3 / 51
第1章 First contact
第2話 魅惑の自然
しおりを挟む「さて・・・」
俺は現在、少し遠くに見えた森の目の前に来ている。やはり近くで見ると迫力があるな。
一緒に山の中で生活していた師匠に毒されてしまったのか知らないが、俺は自然や生き物といったものが割と好きだ。自然に生まれて来た自然を見ると神秘的な何かを感じる。
現代の日本ではこんな立派な木々はまず見られない。こんな状況だが、いやこんな状況だからこそ少しでも貴重な体験をしようと思ったのだ。
「改めて見ても凄いな・・・」
よく、目の前の木々を見てみる。
木々の一本一本がかなり大きく、見応えがある。木々は均等に配置されてる訳でもなければ、ぐちゃぐちゃに配置されてる訳でもない。確かに不規則に配置されてるのだが、それにどこか規則性を感じる。
森の中は暗くもなければ、明るいわけでもない。太陽の光が葉っぱの隙間からほどよく差し込むぐらいの明るさになっており、外から見ただけでこの中は心地よい場所だとハッキリと確信できた。
(こういう所に住みたいな)
頭に永住願望が浮かび、想像上の光景に顔をニヤつかせる。そしてこの森を改めて見た時から我慢していた足がついに動きだし、俺は素晴らしすぎる自然の中に入っていった。
どれくらい進んだろうか――
しばらく歩いた気になっていたが、ふと我に帰り自分がどれぐらいこの森を進んだか気になった。
後ろを振り返り自分の進んできたであろう方向を見る。
目測でだいたい50メートル程の所に外の草原が見える。
これが何を意味するか―――
そう。たいして進んでないのである。
「フッ・・・」
この現象を起こした原因である大自然への感動とかなりの距離を進んだと思っていたが実際には全然進んでない事の驚きが合わさり、自分でも解らない謎の笑みが溢れる。
(いや、こんな阿呆な事をしてる場合じゃないな・・とりあえず、森を一直線に抜けてみるか。)
一度冷静になり、これからの事を考える。森に来たは良いがそこから何をするかは未定だったため、とりあえずの目的として森の向こう側を確認する。という目標決める。
もしかしたら何か新たな事がわかるかもしれない。
「・・・何だ?」
森を抜けるという新たに定めた目標を達成するために前方に体を向け直し、歩き出そうとした。
その時―――
俺の目が"奇妙な物"を捉えた。
おかしい。
さっきまでは前方にあんな"水溜まり"はなかったはず・・・
いや、有ったのかだろうか?確かに上ばかり見ていて下の方はあまり見ていなかった。
いや、違う。今、気にするのはそこじゃない。この際、あれが有った無かったはどうでもいい。俺が気にしなきゃならないのはその容姿だ。
たんなる水溜まりかと思ったが違った。それはまるで水をそのまま丸いゼリーにした様な立体の容姿だ。
何だ、あれは。生き物・・・なのか?
仮に生き物だとしてもそんな存在は、少なくとも現実ではあり得ないだろう。ひとまず近くの木に、身を潜めて様子を見るか。
しばらく見ていたがその場に留まり、ただプルプルと震えているだけで特におかしい様子はない。
いや、あの得体の知れない"何か"自体がそもそもおかしいのだが。
どうするか・・・見た感じではあるが害は無さそうに見える。
あくまで俺の主観であるため実際には全然解らないが。
(思いきって近づいてみるか?)
あの存在を無視しても良いのだが、さすがにあんな得体の知れない塊を確認しておかないのは少し不安が残る。
俺は気配を消し、音を絶ち、姿勢を低くして草陰からゆっくりとその何かに近づいていく。
そのまま後ろからゆっくりと近づいて・・・
いや、ちょっとまて。俺が今見ているのはあの物体の後ろ姿なのか?そもそもあの物体に後ろや前、といったものはあるのか?
目や鼻、耳といったある程度の生物にあるはずの顔の部分が確認できない。
得体の知れない物体の、得体の知れなさを改めて認識した。何か外見的な特長は他に無いものか、そんな事を考えながらその物体をじっと観察していると―――
―――くるり
その物体が回った。
いや、これが生物だとするなら振り返った・・・か?
