった』
森の恵みというのは、森人的に言うと、生きてるありがたみ、みたいな言葉だ。
そうとう腹が減ってたんだな。
ミディは味が濃いと言うが、俺からしたら上品な味付けで少し物足りない。
だが、森人は調味料のたぐいはあまり使わないようなので、これでも濃いと感じるのだろう。
むむっ……メルリルは普段俺達の食事に合わせているが、濃い味付けを我慢して食べていたのかな?
今度ちゃんと話し合ったほうがいいかもしれない。
食事が終わり、茶はメルリルが張り切って淹れてくれた。
スッとした香りの舌に優しい茶だ。
疲れが取れるようにハーブをメインにしたのだろう。
「このお茶の香り、すっきりしますね。メルリルさん、ありがとうございます」
聖女が律儀に礼を言った。
メルリルは褒められてうれしそうだ。
「うん。俺達やミディに対する配慮が見える選択だ。もうお茶はメルリルに任せてしまってもいいな」
「ダスター、ありがとう」
俺も褒めると、ほんのりと頬を染めてメルリルが微笑む。
「俺は、師匠の淹れる茶が好きだぞ。……もちろんメルリルの茶に文句がある訳じゃないが」
相変わらず、雰囲気を察する能力の低い勇者が余計なことを言う。
まぁとってつけたようなフォローも入れているから、今回は何も言うまい。
なによりも、メルリルは勇者の言葉にうなずいたのである。
「私も、ダスターのお茶が好きですから!」
大丈夫だ。
メルリルばかりに押し付けたりはしないからな。
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