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第六章 その祈り、届かなくとも……
521 遥かより届く青銀の祈り
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どうやら大巫女さま直々に盗賊の捕縛に同行するようで、かなり大々的な集団が形成された。
護送用の籠というものを初めて見たのだが、まさに籠という感じだ。
荷車に蔓草かなにかで編んだ籠が設置されているのだ。
その籠の乗った荷車を引くのが砂漠鳥と言って、俺も初めて見る生き物だった。
一言で言えば巨大な飛べない鳥だろうか?
体に対して羽根が小さく、バランスを取ることぐらいにしか使えなさそうだ。
だが、そんな羽根などどうでもよくなるほど特徴的な見た目をしている。
長く伸びた首の下にだらんと皮膚が垂れ下がっていて、水を飲ませているのを見ていると、たちまちその部分が丸々と膨れ上がった。
その部分は喉袋と言って、水を大量に溜めることが出来るのだそうだ。
そのため、砂漠鳥と旅をする場合は、水袋は必要ないと言う戯言のような言葉があるらしい。
こいつはものすごく脚が強いとのことだった。
ドラゴンでも蹴り殺せるぜと戦士の一人が口にしたときには、若葉がのっそりと勇者の背後から顔を出して焦ったが。
その砂漠鳥が引く籠が三台。
まぁぎゅうぎゅう詰めにすれば全員運べるだろう。
「盗賊の隠れ家の案内には俺一人がいれば大丈夫だろう。お前たちは宿泊場所を確保しておいてくれないか?」
勇者にそう言うと露骨に嫌な顔をされた。
「俺も行く」
「いや、必要ないだろ」
「俺も行く」
頑として譲らない。
「宿は私たちが探しておきますから。勇者も一緒に連れて行ってください。何かないとも限りませんし」
少し笑って聖騎士がとりなして来た。
お前たちはほんと、勇者を甘やかしすぎだぞ?
「私も行く」
「え? いや……」
今度はメルリルが主張して来た。
「ここは魔物よりも精霊の力が強い。私の力が役に立つはず」
「盗賊の隠れ家に案内するだけだぞ?」
「パーティなんだから」
メルリルも一歩も引かなかった。
まぁそうか、パーティだしな。
「わかったメルリル。一緒に行くか」
「師匠、メルリルばっかり、贔屓だ!」
「当たり前だろ! お前とメルリルならメルリルを贔屓するぞ、俺は!」
「ぐぬぬ……」
お前もういい大人なんだからそういう聞き分けのなさをなんとかしろ。
『我も……』
『面倒になるからお前は黙ってろ!』
フォルテが頭に響く声で主張して来た。
あまつさえ降りて来ようとするので慌てて止める。
『今から活躍してもらうから、上から周囲を警戒しておいてくれ。頼むぞ』
『……むう、わかった』
ふう、みんな主張激しすぎだろ!
「ふふっ、そなたたちは仲が良いのだな。神の御子の勇者など、冷たい人外の存在かと思うておったが、どうやら血の通う人間のようであるわ」
「当たり前だ」
大巫女様までが呆れて笑っている。
そして勇者よ、失礼だからいちいち対抗するようなもの言いをするのはやめろ。
周りの戦士の目つきがヤバいぞ。
「それに……そなたとその連れ合いの姿を見ていると、なぜか大祖母様より伝え聞いた精霊王の両翼たる依代方のことを思い出す。同じ森の民と平野の民の組み合わせであるからであろうか……」
まずい!
フォルテがいないのに疑われているぞ。
ここにフォルテが姿を現したら完全に言い逃れが出来なくなりそうだ。
絶対あいつを地上に下ろす訳にはいかない。
「大巫女様の大祖母様はその、精霊王様を見たことがおありで?」
「うむ。それどころか、聖地の青銀の祈りの原で最初に精霊王様方をお迎えしたのは誰あろう我が大祖母様であったのだ。精霊王様の生み出されたこのオアシスを豊かで住みよい地として拓いたのは大祖母様方の功績よ」
なんだって?
心臓が大きく音を立てたのがわかった。
聞くのが恐ろしい。
そんな思いに駆られながらも、俺は聞かずにはおれなかった。
「その、……偉大な大婆様のお名前をお聞きしても?」
「おお、もちろん良いぞ。偉大なる先人の名を告げるのは我らが喜びよ! 我が大祖母様のご尊名は、ミャア・ルルベ・アアォエイ・フォーリィ。『偉大なる青銀の祈り』の贈り名を持つ稀代の大巫女であらせられるぞ」
護送用の籠というものを初めて見たのだが、まさに籠という感じだ。
荷車に蔓草かなにかで編んだ籠が設置されているのだ。
その籠の乗った荷車を引くのが砂漠鳥と言って、俺も初めて見る生き物だった。
一言で言えば巨大な飛べない鳥だろうか?
