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第四章 世界の片隅で生きる者たち
284 法の守護者
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「この車の運転手は誰だ!」
赤を基調にした車から降りてきた衛兵が鋭い口調で問いただす。
俺たち全員の視線が道に座り込んでいる不幸な男に注がれた。
「わ、私ですが、何か?」
「貴殿は走行の際、無理な左折をして道路沿いの街灯を破損したな?」
「さ、さあ、覚えていませんが」
「目撃者は大勢いるんだぞ! こんな目立つ車、見間違うはずもないだろう」
言って示した車は、前半部分が潰れてしまっているが、なるほど人が乗る部分は金の装飾が施された豪華な造りだ。確かに目立つだろうな。
「では、気づかぬ間に破損してしまったのでしょう。わかりました弁償いたします」
男は罪を追求されている側だと言うのに妙に落ち着いている。
さきほど皇女殿下になじられていたときとは違い、自信たっぷりで衛兵を見下しているようにすら思えた。
「それで、この有様はなんだ?」
衛兵さんは次に車の惨状について尋ねた。
まぁ気になるよな。
立派な車が見事に破壊されているし。
「そちらの方が私の車を破壊したのです」
操縦者、いや、運転手というのか? 運転手の男は勇者を示してそう言った。
うん、本当のことだな。
「なんだと。貴様、この帝都内でこのような破壊行為が許されると思っているのか?」
衛兵が今度は勇者に詰問した。
それに勇者が答えるよりも早く、皇女殿下が勇者の前に出る。
「お待ちなさい」
「なんだ、お前は? ん? んん?」
衛兵は目の前に出て来た女性を訝しげに見ていたが、何かを思い出すように目をすがめる。
やがて段々顔色が悪くなっていった。
「……もしやあなたさまは五の姫さまでは?」
「そうです。この帝国の第五皇女、アニサ・ティラ・メイナス・クリスティアです」
皇女殿下が名乗ると衛兵の顔色が更に悪くなる。
「五の姫さまがなにゆえにこのような場所においでなのでしょうか? 警備や側仕えの者はいかがしました?」
「そのようなことはどうでもよいことです。それよりも、こちらにおわすのは今代の勇者さまですよ。あなたごとき下賤の者が軽々しく口を利くのも許されることではありません。ましてや罪に問おうとは」
「お待ちください。それがどのような立場の者であろうとも、罪を問うのが帝国法です。その公平さが我が国の誇りのはず。殿下であろうともそれは動かしてはならないことです」
この衛兵さん、まだ若いのに勇気があるな。
反抗された皇女殿下はたちまちまなじりを吊り上げて怒りの表情をあらわにした。
「下郎が! わたくしに向かってそのような物言いをするとは、覚悟は出来ているのでしょうね?」
「やめろ! この国で一番法を守るべき立場の貴女が法をないがしろにする発言は皇女として恥ずべきことだぞ」
皇女殿下と衛兵とのやりとりに腹を立てたのは我らが勇者さまだった。
勇者は偉いやつが決まりを守らないのが一番嫌いなんだよな。
この皇女殿下、勇者を落としたいならやり方を間違えているぞ。
勇者に諌められて皇女殿下はやや不満そうなままだったが口を閉じた。
しかしこの一連の出来事は、いくら強がってもさすがに一介の衛兵には負担が大きかったらしい。
「少しお待ちいただけますか?」
衛兵はそう言い置いて車に戻ると、なにやら通信術具を使い。すぐに戻って来て関係者一同に礼をして宣言するように言った。
「しばらくすると応援が来ます。とにかく本部で事情を聞かせていただきたい」
どうやらこの場を一人でどうにかするのは不可能と判断したらしい。
そうだよな。
俺はこの衛兵さんの首が心配だ。
というかこの衛兵さん見覚えがあるんだよな。
もしかするとオウガ隊長の部下の一人じゃないか?
