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第八章 真なる聖剣
877 スライム発見
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俺とメルリルの担当場所である大森林の支流沿いは、鬱蒼と、巨大なシダ類のはびこる見通しの悪い湿地帯となっていた。
歩きにくいことこの上ないし、ヒルやヘビが多い場所でもあるので、モンクがこっちに来なくて正解だったと言えるだろう。
事前に、虫除けの泥を塗っているので、メルリルも俺も、まるで子どもが泥遊びをした後のように見える。
森では万能のような印象のあるメルリルだが、実は森人の巫女にも得手不得手があるという話は以前に聞いていた。
メルリルが得意とするのが風と緑、ある程度扱えるのが火、苦手なのが水と土とのこと。
精霊の種類は五種類なのか? と聞いたら、人間が大雑把に分けているだけで、実際はそんな大きな括りで判断出来るような存在ではないらしい。
単純に性質の近いものを集めて、属性として考えているだけなのだそうだ。
精霊の世界というのは難しいな。
そのメルリルの得意な緑と苦手な土と水が集まった土地を探索している訳だが、得意な緑だけを使えばいいということにはならず、それぞれが干渉し合っている状態なので、詳細な探索は難しくなるとのことだった。
ようするに、敵意を向ける相手を事前に察知するのはわりと簡単とのことだが、特定の場所を探すのは難しいとのこと。
そこで、メルリルには魔物などの敵意を持つものの接近への対応に注力してもらって、湖探索はフォルテに任せることにした。
それぞれ得意分野に専念するほうがいいからな。
俺は、周辺の情報分析という感じかな?
ヘビなどは普通は寒い時期には眠りに就くものだが、魔物化したものは冬にも完全に眠らないものが多い。
魔物は、生きるために普通の動物よりも多く食べる必要があるので、ひと冬を眠って過ごすと、餓死してしまうのだ。
そのため、ヘビの魔物は発熱器官を備えていることがよくある。
炎蛇と呼ばれる蛇は、常には泥のなかに潜っていて、敵に対して口から火を吐く。
その炎蛇がやたらこの湿地帯には潜んでいた。
半分は逃げて、半分は襲って来る。
襲って来たものは倒す訳だが、問題は、その処理だった。
そのまま放置すれば、冬場の貴重な食料として、森の生き物が喜んで食ってくれるだろう。
しかし、その毒袋は、優秀な着火剤として人気があるので、ついつい解体したいという欲望に駆られてしまうのだ。
金銭的に困っている訳ではないが、もったいないという気持ちが込み上げて来る。
「みんなには黙っておくから、解体しちゃえば?」
メルリルが、そんな俺の様子に笑いながらそう言った程だ。
「いや、みんなに知られるのが嫌だとかそういう問題じゃない。効率の問題だな。今は探索優先なんだから、これは放置しておいていいんだ。この辺なら間違っても死体が魔力を帯びて魔物化するということもないだろうしな」
半ば自分に言い聞かせるようにそう言って、探索を続け、湿地帯を出たときには、精神的な負担が軽くなったことに、思わずホッと息を吐いてしまったぐらいだ。
俺もまだまだ修行が足りないな。
さて、湿地帯を出て、乾いた土地に上がった訳だが、なぜかそこにスライム溜まりが出来ていた。
「うーん。ついでだし持って帰っていいよな。アルフは嫌がるだろうけど」
「魔王さま、スライム欲しいって言ってたね」
スラムを捕獲するときに注意するべきことは、革製、木製、金属製の容器は使わないということだ。
これらの素材は、スライムが溶かしてしまって、いつの間にか逃げ出したということになる。
「こういうときにも便利なのがスライムジェルだ」
スライムジェルは、スライムと名前がついているが、スライムの成分はこれっぽっちも入っていない。
なんとかいう硬くて大きな種の中身を加工したもので、主に傷口の保護や、大事なものを遠方に送るときの緩衝材として使用される。
このスライムジェルだが、スライムをなかに入れると、なぜかスライムの活動が休止して、まん丸くなって動かなくなるという不思議な現象が起きるのだ。
理由はわからない。
大多数の人間は、スライムに興味がないので、調べたりしないからだ。
いや、それ以前に、スライムをスライムジェルのなかに突っ込んだ人間があまりいないのかもしれない。
俺はたまたまやってみたことがあっただけの話だ。
なぜやったかというと、興味があったからである。
それ以外に意味はない。
貴重品や壊れやすいものなどを運んだり、聖女がいないときにケガした場合の応急処置のために持ち歩いているスライムジェル入りの容器に、団子状になっているスライムを、ドラゴンの鱗製のナイフで一匹一匹剥がして突っ込む。
多少ガワが削れても、スライムは中心となっている核さえ無事ならすぐに再生するので安心だ。
「よしよし。しかし、なんでここに固まってたんだ?」
必要な分を確保した俺は、残ったスライムを剥がして行く。
すると、そこには小さな結晶のようなものがあった。
「魔鉱石? いや、これは、魔結晶か? まさか竜結晶じゃないよな」
俺は上空から湖を探しているフォルテと意識を繫ぎ、その結晶の印象を送った。
『わからない。戻る』
「おい、ちょっと待て」
「どうしたの?」
割と気まぐれなフォルテは、同じことを続けるのが苦手だ。
こんな風に何かきっかけがあると、すぐに続けていたことを止めてしまったりするのである。
「これを見せたら、フォルテが戻るとのことだ」
俺の独り言とも言える言葉に、事情を知っているメルリルが反応して、理由を尋ねて来たので、説明する。
「ダスターのことが心配なんだね」
「いや、単に飽きただけだと思うぞ」
まぁでもいい頃合いだから、少し休憩するか。
歩きにくいことこの上ないし、ヒルやヘビが多い場所でもあるので、モンクがこっちに来なくて正解だったと言えるだろう。
事前に、虫除けの泥を塗っているので、メルリルも俺も、まるで子どもが泥遊びをした後のように見える。
森では万能のような印象のあるメルリルだが、実は森人の巫女にも得手不得手があるという話は以前に聞いていた。
メルリルが得意とするのが風と緑、ある程度扱えるのが火、苦手なのが水と土とのこと。
精霊の種類は五種類なのか? と聞いたら、人間が大雑把に分けているだけで、実際はそんな大きな括りで判断出来るような存在ではないらしい。
単純に性質の近いものを集めて、属性として考えているだけなのだそうだ。
精霊の世界というのは難しいな。
そのメルリルの得意な緑と苦手な土と水が集まった土地を探索している訳だが、得意な緑だけを使えばいいということにはならず、それぞれが干渉し合っている状態なので、詳細な探索は難しくなるとのことだった。
ようするに、敵意を向ける相手を事前に察知するのはわりと簡単とのことだが、特定の場所を探すのは難しいとのこと。
そこで、メルリルには魔物などの敵意を持つものの接近への対応に注力してもらって、湖探索はフォルテに任せることにした。
それぞれ得意分野に専念するほうがいいからな。
俺は、周辺の情報分析という感じかな?
