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[24]白い闇、黒き陽光
-264-:あの娘、貴公の知り合いか?
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叫霊のツウラから伝えられた衝撃の事実。
それは、盤上戦騎に搭乗したパイロットが破壊衝動を抑えられなくなるというもの。
しかも、本人は意識すらしていないという。
木乃伊のアルルカンのように大々的に謳っているものは別として、他の騎体にも、そのような機能が備わっているのではないか?との懸念を抱かざるを得ない。
果たして、自身はどうだった?
草間・涼馬は自問する。
そんな彼の視界に高砂・飛遊午が入った。
最もアンデスィデに参戦している彼なら、何かを感じ取っているに違いない。
訊ねようと、歩み出した足が止まった。
違う!
この男は、この男だけは例外だ。
何せ、独りだけ“仮契約”しか果たしていない身だ。
この男は、盤上戦騎の基本的な操縦方法さえもインストールされずに、自力で解釈をして激しい戦いを潜り抜けてきたのだ。
しかも、誰ひとり殺害する事無く勝利を収めている。
まさに例外!
あの間延びした戦いぶり、とても破壊衝動に駆られたものとは思えない。
この魔導書チェスにおいて、ほぼ部外者な彼には、この事を話したところで、何の実感も得ないだろう。
とりあえずは、ツウラと約束した通りに、ココミとライクに報告をしておこう。
彼女たちの下へと向かった。
◆ ◆ ◆ ◆
クレハたちとはぐれてしまい、独りになってしまったキョウコは不安に駆られた。
今、このパーティーには、黒側のマスターや魔者たちも出席している。
と、いう事は。
首無しのジェレミーアも、この会場のどこかにいるに違いない。
前回は、彼のマスターに助けられ難を逃れたが、彼の能力である“固有結界”に閉じ込められてしまえば、何をされるか想像しただけで体の震えが止まらない。
そわそわしながら辺りを伺う。
ジェレミーアの姿は見えない。だけど、安心はできない。
知っている誰かの傍にいたい…。だけど、今はどういう訳か、ヒューゴもクレハも近くにいない。
二人を探しに行こうと歩き出すも、他人にぶつかりそうになって避けたら、足元がおぼつかなくなってしまい、後ろへと倒れそうになる。
履き慣れていても、ハイヒールで後ろに下がるものではない。体勢を立て直すことができずに、ただ後悔だけが脳裏をよぎる。
ポンッ!
背中が誰かに当たり、倒れずに済んだ。だけど。
人にぶつかってしまって、心から申し訳なく思う。
「ご、ごめんなさい」
振り返りながら謝る。と、彼女を支えてくれたのは、ジェレミーアのマスター、ケイジロウだった。
「あっ」
思わず目と目が合ってしまう。
高砂・飛遊午よりも頭ひとつ高い長身に、しっかりと身体を支えてくれる大きな手。
まるで包み込まれているような安心感がキョウコの心に広がった。
「足、大丈夫か?ぐねったりしていないか?」
ケガをしていないか心配してくれている。
ケイジロウの言葉がじんわりと胸に沁みてゆく。
顔がポカポカする。さっき冷たい物を口にしたばかりなのに。
「歩けるようだな。気をつけろよ」
そんなにまじまじと脚を見つめられると恥ずかしい。半歩ケイジロウから退いた。
すると、不思議そうな顔を向けてくる彼。
「あ、あの…、先程からジェレミーアの姿が見当たらないんだけど…」
恥ずかしさ紛らわせようと、話題を振った。
「アイツなら、ロボの手下共と共に外で見張りを任せている。仲間内からも快く思われていないから、お互いに顔を合わせないように配慮しているのさ」
ジェレミーアという人物像はベルタから聞いている。
彼は歴史に名を残す暗黒時代を代表する騎士だと聞き及んでいる。騎士道には程遠い、汚い手を平気で使ってくる事も。
そんな男を従えているケイジロウは皆からどう思われているのだろうか?
ジェレミーアのマスターというだけでも不憫に感じられる。
「ケイジロウさん…」
慰めるとまではいかないまでも、せめて話し相手になるくらいは。
思った矢先。
きらびやかな装飾品をあしらった黒衣のドレスをまとった女性をエスコートしている男性の姿が目に入った。
男性は。
かつてパーティーの席で大人たち相手にチェスを挑み、ことごとく打ち破っていた少年、明智・信長ではないか。
キョウコは思わず「明智さん」名を呟き、彼の下へと歩き出した。
「ん?」
歩み寄る少女の姿に気付いたナバリィが、ノブナガの耳元で囁く。
「あの娘、貴公の知り合いか?」
訊ねられ、少女の方へと向く。
「おぉ!」
驚きの声を上げるノブナガ。
彼の驚きは、いつもの黒玉の連中の前に晒す“ちょんまげ”に“どじょうヒゲ”の武将スタイルではない今の出で立ちに安心してのものだった。
あの姿を、猪苗代・恐子や御陵・御伽に見られる訳にはいかない。
パーティーに赴く、長髪オールバックスタイルにしていてホントに良かった。
心から安堵するノブナガであった。
それは、盤上戦騎に搭乗したパイロットが破壊衝動を抑えられなくなるというもの。
しかも、本人は意識すらしていないという。
木乃伊のアルルカンのように大々的に謳っているものは別として、他の騎体にも、そのような機能が備わっているのではないか?との懸念を抱かざるを得ない。
果たして、自身はどうだった?
