340 / 351
[30]終焉~エンドゲーム~
-331-:オープン回線でそのような発言はお控え下さい
しおりを挟む
思いがけない告白を受けて、クレハは顔を真っ赤に染めた。
それに加えて、コントラストのコクピット内には二人の他に、タツローと女王の駒と化した妲己までいる。
まさに顔から火が出そうな状況。
「も、もう知らない!!」
堪えきれずにヒューゴの背に顔を埋めてしまった。
「うぬらはこの状況で何をちちくり合っておるのだ」
ノブナガから注意を促されてしまった。だけど。
「お前には言われたくないわッ!」
クレハとヒューゴ、二人して声をハモらせながらの反論。
パーティーの夜、散々キョウコとの仲を見せつけてくれたノブナガにだけは心底言われたくない。
「次はアナタの番ね。クィックフォワード」
起きてきたアーマーテイカーがクィックフォワードの耳元で、そっと告げる。
そんな彼の言葉を受けるも、クィクフォワードは我が手を見つめ。
「今はまだ…。だが、いつか彼女を追い抜く時が来たら、その時は胸を張って彼女に…」
決意を固めるように、我が手を握りしめる。
「だけど、それまでにリョーマくんにダナを奪われちゃうわよ。あの二人、結構良い仲みたいだし」
期が熟すのを待つクィックフォワードを急き立てる。
「その心配は要りませんよ。アーマーテイカーさん」
ココミの声へと、二人は向いた。
「ダナさんは、種族を超えて交配できる龍ではありますが、そこのところはキッチリと弁えておられますよ」
いきなりのココミの発言に慌てたアーマーテイカーが、飛びつくようにして開いた魔導書を閉じてしまった。
「ココミ様、オープン回線でそのような発言はお控え下さい。ダナの人格に関わりますよ」
至らぬところを指摘されて、ココミは自らの過ちに気付いて舌を出した。
相手が見えぬ状況であろうと、ココミの事だから、きっとテヘペロしているのだろうと、クレハの想像は見事に的中していた。
「ダナさんは、あくまでもリョーマさんとの関係を主従の関係として線引きなさっています。例えリョーマさんの心がダナさんに傾いていようとも、彼女はその想いに応える事は無いでしょう」
普段の二人を見ている限り、彼らがそんなにドライになるとは、とても思えない。
むしろ結ばれぬ恋と知りながら、互いに心を通わせているようにうかがえる。
そんな二人を、アーマーテイカーは不憫に感じていた。と同時に、恋敵であるクィックフォワードの心境を考えると複雑な気分になってしまう。
三角関係とは、どうにも応援し難いものだと。
そして、ココミを見ていると、同じ心境に至ってしまう。
「ココミ様…」
声を掛けておきながら、言葉を詰まらせてしまった。
ココミの、高砂・飛遊午に対する気持ちを思うと、どうしてもその先の言葉が出て来ない。
二人の魔者と契約を結ばせる。
マスターの命を削ってしまうと解っていても、唯一頼れる存在として全てを任せてしまったあの時、彼女の心に気付いてしまった。
アーマーテイカー自身、まだあの時はただのチェスの駒でしかなかったが、本の中からある程度のやり取りは耳にしていた。
ヒューゴをクィックフォワードのマスターに迎えた時、彼女は常に祈るようにしてアンデスィデを見守っていた。
当然である。
アンデスィデの勝敗の前に、ヒューゴの霊力が尽きてしまえば死に至っていたのだから。
マスターの二重契約は、それほどまでに危険な行為である。
だけど。
いかなる無理難題にさえ、ヒューゴは無理を承知で応えてくれた。
そんな彼を頼もしく想うようになっていったのは自然な流れと言える。
だからココミはクレハに対して、時に友人のように接しながらも、どこか敵対するような素振りを見せていた。
そして、アーマーテイカーはココミの心境の変化に気付く。
それは、クレハがオトギとタツローらと共に、オロチたちに交換条件を突き付けられ、止むを得ず魔者たちのマスターとなった時。
ヒューゴが何としても守りたいと願った女性が、グリモワールチェスに巻き込まれてしまい、どうするか本気で悩んでいた。
悩んで悩んで悩みまくって、彼女の出した答えは。
本来の使命である王位継承戦に没頭する事。
皆をチェスの駒と考えて、最大限に活用する。そうすればきっと、誰も犠牲にはならないと考え始めた。
今までのような受け身ではなく、自らも率先して戦いに赴くと。
その心境の変化は、姉のラーナが率いるアルマンダルの天使たち撃破に繋がる共闘アンデスィデへの参戦。
さらに、ジョーカー討伐戦となる此度の戦いの提案へと続く。
クレハたちを人間の友人としてではなく、戦力の一端として捉える事により、より効果的に狡猾に運用する事を追求して戦いに臨んでいる。
恋に破れても、想いを寄せる男性の願いを果たすために。
ココミが再び本を開いた。
「ごめんなさい、アーマーテイカーさん。要らぬ心配をかけてしまって」
アーマーテイカーは一瞬ドキリとした。
ついうっかりと心の中を覗かれてしまったのか?
