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[19]悪魔の王
-200-:他人に乗り換えました
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空中へと跳び上がったガンマを、コールブランドは見事、無反動砲で撃墜した。
しかし。
爆発の衝撃は、やはりすさまじく、周囲に被害を及ぼしていた。
爆風によって葉を散らす街路樹。それに向きを変えてしまった道路標識等々…。
幸いにも、戦闘が発生していたのは、車や人の往来が途切れていた時間帯。
そして周囲の建物は、ダナが展開させていた魔法障壁によって、ガラス窓を散らす事は防がれた。
危なかったと、安堵してダナはその場にへたり込む。
そんなダナに、「よくやった」とコールブランドが労いの言葉を掛けた。
「コールブランド様!こんな街中で、あのような破壊力のある攻撃をしては―」
ベルタがたしなめるも。
「『立っている者は親でも使え』ですわ。私はダナが機転を利かせてくれると信じて攻撃に移ったまでです」
いやいや、貴女は普段から座った体勢でいるけれども…。それに肝心な事にダナに頼んでもいないじゃないですか…。
言葉に出しても、きっとコールブランドは聞き入れてくれないだろう。
それに加えて。
「しかしです。ダナ。姫様はチェスプレイヤーとして常に守られているが故に、周囲に被害が及ぶ事はありません。よって、貴女が消耗し切るまで張り巡らせていた魔法障壁は徒労に終わったという事です」
「それは承知しています。ですが、万が一にでも、人間たちに被害が及ばぬよう配慮する必要があります」
息を切らせながら、ダナは反論する。
「ふん!彼らなど放っておけば良いものを。人間どもが死んだところで事故として処理されるのがオチですわ」
コールブランドの考えは、あくまでも魔導書チェスのルールに則っている。そして、彼女の発言には、人間は主の御手洗・達郎だけ存在していればいいと思われるフシがある。
コールブランドは呆れたと溜め息を漏らして、再び視線を爆煙が立ち込める上空へと戻した。
雲のように立ち込める煙の中から、煙の尾を引いてガンマが落ちてきた。
受け身を取ることなくそのまま路上に転がり、プスプスと体中から煙を立ち上らせている。
しかし。
「それが貴様の正体か」
一連の出来事を目で追っていたコールブランドは、再び視線を上空へと移した。
上空に立ち込めていた煙が一気に消し飛んだ。中から。
背中から白い鳥の羽を羽ばたかせた、軽装甲冑をまとう女性の姿が現れた。
その姿は、まるで天使。
「お初にかかる―」「ファイア!」
相手に喋らせる間を与えずに、コールブランドは先制砲撃を加える。だが。
天使の眼前で砲弾は停止。人差し指を立てて横へと向けると、その方向に砲弾は飛んで行き、炸裂した。
早速ガンマは、先ほどまでとは比較にならないほどの戦闘能力を披露して見せた。
「下等な龍は、せっかちだから困る。貴様ごとき!こ奴らを仕留めた後にゆっくりといたぶって始末してやるから、そこで大人しく待っておれ!」
ガンマが手にするムチが、先端部に菱形の分銅が付いた“分銅鎖”へと姿を変えた。
しかも、1本から2本に増えているではないか!
そんなガンマを見るや、コールブランドは「ごとき?」訊き直す。
そして、高笑いして、なおも「ごとき?」さらに声を大きく、訊き直す。
コールブランドが上空のガンマを見据えて。
「それはこっちの台詞ですわ!貴様ごとき蚊トンボ、ベルタが相手をしてくれますわ!」
いきなり話を振られて、ベルタは戸惑い、驚いた表情を見せている。
そんなベルタを前に、コールブランドは甲冑姿(ほぼ戦車)を解いて、通常の車椅子姿へと戻った。
「相手は兵士。聞かずとも解ります。兵士の相手は兵士が勤めれば良い。ベルタ、行けますね?」
コールブラントド問いに、不安を残しつつ、上空のガンマ(本体)を見上げる。
すると突然、ベルタは体に力がみなぎる感覚を覚えた。「こ、これは?」
ピンポォン!!
ココミが抱える魔導書から着信音が鳴った。
さっそくココミが魔導書を開いて内容を確認。と、「あっ」小さな悲鳴を上げた。
「どないしたん?ココミ」
ルーティが訊ねる。
「クィックフォワードさんが、ヒューゴさんとの契約を破棄して、他人に乗り換えました」
事実そうなのだが、もう少し言い方があるだろうとベルタは複雑な気持ち。
だけど。
おかげで、半減していた霊力が通常値まで供給されて、本来の力を取り戻した。
これなら!
