5 / 51
第1章 First contact
第4話 前触れ
しおりを挟む(何か、見えてきたな)
人がいると教えて貰った方向に歩き続けていると、うっすらと建造物が見えてきた。
まだ距離があるためぼんやりとしか見えないが、囲いの様な物がありその中に中世にありそうな城がひょこっと頭を出している。
「・・・あれか?」
確認のためこのことを教えてくれた"オーク(仮)"に話かける。
「ヴォオ!」
「そうか」
俺は道中に少しでもこいつらの事を知ろうと、コミュニケーションを取ることにした。その際に名前がないと呼ぶとき等に困ったので名称を仮として決めてみた。見た感じこいつらは2種の生物に別けられる。
まずは"ゴブリン(仮)"。
背は低く、皮膚は薄緑色をしている。
ファンタジーというものに疎い俺でもわかるぐらいまさにTHEゴブリンって感じだったのでそのままゴブリン(仮)と呼ぶことにした。
(仮)が付いているのはもしかしたら名称が違うという、少し恥ずかしい事になるかも知れないから。
次に"オーク(仮)"。
大柄で背は高く、肌は全体的に濃い目の茶色をしており、皮膚は少しぶよぶよと弛んでいる。
こちらは知識が乏しい俺では外見から判断する事ができなかった。
オークという名前も聞いた事があるだけで、名前の勝手なイメージだけで付けてみた。そして、俺の質問に答えているのはオーク(仮)の方だ。
そして会話についてだ。こいつらが言ってることを俺は理解出来ないが、そんな中でも『はい』や『いいえ』などの簡単なものは何となーくだが分かるようになった。そして何故かは分からないが俺の言葉はこいつらに通じており、理解しているようなので最低限の会話はできた。
「はぁ・・・」
確かに街・・・国?はあった。だがそれはとても現実・・・いや元の世界に存在するものとは思えない。もしかしたらとんでもなく辺境の外国にいるという可能性もあるがその可能性はかなり低いだろう。それよりもここは別の世界だという可能性の方が高い。見知らぬ生き物や目の前にある城を見ると、何だか異世界の方がしっくりくる。
俺が何らかの理由で別の世界に迷い込んでしまったとして、元の世界に帰るにもこの世界に居続けるにしてもまずは情報が必要だ。そしてもしこの世界にも人間がいるならその情報のほとんどが会話や言葉のはずだ。
俺が今危惧している事はその言葉。つまり言語だ。こいつらとのコミュニケーションに悩んでいる時から思っていたのだが、この世界の言語が俺の世界の言語と違うのではないか?
というか、同じということはないだろう。俺が喋れるのは日本語だけだし、そもそも日本語の存在自体がかなり特殊な進化を遂げたものなのだ。そのため同じものが言語としてある可能性はかなり低い。
(せめて英語とかであってくれ・・・)
俺は密かに言語が俺の世界に既存していて、俺の知識にあるものであってくれと心の底から祈った。聞いたこともない言語を一から覚えるのは流石にきつい。てか無理だ。
悟たち一行が目指している国。その国の名前は"アドルフォン王国"。
魔王が勇者に封印されてから百数年。
世間ではこの国が勇者の出身の国、と知らない人間はいないほどこの街は近年で一番発展した街だった。
そして今この国で、いや、すべての国で話題になっている職業がある。
それは"ハンター"といわれる職業だ。
勇者は魔王を封印はしたが、魔王を封印しても魔物の存在が消える事はなかった。むしろ、魔王というトップの存在がいなくなったことで凶暴化したり、異常な行動とる魔物や、好き勝手に暴れまわる魔物が増える事になった。
そこで一般人でも高い実力を持ってはいるが、それをもて余している者が多数いることを知った当時の国王は魔物を討伐するのが主な仕事である職業を作り、民間及び国から依頼を貰うことでそういった魔物の被害から周辺の村々など民を守る仕組みをつくった。
それが"ハンター"という職業だ。
全てのハンターはランク付けをされており、下から[F][E][D][C][B][A][S]といった計7段階で別れている。これにより依頼対象の魔物や場所、数、魔物の討伐ランクなどといったの様々な情報を元に依頼自体のランクを定めて、同ランクかそれ以上のランクの者だけがその依頼を受注することができるシステムになっている。
これはハンター達が自分の実力に見会わない依頼を受けて死亡してしまう事を未然に防ぐ意味も含んでいるのと、ランク制度があることでハンター達が互いに競争するようになるからだ。
ハンターを新しく始める際は基本的にランクはFから始まる。単身で登録することも出来るが、もちろん複数人で"パーティー"を組み、パーティー登録することも出来る。むしろ普通はパーティーを組むのが当たり前で単身でハンターになるということの方が珍しい。
そうしてハンターになった者はそこからいくつかの依頼をこなしていき、依頼の"内容"や依頼の"達成スピード"などからその人物の実力を測定して、実力が今のランクより高いと判断された場合に昇格試験を受けられるようになる。そしてそれに合格するとランクを上げる事ができる。
現在、最も高いランクはSランクであるがそこに至るまでの難易度は高く、ハンターがこの国に500人以上いる中でSランクのハンターはわずか3組だけである。この事からSランクというものがどれだけ高い難易度が高いか分かるだろう。
そしてそのSランクのハンターでの中でも一部からはトップの存在と言われている者がいる。
ハンター達が依頼の受注や手続き、その他様々サポートを行う施設"ハンター組合"。一つの国に最低一つはあり、ハンター達は依頼の受注や手続き等を行う場合は全てこの施設で行わなければならない。
