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[24]白い闇、黒き陽光
-261-:君たちの意見など、これっぽっちも聞く耳持たないよ
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アミィさんが、アーマーテイカーですって?
言われてみれば、初めて逢うはずのアミィに既視感を覚えた。
あれは彼が以前テレビに出まくっていたからではなく、先のアンデスィデにて、盤上戦騎姿の彼に搭乗したからに他ならなかった。
「そ、その節はどうも…」
改めてアミィにお礼を述べる。と。
「セットの事なら、私、本業だから気にしてないわ」
本業なら、なおさら気にしてちょうだいよ。そうじゃなくて。
「アミィさんの能力、思いっきり公開ししてしまって、アナタのマスターにどうお詫びを申し上げれば…」
そんなクレハの唇を、アミィは立てた人差し指でそっと押さえた。
「そんなの気にしないで。クレハちゃんの命を守るために使ってくれて、私、とても光栄に感じているのよ。それに」
はちきれんばかりのタキシード姿で現れたドウカへと向き直る。
「一通りの能力が敵に知れようとも、彼ならきっと返り討ちにしてくれるわ」
あんなダブついた元スタープレイヤーに期待していいのかな?他人事ながら不安に感じる。
「セカンドゲームまでには、何としてでも彼には元々以上の運動能力と勘とやらを磨きまくって、さらに強くなってもらいます。それはここにいる全員がしなくちゃならない課題よ」
慰労パーティーだったはずなのに、決起集会の色を滲ませている。
それに、セカンドゲームって何?
もう一度魔道書チェスが行われるって事?
そういえば、自身も含めて“失った”はずの駒のマスターが一堂に会している事にも、今になって疑問に感じた。
「オロチ様とそのマスターの姿が見えませんが」
ベルタが皆に訊ね。
「こんなにたくさんの人がいるなんて、驚きですよ」
辺りを見回して驚くタツローに、「全員揃えたいところやったけどな」答えるルーティ。
「オロチ様と神楽・いおり様はご辞退なさいました。お二人とも、お忙しい方々なので、とても残念に思えてなりません」
「それは残念だ。彼女たちとは直接話をしたかったのだが」
ココミが説明し、ライクが応えている最中、オトギはまるで呆れたと言わんばかりにフンッと鼻を鳴らして、給仕の元へと飲み物を受け取りに行った。
巻き込んだ張本人たちに何か言いたげだったのだろう。
だけど、そんな事じゃない!
そんなに先走って話を進めてもいいの?
今行っているグリチェスを余所に、こんなパーティーを敵方と仲良く催している場合では無いと思う。
それに、だいたいあの男は何?誰?
顔の右半分を隠す長髪男性を見据える。
「OH!ヒューゴボーイ、それにリョーマボーイ」すかさず「その呼び方はヤメロ」と二人にツッコまれている男性が益々胡散臭く感じられる。
「あの人は?」
傍に居たベルタに訊ねた。
「ああ、あの方はミュッセ・ラーン・ペンドラゴン様。ココミの姉君と対戦なさっている方にございます」
もうひとつのグリチェスが遠くで行われているのは知っている。それにココミの姉のラーナ・ファント・ドラコットが参戦している事も知っている。
だけど、どうして遠くで戦っているミュッセがこの日本にいるのか?理由が知りたい。
直接本人に訊くべきか?それともココミを通して。
「ミュッセ殿、それでアンデスィデの日取りは決定したのかい?」
ライクがミュッセに訊ねているではないか。
「早く手を打ってくれないと、こちらの手と噛み合わなくなる。ちょうど今、女王同士が当たるように、ココミと調節しているんだが」
チェスの手を調整しているようだ。
しかも、クィーン同士を当たらせるって、どういう事だろう。
「復興が始まるまでに、何としてでも先にアンデスィデを行わなければならない」
ライクがミュッセに釘を刺す。が、それはどういう事なのか?疑問に感じた矢先、オトギがライクに訊ねた。
「また市街地でアンデスィデを発生させるの!?」
半ば抗議でもある。
「オトギ。キミのお爺さんにも、この件に関して了承を得ている。僕たちが天使たちを倒した後の復興の手助けをする代わりに、場所を提供してもらうよう要求したからね」
すべてのお膳立てを祖父が仕切っていると聞かされ、オトギは信じられないと首を横に振った。
「ヒューゴにも言っておくよ。キミのお母さんが所属している国防省も、この件に関してすでに了承済みだよ。だから、君たちの意見など、これっぽっちも聞く耳持たないよ」
これぞまさに災害→復興のマッチポンプ。
「皆サン、許せない思いで一杯という顔をなさっていますが、それもこれも我が敵アルマンダルの天使たち、そしてクレイモアたちを倒すため、どうか許して欲しいのデース」
この状況で自らの利益を優先する彼が、胡散臭さを通り越して、危険な人物以外の何者でもない事を思い知らされた。
「ココミ!」
ヒューゴがココミを睨み付ける。
だけど、ココミは怖気付く事なく、凛とした姿勢でヒューゴと対峙する。
「次の手で、姉の戦力を大幅に、徹底的に削ぎます。そして彼、ミュッセ・ライオット・ペンドラゴンを勝利へと導き、その後、私とアンデスィデの無いチェスで雌雄を決します」
次々と大変な事を口走ってくれるココミ。
アンデスィデの発生しないチェスでの対戦、それは心から素晴らしいと思う。
だけど。
このミュッセという男、名前まで定まっていないとなると、益々胡散臭く感じてならない。
言われてみれば、初めて逢うはずのアミィに既視感を覚えた。
あれは彼が以前テレビに出まくっていたからではなく、先のアンデスィデにて、盤上戦騎姿の彼に搭乗したからに他ならなかった。
「そ、その節はどうも…」
改めてアミィにお礼を述べる。と。
「セットの事なら、私、本業だから気にしてないわ」
本業なら、なおさら気にしてちょうだいよ。そうじゃなくて。
「アミィさんの能力、思いっきり公開ししてしまって、アナタのマスターにどうお詫びを申し上げれば…」
そんなクレハの唇を、アミィは立てた人差し指でそっと押さえた。
「そんなの気にしないで。クレハちゃんの命を守るために使ってくれて、私、とても光栄に感じているのよ。それに」
はちきれんばかりのタキシード姿で現れたドウカへと向き直る。
「一通りの能力が敵に知れようとも、彼ならきっと返り討ちにしてくれるわ」
あんなダブついた元スタープレイヤーに期待していいのかな?他人事ながら不安に感じる。
「セカンドゲームまでには、何としてでも彼には元々以上の運動能力と勘とやらを磨きまくって、さらに強くなってもらいます。それはここにいる全員がしなくちゃならない課題よ」
慰労パーティーだったはずなのに、決起集会の色を滲ませている。
それに、セカンドゲームって何?
