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[25]澱み
-284-:妲己は御陵・幸三朗と顔見知りなの
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御陵財閥の当主、御陵・幸三朗の死因にクレイモアが絡んでいる。
しかも、次回予定されているアンデスィデは、クレイモアと結託しているアルマンダルの天使たちの戦力を大幅に削ぐ事を目的としている。
御陵・御伽がグラムから妲己のマスターに代わった理由がハッキリした。
「やっぱり俺は賛成できんな」
早速、高砂・飛遊午に相談したら、案の定、自身と同じ想いに至ってくれて、クレハは安心した。
「タカサゴも人殺しは良くないと思うよね」
念を押すつもりは無い。それが、世間一般の意見だと思いたい。
ヒューゴは頷いた。
「ああ。それにしても、あの御陵・御伽ともあろう者が、真犯人か定かでない、同じ組織の人間なだけかもしれない相手を殺害しようとしているなんてな」
それは、おっしゃる通り。
今のオトギは、単に八つ当たりをしたいだけに思える。盛大な上に、傍迷惑も良いところだ。
「もう少し思慮深い子だと思っていたのに…」
ヒューゴは付け加えた。
余程、頭に血が上っているのか?
それとも、何か他の理由でもあるのかな?
思うも、間を置かずして、ヒューゴは自身が抱いた発想そのものを否定した。
誰も、好き好んで命を落とすかもしれないアンデスィデに参戦する者なんていない。
クレイモアの連中だって、“仕事”として参戦しているのであって、彼らとて、根っからの破壊主義者ではないはずだ。そう願いたい。
★ ★ ★ ★
「でね、ライクくんから何か聞いていない?」
クレハの問いに、スマホの相手はそれ以前に不機嫌さを露わにしている。
電話の相手はトモエこと貝塚・真珠だ。
「何でもかんでも私に訊いてこないで!それよりも、何で貴女が私の電話番号を知っているのよ?」
「トラちゃんに聞いた」「トラのヤツぅ…」
同じバスケ部員。しかもレギュラー同士。一匹狼を気取るシンジュであっても、しがらみからは逃れられない。
「貝塚さん。知っている事があるなら、俺たちに教えて欲しい」
スマホを介しての会話。直接本人の所に出向いて話をできれば良いのだが、シンジュは学園の人気者。迂闊に声を掛ければ、ファンから“抜け駆け”したと目の仇にされかねない。
「突然電話をしてきて、御陵・御伽が妲己と契約を結んだと言われても、私もたった今、貴女たちから聞いて知ったのよ。黒側に所属しているとはいえ、お互いに連絡を取り合うような事はしていないし、あんなバカ共と馴れ合うなんて、まっぴらゴメンだわ」
話を聞く二人は共に同じ感想を抱いた。
なんて寂しい学生生活を送っているのだろうと。
「だったら、他の誰かの電話番号を教えてよ。私たち、|黒玉工業高校(ジェット)とは付き合い無いし」
こうなれば、他の誰かを紹介してもらうしか無さそうだ。
「貴女ねぇ、私の話をちゃんと聞いていたの!?私は、あんなバカ共と関わり合わないように素性を隠しているのよ!」
相当不機嫌な様子&使えないヤツ。
クレハは、まだ文句を言いたげなシンジュを置いて、さっさと通話を切ってしまった。
スマホを仕舞おうとしたら、着信音楽が鳴った。
電話に出ると、相手はシンジュだった。
「まだ話は終わって―」「文句は聞くだけ無駄。時間がもったいないわ」
切ろうとしたら、「待って!思い出した事があるの」
どうやら文句の続きではないようだ。「何を思い出したの?」
「妲己は御陵・幸三朗と顔見知りなの。この間のパーティーで、妲己がトラの弟と話しているのを聞いたの」
と、いう事は、次回のアンデスィデは妲己の私怨とも言える。
共通の敵を討ちたい。
それは、オトギと妲己が協力関係を結んだ理由と考えて、ほぼ間違いない。
「聞いたって、もしかして、盗み聞きしていたの?」
そこは問い詰めてやらないでくれ。
それはそうと、最初からタツローに聞けば話は早かった。
今になって、その発想に至らなかった自身を悔やむヒューゴであった。
「他に何か言っていなかったか?」
気を取り直して、ヒューゴが訊ねた。
「妲己は人間の身体にまとわりつく“悪い気”を吸い取るとも言っていたわ。何でも悪い気を祓ってもらったら、運気が上昇するって」
人生は神頼みの連続。こんな運気上昇の話が出てきたら、聞き耳を立てるのも解らないでもない。
それにしても、妲己という魔者、敵ながら、なんてオイシイ奴。できれば黒側に寝返って御利益を授かりたいものだ。
「でも、大丈夫なの?妲己ってムチャクチャ霊力をバカ食いするんでしょう?オトギちゃん、霊力を吸われ過ぎて干上がってしまわない?」
そもそも代償を考えたら、危険で仕方がない。
「私も、その心配はしたわよ。だけど、妲己の口ぶりだと、悪い気と霊力は同じみたいで、必要霊力を満たしていなくても、悪い気を取り込めば御陵・御伽に危険は及ばないんじゃないのかな」
あくまでも憶測の域を超えないが、当の妲己が他者を干上がらせるような真似はしないのは、彼女の態度からも明らか。
どのような魔者なのか?千年狐狸精なんて聞いた事も無いし、どこかの人間と仲良しのマイナーモンスターなのだろう。
悪いヤツじゃ無さそうだし、あとはタツローに聞くとするか。
クレハは電話を切った。
しかも、次回予定されているアンデスィデは、クレイモアと結託しているアルマンダルの天使たちの戦力を大幅に削ぐ事を目的としている。
御陵・御伽がグラムから妲己のマスターに代わった理由がハッキリした。
「やっぱり俺は賛成できんな」
早速、高砂・飛遊午に相談したら、案の定、自身と同じ想いに至ってくれて、クレハは安心した。
「タカサゴも人殺しは良くないと思うよね」
念を押すつもりは無い。それが、世間一般の意見だと思いたい。
ヒューゴは頷いた。
「ああ。それにしても、あの御陵・御伽ともあろう者が、真犯人か定かでない、同じ組織の人間なだけかもしれない相手を殺害しようとしているなんてな」
それは、おっしゃる通り。
今のオトギは、単に八つ当たりをしたいだけに思える。盛大な上に、傍迷惑も良いところだ。
「もう少し思慮深い子だと思っていたのに…」
ヒューゴは付け加えた。
余程、頭に血が上っているのか?
