盤上の兵たちは最強を誇るドラゴン種…なんだけどさ

ひるま(マテチ)

文字の大きさ
上 下
324 / 351
[29]そして独り

-315-:ホントくそ野郎だな

しおりを挟む
「ええ!望むところよ!」
 もう、この少女ジョーカーの思い通りにはさせない!

 オトギは強い決意を胸にジョーカーを睨み付けた。

「ふふふ。それでこそ御陵・御伽。キミの憎悪は僕にとって大好物なのさ」

 ところが、ジョーカーは余裕を崩さない。

 この状況、追いつめているはずなのに、詰めチェックをされているような感覚だ。

「まだ気付かないのかい?オトギ」

「何・・を?」
 一体、何に気付けと言うのか?




「動きませんねぇ…」
 妲己が沈黙してから、さらに2分が過ぎようとしていた。

 妲己はおろか、後方に待機する盤上戦騎たちも、依然動きを見せない。

 ピピッ!

 レーダーに反応あり。

 真下から接近する影!?

 何が来る!?

 ダナとコントラスト、両騎共に下方へと向いた。

 盾のえぐれた部分に馬上槍ランスを番えてもう突進してくる騎体。

 そして、盾から薄っすらと映る影。

 あれは!

 あれは、まさしく骸骨亡者スケルトンのキャサリン。

 でも、どうして?

「耳翼吸血鬼《チョンチョン》のスグルと共にマイクロミサイルの餌食にしてやったはずなのに、どうして生きている?」
 驚くリョーマに。

「その表現は適切ではありません。あの騎体はシャドー。元から生きてはおりません」
 ダナが冷静な口調で訂正を入れてくれる。

「先輩ったら、こんなスゲー騎体に乗っていたくせに、あんなクソみたいな戦いしかできなかったなんて、エラそうぶるだけの、ホントくそ野郎だな」
 この声には聴き覚えがある!

「何でお前が!?ミツナリ!!」

「おやおや?ベルタが来るって聞いたから参戦させてもらったのに、どうして女の子がベルタに乗っているんだよォ!」
 ミツナリは事情を知らないようだ。

 そんなミツナリに驚きを隠せない人物がいる。

 黒玉門前教会で、このアンデスィデを見守っているライク・スティール・ドラコーンだ。

「ミツナリ…皇・令恵スメラギ・ノリエだと!?ウォーフィールド!」
 早速ウォーフィールドに事情説明を求めた。

 そのウォーフィールドも、驚いた表情で魔導書を眺めている。

「皇・令恵、確かに彼の死は自殺したと聞き及んでいます」
 報告するも、状況を把握できずにいた。

 そんな彼らのやりとりを見て、ココミはクレハたちに、ライクたちのやり取りをおおまかに伝えた。

「皇・令恵だと?あのSNSでバカッター映像を流して炎上。それを苦にして自殺した、あの皇・令恵か」
 細かな情報を持つリョーマに、ただただ感心するクレハであった。

「そんなニュース、初めて聞いたわ」
 同じ高校生なのに、随分とご立派なこと。

「ヤツが突っ込んできます!」
 タツローが皆に報せた。

 回避行動に入るタツローをクレハは「まだよ!」動くのは早い。

 この敵の間抜けなところは、盾そのものが半透明なおかげで次の一手が丸分かりな点。

 薄っすらと映るランスのガングリップに手が届いていない。

 このキャサリンは、このまま突進を続けるつもりだ。

「タツローくん、このまま引付けてからギリギリで躱して」
 作戦の指示を行う。リョーマには一旦距離を置いて、続けて妲己の動向を監視してもらおう。

 クレハは、攻撃ビットの照準をキャサリンに固定、追尾させた。

(通り過ぎた瞬間を狙って足を蜂の巣にしてやるわ)

「クロックアップ、行きます!」
 タツローが宣言。

 世界が10分の1の速度へと鈍化する。

 当然、移動速度も落ちて…キャサリンの動きが手に取るように分かる。

 スローモーション映像のようにゆっくりと通り過ぎてゆくキャサリン。

 ここだ!

 狙うはキャサリンの両脚。

 シャドーとはいえ、生死が定かではない人が乗っている以上、撃ち落とすなんてマネは出来ない。

「え?ウソ!?」
 なのに、あるはずべきものが無い!これはどういう事?

 蜂の巣にしてやるはずの、キャサリンの両脚が、膝から先が無くなっている!?

「どうして足が無い!?へへっ。代わりに言ってやったぜ。ククク」
 ミツナリのあざ笑う声が耳に入ったかと思えば。

 ガンッ!!ガンッ!!