だけど、その心配は無用のようだ。
「この戦いが終わったら、ダナさんにはしっかりと謝らないとですね」
ニッコリと微笑んでくれた。
それに加えて、コントラストのコクピット内には二人の他に、タツローと女王の駒と化した妲己までいる。
まさに顔から火が出そうな状況。
「も、もう知らない!!」
堪えきれずにヒューゴの背に顔を埋めてしまった。
「うぬらはこの状況で何をちちくり合っておるのだ」
ノブナガから注意を促されてしまった。だけど。
「お前には言われたくないわッ!」
クレハとヒューゴ、二人して声をハモらせながらの反論。
パーティーの夜、散々キョウコとの仲を見せつけてくれたノブナガにだけは心底言われたくない。
「次はアナタの番ね。クィックフォワード」
起きてきたアーマーテイカーがクィックフォワードの耳元で、そっと告げる。
そんな彼の言葉を受けるも、クィクフォワードは我が手を見つめ。
「今はまだ…。だが、いつか彼女を追い抜く時が来たら、その時は胸を張って彼女に…」
決意を固めるように、我が手を握りしめる。
「だけど、それまでにリョーマくんにダナを奪われちゃうわよ。あの二人、結構良い仲みたいだし」
期が熟すのを待つクィックフォワードを急き立てる。
「その心配は要りませんよ。アーマーテイカーさん」
ココミの声へと、二人は向いた。
「ダナさんは、種族を超えて交配できる龍ではありますが、そこのところはキッチリと弁えておられますよ」
いきなりのココミの発言に慌てたアーマーテイカーが、飛びつくようにして開いた魔導書を閉じてしまった。
「ココミ様、オープン回線でそのような発言はお控え下さい。ダナの人格に関わりますよ」
至らぬところを指摘されて、ココミは自らの過ちに気付いて舌を出した。
相手が見えぬ状況であろうと、ココミの事だから、きっとテヘペロしているのだろうと、クレハの想像は見事に的中していた。
「ダナさんは、あくまでもリョーマさんとの関係を主従の関係として線引きなさっています。例えリョーマさんの心がダナさんに傾いていようとも、彼女はその想いに応える事は無いでしょう」
普段の二人を見ている限り、彼らがそんなにドライになるとは、とても思えない。
むしろ結ばれぬ恋と知りながら、互いに心を通わせているようにうかがえる。
そんな二人を、アーマーテイカーは不憫に感じていた。と同時に、恋敵であるクィックフォワードの心境を考えると複雑な気分になってしまう。
三角関係とは、どうにも応援し難いものだと。
そして、ココミを見ていると、同じ心境に至ってしまう。
「ココミ様…」
声を掛けておきながら、言葉を詰まらせてしまった。
ココミの、高砂・飛遊午に対する気持ちを思うと、どうしてもその先の言葉が出て来ない。
二人の魔者と契約を結ばせる。
マスターの命を削ってしまうと解っていても、唯一頼れる存在として全てを任せてしまったあの時、彼女の心に気付いてしまった。
アーマーテイカー自身、まだあの時はただのチェスの駒でしかなかったが、本の中からある程度のやり取りは耳にしていた。
ヒューゴをクィックフォワードのマスターに迎えた時、彼女は常に祈るようにしてアンデスィデを見守っていた。
当然である。
アンデスィデの勝敗の前に、ヒューゴの霊力が尽きてしまえば死に至っていたのだから。
マスターの二重契約は、それほどまでに危険な行為である。
だけど。
いかなる無理難題にさえ、ヒューゴは無理を承知で応えてくれた。
そんな彼を頼もしく想うようになっていったのは自然な流れと言える。
だからココミはクレハに対して、時に友人のように接しながらも、どこか敵対するような素振りを見せていた。
そして、アーマーテイカーはココミの心境の変化に気付く。
それは、クレハがオトギとタツローらと共に、オロチたちに交換条件を突き付けられ、止むを得ず魔者たちのマスターとなった時。
ヒューゴが何としても守りたいと願った女性が、グリモワールチェスに巻き込まれてしまい、どうするか本気で悩んでいた。
悩んで悩んで悩みまくって、彼女の出した答えは。
本来の使命である王位継承戦に没頭する事。
皆をチェスの駒と考えて、最大限に活用する。そうすればきっと、誰も犠牲にはならないと考え始めた。
今までのような受け身ではなく、自らも率先して戦いに赴くと。
その心境の変化は、姉のラーナが率いるアルマンダルの天使たち撃破に繋がる共闘アンデスィデへの参戦。
さらに、ジョーカー討伐戦となる此度の戦いの提案へと続く。
クレハたちを人間の友人としてではなく、戦力の一端として捉える事により、より効果的に狡猾に運用する事を追求して戦いに臨んでいる。
恋に破れても、想いを寄せる男性の願いを果たすために。
ココミが再び本を開いた。
「ごめんなさい、アーマーテイカーさん。要らぬ心配をかけてしまって」
アーマーテイカーは一瞬ドキリとした。
ついうっかりと心の中を覗かれてしまったのか?
