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[19]悪魔の王
-197-:顔の前を飛び回るハエと同じ
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正眼の構えとは、相手を近づけさせない防御の面と、即座にカウンターを狙える攻撃の面を併せ持つ。
一方、下段の構えは防御に秀でている。
ベルタは二つの構えを組み合わせてガンマに挑む。
「んふぅ、んふぅ!」
鼻息荒くガンマがムチを頭上へと舞い上がらせた。
鞭の攻撃は上空から。
その間にも、ガンマは強烈なショルダーアタックを繰り出してくる。
直線軌道による攻撃と見せかけて、その実、頭上から鞭の先端部が舞い降りる。そして、先端部が相手に触れた瞬間に手首のスナップを効かせて、相手の肉を切り裂く。
だったら!
ベルタは、正眼に構えた脇差でガンマ本体を牽制しつつ、下段に構えた脇差を上方へと向けて、降りてきた鞭の先端部分が体に触れる前に、脇差に巻き付けた。
鞭の攻撃は攻略されてしまい、ショルダーアタックを仕掛けようにも、切っ先を向けられたままでは迂回して攻撃するしかない。
脇差の切っ先を避けて回り込もうとした脚に、ベルタが反応。ガンマの右側面に着いた。
打つ手を失ったガンマは振りかぶって殴り掛かるしかない。が。
ベルタはすでにガンマの目の高さにまで跳躍。
鞭のようにしならせたキックを放ち、ガンマの顔面を蹴り飛ばした。
タイミング的にカウンターがヒットした形となった。
予想以上のダメージを負ったガンマが路上でのたうつ。
「んふぅーッ!よ、よくも俺様の顔を蹴ってくれたな。ふしゅーッ!」
あまりの巨漢ぶりに気管が圧迫されているのか?随分と話し辛そうと感じつつ、それでもベルタはガンマに容赦できないと心に言い聞かせ構えを解かない。
そもそも、そんな余裕など無い。
敵が頑丈過ぎるのではなく、明らかにベルタのパワー不足が表面化している。
「ふぉぉぉ、あれだけ絶妙なタイミングで俺様の顔面に攻撃を当てたのに、頭を吹き飛ばせなかったところを見ると、お前」
ガンマは下卑た笑いを見せながら、ベルタを指差して。
「メチャクチャ弱っているな」
完全に見抜かれてしまった!
「全然痛くない攻撃しかできないお前なんか、んふぅー、顔の前を飛び回るハエと同じ。俺様は向こうにいる綺麗な女騎士サマを鞭で色っぽい姿に引き裂いてやるんだほぉ!」
ベルタなどもはや眼中に無く、ダナへと矛先を変えた。
ガンマがダッシュ!
「待て!」
呼び止めるも、ガンマがその脚を止めてくれるはずもない。
そして、追うにも一気に疲労が襲ってきてしまい、脚が思うように前へと進んでくれない。
(くっ、こんな時に!)
「ハエだって、相手の気分を損ねるくらいできるのに…」
悔しさをバネに、とにかくガンマを追い掛ける。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
ミサキを抱えたまま敵の追跡を逃れる謎のイケメン男性ではあったが、徐々にその距離を詰められようとしていた。
走行中の車やバイクを追い越すスピードで移動しているのに、「ヒャッハー!!」追っ手の歓喜の叫び声がだんだんと近づいてくるのを、ミサキも耳で感じ取っていた。
「このままでは追い付かれてしまうな…」
焦る男性が、考えている事を声に出してしまう。
だけど、この激しい振動の中、ミサキは声を掛けようにも、ヘタに口を開いたら舌を噛む恐れがあるので目で男性に訴えかけた。
(もしかして、私、重い?)
「心配はいらない。君は必ず私が守ってみせる」
当然の事ながら意思疎通は叶わなかった。
「少しスピードを上げる。しっかりと掴まっていてくれ」
(え?まだスピードを上げるの!?)
驚きつつも、頷く前に一気に加速!!
周りの景色がすさまじい速度で過ぎ去ってゆく。
これは、まるで。
車両だったら、完全にスピード違反で即免許取り消し。だけど、人ならどうなるんだろう?
前から押し寄せる、目を開けていられないくらいの猛烈な風圧に、もはや息をするのさえ難しい。
そんな状態が3分ほど?体感ならそうだが、現実には1分も無かっただろう。
ようやく風が収まり、減速したと肌に感じられ、やがて。
止まった。
ミサキはうっすらと目を開いた。と。
男性の顔が眼前にあった。
先ほどから、決して笑みを見せない男性。その真剣な眼差しを受け止め切れずに、ミサキはつい顔を逸らしてしまう。
すると。
頬に手を添えられてしまい、顔の向きを真っ直ぐ前へと変えられてしまった。
すでに一目惚れしてしまった男性の顔が真正面にある。
胸の高鳴りを抑えようと深呼吸をするも、なおも心拍数は上昇中。
そんな中、男性の口が動いた。
「君に頼みがある」
ミサキは恥ずかしさのあまり、顔を真っ赤にして頷く事すら忘れ去っていた。
男性の次の言葉を待つ。
「どうか私と契約して欲しい」
―??契約?
