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[21]はじめてのアンデスィデ
―213-:“トロイの木馬”という策も念頭に置いた上で申し上げます
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アルルカンのパイロットは真島・導火ではない。
「どういう事だ?ココミ・コロネ・ドラコット!」
リョーマからの通信に、ココミは焦りに焦りまくっていた。
黒玉門前教会内で魔導書を広げるココミの目の前に、真島・導火本人が現れたからだ。
「あ、あの…私に、何か御用でしょうか?」
戸惑いを隠せず、恐る恐るドウカに訊ねる。
しかし、顔の半分を覆うテクノサングラスからは彼の表情は拾えない上に、何の返答も無い。
正直なところ、目の前に立たれると邪魔で仕方がない。しかし、それを口にする訳にもいかず。
すると、後方からやって来たライクとウォーフィールドが、ココミが座る長椅子とは通路を挟んで並ぶ長椅子に座った。
「どうしたんだい?ココミ」
「あ、ライク。あの…彼は」
ライクに訊ねつつ、おずおずと目線をドウカへと向ける。
「彼なら、今朝クビにしたんだよ。ノブナガに、彼よりも霊力の強い“シズカ”を紹介してもらったのでね」
そんな簡単に首を挿げ替えてしまって大丈夫なのかと、敵ながら心配してしまう。
だけど、お役御免となったドウカが、敵方の御大将の前になにゆえ姿を現したのか?いささか疑問。
「ココミ。未だにすべての駒のマスターを揃え切っていないそうじゃないか?だからさ、彼に君の側に付くように指示したのさ」
思いもかけない敵からの申し出。だけど。
あくまでもライクは対戦相手。敵に塩を送るつもりか?だけど、素直に受け取る事など断じてできない。これには絶対ウラがある。
「とても有難い申し出ですが、“トロイの木馬”という策も念頭に置いた上で申し上げます。“お断り”しますと」
キッパリと断って見せた。そして。
「加えて、“大きなお世話”」
それはドウカを見据えて答えた。
しかし、ドウカは動じる様子も無く、また表情を変えぬままココミへと向いている。
(この男性、素顔はどんな顔をしているのだろう?)
好奇心は掻き立てられるけれど。
しかし、ライクには痛い所を突かれてしまった。
未だ装甲防御特化仕様騎のアーマーテイカーのマスターを得ていないのは事実。
オロチのおかげで残りの駒のマスターを得たとはいえ、どんくさいクレハに、白黒両軍承認のヘタレ野郎のタツロー、そして鼻持ちならないオトギと、果たして戦力に値するのかさえ分からない連中を参戦させて、今回のアンデスィデを勝ち進めるか不安でならない。
ドウカがドサッと落ちるようにして前列の長椅子へと腰かけた。そして、体をねじらせてココミへと向く。
「俺が信用できないというのは百も承知の上さ」
マッチョな男性ならいざ知らず、ぽっちゃり体型へとくずれてしまった男性が、何を格好をつけているのか?滑稽でならない。
「だが、アンタが言ったトロイの木馬とやらは、“現在行っている”このグリチェスでの事に過ぎないのだろう?」
セカンドゲームを見据えてと言うのか?それならば、戦力になり得る。しかし。
「それでも貴方を信用して契約を結ぶ訳には参りません。だいたい、今朝契約を破棄された者をこちらで引き受けるなんて、非常識にも程があります」
正論を並べる。
「ココミ・コロネ・ドラコット!」
返答を催促するリョーマの声。
ココミは慌てて。
「あっ、リョーマさん。真島・導火は現在、私の目の前にいます。今朝方にライクから暇を申し付けられたとご本人とライクから報せを受けました」
ようやく報告に至った。
敵のマスターが変わっている!?
事実を知るも、リョーマは対峙している敵の能力以上に、敵の身体能力を警戒していた。
今まで徒手空拳相手に剣を振るった事は一度も無い。
リーチで勝っているとはいえ、両手両足を凶器へと変えて攻めてくる相手に、どう対処すべきか…。
アルルカンが両手の拳を包帯でグルグル巻きにして“グローブ”を形成した。
不安は的中。あの包帯は厄介だ。
霊力を注入すれば硬質化し、剣にも盾にもなる。
それが今、攻防一体の武器へと形を変えたのだ。
インファイトに持ち込まれたら、ひとたまりもない。
ダナが剣を正眼に構えて…ゆっくりと上段へと構えを移行させる。
お互いに浮遊素を大量散布させて足場を形成。そして。
アルルカンが動いた!
