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[21]はじめてのアンデスィデ
-215-:あー、あー、聞こえる?聞こえますかー?
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ビルの影から飛び立った新たな盤上戦騎は、まるでハリネズミのように数多くの砲門を構えている。
その砲門が一斉に火を吹いた。
雨あられのように降り注ぐ放火に、リョーマはアルルカンとの距離を離さざるを得なかった。
ダナと入れ替わるようにして、僚騎の盤上戦騎がアルルカンへと寄る。
「大丈夫だったかい?シズカちゃん」
盤上戦騎がツインテールの髪を振って顔をアルルカンへと向ける。
「うっせぇ!デブ!気安く“ちゃん”付けで呼ぶな。そんな事よりも、しばらくアイツを私たちに近づけさせるな!いいな!」
命令するように告げると、シズカはアルルカンを一旦戦線から離脱させた。
追撃に入ろうと、戦闘機形態へと変形したダナの目の前に、盤上戦騎が弾幕を張って行く手を阻む。
あえなく盤上戦騎形態へと戻るダナ。
「どうしますか?マスター。あの火力を突破するには、こちらも武装パックを召喚する必要があります」
ダナからの進言。しかし。
「いや、一発雷を落とした直後だから、武装パックを召喚したとたんに“充填モード”に入ってしまう。ここは魔力の回復を図りつつ、この盤上戦騎を討つチャンスをうかがおう」
とりあえずは高度を落として市街地へと身を隠す事にした。
地上付近で中間形態に変形。地表スレスレにホバリング移動を駆使してビルの谷間へと姿を隠す。
「ゴキブリみたいに隠れているんじゃねぇぞ」
唸って、一斉砲火を放ってきた。
「コイツもお構いナシに撃ってくるのか」
敵の、あまりの躊躇の無さに、リョーマは呆れると同時に、休みを返上してこの敵を討つ事に決めた。
マップ画面を呼び出して、敵の視界から逃れつつ近づくルートを割り出す。あった!
敵は現在病院の影に隠れている。意図してか、事もあろうに、こちらが攻撃をためらう建物に身を隠しているではないか。
「これでは敵を照準に捉えても、こちらから撃つ事が出来ないな」
万事休す。
「だったら、私がアイツを引きずり出そうか?」
クレハが提案した。
「馬鹿な事を考えないでくれ。これはゲームじゃないんだ。直撃させれば、パイロットの人間も殺す事になる」
それは解っている。
「それに、当たる当たらないは別として、一度でも攻撃をすれば、他の盤上戦騎に居場所を特定されて攻撃されるぞ。頼むから大人しくしていてくれ」
手柄の横取りを危惧しているのではなく、心から心配してくれていた。
「だけど、手立てはあるのですか?」
オトギが訊ねた。
「ヤツを500メートル圏内に捉えれば、ダナの攻撃魔法である幻影を見せる事ができる。そうすれば、近接距離に近づくのは容易だ」
先の戦いにおいて、水星のオフィエルを騙した、あの魔法だ。
敵盤上戦騎が病院の屋上に陣取った。が、不思議と病院は崩れ落ちる事は無かった。意外と軽いのだろうか?
「あー、あー、聞こえる?聞こえますかー?」
何やらマイクテストを行っている模様。しかし、先程の男性の声ではなく、それはリョーマにとって聞き覚えのある声だった。
「聞こえてる?草間・涼馬。私よ、私。叫霊のツウラよ」
敵の名乗りに驚くリョーマであったが、盤上戦騎の髪型から、どこか見覚えがあると感じてならなかった。正体が解って、胸のモヤモヤが晴れた。
外部マイクで声を拾ったクレハも。
「あれ?どこかで聞いた事のある声ね…」
ツウラが続ける。
「私との契約を蹴ったくせに、白側の魔者と契約するなんて、ナメた真似をしてくれるじゃない」
敵の挑発に乗って外部音声で答えようなら、即座に居場所を特定されてしまう。
リョーマは、気が進まないまま、オープン回線で通信を行う事にした。
「あの時、君が白側と契約しろと言ったのだろう?逆恨みは止してくれ」
ツウラのコクピット内では。
「キィー、ムカつくほどに冷静なヤツね。返答にオープン回線を使ってきやがったわ」
手抜かりの無いリョーマに、ツウラは金切り声を上げた。
「居場所が解らないなら、いっその事、辺り一面を火の海にしてやろうぜ」
ツウラのマスターが言い放つ。が。
「人がいないとはいえ、その気にはなれないわ。ねぇイエヤス。スピーカーバックに切り替えてリョーマのヤツを叩きのめしましょう」
「だけどよぉ、そんな事をして撃たれたりしないか?」
イエヤスはやや及び腰。
「きっとアイツは接近戦に持ち込む気だわ。ならば、こちらから誘ってやれば、ノコノコと姿を現すに違いないわ。解ったら、さっさと装備を変えて」
病院の屋上で棒立ちとなっているツウラの体中から突き出している砲門が、ガラガラと音を立てて崩れ落ちる。
その姿を、お天気カメラを介してモニターしていたクレハが首を傾げた。
「リョーマくん。敵が装備を捨ててる」
状況だけを伝えた。
続けて。
「ああ、体中に魔方陣を展開させて…。ん?何なの、アレ。拡声器?あのツウラってヤツ、体中にスピーカーを装備したよ。今から映像を皆にも送るね」
ライブ映像を送ってくれていたら、不必要に頭を捻る必要も無かったのだが…。思いつつも、リョーマは映像を送ってくれた事に礼を言った。
