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[30]終焉~エンドゲーム~
-333-:世の中、実行してみなければ、解らない事もあるんだよ
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緑色に光り輝くガラス片のようなものが、チラチラと雪のように上空から舞い落ちてくる。
正確には、一度上空へと吹き上げられたものが、時間を経て舞い落ちているだけ。
巨大なクレーターの中心部に、脚を開いた状態で座す盤上戦騎。
合体魔神コントラストが擱座というカタチで座していた。
ガコンガラン。
音を立てて肩関節から両腕崩れ落ちた。
そして頭上より、千年狐狸精・妲己の両脚が、それぞれ時間差を経て落ちてきた。
どちらの脚もすでにボロボロで、再生ケーブルがまるでおでんに入っている白滝のようにダラリと伸びたまま機能していない。
上下の体勢にありながらも、互いの頬を寄せ合っているコントラストと妲己。
両騎体のあちこちから煙が立ち上っては、所々が音を立てて崩れ落ちてゆく。
コントラストのコクピット内では、ディスプレー画面の至るところに穴が空いてしまい、所々視界を失っている。
おまけに穴からは時折バチッと音を立てて火花が散っている。
先程まで頭を抱えていたタツローが手を解いて顔を上げた。
と、身体のあちこちを確認。
安堵の溜息が漏れる。
奇跡的にもケガは負ってはいないようだ。
クレハが妲己に関節技を決め、最初こそワクワクが止まらなかったが、スラスター全開で地上へと近づくと共に、次第に不安になり、アンデスィデ開始早々に脱いでいたヘルメットを再び着用した。
恥ずかしながら告白するのなら、クレハのパイロットスーツ(魔法少女風)には頭を守るヘルメットが存在せずに、同じ騎体に搭乗しておきながら、自分だけ被っているのは気が引けるとの理由で脱いでいた。だが、やはり自分可愛さのあまり、とうとう着用、完全防備を整えていた。
お尻から地上に衝突した瞬間、上下逆さに雷が落ちた感覚に襲われた。
ハッと気が付いて、後ろを振り向きヒューゴとクレハの無事を確認する。
ハンドグリップを握るヒューゴの手には未だ力が込められ、入り過ぎた力は震えとなって表れている。
「タカサゴ…」
ヒューゴの背からクレハが顔を覗かせた。
そんなクレハに顔を向けようとせず、ヒューゴは未だ正面を向いたまま。
「し、死ぬかと思った…マジで」
ヒューゴの第一声であった。
彼もまた、クレハが妲己に関節技を決めた瞬間、きっとアノ技を出すのだろうと気構えは出来ていたのだが、まさかスラスターを全開!加速するとまでは想像していなかった。
技が決まった瞬間、コクピット内がひっくり返るほどに激しく揺れた。
一瞬であったが、ヴァルハラに召されたかと思った。
「クレハさん…今の…何かスゴい技を繰り出すのかと期待していたのに、ただの自滅技じゃないですか」
何も責めている訳では無い。
ただ、まさか共倒れしかねない大技を繰り出すとは夢にも思っていなかっただけ。
「何故バスターでいった?ドライバーなら完全勝利だったぞ…」
元ネタを知る者なら、誰もが思う。
ヒューゴもクレハが自滅技を繰り出すとは思っていなかったらしい。
チュンッ!と顔の横で火花が飛ぶ。
クレハは思わず顔を背けた。
「8重に敷いた浮遊素の場を突き破り、さらにこれ程までの巨大なクレーターを作ってしまうような超破壊力…。鈴木・くれは…。お前は私たちをも殺す気か?」
感嘆と驚愕の入り混じったコールブランドからのクレーム。
クレハ自身、これほどまでに強力な技とは思ってもいなかった。
プロレス漫画の技を、実際に使った事は無いけれど、盤上戦騎でなら使えるのでは?との安易な発想で使ってみたら、このザマでした。
妲己の騎体を再生不可能なまでに全身に大ダメージを与えてやったまでは良かったが。
まさか…共にダメージを食らうとは。
しかも、こちらもほぼ全壊のダメージを負っている。
根本的に防御力が足りなかったのだ。
結論を言えば。
やっぱ“正義超人じゃなきゃムリな技だわ”。
理解すると共に、深く反省。
付け加えるのなら。
“火事場のクソ力”を出し過ぎた。
願わくば、たった一つ。ひとつだけ反論させて欲しい。
世の中、実行してみなければ、解らない事もあるんだよ。
「やっ…て・・くれた・・ね。クレ・・ハ…」
ジョーカーの声が聞こえてきた。
随分と苦しそうな声。
考えてもみれば当然と言える。
何せ彼女は、盤上戦騎の妲己と同化しているのだから。
「観念なさいな、ジョーカー。妲己の騎体ダメージはもう60%以上に届こうとしているわ。今ここで、リョーマくんがガトリングガンを発射したら、貴女はお終い」
ほぼ勝敗は決していた。
ダナの両肩のガトリングガンが妲己へと向けられる。
組み合った状態にある自分たちにだけは、誤っても撃ってくれるなよ。と、ついつい思いながら。
「ジョーカー。貴女の願いを聞き入れてあげる事は出来ないけれど、最後に何か言っておきたい事はある?」
散々手こずらせてくれた相手だったが、これくらいの事はしてやろう。
せめてもの情けじゃ。
瞬間!