体に対して羽根が小さく、バランスを取ることぐらいにしか使えなさそうだ。
だが、そんな羽根などどうでもよくなるほど特徴的な見た目をしている。
長く伸びた首の下にだらんと皮膚が垂れ下がっていて、水を飲ませているのを見ていると、たちまちその部分が丸々と膨れ上がった。
その部分は喉袋と言って、水を大量に溜めることが出来るのだそうだ。
そのため、砂漠鳥と旅をする場合は、水袋は必要ないと言う戯言のような言葉があるらしい。
こいつはものすごく脚が強いとのことだった。
ドラゴンでも蹴り殺せるぜと戦士の一人が口にしたときには、若葉がのっそりと勇者の背後から顔を出して焦ったが。
その砂漠鳥が引く籠が三台。
まぁぎゅうぎゅう詰めにすれば全員運べるだろう。
「盗賊の隠れ家の案内には俺一人がいれば大丈夫だろう。お前たちは宿泊場所を確保しておいてくれないか?」
勇者にそう言うと露骨に嫌な顔をされた。
「俺も行く」
「いや、必要ないだろ」
「俺も行く」
頑として譲らない。
「宿は私たちが探しておきますから。勇者も一緒に連れて行ってください。何かないとも限りませんし」
少し笑って聖騎士がとりなして来た。
お前たちはほんと、勇者を甘やかしすぎだぞ?
「私も行く」
「え? いや……」
今度はメルリルが主張して来た。
「ここは魔物よりも精霊の力が強い。私の力が役に立つはず」
「盗賊の隠れ家に案内するだけだぞ?」
「パーティなんだから」
メルリルも一歩も引かなかった。
まぁそうか、パーティだしな。
「わかったメルリル。一緒に行くか」
「師匠、メルリルばっかり、贔屓だ!」
「当たり前だろ! お前とメルリルならメルリルを贔屓するぞ、俺は!」
「ぐぬぬ……」
お前もういい大人なんだからそういう聞き分けのなさをなんとかしろ。
『我も……』
『面倒になるからお前は黙ってろ!』
フォルテが頭に響く声で主張して来た。
あまつさえ降りて来ようとするので慌てて止める。
『今から活躍してもらうから、上から周囲を警戒しておいてくれ。頼むぞ』
『……むう、わかった』
ふう、みんな主張激しすぎだろ!
「ふふっ、そなたたちは仲が良いのだな。神の御子の勇者など、冷たい人外の存在かと思うておったが、どうやら血の通う人間のようであるわ」
「当たり前だ」
大巫女様までが呆れて笑っている。
そして勇者よ、失礼だからいちいち対抗するようなもの言いをするのはやめろ。
周りの戦士の目つきがヤバいぞ。
「それに……そなたとその連れ合いの姿を見ていると、なぜか大祖母様より伝え聞いた精霊王の両翼たる依代方のことを思い出す。同じ森の民と平野の民の組み合わせであるからであろうか……」
まずい!
フォルテがいないのに疑われているぞ。
ここにフォルテが姿を現したら完全に言い逃れが出来なくなりそうだ。
絶対あいつを地上に下ろす訳にはいかない。
「大巫女様の大祖母様はその、精霊王様を見たことがおありで?」
「うむ。それどころか、聖地の青銀の祈りの原で最初に精霊王様方をお迎えしたのは誰あろう我が大祖母様であったのだ。精霊王様の生み出されたこのオアシスを豊かで住みよい地として拓いたのは大祖母様方の功績よ」
なんだって?
心臓が大きく音を立てたのがわかった。
聞くのが恐ろしい。
そんな思いに駆られながらも、俺は聞かずにはおれなかった。
「その、……偉大な大婆様のお名前をお聞きしても?」
「おお、もちろん良いぞ。偉大なる先人の名を告げるのは我らが喜びよ! 我が大祖母様のご尊名は、ミャア・ルルベ・アアォエイ・フォーリィ。『偉大なる青銀の祈り』の贈り名を持つ稀代の大巫女であらせられるぞ」
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