向こうは俺のことを覚えていないようだが。
というか、皇女殿下と勇者への対応でいっぱいいっぱいになっていて、ほかが見えていないんだろうな。
さらに哀れなことに、車の運転手の男はほとんど放置されている。
なんとも言えない空気のなか、しばらくすると遠くから鐘の音が響いて来た。
その頃になると周辺住民がやや遠巻きに集まって、その場の様子を見学し始めていた。
いわゆる野次馬というやつだな。
「おっちゃん、さっきのおにーちゃん、衛兵さんに怒られてるの?」
俺もなんとなくことの中心部から離れた場所に佇んでいたんだが、そのせいで事情を聞きやすいと思われたんだろう。近所の子どもが俺の袖を引いて、ことのあらましを確認しに来た。
あ、いや、この子はさっき車に轢かれそうになった子たちの一人か?
よく見ると道の角のところにさっきの子どもたちが揃っていた。
「いやまだ怒られてはいないぞ。今の所怒られているのは車を運転していた人だな」
「そっかよかった」
「気にかけてくれてありがとうな」
「ううん、助けてくれたからさ。あの車金持ちのだろ? 関わり合いになると父ちゃんの仕事がなくなるかもしれないと思って逃げちゃったんだ。ごめんなさい」
子どもの言いようが気になって俺は聞き返した。
「金持ちに関わると仕事がなくなるのか?」
「うん。あたしの父ちゃん工場で働いているからさ。車に乗っているのって工場の偉い人が多いんだ」
「そうか。じゃあお前たちのことはないしょにしておいてやろう」
「ほんと? ありがとう!」
「仲間にもそう言ってやれ」
「うん」
安心したように仲間の元へ戻る子どもを見送って、俺は聖騎士に近づいた。
聖騎士は勇者の斜め背後にいて、周囲を油断なく警戒している。
「クルス、ちょっと」
「どうしました?」
「轢かれそうになった子どもたちは証言出来ない。金持ちに睨まれると親がまずいらしい」
「了解しました。どこも似たようなものですね」
「まぁな」
俺たちがこそこそしゃべっていると、勇者がじいっと見て来た。
お前と相談すると向こうに筒抜けだから今は我慢しろ。
やがて、衛兵隊の車が五台ほどやって来た。
過剰出動じゃないか?
「どうした?」
「はっ、隊長! 報告いたします。この車が数刻前に道路脇の街灯を破壊したという通報があり、追跡したところ犯人を発見いたしましたが、その、同乗者が五の姫さまでありました」
衛兵隊の車から降りて来たのはやっぱりオウガ隊長だった。
ってかあの人あのケガでもう仕事してるのかよ。
視線を巡らせて俺を発見すると、一瞬眉を動かしたが、何も言わずに視線だけで後で話があると示してみせる。
「それだけじゃないな。続けろ」
「はっ、発見時容疑者の乗っていた車はすでに破壊されていて、その破壊の容疑者がこちらの、その、勇者さまとのことです」
「……報告ご苦労。隊に戻って指示を待て」
「はっ!」
街灯を壊した車を追いかけて来ただけなのにとんでもない連中と遭遇してしまった不幸な衛兵さんはあからさまにホッとした顔になり自分の車に戻る。
「とりあえず事件に関係した方々は衛兵隊詰所に来ていただけますか?」
「そこな兵士、無礼であろう。わたくしを誰だと思っているの?」
「皇女殿下、私は皇帝陛下の忠実な一兵士であると共に、この国の法を守り従う帝国民であると自認しております。帝国法においては法の下に全ての者は公平でなければなりません。たとえそれが皇帝陛下その人であろうともです」
「なんと不遜な!」
「それこそが我が国が他国と違い、文化国であると誇る拠り所であることは、殿下のほうがよくご存知なのではないですか?」
オウガ隊長と皇女殿下はしばし睨み合う。
「……わかりました。同行いたしましょう。あなた、そこまでおっしゃるなら覚悟があるのでしょうね?」
「もちろんです。いかようにも責任は取りましょう」
パチンと、扇をたたむ音が響く。
