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[23]穢れ

-247-:来い!アルルカン3、建前・静夏!!

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 クロックアップの世界。

 それは盤上戦騎ディザスターの反応速度が10倍となる世界。

 ただし、射撃武器やスラスターによる移動速度は変わる事が無いので、クロックアップを使用している以外の者には、急激に騎体だけが早送りで動いているように見える。

 クロックアップ継続の条件は。

 魔力が尽きるまで、もしくはパイロットの息が続くまでの2点。

 それまでパイロットは、まるで水中に潜っているかのごとく、コクピット内では息を止めていなければならない。

 だが、その“縛り”を解き放った騎体が、ダナと対峙しているアルルカン第三形態ファイナルだ!

 まるで早送り画面を見ているような光景に、未だダナが倒されずに持ちこたえているのが不思議でならない。

 クレハはハンドガンをリロードをしつつ、息を呑んだ。

 ダナが上空へと向けて急上昇した。そして、戦闘機形態ファイターモードへ。

「息が切れたのね…」
 呟くも、この離脱は魔力の再チャージかもしれない。

 アルルカン3が、そんなダナを追い掛けて行く。

 まるで、特急電車が駅のホームを通り過ぎて行くような光景。あっという間にガンランチャーの前を通り過ぎて行ってしまった。

「あのアルルカン3って…スピードまでメチャクチャ速くなっている…」
 ガンランチャーではとても逃げ切れそうにないほどのスピードを誇っている。

 どうする?どうする?どうする?

 考えろ。考えろ。考えろ!

 ハンドガンの銃口をバイザーに押し当てて考えを巡らせる。

 ピピッとアラームが鳴り。


 ―新たな敵盤上戦騎バトル・ピースの情報を獲得しました。―


 メッセージが送られてきた。

 ダナがクロックアップ中に敵と接触、敵情報を拾ってきてくれたのだ。

 アルルカン3の騎体情報は。

 ”常時クロックアップを可能としている”。そうじゃない!そんな情報はいいの!他は?

 装甲強度を見る限り、最初のフォームよりも弱くなっている。つまり、攻撃と速力にステータス数値を全振りしたカタチだ。おまけに火力は、掌に内臓されたハンドガンにも劣るセーカー砲。肉弾戦一辺倒な構成となっている。

 だったら!

「グラッツェよ!ダナ」
 そこはリョーマに感謝しない。

 ガンランチャーでアルルカン3を追跡開始!

「な、何をやってんです?クレハさぁん。まさか、ヤツと正面切って戦おうと言うんじゃないでしょうねぇ?」
 告げながらガンランチャーはアンデスィデを終了させられるロボの位置を正面ディスプレイ上に示した。

「逃げられないけど、追い掛けられる。私たちは中長距離で真価を発揮する騎体なんだよ。射程距離に捉えた瞬間、ヤツの頭をブチ抜いてやる」
 ただ“暗殺”と伝えたかったのだが、肝心な時に、その単語が出てこなかった。


 ダナが空中でディザスター形態に変形、アルルカン3へと騎体を向ける。

 魔力は!

 一瞬だけならクロックアップを発動させる程度は回復した。

 バカげた戦いではあるけれど。

 ここで差し違える覚悟はできている。

 ただ、高砂・飛遊午との決着を着けられなかったのは心残りではあるが。

「来い!アルルカン3、建前・静夏!!」
 アルルカン3を迎え撃つ。

「くたばる覚悟は出来ったつー事だなぁ!!」
 アルルカン3が迫り来る。

「クロックアップ!!」
 ダナの頭部バイザーが下りた。

 アルルカン3は強敵ではあるが、今は隻腕。腕を失った左側に回り込めば、ヤツの死角を突ける。

 シズカの正拳突きを躱してアルルカン3の左側へと回り込む。

 死角。

 ここからだと防御は出来まい。

「甘ぇよ。騎士サマよぉ」
 このタイミングで、シズカは効果魔法エフェクトマジックカードを発動!損傷回復リペアを発動させた。

 残る力を振り絞って繰り出された渾身の“巌流ツバメ返し”の2振りは、復活したアルルカン3の左腕によって、あえなく弾かれてしまった。

 さらに。

「まずは頭だぁ。さぁ、声の綺麗なお姉さん。どんな悲鳴を上げてくれるかねぇ!」
 狂気の凶器と化したアルルカン3の右拳がダナの頭部へと迫る。

 とたん、ダナのクロックアップが解けた。

 アルルカン3の動きが全く捉えらえない!

 だが、一瞬だけ、その姿を捉える事ができた。

 アルルカン3の騎体が、まるで横から追突されたように、横回転を始めた。

「何が起きた?アルルカン!」
 回転しながらダナを捉え続ける画面を見やり、シズカが訊ねた。

「ちっくしょおーッ!!思わぬ横槍が入ったわッ!」
 とても悔しそうなアルルカンの現状報告。

「やかましい!何をやられたのか訊いているんだ!さっさと答えろ」
 ロボットは大人しく、ロボットらしく報告だけしてくれれば良い。余計な事は言わなくていい。

「両足をぶった切られたわ。あの合体魔神ってヤツに。クキィィィッ!!」
 金切り声を上げて悔しがっている。

「いいじゃねぇか」「へ?」
 危機に瀕しながらも胸躍らせるシズカにアルルカンは困惑した。

「いいじゃねぇか。これでようやく3騎まとめて始末してやれるって訳だ。バラバラに逃げられたら、追い掛けっこするのに骨が折れちまうからよぉ」
 シズカは最後の効果魔法エフェクトマジックカードを使用。

 アルルカン3が被ったダメージを全回復した。

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