だけど、その心配は無用のようだ。
「この戦いが終わったら、ダナさんにはしっかりと謝らないとですね」
ニッコリと微笑んでくれた。
0
お気に入りに追加
38
あなたにおすすめの小説
異世界に転生した俺は農業指導員だった知識と魔法を使い弱小貴族から気が付けば大陸1の農業王国を興していた。
黒ハット
ファンタジー
前世では日本で農業指導員として暮らしていたが国際協力員として後進国で農業の指導をしている時に、反政府の武装組織に拳銃で撃たれて35歳で殺されたが、魔法のある異世界に転生し、15歳の時に記憶がよみがえり、前世の農業指導員の知識と魔法を使い弱小貴族から成りあがり、乱世の世を戦い抜き大陸1の農業王国を興す。
帰らなければ良かった
jun
恋愛
ファルコン騎士団のシシリー・フォードが帰宅すると、婚約者で同じファルコン騎士団の副隊長のブライアン・ハワードが、ベッドで寝ていた…女と裸で。
傷付いたシシリーと傷付けたブライアン…
何故ブライアンは溺愛していたシシリーを裏切ったのか。
*性被害、レイプなどの言葉が出てきます。
気になる方はお避け下さい。
・8/1 長編に変更しました。
・8/16 本編完結しました。
旦那様に離縁をつきつけたら
cyaru
恋愛
駆け落ち同然で結婚したシャロンとシリウス。
仲の良い夫婦でずっと一緒だと思っていた。
突然現れた子連れの女性、そして腕を組んで歩く2人。
我慢の限界を迎えたシャロンは神殿に離縁の申し込みをした。
※色々と異世界の他に現実に近いモノや妄想の世界をぶっこんでいます。
※設定はかなり他の方の作品とは異なる部分があります。
戦艦大和、時空往復激闘戦記!(おーぷん2ちゃんねるSS出展)
俊也
SF
1945年4月、敗色濃厚の日本海軍戦艦、大和は残りわずかな艦隊と共に二度と還れぬ最後の決戦に赴く。
だが、その途上、謎の天変地異に巻き込まれ、大和一隻のみが遥かな未来、令和の日本へと転送されてしまい…。
また、おーぷん2ちゃんねるにいわゆるSS形式で投稿したものですので読みづらい面もあるかもですが、お付き合いいただけますと幸いです。
姉妹作「新訳零戦戦記」「信長2030」
共々宜しくお願い致しますm(_ _)m
異世界転生したらよくわからない騎士の家に生まれたので、とりあえず死なないように気をつけていたら無双してしまった件。
星の国のマジシャン
ファンタジー
引きこもりニート、40歳の俺が、皇帝に騎士として支える分家の貴族に転生。
そして魔法剣術学校の剣術科に通うことなるが、そこには波瀾万丈な物語が生まれる程の過酷な「必須科目」の数々が。
本家VS分家の「決闘」や、卒業と命を懸け必死で戦い抜く「魔物サバイバル」、さらには40年の弱男人生で味わったことのない甘酸っぱい青春群像劇やモテ期も…。
この世界を動かす、最大の敵にご注目ください!
ゴースト
ニタマゴ
SF
ある人は言った「人類に共通の敵ができた時、人類今までにない奇跡を作り上げるでしょう」
そして、それは事実となった。
2027ユーラシア大陸、シベリア北部、後にゴーストと呼ばれるようになった化け物が襲ってきた。
そこから人類が下した決断、人類史上最大で最悪の戦争『ゴーストWar』幕を開けた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる