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[24]白い闇、黒き陽光
-267-:驚いたりなんて、してあげないんだから
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「この事はライクには」「まだよ」
ノブナガはチラリとキョウコを見やり。
「すまない。少し席を外す。すぐに戻ってくるから」
そう告げて、明智・信長はシンジュと共に庭園を後にした。
キョウコは、一人取り残されてしまっても、もう不安を感じる事は無かった。
“すぐに戻ってくる”、これほどまでに安心を得られる言葉があるだろうか。
空を見上げると、夏の星座が輝いている。
こんな事を思ってしまうのは不謹慎なのは分かっている。だけど。
これほどまでに夜の星々が美しく眺められるのは、市松市街地が大きな打撃を受けたからだと理解している。
それでも、やはり美しいと感じて止まない。
来月の七夕には、天の川が観られるのだろうか?
こと座のベガこと織姫星とワシ座のアルタイルこと彦星は、雨雲に邪魔されることなく無事に出会う事ができるのだろうか?
そんな自身でも子供じみていると思える期待に胸を膨らませていると。
カチャリとドアが閉じる音。
ドアの方へと向くも、誰の姿も無かった。
誰かが夜風を当りに来たのに、先客がいたから遠慮したのだろう。そう勝手に解釈して、心から申し訳く思う。
少し夜風に当たり過ぎたかな…。肩に掛けたオレンジのショールを整える。
すると背後から聞こえる、かすかな足音。
明智・信長が驚かせようと、足音を立てないように近づいて来ているのかも。
キョウコの中に悪戯心が芽生えた。
(驚いたりなんて、してあげないんだから)
逆に驚かせるつもりで、「明智さん!」勢いよく振り返ってみせると。
瞬時にして、キョウコの満面の笑顔は驚きへと変わった。
「ケイジ・・ロウ・さん?」
キョウコの背後に立っていたのはケイジロウだった。
「やあ、ノブナガでなくて残念だったね」
歯並びの良い白い歯を見せて笑う。
完全にパーソナルエリアに侵入している。命の恩人だとしても、こんなに近づかれてしまえば警戒してしまう。
「ごめんなさい…。てっきり明智さんと思ってしまって」
告げつつ、キョウコは半歩後ずさった。
「え?」
もう一歩が下がれない!?どうして?何かが背中に当たっている。
ゆっくりと後ろへと振り返ると。
「!?」
誰もいない。
確かに、背中に何かが当たって、後ろへ下がる事ができない。
得体の知れない何かが迫っている。焦りが生じる中。
ケイジロウが腰に手を回してきた。
逃れようにも、後ろに下がれないし、体をよじる事も出来ない。
両太もも辺りに何かが絡まっているように両脚を動かす事も開く事も出来ない。
腰に回されたケイジロウの手によって引き寄せられてしまう。
「やめて。お願い。やめて下さい」
キョウコの哀願する眼差しに、ケイジロウは興奮を抑えられずに、鼻息を荒くして顔を寄せてくる。
「何を怖がっているんだ?猪苗代・恐子」
頬を撫で回され、その手はやがて首筋に。
「本当に君は美人だ。おまけにスタイルもバツグンときた」
ケイジロウの視線が、胸の谷間に向けられている。そんな視線に耐えられず、強く目を閉じてしまう。
だが、首筋を這っていた手が、とうとう胸元へと下りてきて、カタチを確認するようにねっとりとしつこく胸を撫で回す。
そんな彼の手を取り引き離そうと試みるも、どういう訳か、何者かに手首を掴まれているようにケイジロウの腕まで届かない。
「お、お願いです」
もう片方の手で彼の胸を押しても、ケイジロウの体は微動もしない。
「良いねぇ、その怯えた表情。女はそうでなくてはな。男にひれ伏している姿が最も美しい」
彼の捩じれた性癖に、怒りすら感じる。
だけど、必死の抵抗も空しく、さらに腰を引き寄せられてしまった。
「明智さん」震えた声で助けを求めてしまう。
「あんな男のどこが良い?ん?天才だか何だか知らないが、普段のアイツは凡人には到底理解の出来ない行動ばかりしているよ」
こんなオカルト染みた手段で女性を乱暴しようとしているヤツに、彼をバカにされたくはない。
怒りがキョウコを突き動かす。
足が踏ん張れなくとも、腕の振りだけでも、この男の顔面くらいは歪ませて見せる!
まだ自由の利く腕を振るってケイジロウに殴り掛かる。
が。
またしても、腕が空中で止まってしまった。
「そんな!?」
メリメリと手首に何かがめり込んでゆく。
明らかに、誰かに手首を掴まれている感覚がある。だけど、掴んでいる手など見えはしない。
まるで透明人間に掴まれているようだ。
「!?」
真実に気付くと同時に、キョウコの体は恐ろしさのあまり震え始めた。
透明人間ではなく、透明化した首無しのジェレミーアによって、体を押さえ込まれているのだ。
ケイジロウとキョウコの腰同士が密着した。
そして、下顎を撮み上げられ、無理やり顔を上へと向けられてしまう。
(こんな事って…)
悲しみと怒りのあまり、キョウコの両目から涙が滲み出す。
両手首を掴まれた腕が、ケイジロウの首へと回される。
首へと回された手がケイジロウの顔を引き寄せるようにして。
二人は唇を重ねた。
まるで愛し合っている二人が、自然にキスをしているかのよう。
だけど、実態は残酷極まりない、略奪キス以外の何ものでもなかった。
ノブナガはチラリとキョウコを見やり。
「すまない。少し席を外す。すぐに戻ってくるから」
そう告げて、明智・信長はシンジュと共に庭園を後にした。
キョウコは、一人取り残されてしまっても、もう不安を感じる事は無かった。
“すぐに戻ってくる”、これほどまでに安心を得られる言葉があるだろうか。
空を見上げると、夏の星座が輝いている。
こんな事を思ってしまうのは不謹慎なのは分かっている。だけど。
これほどまでに夜の星々が美しく眺められるのは、市松市街地が大きな打撃を受けたからだと理解している。
それでも、やはり美しいと感じて止まない。
来月の七夕には、天の川が観られるのだろうか?