「確かにスピーカーだね」
敵にどのような意図があるのか?察しかねるが、とにかく接近するしか無いようだ。
その砲門が一斉に火を吹いた。
雨あられのように降り注ぐ放火に、リョーマはアルルカンとの距離を離さざるを得なかった。
ダナと入れ替わるようにして、僚騎の盤上戦騎がアルルカンへと寄る。
「大丈夫だったかい?シズカちゃん」
盤上戦騎がツインテールの髪を振って顔をアルルカンへと向ける。
「うっせぇ!デブ!気安く“ちゃん”付けで呼ぶな。そんな事よりも、しばらくアイツを私たちに近づけさせるな!いいな!」
命令するように告げると、シズカはアルルカンを一旦戦線から離脱させた。
追撃に入ろうと、戦闘機形態へと変形したダナの目の前に、盤上戦騎が弾幕を張って行く手を阻む。
あえなく盤上戦騎形態へと戻るダナ。
「どうしますか?マスター。あの火力を突破するには、こちらも武装パックを召喚する必要があります」
ダナからの進言。しかし。
「いや、一発雷を落とした直後だから、武装パックを召喚したとたんに“充填モード”に入ってしまう。ここは魔力の回復を図りつつ、この盤上戦騎を討つチャンスをうかがおう」
とりあえずは高度を落として市街地へと身を隠す事にした。
地上付近で中間形態に変形。地表スレスレにホバリング移動を駆使してビルの谷間へと姿を隠す。
「ゴキブリみたいに隠れているんじゃねぇぞ」
唸って、一斉砲火を放ってきた。
「コイツもお構いナシに撃ってくるのか」
敵の、あまりの躊躇の無さに、リョーマは呆れると同時に、休みを返上してこの敵を討つ事に決めた。
マップ画面を呼び出して、敵の視界から逃れつつ近づくルートを割り出す。あった!
敵は現在病院の影に隠れている。意図してか、事もあろうに、こちらが攻撃をためらう建物に身を隠しているではないか。
「これでは敵を照準に捉えても、こちらから撃つ事が出来ないな」
万事休す。
「だったら、私がアイツを引きずり出そうか?」
クレハが提案した。
「馬鹿な事を考えないでくれ。これはゲームじゃないんだ。直撃させれば、パイロットの人間も殺す事になる」
それは解っている。
「それに、当たる当たらないは別として、一度でも攻撃をすれば、他の盤上戦騎に居場所を特定されて攻撃されるぞ。頼むから大人しくしていてくれ」
手柄の横取りを危惧しているのではなく、心から心配してくれていた。
「だけど、手立てはあるのですか?」
オトギが訊ねた。
「ヤツを500メートル圏内に捉えれば、ダナの攻撃魔法である幻影を見せる事ができる。そうすれば、近接距離に近づくのは容易だ」
先の戦いにおいて、水星のオフィエルを騙した、あの魔法だ。
敵盤上戦騎が病院の屋上に陣取った。が、不思議と病院は崩れ落ちる事は無かった。意外と軽いのだろうか?
「あー、あー、聞こえる?聞こえますかー?」
何やらマイクテストを行っている模様。しかし、先程の男性の声ではなく、それはリョーマにとって聞き覚えのある声だった。
「聞こえてる?草間・涼馬。私よ、私。叫霊のツウラよ」
敵の名乗りに驚くリョーマであったが、盤上戦騎の髪型から、どこか見覚えがあると感じてならなかった。正体が解って、胸のモヤモヤが晴れた。
外部マイクで声を拾ったクレハも。
「あれ?どこかで聞いた事のある声ね…」
ツウラが続ける。
「私との契約を蹴ったくせに、白側の魔者と契約するなんて、ナメた真似をしてくれるじゃない」
敵の挑発に乗って外部音声で答えようなら、即座に居場所を特定されてしまう。
リョーマは、気が進まないまま、オープン回線で通信を行う事にした。
「あの時、君が白側と契約しろと言ったのだろう?逆恨みは止してくれ」
ツウラのコクピット内では。
「キィー、ムカつくほどに冷静なヤツね。返答にオープン回線を使ってきやがったわ」
手抜かりの無いリョーマに、ツウラは金切り声を上げた。
「居場所が解らないなら、いっその事、辺り一面を火の海にしてやろうぜ」
ツウラのマスターが言い放つ。が。
「人がいないとはいえ、その気にはなれないわ。ねぇイエヤス。スピーカーバックに切り替えてリョーマのヤツを叩きのめしましょう」
「だけどよぉ、そんな事をして撃たれたりしないか?」
イエヤスはやや及び腰。
「きっとアイツは接近戦に持ち込む気だわ。ならば、こちらから誘ってやれば、ノコノコと姿を現すに違いないわ。解ったら、さっさと装備を変えて」
病院の屋上で棒立ちとなっているツウラの体中から突き出している砲門が、ガラガラと音を立てて崩れ落ちる。
その姿を、お天気カメラを介してモニターしていたクレハが首を傾げた。
「リョーマくん。敵が装備を捨ててる」
状況だけを伝えた。
続けて。
「ああ、体中に魔方陣を展開させて…。ん?何なの、アレ。拡声器?あのツウラってヤツ、体中にスピーカーを装備したよ。今から映像を皆にも送るね」
ライブ映像を送ってくれていたら、不必要に頭を捻る必要も無かったのだが…。思いつつも、リョーマは映像を送ってくれた事に礼を言った。
「確かにスピーカーだね」
敵にどのような意図があるのか?察しかねるが、とにかく接近するしか無いようだ。
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