それとも、何か他の理由でもあるのかな?
思うも、間を置かずして、ヒューゴは自身が抱いた発想そのものを否定した。
誰も、好き好んで命を落とすかもしれないアンデスィデに参戦する者なんていない。
クレイモアの連中だって、“仕事”として参戦しているのであって、彼らとて、根っからの破壊主義者ではないはずだ。そう願いたい。
★ ★ ★ ★
「でね、ライクくんから何か聞いていない?」
クレハの問いに、スマホの相手はそれ以前に不機嫌さを露わにしている。
電話の相手はトモエこと貝塚・真珠だ。
「何でもかんでも私に訊いてこないで!それよりも、何で貴女が私の電話番号を知っているのよ?」
「トラちゃんに聞いた」「トラのヤツぅ…」
同じバスケ部員。しかもレギュラー同士。一匹狼を気取るシンジュであっても、しがらみからは逃れられない。
「貝塚さん。知っている事があるなら、俺たちに教えて欲しい」
スマホを介しての会話。直接本人の所に出向いて話をできれば良いのだが、シンジュは学園の人気者。迂闊に声を掛ければ、ファンから“抜け駆け”したと目の仇にされかねない。
「突然電話をしてきて、御陵・御伽が妲己と契約を結んだと言われても、私もたった今、貴女たちから聞いて知ったのよ。黒側に所属しているとはいえ、お互いに連絡を取り合うような事はしていないし、あんなバカ共と馴れ合うなんて、まっぴらゴメンだわ」
話を聞く二人は共に同じ感想を抱いた。
なんて寂しい学生生活を送っているのだろうと。
「だったら、他の誰かの電話番号を教えてよ。私たち、|黒玉工業高校(ジェット)とは付き合い無いし」
こうなれば、他の誰かを紹介してもらうしか無さそうだ。
「貴女ねぇ、私の話をちゃんと聞いていたの!?私は、あんなバカ共と関わり合わないように素性を隠しているのよ!」
相当不機嫌な様子&使えないヤツ。
クレハは、まだ文句を言いたげなシンジュを置いて、さっさと通話を切ってしまった。
スマホを仕舞おうとしたら、着信音楽が鳴った。
電話に出ると、相手はシンジュだった。
「まだ話は終わって―」「文句は聞くだけ無駄。時間がもったいないわ」
切ろうとしたら、「待って!思い出した事があるの」
どうやら文句の続きではないようだ。「何を思い出したの?」
「妲己は御陵・幸三朗と顔見知りなの。この間のパーティーで、妲己がトラの弟と話しているのを聞いたの」
と、いう事は、次回のアンデスィデは妲己の私怨とも言える。
共通の敵を討ちたい。
それは、オトギと妲己が協力関係を結んだ理由と考えて、ほぼ間違いない。
「聞いたって、もしかして、盗み聞きしていたの?」
そこは問い詰めてやらないでくれ。
それはそうと、最初からタツローに聞けば話は早かった。
今になって、その発想に至らなかった自身を悔やむヒューゴであった。
「他に何か言っていなかったか?」
気を取り直して、ヒューゴが訊ねた。
「妲己は人間の身体にまとわりつく“悪い気”を吸い取るとも言っていたわ。何でも悪い気を祓ってもらったら、運気が上昇するって」
人生は神頼みの連続。こんな運気上昇の話が出てきたら、聞き耳を立てるのも解らないでもない。
それにしても、妲己という魔者、敵ながら、なんてオイシイ奴。できれば黒側に寝返って御利益を授かりたいものだ。
「でも、大丈夫なの?妲己ってムチャクチャ霊力をバカ食いするんでしょう?オトギちゃん、霊力を吸われ過ぎて干上がってしまわない?」
そもそも代償を考えたら、危険で仕方がない。
「私も、その心配はしたわよ。だけど、妲己の口ぶりだと、悪い気と霊力は同じみたいで、必要霊力を満たしていなくても、悪い気を取り込めば御陵・御伽に危険は及ばないんじゃないのかな」
あくまでも憶測の域を超えないが、当の妲己が他者を干上がらせるような真似はしないのは、彼女の態度からも明らか。
どのような魔者なのか?千年狐狸精なんて聞いた事も無いし、どこかの人間と仲良しのマイナーモンスターなのだろう。
悪いヤツじゃ無さそうだし、あとはタツローに聞くとするか。
クレハは電話を切った。
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