 背中から、そして真上から、それぞれ膝下からの足によるキックを食らわされた。

「これはサービスだぜ」
 ブン投げられたランスを薙刀で払う。と、眼前に迫ったキャサリンのロングソードの一閃がコントラストを襲った。

 咄嗟に左腕で受けるも、斬撃が強力だったせいか、ソードストッパーは破砕されてしまった。


「キャサリン…強い…」
 怒涛のような攻めに、思わずダメージを受けてしまったコントラストを見て、ココミはつい口から漏らしてしまった。

 パイロットの腕によって、これほどまでに盤上戦騎は性能に開きがでてしまうものなのか。

 高砂・飛遊午の戦いぶりを見ていて感じた事ではあるが、いざ敵がやって見せると、驚きたまげるものだ。

 固有能力である分解能力をこうまでも的確に使ってくるとは。

 皇・令恵!侮り難し。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

あの夕方を、もう一度

秋澤えで
ファンタジー
海洋に浮かび隔絶された島国、メタンプシコーズ王国。かつて豊かで恵まれた国であった。しかし天災に見舞われ太平は乱れ始める。この国では二度、革命戦争が起こった。 二度目の革命戦争、革命軍総長メンテ・エスペランサの公開処刑が行われることに。革命軍は王都へなだれ込み、総長の奪還に向かう。しかし奮闘するも敵わず、革命軍副長アルマ・ベルネットの前でメンテは首を落とされてしまう。そしてアルマもまた、王国軍大将によって斬首される。 だがアルマが気が付くと何故か自身の故郷にいた。わけもわからず茫然とするが、海面に映る自分の姿を見て自身が革命戦争の18年前にいることに気が付く。 友人であり、恩人であったメンテを助け出すために、アルマは王国軍軍人として二度目の人生を歩み始める。 全てはあの日の、あの一瞬のために 元革命軍アルマ・ベルネットのやり直しファンタジー戦記 小説家になろうにて「あの夕方を、もう一度」として投稿した物を一人称に書き換えたものです。 9月末まで毎日投稿になります。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。 自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。 いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して! この世界は無い物ばかり。 現代知識を使い生産チートを目指します。 ※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

2回目の人生は異世界で

黒ハット
ファンタジー
増田信也は初めてのデートの待ち合わせ場所に行く途中ペットの子犬を抱いて横断歩道を信号が青で渡っていた時に大型トラックが暴走して来てトラックに跳ね飛ばされて内臓が破裂して即死したはずだが、気が付くとそこは見知らぬ異世界の遺跡の中で、何故かペットの柴犬と異世界に生き返った。2日目の人生は異世界で生きる事になった

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

【完結】婚約者が私以外の人と勝手に結婚したので黙って逃げてやりました〜某国の王子と珍獣ミミルキーを愛でます〜

平川
恋愛
侯爵家の莫大な借金を黒字に塗り替え事業を成功させ続ける才女コリーン。 だが愛する婚約者の為にと寝る間を惜しむほど侯爵家を支えてきたのにも関わらず知らぬ間に裏切られた彼女は一人、誰にも何も告げずに屋敷を飛び出した。 流れ流れて辿り着いたのは獣人が治めるバムダ王国。珍獣ミミルキーが生息するマサラヤマン島でこの国の第一王子ウィンダムに偶然出会い、強引に王宮に連れ去られミミルキーの生態調査に参加する事に!? 魔法使いのウィンロードである王子に溺愛され珍獣に癒されたコリーンは少しずつ自分を取り戻していく。 そして追い掛けて来た元婚約者に対して少女であった彼女が最後に出した答えとは…? 完結済全6話

【本格ハードSF】人類は孤独ではなかった――タイタン探査が明らかにした新たな知性との邂逅

シャーロット
SF
土星の謎めいた衛星タイタン。その氷と液体メタンに覆われた湖の底で、独自の知性体「エリディアン」が進化を遂げていた。透き通った体を持つ彼らは、精緻な振動を通じてコミュニケーションを取り、環境を形作ることで「共鳴」という文化を育んできた。しかし、その平穏な世界に、人類の探査機が到着したことで大きな転機が訪れる。 探査機が発するリズミカルな振動はエリディアンたちの関心を引き、慎重なやり取りが始まる。これが、異なる文明同士の架け橋となる最初の一歩だった。「エンデュランスII号」の探査チームはエリディアンの振動信号を解読し、応答を送り返すことで対話を試みる。エリディアンたちは興味を抱きつつも警戒を続けながら、人類との画期的な知識交換を進める。 その後、人類は振動を光のパターンに変換できる「光の道具」をエリディアンに提供する。この装置は、彼らのコミュニケーション方法を再定義し、文化の可能性を飛躍的に拡大させるものだった。エリディアンたちはこの道具を受け入れ、新たな形でネットワークを調和させながら、光と振動の新しい次元を発見していく。 エリディアンがこうした革新を適応し、統合していく中で、人類はその変化を見守り、知識の共有がもたらす可能性の大きさに驚嘆する。同時に、彼らが自然現象を調和させる能力、たとえばタイタン地震を振動によって抑える力は、人類の理解を超えた生物学的・文化的な深みを示している。 この「ファーストコンタクト」の物語は、共存や進化、そして異なる知性体がもたらす無限の可能性を探るものだ。光と振動の共鳴が、2つの文明が未知へ挑む新たな時代の幕開けを象徴し、互いの好奇心と尊敬、希望に満ちた未来を切り開いていく。 -- プロモーション用の動画を作成しました。 オリジナルの画像をオリジナルの音楽で紹介しています。 https://www.youtube.com/watch?v=G_FW_nUXZiQ

処理中です...