バーンッ!!と妲己の胸部が弾けた。
弾けたと言うよりも、内部から爆発したという方が妥当なくらい激しい爆発が起きた。
すると、人間の姿をしたジョーカーが転げるようにして、コクピットから落ちてきた。
両騎体のあちこちに当りながらの落下。
全身打撲だらけの身体がコントラストの胸部に叩き付けられた。
うつ伏せの体勢のまま、微かに動くジョーカーの身体。だけど、相当ダメージを負っているようで、上体すら起こせないらしい。
そんなジョーカーをコントラストの顔を向けてディスプレーに捉える。
「く・くく・・く」
微かに聞こえてくる笑い声。
コントラストの胸部に這いつくばるようにして倒れ伏すジョーカーから聞えてくる。
「な、何が可笑しいの?」
訊ねながらも、クレハはどこか胸騒ぎを覚えた。
あれほどまでに瀕死の身体の彼女に、一体何が出来ようか?
不気味だ。
「皆様、しばらくの間、目を閉じては頂けませんか」
突然の、コールブランドからのお願い。
すると。
「私からもお願いします。ヒューゴ。それにクレハ、タツロー」
ベルタからもお願いされ、3人は「終わったら教えてね」告げて素直に目を閉じた。
ガァァァンッ!!
またもや騎体がひっくり返るのでは?と思えるほどの強い衝撃がコクピット内に走った。
ヒューゴは危うくバイクシートから転げ落ちそうになり、クレハはヒューゴの背に顔面を思いっきりぶつけてしまった。
鼻血が出なかったのが不思議なくらい、今でもジンジンと鼻が痛む。
「一体ナニをやってんのよォ!アンタたち!」
遂には、コールブランドとベルタに文句を垂れる。
「こちらの用件は済みました。皆様、目をお開けになっても構いませんよ」
言われるまでも無く、クレハは目を開けて正面ディスプレーに目をやった。
とたん、息を呑んだ。
放射線状に飛び散る血痕に、思わず吐き気をもよおす。
正確には、一度上空へと吹き上げられたものが、時間を経て舞い落ちているだけ。
巨大なクレーターの中心部に、脚を開いた状態で座す盤上戦騎。
合体魔神コントラストが擱座というカタチで座していた。
ガコンガラン。
音を立てて肩関節から両腕崩れ落ちた。
そして頭上より、千年狐狸精・妲己の両脚が、それぞれ時間差を経て落ちてきた。
どちらの脚もすでにボロボロで、再生ケーブルがまるでおでんに入っている白滝のようにダラリと伸びたまま機能していない。
上下の体勢にありながらも、互いの頬を寄せ合っているコントラストと妲己。
両騎体のあちこちから煙が立ち上っては、所々が音を立てて崩れ落ちてゆく。
コントラストのコクピット内では、ディスプレー画面の至るところに穴が空いてしまい、所々視界を失っている。
おまけに穴からは時折バチッと音を立てて火花が散っている。
先程まで頭を抱えていたタツローが手を解いて顔を上げた。
と、身体のあちこちを確認。
安堵の溜息が漏れる。
奇跡的にもケガは負ってはいないようだ。
クレハが妲己に関節技を決め、最初こそワクワクが止まらなかったが、スラスター全開で地上へと近づくと共に、次第に不安になり、アンデスィデ開始早々に脱いでいたヘルメットを再び着用した。
恥ずかしながら告白するのなら、クレハのパイロットスーツ(魔法少女風)には頭を守るヘルメットが存在せずに、同じ騎体に搭乗しておきながら、自分だけ被っているのは気が引けるとの理由で脱いでいた。だが、やはり自分可愛さのあまり、とうとう着用、完全防備を整えていた。
お尻から地上に衝突した瞬間、上下逆さに雷が落ちた感覚に襲われた。
ハッと気が付いて、後ろを振り向きヒューゴとクレハの無事を確認する。
ハンドグリップを握るヒューゴの手には未だ力が込められ、入り過ぎた力は震えとなって表れている。
「タカサゴ…」
ヒューゴの背からクレハが顔を覗かせた。
そんなクレハに顔を向けようとせず、ヒューゴは未だ正面を向いたまま。
「し、死ぬかと思った…マジで」
ヒューゴの第一声であった。
彼もまた、クレハが妲己に関節技を決めた瞬間、きっとアノ技を出すのだろうと気構えは出来ていたのだが、まさかスラスターを全開!加速するとまでは想像していなかった。
技が決まった瞬間、コクピット内がひっくり返るほどに激しく揺れた。
一瞬であったが、ヴァルハラに召されたかと思った。