ヘビなどは普通は寒い時期には眠りに就くものだが、魔物化したものは冬にも完全に眠らないものが多い。
魔物は、生きるために普通の動物よりも多く食べる必要があるので、ひと冬を眠って過ごすと、餓死してしまうのだ。
そのため、ヘビの魔物は発熱器官を備えていることがよくある。
炎蛇と呼ばれる蛇は、常には泥のなかに潜っていて、敵に対して口から火を吐く。
その炎蛇がやたらこの湿地帯には潜んでいた。
半分は逃げて、半分は襲って来る。
襲って来たものは倒す訳だが、問題は、その処理だった。
そのまま放置すれば、冬場の貴重な食料として、森の生き物が喜んで食ってくれるだろう。
しかし、その毒袋は、優秀な着火剤として人気があるので、ついつい解体したいという欲望に駆られてしまうのだ。
金銭的に困っている訳ではないが、もったいないという気持ちが込み上げて来る。
「みんなには黙っておくから、解体しちゃえば?」
メルリルが、そんな俺の様子に笑いながらそう言った程だ。
「いや、みんなに知られるのが嫌だとかそういう問題じゃない。効率の問題だな。今は探索優先なんだから、これは放置しておいていいんだ。この辺なら間違っても死体が魔力を帯びて魔物化するということもないだろうしな」
半ば自分に言い聞かせるようにそう言って、探索を続け、湿地帯を出たときには、精神的な負担が軽くなったことに、思わずホッと息を吐いてしまったぐらいだ。
俺もまだまだ修行が足りないな。
さて、湿地帯を出て、乾いた土地に上がった訳だが、なぜかそこにスライム溜まりが出来ていた。
「うーん。ついでだし持って帰っていいよな。アルフは嫌がるだろうけど」
「魔王さま、スライム欲しいって言ってたね」
スラムを捕獲するときに注意するべきことは、革製、木製、金属製の容器は使わないということだ。
これらの素材は、スライムが溶かしてしまって、いつの間にか逃げ出したということになる。
「こういうときにも便利なのがスライムジェルだ」
スライムジェルは、スライムと名前がついているが、スライムの成分はこれっぽっちも入っていない。
なんとかいう硬くて大きな種の中身を加工したもので、主に傷口の保護や、大事なものを遠方に送るときの緩衝材として使用される。
このスライムジェルだが、スライムをなかに入れると、なぜかスライムの活動が休止して、まん丸くなって動かなくなるという不思議な現象が起きるのだ。
理由はわからない。
大多数の人間は、スライムに興味がないので、調べたりしないからだ。
いや、それ以前に、スライムをスライムジェルのなかに突っ込んだ人間があまりいないのかもしれない。
俺はたまたまやってみたことがあっただけの話だ。
なぜやったかというと、興味があったからである。
それ以外に意味はない。
貴重品や壊れやすいものなどを運んだり、聖女がいないときにケガした場合の応急処置のために持ち歩いているスライムジェル入りの容器に、団子状になっているスライムを、ドラゴンの鱗製のナイフで一匹一匹剥がして突っ込む。
多少ガワが削れても、スライムは中心となっている核さえ無事ならすぐに再生するので安心だ。
「よしよし。しかし、なんでここに固まってたんだ?」
必要な分を確保した俺は、残ったスライムを剥がして行く。
すると、そこには小さな結晶のようなものがあった。
「魔鉱石? いや、これは、魔結晶か? まさか竜結晶じゃないよな」
俺は上空から湖を探しているフォルテと意識を繫ぎ、その結晶の印象を送った。
『わからない。戻る』
「おい、ちょっと待て」
「どうしたの?」
割と気まぐれなフォルテは、同じことを続けるのが苦手だ。
こんな風に何かきっかけがあると、すぐに続けていたことを止めてしまったりするのである。
「これを見せたら、フォルテが戻るとのことだ」
俺の独り言とも言える言葉に、事情を知っているメルリルが反応して、理由を尋ねて来たので、説明する。
「ダスターのことが心配なんだね」
「いや、単に飽きただけだと思うぞ」
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