草間・涼馬は自問する。
そんな彼の視界に高砂・飛遊午が入った。
最もアンデスィデに参戦している彼なら、何かを感じ取っているに違いない。
訊ねようと、歩み出した足が止まった。
違う!
この男は、この男だけは例外だ。
何せ、独りだけ“仮契約”しか果たしていない身だ。
この男は、盤上戦騎の基本的な操縦方法さえもインストールされずに、自力で解釈をして激しい戦いを潜り抜けてきたのだ。
しかも、誰ひとり殺害する事無く勝利を収めている。
まさに例外!
あの間延びした戦いぶり、とても破壊衝動に駆られたものとは思えない。
この魔導書チェスにおいて、ほぼ部外者な彼には、この事を話したところで、何の実感も得ないだろう。
とりあえずは、ツウラと約束した通りに、ココミとライクに報告をしておこう。
彼女たちの下へと向かった。
◆ ◆ ◆ ◆
クレハたちとはぐれてしまい、独りになってしまったキョウコは不安に駆られた。
今、このパーティーには、黒側のマスターや魔者たちも出席している。
と、いう事は。
首無しのジェレミーアも、この会場のどこかにいるに違いない。
前回は、彼のマスターに助けられ難を逃れたが、彼の能力である“固有結界”に閉じ込められてしまえば、何をされるか想像しただけで体の震えが止まらない。
そわそわしながら辺りを伺う。
ジェレミーアの姿は見えない。だけど、安心はできない。
知っている誰かの傍にいたい…。だけど、今はどういう訳か、ヒューゴもクレハも近くにいない。
二人を探しに行こうと歩き出すも、他人にぶつかりそうになって避けたら、足元がおぼつかなくなってしまい、後ろへと倒れそうになる。
履き慣れていても、ハイヒールで後ろに下がるものではない。体勢を立て直すことができずに、ただ後悔だけが脳裏をよぎる。
ポンッ!
背中が誰かに当たり、倒れずに済んだ。だけど。
人にぶつかってしまって、心から申し訳なく思う。
「ご、ごめんなさい」
振り返りながら謝る。と、彼女を支えてくれたのは、ジェレミーアのマスター、ケイジロウだった。
「あっ」
思わず目と目が合ってしまう。
高砂・飛遊午よりも頭ひとつ高い長身に、しっかりと身体を支えてくれる大きな手。
まるで包み込まれているような安心感がキョウコの心に広がった。
「足、大丈夫か?ぐねったりしていないか?」
ケガをしていないか心配してくれている。
ケイジロウの言葉がじんわりと胸に沁みてゆく。
顔がポカポカする。さっき冷たい物を口にしたばかりなのに。
「歩けるようだな。気をつけろよ」
そんなにまじまじと脚を見つめられると恥ずかしい。半歩ケイジロウから退いた。
すると、不思議そうな顔を向けてくる彼。
「あ、あの…、先程からジェレミーアの姿が見当たらないんだけど…」
恥ずかしさ紛らわせようと、話題を振った。
「アイツなら、ロボの手下共と共に外で見張りを任せている。仲間内からも快く思われていないから、お互いに顔を合わせないように配慮しているのさ」
ジェレミーアという人物像はベルタから聞いている。
彼は歴史に名を残す暗黒時代を代表する騎士だと聞き及んでいる。騎士道には程遠い、汚い手を平気で使ってくる事も。
そんな男を従えているケイジロウは皆からどう思われているのだろうか?
ジェレミーアのマスターというだけでも不憫に感じられる。
「ケイジロウさん…」
慰めるとまではいかないまでも、せめて話し相手になるくらいは。
思った矢先。
きらびやかな装飾品をあしらった黒衣のドレスをまとった女性をエスコートしている男性の姿が目に入った。
男性は。
かつてパーティーの席で大人たち相手にチェスを挑み、ことごとく打ち破っていた少年、明智・信長ではないか。
キョウコは思わず「明智さん」名を呟き、彼の下へと歩き出した。
「ん?」
歩み寄る少女の姿に気付いたナバリィが、ノブナガの耳元で囁く。
「あの娘、貴公の知り合いか?」
訊ねられ、少女の方へと向く。
「おぉ!」
驚きの声を上げるノブナガ。
彼の驚きは、いつもの黒玉の連中の前に晒す“ちょんまげ”に“どじょうヒゲ”の武将スタイルではない今の出で立ちに安心してのものだった。
あの姿を、猪苗代・恐子や御陵・御伽に見られる訳にはいかない。
パーティーに赴く、長髪オールバックスタイルにしていてホントに良かった。
心から安堵するノブナガであった。
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