「クレハさん…今の…何かスゴい技を繰り出すのかと期待していたのに、ただの自滅技じゃないですか」
何も責めている訳では無い。
ただ、まさか共倒れしかねない大技を繰り出すとは夢にも思っていなかっただけ。
「何故バスターでいった?ドライバーなら完全勝利だったぞ…」
元ネタを知る者なら、誰もが思う。
ヒューゴもクレハが自滅技を繰り出すとは思っていなかったらしい。
チュンッ!と顔の横で火花が飛ぶ。
クレハは思わず顔を背けた。
「8重に敷いた浮遊素の場を突き破り、さらにこれ程までの巨大なクレーターを作ってしまうような超破壊力…。鈴木・くれは…。お前は私たちをも殺す気か?」
感嘆と驚愕の入り混じったコールブランドからのクレーム。
クレハ自身、これほどまでに強力な技とは思ってもいなかった。
プロレス漫画の技を、実際に使った事は無いけれど、盤上戦騎でなら使えるのでは?との安易な発想で使ってみたら、このザマでした。
妲己の騎体を再生不可能なまでに全身に大ダメージを与えてやったまでは良かったが。
まさか…共にダメージを食らうとは。
しかも、こちらもほぼ全壊のダメージを負っている。
根本的に防御力が足りなかったのだ。
結論を言えば。
やっぱ“正義超人じゃなきゃムリな技だわ”。
理解すると共に、深く反省。
付け加えるのなら。
“火事場のクソ力”を出し過ぎた。
願わくば、たった一つ。ひとつだけ反論させて欲しい。
世の中、実行してみなければ、解らない事もあるんだよ。
「やっ…て・・くれた・・ね。クレ・・ハ…」
ジョーカーの声が聞こえてきた。
随分と苦しそうな声。
考えてもみれば当然と言える。
何せ彼女は、盤上戦騎の妲己と同化しているのだから。
「観念なさいな、ジョーカー。妲己の騎体ダメージはもう60%以上に届こうとしているわ。今ここで、リョーマくんがガトリングガンを発射したら、貴女はお終い」
ほぼ勝敗は決していた。
ダナの両肩のガトリングガンが妲己へと向けられる。
組み合った状態にある自分たちにだけは、誤っても撃ってくれるなよ。と、ついつい思いながら。
「ジョーカー。貴女の願いを聞き入れてあげる事は出来ないけれど、最後に何か言っておきたい事はある?」
散々手こずらせてくれた相手だったが、これくらいの事はしてやろう。
せめてもの情けじゃ。
瞬間!
バーンッ!!と妲己の胸部が弾けた。
弾けたと言うよりも、内部から爆発したという方が妥当なくらい激しい爆発が起きた。
すると、人間の姿をしたジョーカーが転げるようにして、コクピットから落ちてきた。
両騎体のあちこちに当りながらの落下。
全身打撲だらけの身体がコントラストの胸部に叩き付けられた。
うつ伏せの体勢のまま、微かに動くジョーカーの身体。だけど、相当ダメージを負っているようで、上体すら起こせないらしい。
そんなジョーカーをコントラストの顔を向けてディスプレーに捉える。
「く・くく・・く」
微かに聞こえてくる笑い声。
コントラストの胸部に這いつくばるようにして倒れ伏すジョーカーから聞えてくる。
「な、何が可笑しいの?」
訊ねながらも、クレハはどこか胸騒ぎを覚えた。
あれほどまでに瀕死の身体の彼女に、一体何が出来ようか?
不気味だ。
「皆様、しばらくの間、目を閉じては頂けませんか」
突然の、コールブランドからのお願い。
すると。
「私からもお願いします。ヒューゴ。それにクレハ、タツロー」
ベルタからもお願いされ、3人は「終わったら教えてね」告げて素直に目を閉じた。
ガァァァンッ!!
またもや騎体がひっくり返るのでは?と思えるほどの強い衝撃がコクピット内に走った。
ヒューゴは危うくバイクシートから転げ落ちそうになり、クレハはヒューゴの背に顔面を思いっきりぶつけてしまった。
鼻血が出なかったのが不思議なくらい、今でもジンジンと鼻が痛む。
「一体ナニをやってんのよォ!アンタたち!」
遂には、コールブランドとベルタに文句を垂れる。
「こちらの用件は済みました。皆様、目をお開けになっても構いませんよ」
言われるまでも無く、クレハは目を開けて正面ディスプレーに目をやった。
とたん、息を呑んだ。
放射線状に飛び散る血痕に、思わず吐き気をもよおす。
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