Star Ocean 1章 〜誇り高き血統の鎖〜

はぐれ

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11話 ブレイズ・インフェルノが来るその①

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「俺はジャック、コイツはロード」
「で、お前、結局何者?」
 噴水の水が水面に当たって飛び散ってくる。
「だから、エンリオ、ただのエンリオ」
「答えになってないぞ」
 ジャックは、立ち上がると、ポケットにしまっていた地図を開く。
「あ、そうだ、俺もついて行くよ。水の補充しに行かないといけないから」
 ロードは、破けた布袋を見つめて言う。
「分かった。とりあえずエンリオをどこかで、保護してもらうしか…」
「嫌だ。俺もついて行く!」
「はあ?何言ってんだ」
 エンリオは、さっき、店で買った、飴缶を    口元に寄せて、舌を出す。
「まあ、でも戦力になるのは、確かだ」
 ジャックは、エンリオの缶を取り上げて、開け忘れてた蓋を開けてやった。
「とりあえず、能力を具体的に教えてくれ」
「いいぜ!俺の能力は、ハザード・クラッシャー、殴ったもの全てを砕く。単純だろ?」
 単純と言うよりチートだ。
 普通そういうのは、主人公が持つものではないだろうか。
「でも、身元が分からねぇと、連れていきたくても、連れて行けねぇよ」
「そうだな。お前、マカリスターとか言う姓だったよな」
 何故かジャックには、聞き覚えがあった。
だが、その姓は、とんでもない家柄だった。
「マカリスターって王家の姓じゃなかったっけ?…」
 体の芯から震えた。
 目の前に近づくのも恐れ多い、王家の血統の者がいるのだ。
 つまり、ジャックは、コイツの支配下にいるのだ。
「嘘だろ…」
 頭を抱えた。どうりで大金かけられてるわけだ。
 多分、明日の新聞記事の見出しは、「2人組の男が王の親族を誘拐!」で決まりだろう。
「王って本当にいたのか。」
 実は庶民はこの反応が正解だったりする。
 庶民の大半は王の存在を疑っている。ここ4000年、庶民の前に姿を表していないのだ。中には大統領が、最高の位だと思うものや、王を神の様に扱う者もいる。
 だが、貴族はどんなに、オーリン家のような下級でも、1度は挨拶に行かなくてはならない。
「で、王家では、どの立ち位置?」
 王家と言っても意外と血統は広い、そんなに上級層でもないだろう。
「王子だ。」
はい、人生詰んだ。俺達は、人生始まって16年しか経ってないのに、王子を誘拐した。と言うより着いてきたんだが。
「まあ、とりあえず道場に帰ろう」

 妙だ道場の扉の鍵が壊れている。
 道場の扉を開くと、奥の部屋の電気が着いていた。
そこはもう、朝に見た道場ではなかった。
 床には、所々穴が空いていて、壁もボロボロ、何故か、焦げ跡みたいなのもあった。
 何者かがこの道場を襲撃したのは、言わなくても理解出来た。
「おい!じじい!返事しろよ!」
 いくら聞いても、返事は帰ってこない。
「リムットさん!」
 3人は奥の部屋へ走った。そこで待っていたのは、床に座り、壁を背もたれにして、目に光を失っているリムットだった。
 エンリオは黙っている。口が開かないのだ。開いたら恐怖で今にも吐きそうだったのだ。
リムットの腹部には何か、強い力で開けられた穴があった。何故か、そこには、少し焦げ目がついていて、少し湿っていた。
「湿ってる、そして、焦げている。誰かが、燃え移らないように水をかけたんだ」
 「じじい…」
ロードの目からは涙がこぼれた。
「何故、これほどまでの人間があっさりと。」





これは、4時間ほど前の話だ。
 リムットは、いつも通り奥の部屋で本を読んでいた。本は、老後の楽しみだった。
「もう読み終わってしまったか。」
 本を閉じると、読み終わった本を積み上げている所の一番上に乗せた。
「それにしても、遅いな。ジャックはロードに会えたんじゃろうか。」
 少し心配ではあったのだ。
「少し、探しに行くか。」
 リムットが、部屋から出ると、異変を感じた。
──ジャックとロードに、何かあったのか? 波動が異常な反応をしている。──
 焦れば焦るほど汗が垂れる。
──違う!危機が迫ってるのは、わしじゃ!──
 咄嗟に振りかえるが間に合わなかった。
 敵の拳は、もう自分の腹部を貫いていた。
 その的は炎をまとっていて、顔は見えないし、身長も正確には、確認できない。奴が
 拳を抜くと、追い打ちを開けるように殴り続けた。壁や床に殴り飛ばされる。
 意識がもうろうとしている中、リムットは床を這いながら奥の部屋へ向かう。




 若き日のリムットは困っていた。
「なぁ、おっちゃん、このリンゴもっと安くなんねぇ?」
「あぁ?54クレジットだぜ?これ以上は、流石によぉ」
 商人と割引の商談をしていると、後ろから肩を叩かれる。
「あんたがオーガスタスさん?」
──なんだ?この人、あったことあったかな?
「悪いんだが、どなたでしたっけ?」
 苦笑いすると彼は答えた。
「初対面ですよ。」
 自分も苦笑いすると要件を聞いた。
「えーっと、なんの用かな」
風向きが変わった。
「聞きたいんだ。何故君は、そこまでして彼を助けようをする。」
 その瞬間、白黒の世界に変わった。周りの人々が次々に消えていく。段々、きりも強くなってくる。
──そうだ、思い出した。俺は…俺は死んだんだ。──
「正直、来て欲しくなかったな、親父。」
目の前の男の顔のモヤが消えていく。その顔は、早くして死んだ、自分の息子、リアイガだった。
「ごめんな、守れなかったよ。お前の息子」
 灰色の空を見つめると、自然と涙が溢れた。
「謝るのはこっちさ、俺なんて、ロードが   
 生まれてから直ぐに妻と息子残して、馬にひかれて死ぬなんてな」
「だから、俺は戻らないと」
 そう言って、向こうへ戻ろうとすると、リアイガは、リムットの腕を掴んで離さなかった。
「もう、帰り道はないんだよ親父」
「何を言って…」
「もう来るところまで来たんだよ」
 言い返すことが出来なかった。もう歳だった、ここが天国か地獄かは、分からないが とりあえず、あの世ということは理解していた。
 「けどな、俺は、まだやり残したことがある」
「はぁ、仕方ない人だ。一瞬だけな」
「リアイド、俺は、ロードの為に死ぬなら本望だ。」
リムットは走った。そこはいつの間にか、  道場になっていて、腹部には穴が空いている。意識が戻ったのだ。
床を這って、部屋に入る。リムットは何かを掴んで、壁にもたれてもう、動くことは無かった。

──リムット・オーガスタス(76)1865年 8月7日 自宅兼道場の自室にて死亡──

 その手にはロードが幼い頃に描いた似顔絵があった。
 絶対に離さない様にぎゅっと強く握りしめていた。
後悔は、もう無かった。


「先を急ごう」
ロードには、もう悲しみはなかった。前へと進む心を見た気がした。
「襲撃者とは、いずれ会うだろう。明日の8時15分の蒸気機関車に乗車するぞ!」
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