皇女殿下は美しい顔を赤く染めてかなりお怒りのようだったが、オウガ隊長に呼ばれた衛兵に付き添われて衛兵隊の車へと向かった。
皇女殿下はたびたび振り向いて勇者を見ていたが、勇者はずっと無視してオウガ隊長を見ていた。
「ふむ、あなたさまが噂の勇者さまですか。思ったよりお若いですな」
「……悪いか?」
「いえ。まぁ他人の財産を破壊したのですから、とりあえず事情を聞かせていただきますよ?」
「用事がある」
「そうは言われましても決まりですから」
「……わかった。同行するのは俺だけでいいだろう。ほかの者は関係ない」
「そう、ですね。確かにほかの方は結構です。あ、しかし、そこのダスター殿には別件で用事があるので同行していただいてよろしいですか?」
言われて、勇者が警戒心に満ちた顔になる。
「し……ダスターさんに何の用だ? 車の破壊に彼は関係ないぞ」
「ああ、いや、別の件で協力していただいたので、その御礼のようなものですよ。今回の事件とは別件です」
「? お礼?」
勇者が俺を見る。
こうなったら仕方ない。とにかくこの混乱した状況を乗り切るしかないだろう。
「勇者さまに私は同行いたします」
ごく自然に聖騎士が申し出る。
「お師匠さま。教会と大聖堂への伝言はわたくしだけでも大丈夫です。テスタと共に用件を済ませておきます。勇者さまをよろしくお願いいたします」
聖女が俺に礼を取りながら言った。
俺がテスタに視線を向けると、にっと笑ってみせる。
まぁ大丈夫か。
「わかった。そっちは任せる。……メルリル」
「私、今度こそダスターについていくから」
聖女たちと一緒に教会に行ってもらおうと思っていたのだが、メルリルは座った目で俺に断言した。
お、おう、わかった。
今度こそって、……だいたい一緒に行動していると思ったんだがな。
「ああ。その、よろしく」
そんな、なんとなくしまらないことをつぶやいて、俺は、勇者たちの面倒事と衛兵隊長の用事とやらを済ませることにしたのだった。
赤を基調にした車から降りてきた衛兵が鋭い口調で問いただす。
俺たち全員の視線が道に座り込んでいる不幸な男に注がれた。
「わ、私ですが、何か?」
「貴殿は走行の際、無理な左折をして道路沿いの街灯を破損したな?」
「さ、さあ、覚えていませんが」
「目撃者は大勢いるんだぞ! こんな目立つ車、見間違うはずもないだろう」
言って示した車は、前半部分が潰れてしまっているが、なるほど人が乗る部分は金の装飾が施された豪華な造りだ。確かに目立つだろうな。
「では、気づかぬ間に破損してしまったのでしょう。わかりました弁償いたします」
男は罪を追求されている側だと言うのに妙に落ち着いている。
さきほど皇女殿下になじられていたときとは違い、自信たっぷりで衛兵を見下しているようにすら思えた。
「それで、この有様はなんだ?」
衛兵さんは次に車の惨状について尋ねた。
まぁ気になるよな。
立派な車が見事に破壊されているし。
「そちらの方が私の車を破壊したのです」
操縦者、いや、運転手というのか? 運転手の男は勇者を示してそう言った。
うん、本当のことだな。
「なんだと。貴様、この帝都内でこのような破壊行為が許されると思っているのか?」
衛兵が今度は勇者に詰問した。
それに勇者が答えるよりも早く、皇女殿下が勇者の前に出る。
「お待ちなさい」
「なんだ、お前は? ん? んん?」
衛兵は目の前に出て来た女性を訝しげに見ていたが、何かを思い出すように目をすがめる。
やがて段々顔色が悪くなっていった。
「……もしやあなたさまは五の姫さまでは?」
「そうです。この帝国の第五皇女、アニサ・ティラ・メイナス・クリスティアです」
皇女殿下が名乗ると衛兵の顔色が更に悪くなる。
「五の姫さまがなにゆえにこのような場所においでなのでしょうか? 警備や側仕えの者はいかがしました?」
