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第八章 真なる聖剣
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ともかく、返事を待たせれば待たせる程、相手が俺に持つ印象は低下すると思っていい。
俺は勇者に「いつでもお招きに参上します」と言う伝言を頼み、そのついでにアリアン王女を送って行くように任せた。
ここから勝手に帰らせるよりも、城内で出会った風に勇者が王女を伴うほうが安全だし、自然だろう。
そもそもアリアン王女は勇者を探していたんだしな。
「それでは、このたびはお世話になりました。聖女さま、聖騎士殿と神殿闘士殿、お兄さま……いえ、勇者さまをよろしくお願いしますね。ダスターさん、メルリルさん、フォルテちゃん、また会いたいです。ぜひ遊びに来てください」
アリアン王女は、メルリルと俺から、俺達は勇者一行とは違って独立した冒険者だという話を聞いていたので、俺達には勇者をお願いすることなく、遊びに来て欲しいという気持ちだけを伝えて来た。
とは言え、それが一番難しいんだけどな。
「お城にはさすがになかなか来られないと思うが、俺達も勇者さまのことは気をつけておくよ」
アリアン王女の頼みに、にっこりと笑ってうなずく聖女達に追随する形ではあるが、俺とメルリルも一応軽く勇者の面倒をみることを伝えておく。
アリアン王女は遊びに来てもらえないことに残念そうにしながらも、「よろしくお願いします」と、微笑んでくれた。
「ピャ……」
フォルテは相変わらず梁の上からではあったが、とりあえず返事はしたという態度だ。
アリアン王女はそれでも満足だったらしく、フォルテに小さな手を振っていた。
勇者がアリアン王女を伴って部屋を出ると、途端に部屋の温度と明るさが一段階下がったように感じてしまう。
子どもが一人いるといないで、雰囲気はガラリと変わるもんだな。
「さて、陛下と話をしなければならなくなりそうだが、何か気をつけるべき作法とかあるか?」
俺はこういう場には詳しいだろうと思われる聖騎士に尋ねる。
聖騎士は少し考えた様子を見せた後に、口を開いた。
「そうですね。ダスター殿は平民ですから、逆に作法などはうるさく言われないと思います。大事なこととしては、最初に陛下が何か言葉を発せられるまで、自分から声を出してはならないこと。……陛下の質問に答える形で話すようにすれば問題ないでしょう。あと、顔をまっすぐ見ずに視線は自分の足元に固定しておくのが無難です。ただし、陛下が顔を上げるように言われた場合は、顔を上げて陛下の胸元辺りを見るようにしてください」
「なるほど、簡潔でわかりやすいアドバイスだ。ありがとう、助かる」
「いえ、お役に立てたなら幸いです」
言葉通り、嬉しそうな顔を見せる聖騎士。
聖騎士がこう言うのには理由がある。
勇者パーティを実質的に支えているのは聖騎士だ。
俺がいないときには交渉から雑用までをモンクと分担はしていたものの、ほとんどを一人でこなしていたと言っても過言ではない。
モンクは買い物や簡単な料理洗濯などの日常的な雑用は出来るものの、貴族相手の交渉は無理だし、ましてや勇者に意見したり、周囲に気を使って挨拶回りをしておく、などという芸当は出来ないタイプだ。
勇者や聖女も別にふんぞり返っている訳じゃないんだが、周りと合わせるということは苦手な上に、こいつらが顔を出すと周りのほうが緊張してしまうんで、ものごとが上手く運ばなくなってしまうのである。
貴族の館に滞在すると、聖騎士が必ずその貴族の私兵や一族の騎士達に稽古をつけているのも、根回しの一環なのだ。
ということで、そんな苦労人の聖騎士は、俺がいてくれるととても助かるといつも言っていた。
だから、自分が俺の役に立つことがあると、こうやって嬉しそうにしてくれるのだ。
俺からしてみれば、逆に聖騎士がいてくれたおかげで、俺では到底気づかないような部分をカバーしてもらえるので、ありがたい限りなんだけどな。
そうこうしているうちに、勇者が部屋へと戻って来た。
「アリアンは無事に侍女に預けて来た。泣きそうな顔でお礼を言われてしまった。……もっとアリアンには言い聞かせておくべきだったかもしれない」
「お前の子ども時代も似たような感じだったんじゃないか?」
「お、俺は別に……まぁ侍従の目をくらませて、子どもには立ち入れない書庫に籠もったりはしていたが……」
「やってるじゃねえか。あの子、お前とちょっと似てるんだよな、雰囲気が……」
「むう……従兄弟殿との面会の待ち時間に、よく庭で話していた程度だぞ。そんなに似るはずがない。まぁ血縁としてはそこそこ近いし、俺も妹みたいに思っていたが」
「ふーん。と、それよりも俺が王様と会うって話はどうなった?」
ついついアリアン王女の話をしてしまったが、今はそれどころではない。
「ああ、そのことだが、師匠が在野の冒険者であることをお伝えして、出来れば俺達も交えた会食形式にしてもらいたいと言っておいたぞ。師匠もそのほうが楽だろう」
「おお、お前にしちゃ気が利くな。確かにありがたい。まぁ食事は喉を通らないだろうけどな」
「俺にしちゃってなんだ。もっと俺を褒めてもいいんだぞ?」
珍しく機転を利かせてくれた勇者のおかげで、一対一という気まずい場面にはならずに済んだようだ。
まぁ確かにちゃんと褒めてもいいな。
