勇者パーティから追い出されたと思ったら、土下座で泣きながら謝ってきた!

蒼衣翼

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第三章 神と魔と

176 魔力の流れ

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 いよいよ身分け山に入る。
 ただ、源泉のある崖を登るのは難しいので、その脇にある登り口を使うことになった。
 そうなると源泉の流れを線として辿りにくく、問題が発生している場所がわかりにくくなってしまう。

「アルフ、ちょっと聞くがお前魔力の流れは見えるか?」

 山を登りながら尋ねると、キョトンとしたような顔で「魔力の流れってなんだ?」と、聞かれた。
 ん~。まぁそんなことだろうと思っていたさ。

「フォルテ!」
「ピィ! キャウ! ギャアア、ガウ!」

 フォルテを呼んだらすぐに飛んで来たのはいいが、凄い勢いで頭をつつかれた。やめろ! いてえだろうが! お前俺の髪に悪意を持ってないか?
 勇者があからさまにムッとする。

「鳥は必要ないだろ」
「バカ言え、高い場所から全体を見るのにフォルテの視界ほど便利なものはないぞ。それに保養所では仲間外れなんだから外では一緒にいてやらないとな」
「キュウ」

 フォルテは同意するように鳴くと、勇者に向かって羽を半分広げた状態で挑発するように「クルルルルル……」と鳴いてみせる。
 勇者の顔から表情が抜け落ちると、腰の剣に手を当てた。

「やめろ、ばかなケンカをするな。子どもかお前たちは!」

 お互いにそっぽを向いた勇者とフォルテにため息をこぼしながら、話を続ける。

「アルフ、お前は魔力は多いのに細かく使いこなすことが出来てない。だからまさかと思ったが、魔力の流れが見えてなかったんだな」
「そんなの習わないぞ。魔力というのは感じるものだ。目で見るもんじゃない」
「だがドラゴンの魔力は見えていただろう?」
「あれは威圧の魔法だろ、魔力が多すぎて余剰分の魔力が光となって放射されていただけだ」

 うーん、どうも認識の違いがあるな。
 勇者は貴族として魔法の勉強を正式にしているはずだから、そのときにそう習ったということなんだろう。
 俺の場合は自己流だし、もしかして俺のほうが間違っているのか?
 少し考えて、勇者に左手を開いた状態でかざして見せた。

「ちょっと見ていろ」
「おう」

 俺は左手の指の一本ずつに順繰りに魔力を通した。

「どう見えた?」
「どうって、師匠の左手だ」
「ううむ、これならどうだ?」

 そう言って、次に魔力を素のままで指から放出してみせる。

「お!」
「見えたか?」
「これ、魔力漏れだよな」
「ふむ、これを意識して出来るか?」
「魔力が無駄になるから魔力漏れは起こすなと習った」
「う~ん」

 いや、これはまずは勇者たちが使う魔法を実際に見たほうが俺も理解が進むかもしれない。

「アルフ、何か簡単な魔法を使ってみせてくれ。破壊力のない子どもが最初に習うような魔法だ」
「それなら……ライト

 勇者の手のなかに小さな淡い光りが生まれた。
 今は朝方なのでその光自体は見えにくいが、魔法を使ったときの魔力の流れは見えた。
 今、勇者が魔法を使うときに魔力が集中したのは頭と目と喉だった。指先や手のひらなどに魔力は来ていない。
 つまりこの魔法の現象自体は魔力を使った結果であって、魔力そのものが引き起こしている現象ではないのだ。
 俺と勇者の魔力についての認識の違いがはっきりとわかった。

「なるほど、魔法というものは思ったよりも凄いものだな。魔力を使って無から有を生み出しているのか」
「まぁ盟約あってのものだけどな。魔法は全て盟約を読み解いて作られたものだから」
「お前や貴族たちが魔力を見るということをしない理由もわかった。魔力を見たところで魔法を特定することは出来ないから無駄だと思って鍛えなかったのだろう」
「放出された魔力は見えるぞ」

 勇者の言葉にうなずいた。

「いいかよく聞け。魔物は魔法ではなく、魔力そのものを変換して力として使用している。感覚としてはお前が剣を使うときのものに近い」
「それはなんとなくわかる」
「だから魔力が魔物の体をどう流れているかを見ることが出来れば相手が何をしようとしているかがわかる」
「おお! って、もしかして師匠は魔力が見える? 放出されたものじゃなくて、魔物の体内の魔力も?」
「ああ」
「すげえ! さすが師匠だ!」

 俺に言わせればお前たちの魔法のほうがすげえよ。

「それでだ、本題なんだが、俺は源泉の流れを辿るのに魔力の流れを追おうと思っている」
「地中の魔力も見えるんだ? すげえ!」
「いや、いくらなんでも地下深くのものは普通には見えない。だが、こないだフォルテの視界を共有したときには、赤い線のようなものが山中に見えた。あれが山のなかの魔力の流れなんだと思う。だからフォルテの目を借りようと思った訳だ」

 勇者のテンションがすっと下がる。
 片眉を上げてフォルテを見た。

「ククッ」

 フォルテがまるで笑うように鳴いて胸を張って見せる。

「くっ、師匠に頼られたからって勝ったと思うなよ!」

 お前たち、訳のわからんことで張り合うな、ほんとやめろ。

「俺だって、魔力が見えるようになってみせる!」
「おう、それを言うつもりだった。今は調査を優先するが、暇を見て魔力の流れを見る訓練をしよう。魔物と戦うなら出来たほうがいいからな」
「はい!」
「ゲッゲッ!」

 フォルテが俺の肩から飛び立って、勇者の金色の見事な髪を引っ張った。

「いてえ! やめろ!」
「仲いいなお前ら」

 ともあれ、あの源泉のある崖の上のほうに出たら、フォルテの視界を頼りに流れを追うことになる。
 さてさて、何が出て来るやら。
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