「参ります!」
力強く答えると、コールブランドは首を横に振った。すると、コールブランドの手前50センチ辺りに直線状に地面がえぐられた。
髪の毛のワイヤーソーで地面を斬り付けたのだ。
「では、この線をデッドラインとします。これより後ろに退けば、貴女もろともガンマのクソ野郎を我が全火力をもってして殲滅して差し上げますわ」
いや、だから今の彼女は野郎ではなく女性なのだし、それにもろともって…。
彼女の事だ。冗談ではなく本当にやりかねない。
ベルタは気を引き締めて上空のガンマを見据えて、跳躍!
電柱を利用して三角跳びを行いガンマよりも上を取る。
「飛べない下等生物なりに知恵を働かせたようですね」
側面からの攻撃にガンマは動じず、その場から動こうともしない。
代わりに分銅鎖を、自身を中心に筒状に回転させて、物理防御に入った。
上空からの斬撃!しかし、鎖による防御壁によって弾かれてしまった。だが。
「ダナ様!盾を!」
ベルタの声に、ダナはベルタへと左拳を向けて魔方陣を展開!
弾かれたベルタの後方に、六角形のガラス板のような魔法障壁を出現させて、ベルタに足場を作ってやり、それを蹴ってベルタは再度ガンマに斬撃を繰り出した。
「何度やっても同じ事!」
また弾かれると思われたその時!
ベルタは回転する鎖そのものを掴んで、そのまま振り回されているではないか。
「ベルタはん…何をやってはるんです?」
ベルタの奇行とも思える行動に、ルーティは呆気に取られて呟いた。
「あれでヤツの鎖は防御力を失った」
回転速度を落とした上に、さらなる荷重によって高度を落とし始めたガンマに向けて、コールブランドの髪のワイヤーソーが襲い掛かる。
鎖が2本に増えようが、より頑丈な金属製に変わろうが、お構いナシにコールブランドはガンマの分銅鎖を細々に切断した。
ザクッ!
続けてベルタの放った袈裟切りが、ガンマを両断する。
「貴様ぁ…よってたかって、卑怯だぞ…」
悔しそうにガンマが吐き捨てる。
「『立っている者は親でも使え』か…。コールブランドの言う通り、私もそうさせてもらっただけです。ガンマ」
落下を始めたガンマに、ベルタは静かに告げた。
しかし。
爆発の衝撃は、やはりすさまじく、周囲に被害を及ぼしていた。
爆風によって葉を散らす街路樹。それに向きを変えてしまった道路標識等々…。
幸いにも、戦闘が発生していたのは、車や人の往来が途切れていた時間帯。
そして周囲の建物は、ダナが展開させていた魔法障壁によって、ガラス窓を散らす事は防がれた。
危なかったと、安堵してダナはその場にへたり込む。
そんなダナに、「よくやった」とコールブランドが労いの言葉を掛けた。
「コールブランド様!こんな街中で、あのような破壊力のある攻撃をしては―」
ベルタがたしなめるも。
「『立っている者は親でも使え』ですわ。私はダナが機転を利かせてくれると信じて攻撃に移ったまでです」
いやいや、貴女は普段から座った体勢でいるけれども…。それに肝心な事にダナに頼んでもいないじゃないですか…。
言葉に出しても、きっとコールブランドは聞き入れてくれないだろう。
それに加えて。
「しかしです。ダナ。姫様はチェスプレイヤーとして常に守られているが故に、周囲に被害が及ぶ事はありません。よって、貴女が消耗し切るまで張り巡らせていた魔法障壁は徒労に終わったという事です」
「それは承知しています。ですが、万が一にでも、人間たちに被害が及ばぬよう配慮する必要があります」
息を切らせながら、ダナは反論する。
「ふん!彼らなど放っておけば良いものを。人間どもが死んだところで事故として処理されるのがオチですわ」
コールブランドの考えは、あくまでも魔導書チェスのルールに則っている。そして、彼女の発言には、人間は主の御手洗・達郎だけ存在していればいいと思われるフシがある。
コールブランドは呆れたと溜め息を漏らして、再び視線を爆煙が立ち込める上空へと戻した。
雲のように立ち込める煙の中から、煙の尾を引いてガンマが落ちてきた。
受け身を取ることなくそのまま路上に転がり、プスプスと体中から煙を立ち上らせている。
しかし。
「それが貴様の正体か」
一連の出来事を目で追っていたコールブランドは、再び視線を上空へと移した。
上空に立ち込めていた煙が一気に消し飛んだ。中から。
背中から白い鳥の羽を羽ばたかせた、軽装甲冑をまとう女性の姿が現れた。
その姿は、まるで天使。
「お初にかかる―」「ファイア!」
相手に喋らせる間を与えずに、コールブランドは先制砲撃を加える。だが。
天使の眼前で砲弾は停止。人差し指を立てて横へと向けると、その方向に砲弾は飛んで行き、炸裂した。
早速ガンマは、先ほどまでとは比較にならないほどの戦闘能力を披露して見せた。
「下等な龍は、せっかちだから困る。貴様ごとき!こ奴らを仕留めた後にゆっくりといたぶって始末してやるから、そこで大人しく待っておれ!」
ガンマが手にするムチが、先端部に菱形の分銅が付いた“分銅鎖”へと姿を変えた。
しかも、1本から2本に増えているではないか!