ということで、俺は感謝の気持ちを込めて、研究の結果判明した、もっとも美味しい砂糖菓子の食べ方として、濃い目の茶を淹れて砂糖菓子を添えて出してやったのだった。
俺は勇者に「いつでもお招きに参上します」と言う伝言を頼み、そのついでにアリアン王女を送って行くように任せた。
ここから勝手に帰らせるよりも、城内で出会った風に勇者が王女を伴うほうが安全だし、自然だろう。
そもそもアリアン王女は勇者を探していたんだしな。
「それでは、このたびはお世話になりました。聖女さま、聖騎士殿と神殿闘士殿、お兄さま……いえ、勇者さまをよろしくお願いしますね。ダスターさん、メルリルさん、フォルテちゃん、また会いたいです。ぜひ遊びに来てください」
アリアン王女は、メルリルと俺から、俺達は勇者一行とは違って独立した冒険者だという話を聞いていたので、俺達には勇者をお願いすることなく、遊びに来て欲しいという気持ちだけを伝えて来た。
とは言え、それが一番難しいんだけどな。
「お城にはさすがになかなか来られないと思うが、俺達も勇者さまのことは気をつけておくよ」
アリアン王女の頼みに、にっこりと笑ってうなずく聖女達に追随する形ではあるが、俺とメルリルも一応軽く勇者の面倒をみることを伝えておく。
アリアン王女は遊びに来てもらえないことに残念そうにしながらも、「よろしくお願いします」と、微笑んでくれた。
「ピャ……」
フォルテは相変わらず梁の上からではあったが、とりあえず返事はしたという態度だ。
アリアン王女はそれでも満足だったらしく、フォルテに小さな手を振っていた。
勇者がアリアン王女を伴って部屋を出ると、途端に部屋の温度と明るさが一段階下がったように感じてしまう。
子どもが一人いるといないで、雰囲気はガラリと変わるもんだな。
「さて、陛下と話をしなければならなくなりそうだが、何か気をつけるべき作法とかあるか?」
俺はこういう場には詳しいだろうと思われる聖騎士に尋ねる。
聖騎士は少し考えた様子を見せた後に、口を開いた。
「そうですね。ダスター殿は平民ですから、逆に作法などはうるさく言われないと思います。大事なこととしては、最初に陛下が何か言葉を発せられるまで、自分から声を出してはならないこと。……陛下の質問に答える形で話すようにすれば問題ないでしょう。あと、顔をまっすぐ見ずに視線は自分の足元に固定しておくのが無難です。ただし、陛下が顔を上げるように言われた場合は、顔を上げて陛下の胸元辺りを見るようにしてください」
「なるほど、簡潔でわかりやすいアドバイスだ。ありがとう、助かる」
「いえ、お役に立てたなら幸いです」
言葉通り、嬉しそうな顔を見せる聖騎士。
聖騎士がこう言うのには理由がある。
勇者パーティを実質的に支えているのは聖騎士だ。
俺がいないときには交渉から雑用までをモンクと分担はしていたものの、ほとんどを一人でこなしていたと言っても過言ではない。
モンクは買い物や簡単な料理洗濯などの日常的な雑用は出来るものの、貴族相手の交渉は無理だし、ましてや勇者に意見したり、周囲に気を使って挨拶回りをしておく、などという芸当は出来ないタイプだ。
勇者や聖女も別にふんぞり返っている訳じゃないんだが、周りと合わせるということは苦手な上に、こいつらが顔を出すと周りのほうが緊張してしまうんで、ものごとが上手く運ばなくなってしまうのである。
貴族の館に滞在すると、聖騎士が必ずその貴族の私兵や一族の騎士達に稽古をつけているのも、根回しの一環なのだ。
ということで、そんな苦労人の聖騎士は、俺がいてくれるととても助かるといつも言っていた。
だから、自分が俺の役に立つことがあると、こうやって嬉しそうにしてくれるのだ。
俺からしてみれば、逆に聖騎士がいてくれたおかげで、俺では到底気づかないような部分をカバーしてもらえるので、ありがたい限りなんだけどな。
そうこうしているうちに、勇者が部屋へと戻って来た。
「アリアンは無事に侍女に預けて来た。泣きそうな顔でお礼を言われてしまった。……もっとアリアンには言い聞かせておくべきだったかもしれない」
「お前の子ども時代も似たような感じだったんじゃないか?」
「お、俺は別に……まぁ侍従の目をくらませて、子どもには立ち入れない書庫に籠もったりはしていたが……」
「やってるじゃねえか。あの子、お前とちょっと似てるんだよな、雰囲気が……」
「むう……従兄弟殿との面会の待ち時間に、よく庭で話していた程度だぞ。そんなに似るはずがない。まぁ血縁としてはそこそこ近いし、俺も妹みたいに思っていたが」
「ふーん。と、それよりも俺が王様と会うって話はどうなった?」
ついついアリアン王女の話をしてしまったが、今はそれどころではない。
「ああ、そのことだが、師匠が在野の冒険者であることをお伝えして、出来れば俺達も交えた会食形式にしてもらいたいと言っておいたぞ。師匠もそのほうが楽だろう」
「おお、お前にしちゃ気が利くな。確かにありがたい。まぁ食事は喉を通らないだろうけどな」
「俺にしちゃってなんだ。もっと俺を褒めてもいいんだぞ?」
珍しく機転を利かせてくれた勇者のおかげで、一対一という気まずい場面にはならずに済んだようだ。
まぁ確かにちゃんと褒めてもいいな。
ということで、俺は感謝の気持ちを込めて、研究の結果判明した、もっとも美味しい砂糖菓子の食べ方として、濃い目の茶を淹れて砂糖菓子を添えて出してやったのだった。
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