もう一度魔道書チェスが行われるって事?
そういえば、自身も含めて“失った”はずの駒のマスターが一堂に会している事にも、今になって疑問に感じた。
「オロチ様とそのマスターの姿が見えませんが」
ベルタが皆に訊ね。
「こんなにたくさんの人がいるなんて、驚きですよ」
辺りを見回して驚くタツローに、「全員揃えたいところやったけどな」答えるルーティ。
「オロチ様と神楽・いおり様はご辞退なさいました。お二人とも、お忙しい方々なので、とても残念に思えてなりません」
「それは残念だ。彼女たちとは直接話をしたかったのだが」
ココミが説明し、ライクが応えている最中、オトギはまるで呆れたと言わんばかりにフンッと鼻を鳴らして、給仕の元へと飲み物を受け取りに行った。
巻き込んだ張本人たちに何か言いたげだったのだろう。
だけど、そんな事じゃない!
そんなに先走って話を進めてもいいの?
今行っているグリチェスを余所に、こんなパーティーを敵方と仲良く催している場合では無いと思う。
それに、だいたいあの男は何?誰?
顔の右半分を隠す長髪男性を見据える。
「OH!ヒューゴボーイ、それにリョーマボーイ」すかさず「その呼び方はヤメロ」と二人にツッコまれている男性が益々胡散臭く感じられる。
「あの人は?」
傍に居たベルタに訊ねた。
「ああ、あの方はミュッセ・ラーン・ペンドラゴン様。ココミの姉君と対戦なさっている方にございます」
もうひとつのグリチェスが遠くで行われているのは知っている。それにココミの姉のラーナ・ファント・ドラコットが参戦している事も知っている。
だけど、どうして遠くで戦っているミュッセがこの日本にいるのか?理由が知りたい。
直接本人に訊くべきか?それともココミを通して。
「ミュッセ殿、それでアンデスィデの日取りは決定したのかい?」
ライクがミュッセに訊ねているではないか。
「早く手を打ってくれないと、こちらの手と噛み合わなくなる。ちょうど今、女王同士が当たるように、ココミと調節しているんだが」
チェスの手を調整しているようだ。
しかも、クィーン同士を当たらせるって、どういう事だろう。
「復興が始まるまでに、何としてでも先にアンデスィデを行わなければならない」
ライクがミュッセに釘を刺す。が、それはどういう事なのか?疑問に感じた矢先、オトギがライクに訊ねた。
「また市街地でアンデスィデを発生させるの!?」
半ば抗議でもある。
「オトギ。キミのお爺さんにも、この件に関して了承を得ている。僕たちが天使たちを倒した後の復興の手助けをする代わりに、場所を提供してもらうよう要求したからね」
すべてのお膳立てを祖父が仕切っていると聞かされ、オトギは信じられないと首を横に振った。
「ヒューゴにも言っておくよ。キミのお母さんが所属している国防省も、この件に関してすでに了承済みだよ。だから、君たちの意見など、これっぽっちも聞く耳持たないよ」
これぞまさに災害→復興のマッチポンプ。
「皆サン、許せない思いで一杯という顔をなさっていますが、それもこれも我が敵アルマンダルの天使たち、そしてクレイモアたちを倒すため、どうか許して欲しいのデース」
この状況で自らの利益を優先する彼が、胡散臭さを通り越して、危険な人物以外の何者でもない事を思い知らされた。
「ココミ!」
ヒューゴがココミを睨み付ける。
だけど、ココミは怖気付く事なく、凛とした姿勢でヒューゴと対峙する。
「次の手で、姉の戦力を大幅に、徹底的に削ぎます。そして彼、ミュッセ・ライオット・ペンドラゴンを勝利へと導き、その後、私とアンデスィデの無いチェスで雌雄を決します」
次々と大変な事を口走ってくれるココミ。
アンデスィデの発生しないチェスでの対戦、それは心から素晴らしいと思う。
だけど。
このミュッセという男、名前まで定まっていないとなると、益々胡散臭く感じてならない。
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