仮に生物だとして、今のが振り返る動作だとしてら今こいつと俺は対面している事になる。
「・・・・・・・」
今、謎のゼリー体に滅茶苦茶見られてる気がする。
目やその他の器官は確認できないが、しっかりと視線という気配を感じる。一体どこに目に該当する部分があるのかは、わからないが目と目が合ってるような気がする。
ヤバイ、俺が見ていたのは後ろ姿だったのか!?いや、今も後ろか前かはまったく解らないが。
現在進行形で謎のゼリー体と見つめ合っているが、敵意や悪意それこそ殺気といったものは一切感じとれない。
ならば野生の猫や犬にするように、ここは思いきってこちらも敵意が無い事を示してみよう。
低くした姿勢のまま利き手の右手ではなく、左手を自分の前に出す。一応、何があるか解らないので利き手は出さない事にした。そして目は謎のゼリー体を離す事なくじっと見つめ続ける。
1~2分程たった頃、謎のゼリー体に動きがあった。
なんと、謎のゼリー体が自分が出した左手に近づいてくるではないか!
内心ドキドキしながらその様子を、目を離さずに見続ける。
少しずつ左手と謎のゼリーの距離は縮まって行きやがて謎のゼリーが左手に触れる。
その時、俺の体に衝撃が走った。
「ッ――――!」
な、なんだこれは!程よくヒンヤリとした温度!
一見ヌメヌメしてそうな見た目に対し、実際に触れてみるとまるでサラッサラな水の塊を触っている様な手触り。そして何より、この弾力。とても言葉では言い表せないこの絶妙な柔らかさ。
「気持ちいい・・・・」
控えめに言って気持ちいい。
この世の物とは思えない感触に思わず声を漏らしてしまった。恐らく一生触っていても飽きない自信がある。
すっかりハマってしまった俺は、しばらく自分の手に伝わる気持ちよさを感じていた。
すると―――
―――スリスリ
なん・・・だと・・・?そんな事があり得るのか!
まだ出会って5分もたってないんだぞ!
確かに俺は昔から動物に最初は全く敵意を抱かない事から動物に好かれやすかった。
それが今回も良かったのかはわからない。
しかし俺は今現在この謎のゼリー体に頬ずりをされている。
謎のゼリー体がプルプルしている自分の体を、犬や猫が頬ズリする用に自分から俺の手にこすりつけてきている。
はっきり言って素晴らしい。こんなにも素晴らしい事が世の中にあったのか。
良くみたらとても可愛いではないか。うん、とても可愛い。決めたぞ。最早これがどのような存在であるかはどうでもいい。俺はこれを持ち帰る事に決めた。そのためには先ずはここを抜けなければいけないな。
両手で優しく掬い上げる様に持ち上げる。ボーリングの球ほどの大きさで、重さは5~6キロくらいだろうか。見た目より、重さを感じた。表面はツルツルしており、近くで見てもやはり目や鼻などの器官は確認できなかった。手に収まっているそれは、あいもからわずプルプルしているがそれが今ではいとおしく感じる。
「よーし、よしよしよしよしよしよしよし」
優しく克つ丁寧に撫でまくる。
そして手に乗せたそれの感触を十分に楽しみながら、森を抜ける為に再び歩きだした。
0
お気に入りに追加
145
あなたにおすすめの小説
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
地獄の手違いで殺されてしまったが、閻魔大王が愛猫と一緒にネット環境付きで異世界転生させてくれました。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作、面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
高橋翔は地獄の官吏のミスで寿命でもないのに殺されてしまった。だが流石に地獄の十王達だった。配下の失敗にいち早く気付き、本来なら地獄の泰広王(不動明王)だけが初七日に審理する場に、十王全員が勢揃いして善後策を協議する事になった。だが、流石の十王達でも、配下の失敗に気がつくのに六日掛かっていた、高橋翔の身体は既に焼かれて灰となっていた。高橋翔は閻魔大王たちを相手に交渉した。現世で残されていた寿命を異世界で全うさせてくれる事。どのような異世界であろうと、異世界間ネットスーパーを利用して元の生活水準を保証してくれる事。死ぬまでに得ていた貯金と家屋敷、死亡保険金を保証して異世界で使えるようにする事。更には異世界に行く前に地獄で鍛錬させてもらう事まで要求し、権利を勝ち取った。そのお陰で異世界では楽々に生きる事ができた。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。
貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する
美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」
御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。
ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。
✳︎不定期更新です。
21/12/17 1巻発売!
22/05/25 2巻発売!
コミカライズ決定!
20/11/19 HOTランキング1位
ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる