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第14話 命が絶えてもいい。貴方が生きられる世界を守れるなら
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「うわわわわわ」
熱い熱い熱い。体の芯から燃え上がる炎。魔力も吸い取られ力が暴走し、逆流する。
ラジエルが私のもとに駆け寄り、知恵の書を開く。
「無駄だよ。天使さんは介入できない。その子を殺してから男も殺してやる」
ウィントが私の火を消そうと腕に氷魔法をかけるが一瞬で砕け散る。
「殺しても何もない」
「天使さんには分からないよ。俺の悲しみが分かってたまるか」
炎はとどまる事を知らず、大きくなるばかり。
「ごめん」
私は、最期の力を振り絞って、城のどこかにいる彼女に問いかける。好きだと気が付いたときには既に遅くて、姿を消していた。こうなることを予測して逃げ出したのかもしれない。
天使は歌姫が好きだ。歌姫の歌声に合わせて踊り、楽器を奏でると聞いたことがある。ラジエルがカエル姿でも歌姫であるリテラスに丁寧だったのはそのためだ。
ミハエルの事も気が付かなかった。魔女の系譜を継いでいるだけでなく、魔女自身だった。城に忍び込む程の力の持ち主。
愛した人が振り向いてくれなかったから。
「ミハエルの、あほ」
馬鹿なことをするといつも怒ってきた。子供のころから一緒に居て、殺意を隠し通すほどに父上が憎かったのか。
意識が朦朧としてくる。目を開けているのがやっと。
炎が広がる。腕だけだったものが、全身に広がる。魔力を食いつぶし、輪廻転生へ戻れない様に魂までも焼き殺すつもりだ。
初めて会ったはずのウィントが私の名を呼んでいる気がする。ラジエルがハープを取り出すのが見える。
鎮魂歌の準備?早いよ。まだ、死んでない。死んでたまるもんか‼
☆★☆★☆(カエル視点)
怖くなった。私の力を知った人たちは目の色を変えて迫ってくる。
自国を捨て、己の国の繁栄のためだけに力を振るってほしい。
沢山の子供を産んで、力を利用して国のバランスを崩そうとする人。
優しく笑っているだけじゃ。守れなかった。何を言っていいのか分からなくて、黙っていると勘違いされる。
「貴方達、私を満足させられるの」
相手に侮られない様に強がっていたら“悪役王女”と呼ばれるようになっていった。本心を誰にも言えなくなって、私は益々強がるしかなかった。
「リテラスは世界一可愛い俺の姫だ」
兄様は昔から私の事を可愛がってくれていた。家臣達は私に甘い兄に対して辛辣だった。何か悪いことを吹き込まれていないか、他国にすら悪役王女と呼ばれている姫。権力を掲げ言い寄る男たちを手玉に取るお姫様。兄様が結婚できないのは私が邪魔だと。
政治的利用をしようと他国に縁談を持ちかけても噂が大きく、また歌姫としての能力を嫁いだ先で使ってくれるかと。
呪いをかけられたのは偶然だった。
朝起きるとカエルになっていて、直ぐに城中に駆け巡った情報。カエルの姿になった私は城に居るネズミなどとも会話ができるようになり『貴方がカエルになったことを喜んでいる人が多いわよ』と教えてもらった。
戻るか分からない呪い。“悪役王女”のレッテルの貼られた私がカエルになって、それでも愛してくれる人がいる?
カエルの声しか話せなくて、どうやって好きになってもらえばいい。今まで言い寄ってきた男たちは私の力があったから。
兄様だけがカエルの姿になった私にも優しかった。
きっともう呪いが解けないなら、一度会った彼に逢いに行きたい。
気づいてもらえなくてもいいから。残りの時間を穏やかに過ごしたくて。
ドン、と大きな物音がする。瘴気が漂うはずのない城に突如として現れた大きな影に私は城の後ろ手に会った池から顔を出す。
彼が怪我をした時に歌を歌った。久しぶりに聞く自分の声。
カエルと似つかわしくない、歌姫の声。歌姫だと分かれば私は追い出されるかもしれないと不安になり、私は彼の前から隠れてしまった。時折ラジエルが「考えすぎですよ」と言いに来てくれた。
音のする方向は城の中枢。瘴気の塊が何かをくるんでいる気配がした。
「ミシェル、様」
私は急いで竜が居る城の中枢に走り出した。
「消えゆく光、望まれるもの。愛しき我が子」
炎に包まれているミシェルの魂が消えかかかっているのを見て、私は癒しの歌を口ずさむ。
カエルの姿では消える彼の魂までも救い出すことはできない。何より、助けたとしても瘴気漂う者たちを片付けなければ。
ラジエルが一度だけ使えると言ってくれた私の力。
今使わないでいつ使うの?