「そのようなことはどうでもよいことです。それよりも、こちらにおわすのは今代の勇者さまですよ。あなたごとき下賤の者が軽々しく口を利くのも許されることではありません。ましてや罪に問おうとは」
「お待ちください。それがどのような立場の者であろうとも、罪を問うのが帝国法です。その公平さが我が国の誇りのはず。殿下であろうともそれは動かしてはならないことです」
この衛兵さん、まだ若いのに勇気があるな。
反抗された皇女殿下はたちまちまなじりを吊り上げて怒りの表情をあらわにした。
「下郎が! わたくしに向かってそのような物言いをするとは、覚悟は出来ているのでしょうね?」
「やめろ! この国で一番法を守るべき立場の貴女が法をないがしろにする発言は皇女として恥ずべきことだぞ」
皇女殿下と衛兵とのやりとりに腹を立てたのは我らが勇者さまだった。
勇者は偉いやつが決まりを守らないのが一番嫌いなんだよな。
この皇女殿下、勇者を落としたいならやり方を間違えているぞ。
勇者に諌められて皇女殿下はやや不満そうなままだったが口を閉じた。
しかしこの一連の出来事は、いくら強がってもさすがに一介の衛兵には負担が大きかったらしい。
「少しお待ちいただけますか?」
衛兵はそう言い置いて車に戻ると、なにやら通信術具を使い。すぐに戻って来て関係者一同に礼をして宣言するように言った。
「しばらくすると応援が来ます。とにかく本部で事情を聞かせていただきたい」
どうやらこの場を一人でどうにかするのは不可能と判断したらしい。
そうだよな。
俺はこの衛兵さんの首が心配だ。
というかこの衛兵さん見覚えがあるんだよな。
もしかするとオウガ隊長の部下の一人じゃないか?
向こうは俺のことを覚えていないようだが。
というか、皇女殿下と勇者への対応でいっぱいいっぱいになっていて、ほかが見えていないんだろうな。
さらに哀れなことに、車の運転手の男はほとんど放置されている。
なんとも言えない空気のなか、しばらくすると遠くから鐘の音が響いて来た。
その頃になると周辺住民がやや遠巻きに集まって、その場の様子を見学し始めていた。
いわゆる野次馬というやつだな。
「おっちゃん、さっきのおにーちゃん、衛兵さんに怒られてるの?」
俺もなんとなくことの中心部から離れた場所に佇んでいたんだが、そのせいで事情を聞きやすいと思われたんだろう。近所の子どもが俺の袖を引いて、ことのあらましを確認しに来た。
あ、いや、この子はさっき車に轢かれそうになった子たちの一人か?
よく見ると道の角のところにさっきの子どもたちが揃っていた。
「いやまだ怒られてはいないぞ。今の所怒られているのは車を運転していた人だな」
「そっかよかった」
「気にかけてくれてありがとうな」
「ううん、助けてくれたからさ。あの車金持ちのだろ? 関わり合いになると父ちゃんの仕事がなくなるかもしれないと思って逃げちゃったんだ。ごめんなさい」
子どもの言いようが気になって俺は聞き返した。
「金持ちに関わると仕事がなくなるのか?」
「うん。あたしの父ちゃん工場で働いているからさ。車に乗っているのって工場の偉い人が多いんだ」
「そうか。じゃあお前たちのことはないしょにしておいてやろう」
「ほんと? ありがとう!」
「仲間にもそう言ってやれ」
「うん」
安心したように仲間の元へ戻る子どもを見送って、俺は聖騎士に近づいた。
聖騎士は勇者の斜め背後にいて、周囲を油断なく警戒している。
「クルス、ちょっと」
「どうしました?」
「轢かれそうになった子どもたちは証言出来ない。金持ちに睨まれると親がまずいらしい」
「了解しました。どこも似たようなものですね」
「まぁな」
俺たちがこそこそしゃべっていると、勇者がじいっと見て来た。
お前と相談すると向こうに筒抜けだから今は我慢しろ。
やがて、衛兵隊の車が五台ほどやって来た。
過剰出動じゃないか?