姿勢を低くして接近、まるでボクサーのように瞬時にして懐へと入り込んできた。
その時、上下から刃の一閃がアルルカンに襲い掛かる。
巌流ツバメ返しの凶刃が牙を剥くも、狼の牙は獲物に食らいつく事は無かった。
アルルカンは両の腕で、上下同時に襲い来る剣を弾き返したのだ。
さらに。
腹部への前蹴りをカウンターで放ってきた。
ダナの騎体が矩形に歪んで蹴り飛ばされてしまった。
アルルカンのパイロット“シズカ”は、高速の剣を“手数”でねじ伏せたのだった。
「どういう事だ?ココミ・コロネ・ドラコット!」
リョーマからの通信に、ココミは焦りに焦りまくっていた。
黒玉門前教会内で魔導書を広げるココミの目の前に、真島・導火本人が現れたからだ。
「あ、あの…私に、何か御用でしょうか?」
戸惑いを隠せず、恐る恐るドウカに訊ねる。
しかし、顔の半分を覆うテクノサングラスからは彼の表情は拾えない上に、何の返答も無い。
正直なところ、目の前に立たれると邪魔で仕方がない。しかし、それを口にする訳にもいかず。
すると、後方からやって来たライクとウォーフィールドが、ココミが座る長椅子とは通路を挟んで並ぶ長椅子に座った。
「どうしたんだい?ココミ」
「あ、ライク。あの…彼は」
ライクに訊ねつつ、おずおずと目線をドウカへと向ける。
「彼なら、今朝クビにしたんだよ。ノブナガに、彼よりも霊力の強い“シズカ”を紹介してもらったのでね」
そんな簡単に首を挿げ替えてしまって大丈夫なのかと、敵ながら心配してしまう。
だけど、お役御免となったドウカが、敵方の御大将の前になにゆえ姿を現したのか?いささか疑問。
「ココミ。未だにすべての駒のマスターを揃え切っていないそうじゃないか?だからさ、彼に君の側に付くように指示したのさ」
思いもかけない敵からの申し出。だけど。
あくまでもライクは対戦相手。敵に塩を送るつもりか?だけど、素直に受け取る事など断じてできない。これには絶対ウラがある。
「とても有難い申し出ですが、“トロイの木馬”という策も念頭に置いた上で申し上げます。“お断り”しますと」
キッパリと断って見せた。そして。
「加えて、“大きなお世話”」
それはドウカを見据えて答えた。
しかし、ドウカは動じる様子も無く、また表情を変えぬままココミへと向いている。
(この男性、素顔はどんな顔をしているのだろう?)
好奇心は掻き立てられるけれど。
しかし、ライクには痛い所を突かれてしまった。
未だ装甲防御特化仕様騎のアーマーテイカーのマスターを得ていないのは事実。
オロチのおかげで残りの駒のマスターを得たとはいえ、どんくさいクレハに、白黒両軍承認のヘタレ野郎のタツロー、そして鼻持ちならないオトギと、果たして戦力に値するのかさえ分からない連中を参戦させて、今回のアンデスィデを勝ち進めるか不安でならない。
ドウカがドサッと落ちるようにして前列の長椅子へと腰かけた。そして、体をねじらせてココミへと向く。
「俺が信用できないというのは百も承知の上さ」
マッチョな男性ならいざ知らず、ぽっちゃり体型へとくずれてしまった男性が、何を格好をつけているのか?滑稽でならない。
「だが、アンタが言ったトロイの木馬とやらは、“現在行っている”このグリチェスでの事に過ぎないのだろう?」
セカンドゲームを見据えてと言うのか?それならば、戦力になり得る。しかし。
「それでも貴方を信用して契約を結ぶ訳には参りません。だいたい、今朝契約を破棄された者をこちらで引き受けるなんて、非常識にも程があります」
正論を並べる。
「ココミ・コロネ・ドラコット!」
返答を催促するリョーマの声。
ココミは慌てて。
「あっ、リョーマさん。真島・導火は現在、私の目の前にいます。今朝方にライクから暇を申し付けられたとご本人とライクから報せを受けました」
ようやく報告に至った。
敵のマスターが変わっている!?
事実を知るも、リョーマは対峙している敵の能力以上に、敵の身体能力を警戒していた。
今まで徒手空拳相手に剣を振るった事は一度も無い。
リーチで勝っているとはいえ、両手両足を凶器へと変えて攻めてくる相手に、どう対処すべきか…。
アルルカンが両手の拳を包帯でグルグル巻きにして“グローブ”を形成した。
不安は的中。あの包帯は厄介だ。
霊力を注入すれば硬質化し、剣にも盾にもなる。
それが今、攻防一体の武器へと形を変えたのだ。
インファイトに持ち込まれたら、ひとたまりもない。
ダナが剣を正眼に構えて…ゆっくりと上段へと構えを移行させる。
お互いに浮遊素を大量散布させて足場を形成。そして。
アルルカンが動いた!
姿勢を低くして接近、まるでボクサーのように瞬時にして懐へと入り込んできた。
その時、上下から刃の一閃がアルルカンに襲い掛かる。
巌流ツバメ返しの凶刃が牙を剥くも、狼の牙は獲物に食らいつく事は無かった。
アルルカンは両の腕で、上下同時に襲い来る剣を弾き返したのだ。
さらに。
腹部への前蹴りをカウンターで放ってきた。
ダナの騎体が矩形に歪んで蹴り飛ばされてしまった。
アルルカンのパイロット“シズカ”は、高速の剣を“手数”でねじ伏せたのだった。
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