「リテラス」
私はミシェルの隣に兄様が居るのに驚く。何も言わずに出てきたからいつかは見つかるかもと思っていたけど思っていたよりも早かった。
「兄様ごめんなさい」
あなたの名前に傷をつけていなくなる妹を許してください。
ラジエルが私の決意を感じ取ったのか手にハープを出現させる。
「微力ながら歌姫の補助をいたします」
「ありがとう」
彼が教えてくれた魔王復活を阻止する歌。
魔の者を消し去る唯一無二の歌を口ずさんだ。
歌うのが好きで、私は好きなことで誰かを救えることが嬉しかった。
喉が焼かれるように痛い。魔力が枯渇してゆくのが分かる。それでも歌い切らなければ。
「りてらす・・・」
彼が私の事を見つめる。
生きていた、私が子供の頃に傷つけた人。本音で話してくれないのが悲しくて嘘を付いた。
「ごめんなさい」
謝りたかった。許されることをしていない。深い傷を負わせてしまった。
「リテラス、居なくならないで」
擦れた声のミシェル。ごめんなさい、私は今あなたを助けられなかったら一生後悔する。カエルのままで隠れていれば逃げられたかもしれない。一国の姫として国民を守ることを約束した。歌姫の力に目覚め戦う力が増えた。
私が歌えばみんな笑ってくれるから。
はらりと、見慣れた髪が私の頬をかすめる。
呪いの解けるきっかけは真実の愛。
今の私を愛する人がいるの。
ラジエルは慌てて私に自分のショールをかける。
歌い始め、竜が苦しそうに空に炎を吐く。背に乗っている男は頭を押さえて呻きだした。
「こら、お前」
竜は一瞬光り輝くと、黒い鱗が白く変わり男を振り落とし空高く飛び立っていった。
落とされた男は浮遊しながら私たちと同じ場所に降り立つ。
ウィントが一瞬にして氷漬けにし、砕け散る。
「ミシェル様」
私はミシェルの傍に駆け寄る。一命は取り留めている。うっすらと開く瞳。ミシェルはまだ女性のまま。
「ミシェル様、勝手をする私をお許しください。私は初めて見た時から貴方の事をお慕いしておりました。恥ずかしさのあまり暴言を吐いたことをお許しください。そして歌姫として任務を全ういたします」
頬に唇を落とす。
「愛しております」
あなたが愛した世界を私は護る力を持っているから。
私は残る力を振り絞り瘴気の穴を塞ぐ歌を歌った。
熱い熱い熱い。体の芯から燃え上がる炎。魔力も吸い取られ力が暴走し、逆流する。
ラジエルが私のもとに駆け寄り、知恵の書を開く。
「無駄だよ。天使さんは介入できない。その子を殺してから男も殺してやる」
ウィントが私の火を消そうと腕に氷魔法をかけるが一瞬で砕け散る。
「殺しても何もない」
「天使さんには分からないよ。俺の悲しみが分かってたまるか」
炎はとどまる事を知らず、大きくなるばかり。
「ごめん」
私は、最期の力を振り絞って、城のどこかにいる彼女に問いかける。好きだと気が付いたときには既に遅くて、姿を消していた。こうなることを予測して逃げ出したのかもしれない。
天使は歌姫が好きだ。歌姫の歌声に合わせて踊り、楽器を奏でると聞いたことがある。ラジエルがカエル姿でも歌姫であるリテラスに丁寧だったのはそのためだ。
ミハエルの事も気が付かなかった。魔女の系譜を継いでいるだけでなく、魔女自身だった。城に忍び込む程の力の持ち主。
愛した人が振り向いてくれなかったから。
「ミハエルの、あほ」
馬鹿なことをするといつも怒ってきた。子供のころから一緒に居て、殺意を隠し通すほどに父上が憎かったのか。
意識が朦朧としてくる。目を開けているのがやっと。
炎が広がる。腕だけだったものが、全身に広がる。魔力を食いつぶし、輪廻転生へ戻れない様に魂までも焼き殺すつもりだ。
初めて会ったはずのウィントが私の名を呼んでいる気がする。ラジエルがハープを取り出すのが見える。
鎮魂歌の準備?早いよ。まだ、死んでない。死んでたまるもんか‼
☆★☆★☆(カエル視点)
怖くなった。私の力を知った人たちは目の色を変えて迫ってくる。
自国を捨て、己の国の繁栄のためだけに力を振るってほしい。
沢山の子供を産んで、力を利用して国のバランスを崩そうとする人。
優しく笑っているだけじゃ。守れなかった。何を言っていいのか分からなくて、黙っていると勘違いされる。
「貴方達、私を満足させられるの」
相手に侮られない様に強がっていたら“悪役王女”と呼ばれるようになっていった。本心を誰にも言えなくなって、私は益々強がるしかなかった。
「リテラスは世界一可愛い俺の姫だ」
兄様は昔から私の事を可愛がってくれていた。家臣達は私に甘い兄に対して辛辣だった。何か悪いことを吹き込まれていないか、他国にすら悪役王女と呼ばれている姫。権力を掲げ言い寄る男たちを手玉に取るお姫様。兄様が結婚できないのは私が邪魔だと。
政治的利用をしようと他国に縁談を持ちかけても噂が大きく、また歌姫としての能力を嫁いだ先で使ってくれるかと。
呪いをかけられたのは偶然だった。
朝起きるとカエルになっていて、直ぐに城中に駆け巡った情報。カエルの姿になった私は城に居るネズミなどとも会話ができるようになり『貴方がカエルになったことを喜んでいる人が多いわよ』と教えてもらった。
戻るか分からない呪い。“悪役王女”のレッテルの貼られた私がカエルになって、それでも愛してくれる人がいる?