こと座のベガこと織姫星とワシ座のアルタイルこと彦星は、雨雲に邪魔されることなく無事に出会う事ができるのだろうか?
そんな自身でも子供じみていると思える期待に胸を膨らませていると。
カチャリとドアが閉じる音。
ドアの方へと向くも、誰の姿も無かった。
誰かが夜風を当りに来たのに、先客がいたから遠慮したのだろう。そう勝手に解釈して、心から申し訳く思う。
少し夜風に当たり過ぎたかな…。肩に掛けたオレンジのショールを整える。
すると背後から聞こえる、かすかな足音。
明智・信長が驚かせようと、足音を立てないように近づいて来ているのかも。
キョウコの中に悪戯心が芽生えた。
(驚いたりなんて、してあげないんだから)
逆に驚かせるつもりで、「明智さん!」勢いよく振り返ってみせると。
瞬時にして、キョウコの満面の笑顔は驚きへと変わった。
「ケイジ・・ロウ・さん?」
キョウコの背後に立っていたのはケイジロウだった。
「やあ、ノブナガでなくて残念だったね」
歯並びの良い白い歯を見せて笑う。
完全にパーソナルエリアに侵入している。命の恩人だとしても、こんなに近づかれてしまえば警戒してしまう。
「ごめんなさい…。てっきり明智さんと思ってしまって」
告げつつ、キョウコは半歩後ずさった。
「え?」
もう一歩が下がれない!?どうして?何かが背中に当たっている。
ゆっくりと後ろへと振り返ると。
「!?」
誰もいない。
確かに、背中に何かが当たって、後ろへ下がる事ができない。
得体の知れない何かが迫っている。焦りが生じる中。
ケイジロウが腰に手を回してきた。
逃れようにも、後ろに下がれないし、体をよじる事も出来ない。
両太もも辺りに何かが絡まっているように両脚を動かす事も開く事も出来ない。
腰に回されたケイジロウの手によって引き寄せられてしまう。
「やめて。お願い。やめて下さい」
キョウコの哀願する眼差しに、ケイジロウは興奮を抑えられずに、鼻息を荒くして顔を寄せてくる。
「何を怖がっているんだ?猪苗代・恐子」
頬を撫で回され、その手はやがて首筋に。
「本当に君は美人だ。おまけにスタイルもバツグンときた」
ケイジロウの視線が、胸の谷間に向けられている。そんな視線に耐えられず、強く目を閉じてしまう。
だが、首筋を這っていた手が、とうとう胸元へと下りてきて、カタチを確認するようにねっとりとしつこく胸を撫で回す。
そんな彼の手を取り引き離そうと試みるも、どういう訳か、何者かに手首を掴まれているようにケイジロウの腕まで届かない。
「お、お願いです」
もう片方の手で彼の胸を押しても、ケイジロウの体は微動もしない。
「良いねぇ、その怯えた表情。女はそうでなくてはな。男にひれ伏している姿が最も美しい」
彼の捩じれた性癖に、怒りすら感じる。
だけど、必死の抵抗も空しく、さらに腰を引き寄せられてしまった。
「明智さん」震えた声で助けを求めてしまう。
「あんな男のどこが良い?ん?天才だか何だか知らないが、普段のアイツは凡人には到底理解の出来ない行動ばかりしているよ」
こんなオカルト染みた手段で女性を乱暴しようとしているヤツに、彼をバカにされたくはない。
怒りがキョウコを突き動かす。
足が踏ん張れなくとも、腕の振りだけでも、この男の顔面くらいは歪ませて見せる!
まだ自由の利く腕を振るってケイジロウに殴り掛かる。
が。
またしても、腕が空中で止まってしまった。
「そんな!?」
メリメリと手首に何かがめり込んでゆく。
明らかに、誰かに手首を掴まれている感覚がある。だけど、掴んでいる手など見えはしない。
まるで透明人間に掴まれているようだ。
「!?」
真実に気付くと同時に、キョウコの体は恐ろしさのあまり震え始めた。
透明人間ではなく、透明化した首無しのジェレミーアによって、体を押さえ込まれているのだ。
ケイジロウとキョウコの腰同士が密着した。
そして、下顎を撮み上げられ、無理やり顔を上へと向けられてしまう。
(こんな事って…)
悲しみと怒りのあまり、キョウコの両目から涙が滲み出す。
両手首を掴まれた腕が、ケイジロウの首へと回される。
首へと回された手がケイジロウの顔を引き寄せるようにして。
二人は唇を重ねた。
まるで愛し合っている二人が、自然にキスをしているかのよう。
だけど、実態は残酷極まりない、略奪キス以外の何ものでもなかった。
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