!これが噂に聞く、デート詐欺の手口というヤツか!!
一方、下段の構えは防御に秀でている。
ベルタは二つの構えを組み合わせてガンマに挑む。
「んふぅ、んふぅ!」
鼻息荒くガンマがムチを頭上へと舞い上がらせた。
鞭の攻撃は上空から。
その間にも、ガンマは強烈なショルダーアタックを繰り出してくる。
直線軌道による攻撃と見せかけて、その実、頭上から鞭の先端部が舞い降りる。そして、先端部が相手に触れた瞬間に手首のスナップを効かせて、相手の肉を切り裂く。
だったら!
ベルタは、正眼に構えた脇差でガンマ本体を牽制しつつ、下段に構えた脇差を上方へと向けて、降りてきた鞭の先端部分が体に触れる前に、脇差に巻き付けた。
鞭の攻撃は攻略されてしまい、ショルダーアタックを仕掛けようにも、切っ先を向けられたままでは迂回して攻撃するしかない。
脇差の切っ先を避けて回り込もうとした脚に、ベルタが反応。ガンマの右側面に着いた。
打つ手を失ったガンマは振りかぶって殴り掛かるしかない。が。
ベルタはすでにガンマの目の高さにまで跳躍。
鞭のようにしならせたキックを放ち、ガンマの顔面を蹴り飛ばした。
タイミング的にカウンターがヒットした形となった。
予想以上のダメージを負ったガンマが路上でのたうつ。
「んふぅーッ!よ、よくも俺様の顔を蹴ってくれたな。ふしゅーッ!」
あまりの巨漢ぶりに気管が圧迫されているのか?随分と話し辛そうと感じつつ、それでもベルタはガンマに容赦できないと心に言い聞かせ構えを解かない。
そもそも、そんな余裕など無い。
敵が頑丈過ぎるのではなく、明らかにベルタのパワー不足が表面化している。
「ふぉぉぉ、あれだけ絶妙なタイミングで俺様の顔面に攻撃を当てたのに、頭を吹き飛ばせなかったところを見ると、お前」
ガンマは下卑た笑いを見せながら、ベルタを指差して。
「メチャクチャ弱っているな」
完全に見抜かれてしまった!
「全然痛くない攻撃しかできないお前なんか、んふぅー、顔の前を飛び回るハエと同じ。俺様は向こうにいる綺麗な女騎士サマを鞭で色っぽい姿に引き裂いてやるんだほぉ!」
ベルタなどもはや眼中に無く、ダナへと矛先を変えた。
ガンマがダッシュ!
「待て!」
呼び止めるも、ガンマがその脚を止めてくれるはずもない。
そして、追うにも一気に疲労が襲ってきてしまい、脚が思うように前へと進んでくれない。
(くっ、こんな時に!)
「ハエだって、相手の気分を損ねるくらいできるのに…」
悔しさをバネに、とにかくガンマを追い掛ける。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
ミサキを抱えたまま敵の追跡を逃れる謎のイケメン男性ではあったが、徐々にその距離を詰められようとしていた。
走行中の車やバイクを追い越すスピードで移動しているのに、「ヒャッハー!!」追っ手の歓喜の叫び声がだんだんと近づいてくるのを、ミサキも耳で感じ取っていた。
「このままでは追い付かれてしまうな…」
焦る男性が、考えている事を声に出してしまう。
だけど、この激しい振動の中、ミサキは声を掛けようにも、ヘタに口を開いたら舌を噛む恐れがあるので目で男性に訴えかけた。
(もしかして、私、重い?)
「心配はいらない。君は必ず私が守ってみせる」
当然の事ながら意思疎通は叶わなかった。
「少しスピードを上げる。しっかりと掴まっていてくれ」
(え?まだスピードを上げるの!?)
驚きつつも、頷く前に一気に加速!!
周りの景色がすさまじい速度で過ぎ去ってゆく。
これは、まるで。
車両だったら、完全にスピード違反で即免許取り消し。だけど、人ならどうなるんだろう?
前から押し寄せる、目を開けていられないくらいの猛烈な風圧に、もはや息をするのさえ難しい。
そんな状態が3分ほど?体感ならそうだが、現実には1分も無かっただろう。
ようやく風が収まり、減速したと肌に感じられ、やがて。
止まった。
ミサキはうっすらと目を開いた。と。
男性の顔が眼前にあった。
先ほどから、決して笑みを見せない男性。その真剣な眼差しを受け止め切れずに、ミサキはつい顔を逸らしてしまう。
すると。
頬に手を添えられてしまい、顔の向きを真っ直ぐ前へと変えられてしまった。
すでに一目惚れしてしまった男性の顔が真正面にある。
胸の高鳴りを抑えようと深呼吸をするも、なおも心拍数は上昇中。
そんな中、男性の口が動いた。
「君に頼みがある」
ミサキは恥ずかしさのあまり、顔を真っ赤にして頷く事すら忘れ去っていた。
男性の次の言葉を待つ。
「どうか私と契約して欲しい」
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