そんなガンマを見るや、コールブランドは「ごとき?」訊き直す。
そして、高笑いして、なおも「ごとき?」さらに声を大きく、訊き直す。
コールブランドが上空のガンマを見据えて。
「それはこっちの台詞ですわ!貴様ごとき蚊トンボ、ベルタが相手をしてくれますわ!」
いきなり話を振られて、ベルタは戸惑い、驚いた表情を見せている。
そんなベルタを前に、コールブランドは甲冑姿(ほぼ戦車)を解いて、通常の車椅子姿へと戻った。
「相手は兵士。聞かずとも解ります。兵士の相手は兵士が勤めれば良い。ベルタ、行けますね?」
コールブラントド問いに、不安を残しつつ、上空のガンマ(本体)を見上げる。
すると突然、ベルタは体に力がみなぎる感覚を覚えた。「こ、これは?」
ピンポォン!!
ココミが抱える魔導書から着信音が鳴った。
さっそくココミが魔導書を開いて内容を確認。と、「あっ」小さな悲鳴を上げた。
「どないしたん?ココミ」
ルーティが訊ねる。
「クィックフォワードさんが、ヒューゴさんとの契約を破棄して、他人に乗り換えました」
事実そうなのだが、もう少し言い方があるだろうとベルタは複雑な気持ち。
だけど。
おかげで、半減していた霊力が通常値まで供給されて、本来の力を取り戻した。
これなら!
「参ります!」
力強く答えると、コールブランドは首を横に振った。すると、コールブランドの手前50センチ辺りに直線状に地面がえぐられた。
髪の毛のワイヤーソーで地面を斬り付けたのだ。
「では、この線をデッドラインとします。これより後ろに退けば、貴女もろともガンマのクソ野郎を我が全火力をもってして殲滅して差し上げますわ」
いや、だから今の彼女は野郎ではなく女性なのだし、それにもろともって…。
彼女の事だ。冗談ではなく本当にやりかねない。
ベルタは気を引き締めて上空のガンマを見据えて、跳躍!
電柱を利用して三角跳びを行いガンマよりも上を取る。
「飛べない下等生物なりに知恵を働かせたようですね」
側面からの攻撃にガンマは動じず、その場から動こうともしない。
代わりに分銅鎖を、自身を中心に筒状に回転させて、物理防御に入った。
上空からの斬撃!しかし、鎖による防御壁によって弾かれてしまった。だが。
「ダナ様!盾を!」
ベルタの声に、ダナはベルタへと左拳を向けて魔方陣を展開!
弾かれたベルタの後方に、六角形のガラス板のような魔法障壁を出現させて、ベルタに足場を作ってやり、それを蹴ってベルタは再度ガンマに斬撃を繰り出した。
「何度やっても同じ事!」
また弾かれると思われたその時!
ベルタは回転する鎖そのものを掴んで、そのまま振り回されているではないか。
「ベルタはん…何をやってはるんです?」
ベルタの奇行とも思える行動に、ルーティは呆気に取られて呟いた。
「あれでヤツの鎖は防御力を失った」
回転速度を落とした上に、さらなる荷重によって高度を落とし始めたガンマに向けて、コールブランドの髪のワイヤーソーが襲い掛かる。
鎖が2本に増えようが、より頑丈な金属製に変わろうが、お構いナシにコールブランドはガンマの分銅鎖を細々に切断した。
ザクッ!
続けてベルタの放った袈裟切りが、ガンマを両断する。
「貴様ぁ…よってたかって、卑怯だぞ…」
悔しそうにガンマが吐き捨てる。
「『立っている者は親でも使え』か…。コールブランドの言う通り、私もそうさせてもらっただけです。ガンマ」
落下を始めたガンマに、ベルタは静かに告げた。
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