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[28]白の中の者たち

-308-:行くぜ!野郎ども!

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 私に会いたい?人?

 何も答えずに、ただ記憶を辿っているクレハを心配してか、タツローが振り向いた。

「あっ!」
 思わず声を上げてしまい、気付いたクレハによって『ドカッ!』頭を蹴られてしまった。

「よくも私のスカートの中を見たわね!」
 脚を閉じようにも、バイク型の座席では不可能。

 しかも、ヘッドレストを跨ぐ格好となるので、スカートの中は前に座るタツローからは丸見えだ。

「で、でもアンダースコートを履いているじゃないですか」
 口答えするなと、もう一回蹴り付ける。

「しっかり見ているじゃない!」
 魔法少女の衣裳は、基本、アンダースコート履きなのだ。

「何も蹴る事はないでしょう?しかも2回も。姉さんにだって蹴られた事ないのに」
 痛む頭を抱えている。

 さて。

「私に会いたい人って誰?教えてくれる?オトギちゃん」
 色々考えるのも面倒だ。手っ取り早く答えを求めた。

 すると、妲己の前に、半人半馬ケンタウロス型の盤上戦騎ディザスターが躍り出た。

「久し振りだねぇ、鈴木・くれは」
 久しぶりにイヤな声を耳にした。

 今はグラムへと姿を変えたベルタも、「貴様か…」その相手に敵意を露わにした。

「そうであったな。ベルタ。貴様とは何年ぶりだったかな?」
 答える義務は無いと、ベルタは無言のまま。当の本人でさえ何年前なのか?記憶していない模様。

 首無しデュラハンのジェレミーアが、クレハたちの前に立ちはだかる。

 その姿は、ギリシャ神話に登場するケンタウロスそのもの。

 だけど、頭部は本来あるべき所には無く、腰部に据えられている。

 異形の存在。


 が、とりあえず、驚くのは後だ。


「ココミちゃん。これはどういう事?」
 早速、状況説明を求めた。

「シャドーは、あくまでも女王クィーン騎が召喚する疑似兵に過ぎません。行動そのものは非常に単調で、会話はおろか、効果魔法も使えません」
 道理で城砦ルーク騎でさえも難なく攻略できた訳だ。

 しかし、目の前の騎体は会話をしている。

 困惑した眼差しをライクへと向けて、ココミは彼に状況説明をバトンタッチした。

 神妙な顔つきで魔導書を見つめるも。

「おかしいな…」
 ただ呟くだけ。

 ジェレミーアは、手にする馬上槍ランスを投げ捨てて、左腕に装着している円盾から戦斧を取り出した。

「奇しくも、ライフの私も今のこの姿と同じに成り果てたよ。それも、鈴木・くれは!貴様によって下半身を、我が愛馬ドナテルロの頭を失ったが為!この代償は死を持って払ってもらうぞ」
 聞くだけで不憫でならない。

 この現代の日常生活において、下半身が馬の姿で過ごすだなんて…。

 しかし、この男に対しては、憐れみというよりも、むしろウケる~。

 クレハはジェレミーアに対して、微塵も罪悪感というものを感じなかった。

「面倒臭いのに出くわしてしまったわね」
 逆恨みされるのも面倒だが、聞いた話ではこの男は歴史に名を残すほどの騎士。しかも暗黒時代と呼ばれた混沌の世界で名を上げた男。

 一筋縄とはいかないのは明白。

 ジェレミーアに向けて一直線に薙刀ナギナタを構えた。

 まだ、銃器が発展していなかった頃の戦では、馬は絶大な戦力となり戦場を蹂躙していた。

 歩兵の対抗策としては、長柄の武器を構えて騎馬兵の突撃を防ぐ事だけ。

 近づけさせれば圧倒的不利となってしまうからだ。

 ジェレミーアが蹄を鳴らして突撃の隙をうかがう。

 対するクレハは防御ビットを前面に固めて配置。壁を作った。

 さらに攻撃ビットを左右に配置して、敵の軌道を直線に限定させる。

 ジェレミーアが駆け出した!

「行くぜ!野郎ども!」
 ジェレミーアが叫んだ。

 野郎ども!?って?

 地面の中から一斉に、人狼ワーウルフのロボの手下たちが姿を現した。

「これって、罠!?」
 確実に勝利をもぎ取るには、やはり数での圧倒。

 ランスを投げ捨てて近接戦に持ち込むフリをして相手を油断させてからの、数に任せての猛襲。最悪だ。

 すでに周囲を囲まれてしまっている。

 これでは毒矢ミルメートの効果が薄い。

 やむなく攻撃ビットで応射を続けながら、全速後退!

 移動速度および初期配置から、敵の接近にはバラつきが生じてくる。

 そこをとにかく接近してきたイヌ頭たちからナギナタの餌食にしてゆく。


 以前もそうだったが、このイヌ頭たち、なかなか厄介な事にライオットシールで防御してくれるおかげで、なかなか数を減らす事ができない。

 せめて本体を叩ければ…。思うも。

 探している暇が無い!

「ウェーハハハハッ」
 ジェレミーアが上体を起こして戦斧を振り被る。

 後ろへ跳ぼうとしたけど、後方にもイヌ頭が!

 防御ビットは現在、他のイヌ頭に対応中。

 肝心な時に身を守る術が何も無い。

 コールブランドは左手からヨーヨーを取り出し、体をトルネード回転させながら、後方のイヌ頭へと向き直った。

 放り投げたヨーヨーの紐が発熱してヒートワイヤーとなると、イヌ頭が構えるライオットシールドの端に当り、急激に軌道を変えて高熱で腕を斬り落とした。

 後方への道は開いた。

 だが、すでにジェレミーアはコールブランドを前足で踏みつける体勢に入っている。

 もう間に合わない!!

 絶体絶命のピンチ!
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