カエルの声しか話せなくて、どうやって好きになってもらえばいい。今まで言い寄ってきた男たちは私の力があったから。
兄様だけがカエルの姿になった私にも優しかった。
きっともう呪いが解けないなら、一度会った彼に逢いに行きたい。
気づいてもらえなくてもいいから。残りの時間を穏やかに過ごしたくて。
ドン、と大きな物音がする。瘴気が漂うはずのない城に突如として現れた大きな影に私は城の後ろ手に会った池から顔を出す。
彼が怪我をした時に歌を歌った。久しぶりに聞く自分の声。
カエルと似つかわしくない、歌姫の声。歌姫だと分かれば私は追い出されるかもしれないと不安になり、私は彼の前から隠れてしまった。時折ラジエルが「考えすぎですよ」と言いに来てくれた。
音のする方向は城の中枢。瘴気の塊が何かをくるんでいる気配がした。
「ミシェル、様」
私は急いで竜が居る城の中枢に走り出した。
「消えゆく光、望まれるもの。愛しき我が子」
炎に包まれているミシェルの魂が消えかかかっているのを見て、私は癒しの歌を口ずさむ。
カエルの姿では消える彼の魂までも救い出すことはできない。何より、助けたとしても瘴気漂う者たちを片付けなければ。
ラジエルが一度だけ使えると言ってくれた私の力。
今使わないでいつ使うの?
「リテラス」
私はミシェルの隣に兄様が居るのに驚く。何も言わずに出てきたからいつかは見つかるかもと思っていたけど思っていたよりも早かった。
「兄様ごめんなさい」
あなたの名前に傷をつけていなくなる妹を許してください。
ラジエルが私の決意を感じ取ったのか手にハープを出現させる。
「微力ながら歌姫の補助をいたします」
「ありがとう」
彼が教えてくれた魔王復活を阻止する歌。
魔の者を消し去る唯一無二の歌を口ずさんだ。
歌うのが好きで、私は好きなことで誰かを救えることが嬉しかった。
喉が焼かれるように痛い。魔力が枯渇してゆくのが分かる。それでも歌い切らなければ。
「りてらす・・・」
彼が私の事を見つめる。
生きていた、私が子供の頃に傷つけた人。本音で話してくれないのが悲しくて嘘を付いた。
「ごめんなさい」
謝りたかった。許されることをしていない。深い傷を負わせてしまった。
「リテラス、居なくならないで」
擦れた声のミシェル。ごめんなさい、私は今あなたを助けられなかったら一生後悔する。カエルのままで隠れていれば逃げられたかもしれない。一国の姫として国民を守ることを約束した。歌姫の力に目覚め戦う力が増えた。
私が歌えばみんな笑ってくれるから。
はらりと、見慣れた髪が私の頬をかすめる。
呪いの解けるきっかけは真実の愛。
今の私を愛する人がいるの。
ラジエルは慌てて私に自分のショールをかける。
歌い始め、竜が苦しそうに空に炎を吐く。背に乗っている男は頭を押さえて呻きだした。
「こら、お前」
竜は一瞬光り輝くと、黒い鱗が白く変わり男を振り落とし空高く飛び立っていった。
落とされた男は浮遊しながら私たちと同じ場所に降り立つ。
ウィントが一瞬にして氷漬けにし、砕け散る。
「ミシェル様」
私はミシェルの傍に駆け寄る。一命は取り留めている。うっすらと開く瞳。ミシェルはまだ女性のまま。
「ミシェル様、勝手をする私をお許しください。私は初めて見た時から貴方の事をお慕いしておりました。恥ずかしさのあまり暴言を吐いたことをお許しください。そして歌姫として任務を全ういたします」
頬に唇を落とす。
「愛しております」
あなたが愛した世界を私は護る力を持っているから。
私は残る力を振り絞り瘴気の穴を塞ぐ歌を歌った。
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