「どうした?」
「はっ、隊長! 報告いたします。この車が数刻前に道路脇の街灯を破壊したという通報があり、追跡したところ犯人を発見いたしましたが、その、同乗者が五の姫さまでありました」
衛兵隊の車から降りて来たのはやっぱりオウガ隊長だった。
ってかあの人あのケガでもう仕事してるのかよ。
視線を巡らせて俺を発見すると、一瞬眉を動かしたが、何も言わずに視線だけで後で話があると示してみせる。
「それだけじゃないな。続けろ」
「はっ、発見時容疑者の乗っていた車はすでに破壊されていて、その破壊の容疑者がこちらの、その、勇者さまとのことです」
「……報告ご苦労。隊に戻って指示を待て」
「はっ!」
街灯を壊した車を追いかけて来ただけなのにとんでもない連中と遭遇してしまった不幸な衛兵さんはあからさまにホッとした顔になり自分の車に戻る。
「とりあえず事件に関係した方々は衛兵隊詰所に来ていただけますか?」
「そこな兵士、無礼であろう。わたくしを誰だと思っているの?」
「皇女殿下、私は皇帝陛下の忠実な一兵士であると共に、この国の法を守り従う帝国民であると自認しております。帝国法においては法の下に全ての者は公平でなければなりません。たとえそれが皇帝陛下その人であろうともです」
「なんと不遜な!」
「それこそが我が国が他国と違い、文化国であると誇る拠り所であることは、殿下のほうがよくご存知なのではないですか?」
オウガ隊長と皇女殿下はしばし睨み合う。
「……わかりました。同行いたしましょう。あなた、そこまでおっしゃるなら覚悟があるのでしょうね?」
「もちろんです。いかようにも責任は取りましょう」
パチンと、扇をたたむ音が響く。
皇女殿下は美しい顔を赤く染めてかなりお怒りのようだったが、オウガ隊長に呼ばれた衛兵に付き添われて衛兵隊の車へと向かった。
皇女殿下はたびたび振り向いて勇者を見ていたが、勇者はずっと無視してオウガ隊長を見ていた。
「ふむ、あなたさまが噂の勇者さまですか。思ったよりお若いですな」
「……悪いか?」
「いえ。まぁ他人の財産を破壊したのですから、とりあえず事情を聞かせていただきますよ?」
「用事がある」
「そうは言われましても決まりですから」
「……わかった。同行するのは俺だけでいいだろう。ほかの者は関係ない」
「そう、ですね。確かにほかの方は結構です。あ、しかし、そこのダスター殿には別件で用事があるので同行していただいてよろしいですか?」
言われて、勇者が警戒心に満ちた顔になる。
「し……ダスターさんに何の用だ? 車の破壊に彼は関係ないぞ」
「ああ、いや、別の件で協力していただいたので、その御礼のようなものですよ。今回の事件とは別件です」
「? お礼?」
勇者が俺を見る。
こうなったら仕方ない。とにかくこの混乱した状況を乗り切るしかないだろう。
「勇者さまに私は同行いたします」
ごく自然に聖騎士が申し出る。
「お師匠さま。教会と大聖堂への伝言はわたくしだけでも大丈夫です。テスタと共に用件を済ませておきます。勇者さまをよろしくお願いいたします」
聖女が俺に礼を取りながら言った。
俺がテスタに視線を向けると、にっと笑ってみせる。
まぁ大丈夫か。
「わかった。そっちは任せる。……メルリル」
「私、今度こそダスターについていくから」
聖女たちと一緒に教会に行ってもらおうと思っていたのだが、メルリルは座った目で俺に断言した。
お、おう、わかった。
今度こそって、……だいたい一緒に行動していると思ったんだがな。
「ああ。その、よろしく」
そんな、なんとなくしまらないことをつぶやいて、俺は、勇者たちの面倒事と衛兵隊長の用事とやらを済ませることにしたのだった。
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