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第1話 ゲコゲコゲコと鳴くことしかできません
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子供の頃に一度だけあったことのある王子。他に兄弟もいなくて大切に、大切に育てられていた。私と真逆の環境に勝手に嫉妬して、私は彼に暴言を吐いたのを覚えている。
「貴方、本当は愛されていないのよ」
後に自分には神様から特別な力【ギフト】を授かっていたことを知る。世界中を見ても力を持っている人は稀で私の力は秘匿された。
特別な力を持っている私も蛙になる呪いを掛けられたのだから、世界って残酷私が王子に力のある言霊をかけたから、報いがきたの?
私の言葉に王子は泣きながら走り去った。
時が過ぎ、私は悪役王女と呼ばれるようになっていた。素直に慣れない私の本心を誰も知らなくて、気がつけば魔女に呪いをかけられていた。魔女の息子に対して私が酷いセリフを言ってしまった。誰に対しても素直に会話ができないから、誰に対して言ったのか覚えていない。
(蛙に姿を変えられた、だなんて誰にも分からない。言葉を発することも封じられちゃったし。最後に彼の姿を一目見たくて来ただけだったのに)
魔女に呪いをかけられてしまい、戻れる保証がないから、最後に初恋の男の子に会いたくて、彼の城に忍び込んできた。どこの城にも悪意のあるものが入り込めない魔法がかけてあるのだけど、私は彼に会いたい一心だったから、入り込めたのかもしれない。蛙になってしまったせいで、人間だった頃に使えた魔術は当然使えない。
(彼、一人っ子だったはずよね?そう言えばどこかの国の王子が、姿を消してしまって、代わりに姫が現れたって言われていたような・・・)
彼、いや目の前にいるのは女性だ。彼女は彼と瓜二つの顔をして、女性らしい体格で、私のことを見た。蛙のことなんて人は毛嫌いしているのに、彼女は私に手を伸ばしてきた。
「迷い込むなんてすごいな」
猫や犬ならまだしも、爬虫類に躊躇いもなく手を伸ばす彼女。寂しそうに私のことを手のひらに載せる。
「誕生日までに呪いが解けなかったら、女のままで、素直に気持ちも伝えられない魔法かけられている俺のことを好きになる人なんか居るのかよ」
見目麗しい彼女には似つかわしくない言葉遣い。彼に似ている容姿。
呪いと言った、私は顔を覗き込むように真っ直ぐ見つめた。
「誰も俺のことを愛してくれていない、彼女の予言は的中だな。呪いが解けなかったとしても、素直になれない呪いのせいで、家臣達、メイドにすら話すことができない。人に話せない呪いやめてくれよ」
今の私は蛙。元人間と言えばいいのかな。彼女は、私の探し求めていた彼。
彼もまた呪いがかけられていた。
女になる呪い。
王子がいなくなってから現れた姫は大層口が悪いと言っていたのはそれが、原因なのね。
私は蛙だから、あなたのそばにいるわ。
きっと、長くは一緒に居られないけど、心の支えになれれば。
軽い気持ちで会いにきたのに、まさか秘密を知ることになるとは。蛙にならなかったら、強いることができなかった。人じゃないから、本心が聞ける。
「ゲコゲコ」
私はそばにいるよと、そっと彼女の手に寄り添う。
目を細めた彼女の笑顔は記憶にある、優しいあの笑顔。
私が泣かせた顔とは違うもの。
「不思議な蛙。父上が俺に呪いがかけられてから、虫一匹入り込めなくなっていたのに」
手に顔をすり寄せても嫌がる素振りをしない彼女。
「側に居てくれるの?」
言葉が通じないはずなのに、彼女は私のことを優しく抱きしめた。
「貴方、本当は愛されていないのよ」
後に自分には神様から特別な力【ギフト】を授かっていたことを知る。世界中を見ても力を持っている人は稀で私の力は秘匿された。
特別な力を持っている私も蛙になる呪いを掛けられたのだから、世界って残酷私が王子に力のある言霊をかけたから、報いがきたの?
私の言葉に王子は泣きながら走り去った。
時が過ぎ、私は悪役王女と呼ばれるようになっていた。素直に慣れない私の本心を誰も知らなくて、気がつけば魔女に呪いをかけられていた。魔女の息子に対して私が酷いセリフを言ってしまった。誰に対しても素直に会話ができないから、誰に対して言ったのか覚えていない。
(蛙に姿を変えられた、だなんて誰にも分からない。言葉を発することも封じられちゃったし。最後に彼の姿を一目見たくて来ただけだったのに)
魔女に呪いをかけられてしまい、戻れる保証がないから、最後に初恋の男の子に会いたくて、彼の城に忍び込んできた。どこの城にも悪意のあるものが入り込めない魔法がかけてあるのだけど、私は彼に会いたい一心だったから、入り込めたのかもしれない。蛙になってしまったせいで、人間だった頃に使えた魔術は当然使えない。
(彼、一人っ子だったはずよね?そう言えばどこかの国の王子が、姿を消してしまって、代わりに姫が現れたって言われていたような・・・)
彼、いや目の前にいるのは女性だ。彼女は彼と瓜二つの顔をして、女性らしい体格で、私のことを見た。蛙のことなんて人は毛嫌いしているのに、彼女は私に手を伸ばしてきた。
「迷い込むなんてすごいな」
猫や犬ならまだしも、爬虫類に躊躇いもなく手を伸ばす彼女。寂しそうに私のことを手のひらに載せる。
「誕生日までに呪いが解けなかったら、女のままで、素直に気持ちも伝えられない魔法かけられている俺のことを好きになる人なんか居るのかよ」
見目麗しい彼女には似つかわしくない言葉遣い。彼に似ている容姿。
呪いと言った、私は顔を覗き込むように真っ直ぐ見つめた。
「誰も俺のことを愛してくれていない、彼女の予言は的中だな。呪いが解けなかったとしても、素直になれない呪いのせいで、家臣達、メイドにすら話すことができない。人に話せない呪いやめてくれよ」
今の私は蛙。元人間と言えばいいのかな。彼女は、私の探し求めていた彼。
彼もまた呪いがかけられていた。
女になる呪い。
王子がいなくなってから現れた姫は大層口が悪いと言っていたのはそれが、原因なのね。
私は蛙だから、あなたのそばにいるわ。
きっと、長くは一緒に居られないけど、心の支えになれれば。
軽い気持ちで会いにきたのに、まさか秘密を知ることになるとは。蛙にならなかったら、強いることができなかった。人じゃないから、本心が聞ける。
「ゲコゲコ」
私はそばにいるよと、そっと彼女の手に寄り添う。
目を細めた彼女の笑顔は記憶にある、優しいあの笑顔。
私が泣かせた顔とは違うもの。
「不思議な蛙。父上が俺に呪いがかけられてから、虫一匹入り込めなくなっていたのに」
手に顔をすり寄せても嫌がる素振りをしない彼女。
「側に居てくれるの?」
言葉が通じないはずなのに、彼女は私のことを優しく抱きしめた。
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