勇者パーティから追い出されたと思ったら、土下座で泣きながら謝ってきた!

蒼衣翼

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第八章 真なる聖剣

789 悪党面の男

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 手順が同じなので、一人目のときよりも簡単に二人目の男を確保。
 すぐに聖女に眠らせてもらう。

「さて、と、二人目か。……こいつには事情を聞くか?」
「申し訳ありません、お師匠さま。看破魔法も、真実の口も、神璽みしるしがないと難しいです」

 聖女が申し訳なさそうに言う。
 ええっと、看破魔法ってのは嘘を見破る魔法で、真実の口ってのは嘘がつけなくなるエグい奴か。

「外に音が聞こえなくなる結界は張れるか?」
「あ、はい。あれは簡単なので」

 ……簡単なんだ。
 いや、聖女や聖人しか使えない魔法なんだけどな。
 まぁ本人の感覚的なものがあるんだろう。

「傷を癒やすのは?」
「大丈夫です」

 なるほど。
 つまり伝統的な拷問形式で尋問するのは問題なく出来るということだ。
 問題があるとすれば、聖女の精神的な負担か。

 ……俺は聖女や勇者、そしてメルリルの顔をじっと見て、見た目がエグい尋問は選択肢から外した。
 なんで悪党のために、健全な人間がトラウマを植え付けられなきゃならんのだ。
 理不尽すぎるだろ。
 俺は二人目として確保した男に、魔力を封じる術式だけ傷つけた魔封具を装着した。
 俺を拘束していた奴だな。

「よし、ミュリア、音を漏らさない結界を頼む」
「はい」
「で、こいつを起こしてくれ」
「はい」

 聖女が、さっき眠らせたばかりの二人目の額に触れて、魔法を使うと、ハッと目を覚ました男が辺りを見回し、俺達の顔を見てギョッとした表情になる。
 どうでもいいが、いかにもな悪党面の野郎だな。

「お? お? おいっ! 野郎共! 荷物が起きちまったぞ! 集まりやがれ!」

 何が起きているか認識した途端、大声を出す。
 予想通りだし、思い切りのいい野郎だ。
 自分が殺されるとか考えないのか? 頭が悪いのかな?

「おい! てめえら、すぐにこの拘束を解けっ! すぐに仲間が来るぞ。そしたら、今度は丁寧に運んでやるとは限らないからな!」
「うるさい」

 俺は、その無駄にデカい声の男を殴る。

「てめえ、殴りやがったな! てめえは楽には殺さねえぞ。腹にナイフを突き刺して、ロープにくくりつけて海に落としてやる。海の魔物共がご馳走だと大喜びだぜ!」
「それ、お前等も危ないだろ」
「はっ、これだから素人は。すぐにロープを切り離せば、魔物は獲物に夢中になるから却って俺等は安心なんだよ」
「ふーん」

 これは何度かやってるな。
 最初から手心を加えるつもりはなかったが、ものすごく残酷な気持ちになって来た。
 健全な青少年の前で、いかんな。

「こいつ……調子に乗るのもたいがいにしろ」

 すると、横合いから勇者が低い怒りに満ちた声を出した。
 そして、バチッ! と、青白い光が走ったかと思うと、悪党面の男が「ギャッ!」と汚い悲鳴を上げて泡を吹く。

「おい馬鹿、殺すな。こいつには聞くことがあるんだぞ!」
「師匠。俺を何だと思ってるんだ? さすがにこいつから聞き出すことがあることぐらいわかるぞ? 今のは弱い雷を体に流しただけだ」

 勇者がいかにも不本意そうな顔でぶーたれながら言い訳する。
 そういうのはやる前に言え。

「いきなりやる奴があるか。ってか弱い雷なんか存在するのか?」
「魔力の強弱である程度コントロール出来る」
「凄いな」
「ところで、俺達はなんでここにいるんだ? 俺の剣がないんだけど、どこにあるか知ってるか?」
「どうも、あの装身具屋で眠らされて誘拐されたようだ」
「はっ? 嘘だろ? 勇者には状態異常魔法は効果ないんだぞ」
「魔法じゃなかったし、攻撃でもなかったからだな」
「へ?」

 疑問だらけという勇者だが、そんな話をしている間に悪党面の男が目を覚ました。
 勇者はしばらく放置だ。

「い、今のはなんだ? おっそろしく痛かったぞ! おいおい、洒落になんねーぞ。てめえら覚悟しろや! おい! 野郎共早く来ねえか!」

 起きて早々うるさいな。

「いいか。お前の声は外に聞こえない。俺達はお前にどんなことでも出来る。……意味はわかるか?」

 ゴクリと悪党面の男の喉が鳴る。

「お、おいおい、い、命を取るとか言わねえよな。た、たかだか、眠ってるのを運んでるだけじゃねえか。あ、そうだ! 俺は何も知らなかったんだ。ただの普通の荷物と聞いてたんだよ。まさか人間が入ってるなんて、契約違反だぜ!」

 凄いな、こいつ、これだけいけしゃあしゃあと嘘を口走るとは。
 黒中の黒って感じだな。

「お前が勝手に嘘を歌うのは別にいいが、その分お前の罪はかさ増しして行くんだぜ? さっきのバチッて奴、もう一回食らいたいか? 次は永遠に目覚めないかもな?」

 俺の意を汲んでか、隣で勇者が指先に雷を起こして、青白い光を放ち、いかにも危険そうなバチッ、バチッという音を響かせている。

「ひいいいいっ、は、話す、話すとも、お、俺は運ぶだけで、大した悪さはしてねえんだ。本当だ!」
「判断するのは俺だって言っただろ? それと見ての通り、こっちには魔法使いがいるぞ。嘘を言ってもわかるからな」
「ゆ、許してくれ。ほんとのことを言うから、お願いだぁ」

 悪党面の男は、顔の割に気が小さいようだった。
 涙と鼻水を垂れ流しながら、自分の知っていることの全容を話してくれたのである。

 男の話によると、あの港街カリオカには、若い旅行客が立ち寄りたくなるような噂を流している、目立たない立地の店が何箇所かあり、そこで、街に身寄りがない人間を選んで眠らせ、攫っているらしい。
 その攫った人間をどうしているかというと、奴隷にして売るという話だった。

 まぁここまでは予想通りだ。
 問題はどの程度の組織なのか、どんなルートを使っているのかということだ。
 大公国では犯罪者以外の奴隷は取り扱えない。
 だから、そんなに大量の違法奴隷を売買していれば、すぐに足がつくはずなのだ。
 さて、どんなカラクリとなっているのやら。
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