上 下
238 / 351
[22]聖剣&魔剣

-229-:アイツはバケモノか…?

しおりを挟む
 砲撃型の次は、何だかよく分からないスピーカーを体中に取り付けていたかと思えば、今度は関節射撃型かよ…。

 よくよく意図の掴めない着せ替え人形っぷり。

「ヤバいですよォ。あんなのしこたま撃ち込まれたら、私たち、ひとたまりも無いですよぉ」
 ガンランチャーが青ざめているのが手に取るように分かる。

 正直、この状況、ヘビににらまれたカエルのようだ。

 それよりも、やらなければならない事が!

「聞こえる!?タツローくん、オトギちゃん!そのイヌの頭をした連中は全部で40匹いるわ。その親玉は今、私の目の前にいる」
 どうせやられるのだし、やれる事は全てやっておこう。

「クレハ先輩!」の声にすかさず「来るな!来ちゃダメ!」

「いい?良く聞いて。そいつらにはステルスは効かないわ。犬は鼻が利くからね。だから、リョーマくんが戻るまで、二人で根気よく敵の数を減らしておいて。必ず彼がアナタたちを助けに来てくれるから」
 伝える事は全て伝え終えた。

「ふんっ!私たちの能力を知ったところで、袋叩きで潰す事に変わりは無いわ」
 ロボが、ガンランチャーめがけてブーメランをブン投げた。

 回転しながら迫り来るブーメラン。

 クレハは身を屈めてこれを躱すと、外部音声を拾ってブーメランを捕捉、追跡した。

 ようやく本来の使い方を成されたブーメラン。

 案の定、孤を描いて戻って来るではないか。

 非常に分かり易い軌道だった。再度避けるのも簡単。

 パシィッ!戻ってきたブーメランをロボが掴む。

「なかなかやるな。ドラゴンの騎士」
 ロボからの称賛。だけど、もうちょっと頭を捻れよ!ブーメランが戻ってくる最中に両腰の機関砲を撃ってくるなり、他にも出来る事があったでしょうに。

「公園でイヌとフリスビーを投げて遊んでいるんじゃねぇぞ!」
 イエヤスが割り込んできた。

 傍から見れば、さぞ、間延びした戦いに見える事でしょう。

「このミドリ(ガンランチャー)だけは俺サマの手でブッ潰さなきゃあ、腹の虫が治まらねぇ!トモエ!そこをどけぇ!」
 両腕を前へと伸ばし、腕に備え付けられたミサイルの発射体勢に入る。

「獲物の横取りなんて、セコいマネ、しないでくれる?」
 シンジュが苦情を申し立てる。

「うるせぇッ!トモエ!お前こそ!僧正ビショップのくせに、格下の兵士ポーン相手にマウント取ってんじゃねぇ!」
 敵さんからネタばらしをしてくれた。

「クレハさん!そのワーウルフを倒せばアンデスィデ終了です」
 ココミから、とても貴重な情報が提供された。

 盤面上、黒側ビショップが白側ナイトをテイクしている。

 こんな、下らない戦いを終わらせるには、ロボにダメージ総数60パーセント以上を与えればいい。



 と、突然ロボのコクピット内にアラートが鳴り響いた。
 
 正面ディスプレイには“LOCK ON”表示が。誰かにロックオンされたのだ。

「何ィ!?」
 そして向かって飛んでくるのはミサイル。

 何と!イエヤスがガンランチャーもろともロボをもロックオンしてミサイルを発射したのだ。

「貴様ぁ!正気か!」
 ロボの怒りが木霊する。

「冗談じゃないわよ!マスターが血迷って攻撃しているのよ。私にはどうする事もできないわ!」
 敵の通信が丸聞こえ。

 このツウラという魔者の声。聞けば聞くほど、どこかで聞いたような気がしてならない。

 とにかく。

 ハンドガンを発砲して向かい来るミサイルを撃ち落とした。

 だけど。

 乱心したのか?イエヤスは今度は複数のミサイルを同時発射してしまった。

「アイツ…私たちもろとも始末するつもりか…」
 ブーメランをシールドに戻して防御に入る。そして後退。

 下がりゆくロボを目にするなり、完全に人間の盾にされてしまったクレハは、腹を括って迎撃態勢に入った。

 両手のハンドガンが唸りを上げて、次々とミサイルを撃ち落としてゆく。

 残弾数がゼロにならない内に、ミサイルの攻撃間隔が空いている隙にリロードを終えて、なおも続けて迎撃を続ける。

「じゅ、12発同時も防ぎやがった…。だったら!」
 両脚の36発ものミサイルを同時に発射。乱数計算させて、あらゆる方向からガンランチャーを追尾、攻撃する。

 その間、クレハの瞳は激しい動きを見せて、それらを次々とLOCK ON!!向かい来るミサイルたちを片っ端から撃ち落としてゆく。


「スゴイ…」
 すさまじいまでのクレハのガンさばきに、ココミは息を呑んだ。

「スゴいでしょう?クレハさん」
 小声でガンランチャーが通信を入れてきた。「はい、正直驚いています」

 確か、高砂・飛遊午から得た情報では、クレハはアミューズメントのガンシューティングゲームでパーフェクトを叩き出していた(ただし2Pで)。

 圧巻のガンさばき。

「さすがは我が真のマスターがクレハさんを指名しただけのコトはありますねぇ」
 この通信は直接回線で行っており、クレハには二人の会話は聞こえていない。



 小出ししていたミサイルが、とうとう尽きてしまった。

「アイツはバケモノか…?」
 イエヤスは信じられないと首を横に振る。

 空中にて茫然と立ち尽くすツウラなんて、さて置き、ロボは何処かと向いた先には、彼の姿は見えなくなっていた。

「また逃げやがったか…」
 リロードを済ませながら、仕方なくツウラへと向いたら。

 またもや全身にピンク色の魔方陣を展開させているではないか。

「まだ何かあるのかよォ」
 今度は何で襲ってくる?ガンランチャーが身構えた。

 バァーンッ!!

 ツウラが新たな装備をまとった!

 かと思えば。

 今さっきまで着込んでいたミサイル装備ではないか。

「チッ!性懲りも無く、まぁ」
 呆れてモノが言えない。

「何度来てもムダだからね。アンタのミサイルなんざ、ぜーんぶ撃ち落としてやるんだから!」
 絶対の自信を見せるクレハ。

 確かに複数発射も、乱数発射にもすべて対応してみせた。これには脱帽する。

 だが!

 それらを全部押し込めて撃てば、絶対に今度こそガンランチャーを叩き潰せるはず。

「いっくぜぇーッ!!」
 全弾発射!!その数140発。そして全弾乱数発射!これでミサイルの軌道は読めはしない。


 敵が40騎どころの騒ぎではない。

 当たれば即死。

 クレハはリアルのガンシューティングゲームに身を投じる事となった。
しおりを挟む

処理中です...