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[21]はじめてのアンデスィデ

-223-:他の騎体の事は知らないが、マミーのアルルカンの事だけは教えらえる

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 4騎目の敵が現れた?

「どういう事なのよ!説明して!ココミちゃん!」
 ココミに説明を求める。も。

「え?えぇ?訊ねられましても、私にも何が何だか」
 困惑するあまり、ココミは眼前に座るドウカへと向いた。

「あのぉ…差し支え無ければ、敵の正体や能力等を教えて頂けると有難いのですが…」
 助けを乞う。

 だけど。

「知らん。意地悪なんかじゃなくて、本当に知らないんだ。俺たちは自分の相方の事しか知らないし、知る必要は無いとライクから釘を刺されていたのでな」

 ココミは目線だけをライクたちへと向ける。

「当然だろ?味方同士であれ、能力はお互い隠しておいた方が身の安全が保障される」
 言われてみれば、その通りだ。

 いつ、どこで情報が漏れるか、分かったものじゃない。

 それなら、いっその事、知らされていない方が組織にとって・・・・・・は安全だ。例え仲間を拷問で失う事になったとしても。

 だけど、そういう事はもっと早くに教えてもらいたかった。

 コールブランドの能力は白側のほぼ全員が知っているし、ルーティに至っては、自ら1日に一度だけ口から火の玉を吐けると公表してしまっている。

 どうやら彼らから情報を引き出すのは難しそうだ。
「クレハさん。残念ながら、敵盤上戦騎の数が多いのは、何らかの能力によるものとしか、こちらでは推測しかできません。何の力にもなれなくて、ごめんなさい」

 魔導書を通して頭を下げる。

「いやいや、ココミちゃんが謝る事は無いよ。今さら謝ってもらってもしょうがないし」
 言い方は悪いけれど、幾分か救われた気分になる。

 クレハの、この何気ない遠慮のない態度が、普通の人間に接しているようで、王位継承戦争と言う血生臭い現実を忘れさせてくれる。

「お気をつけて」
 再び彼女を戦地へと送り出す。戦闘中だというのに、「うん」まるで学校へと向かうような、まったく気負いの無い返事。

 顔を上げると、真島・導火の顔が眼前いっぱいに広がっていた。

 思わずのけ反るココミ。
「な、何なのですか?まだ私に、何か用ですか?」

「他の騎体の事は知らないが、木乃伊マミーのアルルカンの事だけは教えらえる」

「え?」
 ヒューゴとリョーマが戦った騎体だ。

 未だ知らない能力を隠し持っているのか?
「アルルカンって…包帯を操る以外に、何か特別な能力を持っているのですか?」

「ああ。実は、アイツは三段変身能力トリプルチェンジャー騎なんだ。第一形態は汎用型。第二形態は出力特化型。そして第三形態は…」
 ドウカの顔がズンッと眼前へと迫ってきた。ココミは驚くあまり、さらにのけ反った。

「アルルカンの第三形態は、射撃兵器こそ持たないが、常時クロックアップ能力を発動させている、それ以前のどの形態よりも恐ろしい能力を秘めている。だから、絶対にヤツを第三形態に変身させるな」
 第一形態でさえ、ヒューゴは苦戦したというのに、その上2つも上位形態を残しているというのか?

 さらに、常時クロックアップ状態て…チートにも程がある。

 よくよく考えてみれば、どこかで聞いたことがあるような七つの玉を集めようとする宇宙生物のようなハナシだが、ここは素直に彼の忠告を聞いておこう。

「奴は今、変形途中にある。大きな繭を形成して中で体組織を一から組み直しているんだ」
 それは、大変な情報を得た。

 ココミは急いでリョーマを呼び出した。
「リョーマさん!大変です。アルルカンのパワーアップを何としても阻止して下さい!アルルカンは繭の中に入って変身している最中です」

 返ってきた答えは「繭の中?」と疑問詞。

 リョーマにとって、ココミの言っている事は不可解でならない。

 同時回線で会話を聞いていたガンランチャーが「あっ」声を上げた。

「ちょっとランちゃん!やめてくれる?今、必死でロボの攻撃を避けているところなんだし、変な声をあげられてしまうと、そっちに気を取られて集中できないよォ!」
 会話している最中にも、ブーメランでお腹を斬られそうになる。

 体をくの字にして、これを避ける。

「ココミ様ぁ、その繭、見たコトありますヨ」
 ガンランチャーには心当たりがあった。が。

「ランちゃん。会話するなら直接やって。今、頭の上で二人に喋られると、気が散って斬られて死んでしまいそう」
 雑音は集中力の天敵とも言える。とにかく集中したいので静かにしておいて欲しい。

 鈴木・くれははとても忙しい。

 ガンランチャーは仕方なく直通回線でココミと会話を行う事にした。

「ガンランチャー。アルルカンの居場所を知っているのですか?」

「はい。市街地から離れた田園地帯のど真ん中に、どっかりデッカイ繭を構えていますヨ。今から、その座標を送りますねー」
 アルルカンの居場所は掴んだ。

「では、リョーマさん。アルルカンは貴方にお任せします。よろしいですね?」

「ああ。今度こそ、ヤツを叩いて見せる。それよりも、鈴木さんの方は大丈夫なのかい?」
 ココミは今になって、何故ガンランチャーが直通回線で通信を行ってきたのか疑問に感じた。後ろからはクレハの声がまるで聞こえなかった。

 彼女にしては、随分と大人しいものだと感じつつ。

「クレハさんなら、うまくやっている事でしょう。それよりもリョーマさん。こうしている間にもアルルカンは着々とパワーアップを図っています。それだけは、なんとしてでも阻止して下さい。お願いします」
 送り出した。

 一方、問題ナシとココミによって勝手に見なされてしまったクレハは、救援を回してもらえずに、単騎奮戦していた。
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