ハンター組合には昼夜問わず多数のハンターがおり、常に少なからず賑わっている所である。そんな騒がしい場所の扉が軽くバンっと音が鳴る程度に勢いよく開かれた。
その音に反応して周りのハンター達が音の発生源に注目した。扉から目立つ白銀の鎧を着た男が歩いくる。その男の足は一直線に受付に向かっていた。
受付は多数のハンターを同時に対応できるように複数ある。忙しい時は最大3人で稼働させるのだが、今は忙しい訳ではないので受付嬢は一人だけだ。
「今朝受けた依頼を完了した。確認してくれ」
「お、お疲れ様です。ただ今確認致しますので少々お待ちください」
男は今朝に依頼を受けたハンターだったらしく、その依頼が今しがた完了したのでその報告に来たようだ。
男の依頼完了報告を受けて、少し驚きながらも受付嬢は受け答えを行う。
「マジかよ・・・いくらなんでも早すぎだろ・・・」
「Sランクの依頼をこんなにもあっさりこなすとは・・・」
「やっぱSランク最強の男はちげぇな!!」
Sランクの依頼とは最高ランクの依頼であり基本的にはSランクのハンターのみ受注が可能な最高難易度の依頼である。
その男の依頼完了報告を見て周りのハンター達は騒がしくなる。
驚き恐れる者、強く関心する者、嫉妬で悔しがる者、など様々な反応で組合内全体が先ほどより騒がしくなった。
「お待たせ致しました。確認が取れましたので、これで依頼は完了となります。お疲れ様でした」
しばらくして依頼の完了確認を終えた受付嬢が戻ってきて、無事に確認が取れた事を伝えた。
「ああ、それで次の依頼についてなんだが・・・」
「も、申し訳ございません。現在あなた様が受ける事ができる、Sランクの依頼はございません」
「そうか・・・ならいつも通りに国周辺を適当に見回っているから何か依頼が来たら知らせてくれ」
「はい。かしこまりました」
男は次の依頼を希望したが、現在受けられるSランクの依頼や緊急性を要する依頼はない。彼はSランク以下の依頼を受けることができるがとある理由から彼は受ける依頼を制限している。男は自分が受けられる依頼がないと知ると、次の依頼が来るまで国の周辺を見回ると言い出した。
そのやり取りを聞いていた回りのハンター達は再び様々な反応を見せていき段々と騒がしくなった。
男は周りの反応を一切気に止めず彼は組合から出ていった。
実はこの男こそこの国でわずか3組しかいないSランクハンターの一組であり、他はパーティーを組んでのSランクという結果に対して彼は単身でSランクである。そして彼がSランクの中でもトップと言われているハンターだ。
パーティを組んでいる場合、個人の実力ではなくパーティとしての実力でランクが設定されている。なのでSランクパーティのメンバー個人個人がSランクの実力を持っているわけではない。だが彼は違う。パーティは組んでおらず単身でSランクなのだ。それは正真正銘、個人の実力がSランクなのだ。それ故に彼はSランクの中でも最強だと言われている。
その男の名を"ペェスタ・プラクター"という。
0
お気に入りに追加
145
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?
山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。
2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。
異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。
唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。
アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。
両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。
両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。
テッドには、妹が3人いる。
両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。
このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。
そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。
その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。
両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。
両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…
両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが…
母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。
今日も依頼をこなして、家に帰るんだ!
この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。
お楽しみくださいね!
HOTランキング20位になりました。
皆さん、有り難う御座います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる