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[21]はじめてのアンデスィデ
-222-:コイツが“ビショップ”だ
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イヌ頭の盤上戦騎が長板を振り下ろしてきた!
「きゃあッ!」
悲鳴を上げながらも、クレハは狙撃ライフルを横一文字に構えて、見事防御に成功。
すかさず。
180度に折り畳んでいた銃剣を起こして狙撃ライフルを銃剣モードへと変形させた。
「コイツ!」
受けの体勢から振り切るようにして銃剣を振るい、相手との間合いを広げる。
銃剣による攻撃をヒョイッと後方へと跳んで躱すと、イヌ頭はさらに跳んでビルの屋上へと陣取った。
「アイツ…」
頭上の敵盤上戦騎が、一目で人狼のロボだと察した。
そして、ロボが手にする長板の正体が“ブーメラン”である事も同時に把握した。
それにしても。
ものスゲー解り易いシルエットね…。
頭はイヌもとい!オオカミそのものだし、ライフの時と同じく肩の部分にこの季節にしては暑苦しいファーを付いている。
そしてなによりも、モフモフのグレー色の尻尾があるやんけ。
「あなた、シンジュちゃんでしょ?」
外部音声で訊ねた。
「その声…トラの友達の…」
どうやら気付いてくれたようだ。
「高砂・飛遊午に、いっつも金魚のフンみたいにくっ付いている…」
確かに傍目から見たら、そうなんだろうけどさ…。
「毎日髪型変えている目つきの悪い…」
意外と私の事を見ているのね?
「弓道部にいる…」
そこまで詳しく知っているんかい!
「うーん…だけど肝心の名前が思い出せないのよね…。確か在り来たりな苗字の子だって言うのは覚えているんだけど」
「もう!全然覚えていないじゃない!私の名前は“鈴木・くれは”!覚えておきなさい!」
散々待たされて、最後まで名前が出なかったので、自ら名乗る事に。しかし。
「貴女こそ!私が隣のクラスにいたのを知らなかったくせに!」
それを言われてしまえば、ぐうの音も出ない。
シンジュはロボ越しにクレハたちを見下ろしたまま。
「貴女の名前なんて覚える必要は無いわ。明日からはもう、貴女と顔を合わせる事も無いのだから」
「え?どゆコト?」
訊ねる間さえも与える事無く、シンジュはいきなりブーメランを手に斬りかかってきた!
ブーメランの一閃を転がりながら避ける。
その間に、ステルスシートを畳んで身動きしやすくしておいた。
「わ!わっ、ちょ、ちょっと待ってよ。どうして私たちが殺し合わなきゃならないの?」
続けざまに繰り出されるブーメランの斬撃をよけながら、話し合いを求める。
今度は逃がさないと繰り出した両手でのブーメランによる斬撃は、身をかがめて避けたガンランチャーの頭を通り越してビルへと突き刺さった。
ひとまずこれで当分、斬り掛かることはできない。
「どうやら、とっくに私たちの居場所は知られていたようですね」
ガンランチャーが告げる。
「こんな状況で何を言っているの?」
危うく殺されかけているのに、分析なんて後にして欲しいのだが。
「見て下さい、クレハさん。ビルの壁面に続いている穴の数々。この盤上戦騎、とっくに私たちを捕捉していて、レーダーにも監視カメラにも映らないビルの壁を伝って私たちに近づいてきたようです」
言われてみれば、そうかもしれない。
だけど、そんな悠長に分析している場合でもない。
「クレハさん!」
今度はココミから通信が入った。「何よ、こんな時に!」
「気を付けて下さい。アルルカンが騎士の駒なら、先程のバンシーのツウラか、そのワーウルフのロボのどちらかが僧正の駒という事になります」
どうでもいい状況で告げられる、最悪の二者択一。
できれば、目の前に対峙するロボが兵士であって欲しい。だけど、
ポーンの駒であるガンランチャーの頭頂高が9メートルほどに対して、このロボとやらは、明らかに一回り大きく14メートルはある。
骸骨亡者のキャサリンよりも背が高い…。
先ほど頭を吹き飛ばしてやったバンシーのツウラはそんなに長身ではなかった。
単純に考えても。
コイツが“ビショップ”だ。
(何で初戦でいきなり上位の駒とブチ当たるのよ…)
宝くじなら嬉しい限りだが、貧乏くじもイイところだ。
「大人しくくたばりなさい」
振り下ろされるブーメランをかいくぐり際に、銃剣でロボの太腿部を斬り付ける。
「ぐぅッ」
痛みに呻き声を上げるロボに対して、咄嗟に「ごめんなさい」が出てしまう。
再びロボがガンランチャーへと向いた時には。
みるみる内に破損個所が回復していっているではないか。
「コイツ…この盤上戦騎、魔方陣も展開させないで傷口を治した(直した)って言うの?」
厄介な事に、治癒能力を有している。
「こんな短小な刃物じゃ、アイツを倒せない…。どうしよう?」
半ば事故のように斬り付けておきながら、頭の切り替えの早い事。
腕や脚を斬り落とせば治癒回復の余地を与えずにダメージを負わせる事が出来るかもしれない。だけど、銃剣のようなオマケの武器では、それは望めない。
「クレハさん!」
今度はタツローから通信が入った。
「何なの!タツローくん。私、今、とっても忙しいのよ。敵と遭遇しちゃって」
不安なのは分かるが、今は遠慮願いたい。
「クレハさん!イヌのような敵が現れて現在交戦中なんです。これで敵は全騎出揃いました!」
助けを求めるでもなく…ただの報告だった。
「えぇ!?」
交戦中って…。
敵は3騎だけじゃないの!?
「きゃあッ!」
悲鳴を上げながらも、クレハは狙撃ライフルを横一文字に構えて、見事防御に成功。
すかさず。
180度に折り畳んでいた銃剣を起こして狙撃ライフルを銃剣モードへと変形させた。
「コイツ!」
受けの体勢から振り切るようにして銃剣を振るい、相手との間合いを広げる。
銃剣による攻撃をヒョイッと後方へと跳んで躱すと、イヌ頭はさらに跳んでビルの屋上へと陣取った。
「アイツ…」
頭上の敵盤上戦騎が、一目で人狼のロボだと察した。
そして、ロボが手にする長板の正体が“ブーメラン”である事も同時に把握した。
それにしても。
ものスゲー解り易いシルエットね…。
頭はイヌもとい!オオカミそのものだし、ライフの時と同じく肩の部分にこの季節にしては暑苦しいファーを付いている。
そしてなによりも、モフモフのグレー色の尻尾があるやんけ。
「あなた、シンジュちゃんでしょ?」
外部音声で訊ねた。
「その声…トラの友達の…」
どうやら気付いてくれたようだ。
「高砂・飛遊午に、いっつも金魚のフンみたいにくっ付いている…」
確かに傍目から見たら、そうなんだろうけどさ…。
「毎日髪型変えている目つきの悪い…」
意外と私の事を見ているのね?
「弓道部にいる…」
そこまで詳しく知っているんかい!
「うーん…だけど肝心の名前が思い出せないのよね…。確か在り来たりな苗字の子だって言うのは覚えているんだけど」
「もう!全然覚えていないじゃない!私の名前は“鈴木・くれは”!覚えておきなさい!」
散々待たされて、最後まで名前が出なかったので、自ら名乗る事に。しかし。
「貴女こそ!私が隣のクラスにいたのを知らなかったくせに!」
それを言われてしまえば、ぐうの音も出ない。
シンジュはロボ越しにクレハたちを見下ろしたまま。
「貴女の名前なんて覚える必要は無いわ。明日からはもう、貴女と顔を合わせる事も無いのだから」
「え?どゆコト?」
訊ねる間さえも与える事無く、シンジュはいきなりブーメランを手に斬りかかってきた!
ブーメランの一閃を転がりながら避ける。
その間に、ステルスシートを畳んで身動きしやすくしておいた。
「わ!わっ、ちょ、ちょっと待ってよ。どうして私たちが殺し合わなきゃならないの?」
続けざまに繰り出されるブーメランの斬撃をよけながら、話し合いを求める。
今度は逃がさないと繰り出した両手でのブーメランによる斬撃は、身をかがめて避けたガンランチャーの頭を通り越してビルへと突き刺さった。
ひとまずこれで当分、斬り掛かることはできない。
「どうやら、とっくに私たちの居場所は知られていたようですね」
ガンランチャーが告げる。
「こんな状況で何を言っているの?」
危うく殺されかけているのに、分析なんて後にして欲しいのだが。
「見て下さい、クレハさん。ビルの壁面に続いている穴の数々。この盤上戦騎、とっくに私たちを捕捉していて、レーダーにも監視カメラにも映らないビルの壁を伝って私たちに近づいてきたようです」
言われてみれば、そうかもしれない。
だけど、そんな悠長に分析している場合でもない。
「クレハさん!」
今度はココミから通信が入った。「何よ、こんな時に!」
「気を付けて下さい。アルルカンが騎士の駒なら、先程のバンシーのツウラか、そのワーウルフのロボのどちらかが僧正の駒という事になります」
どうでもいい状況で告げられる、最悪の二者択一。
できれば、目の前に対峙するロボが兵士であって欲しい。だけど、
ポーンの駒であるガンランチャーの頭頂高が9メートルほどに対して、このロボとやらは、明らかに一回り大きく14メートルはある。
骸骨亡者のキャサリンよりも背が高い…。
先ほど頭を吹き飛ばしてやったバンシーのツウラはそんなに長身ではなかった。
単純に考えても。
コイツが“ビショップ”だ。
(何で初戦でいきなり上位の駒とブチ当たるのよ…)
宝くじなら嬉しい限りだが、貧乏くじもイイところだ。
「大人しくくたばりなさい」
振り下ろされるブーメランをかいくぐり際に、銃剣でロボの太腿部を斬り付ける。
「ぐぅッ」
痛みに呻き声を上げるロボに対して、咄嗟に「ごめんなさい」が出てしまう。
再びロボがガンランチャーへと向いた時には。
みるみる内に破損個所が回復していっているではないか。
「コイツ…この盤上戦騎、魔方陣も展開させないで傷口を治した(直した)って言うの?」
厄介な事に、治癒能力を有している。
「こんな短小な刃物じゃ、アイツを倒せない…。どうしよう?」
半ば事故のように斬り付けておきながら、頭の切り替えの早い事。
腕や脚を斬り落とせば治癒回復の余地を与えずにダメージを負わせる事が出来るかもしれない。だけど、銃剣のようなオマケの武器では、それは望めない。
「クレハさん!」
今度はタツローから通信が入った。
「何なの!タツローくん。私、今、とっても忙しいのよ。敵と遭遇しちゃって」
不安なのは分かるが、今は遠慮願いたい。
「クレハさん!イヌのような敵が現れて現在交戦中なんです。これで敵は全騎出揃いました!」
助けを求めるでもなく…ただの報告だった。
「えぇ!?」
交戦中って…。
敵は3騎だけじゃないの!?
応援ありがとうございます!
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