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[18]女王の掌の上で
-187-:こんなヤツがいたなんて
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自身を見た目通りの猫扱いするクレハに腹を立てた助六は、病院内を歩くも、すでに任務は完了し、結界を張り直す必要が無い事を今になって気付いた。
とはいえ、再びあの病室へ戻るにも、クレハと顔を合わせると思うと、やはり素直に戻る気にもなれなかった。
行く手に。
コツーン、コツーンと硬い靴底が鳴る音。
この音は革靴か…。
身を低くして身構える。そして、壁伝いに音の鳴る方へと近づいて行く。
「もうひとり、チンピラ共の仲間が残っていやがったか」
サターンを始末したとはいえ、関わった全員の記憶を消しておく必要がある。
なおも慎重に、歩く足音へと近づいて行く。
だが、突然足音が聞こえなくなった。
気付かれて立ち止まったか?
しかし、猫を警戒して立ち止まる人間など、果たしているだろうか?
疑問に思いつつ、再び身を低くして周囲をうかがう。
「どうしたんだい?猫ちゃん」
助六は驚きのあまり硬直してしまった。
声は真上から聞こえてくる。
真上…だと!?天井からだとッ!?
はたと声の方へと顔を向けた。
すると、道化師の格好をした少女が天井に張り付いていた。
「き、貴様!魔者かッ!?」
だけど、伝七がココミやルーティから聞き伝えらえた情報では、こんな姿の魔者は聞いた事が無い。彼女たちが名前を聞いて姿を見ていないのは、叫霊のツウラだけ。
だが、ツウラなら、すでに天馬学府内でその姿を確認している。断じてコイツでは無い。
「誰だ!貴様!」
訊ねるも、いつの間にか少女の姿は消え失せている。
コツーン、コツーン。
後ろから、さきほどの足音が。
助六は振り返った。
「ジョーカー。ジョークを言うから、皆からジョーカーって呼ばれているんだヨ」
告げてニッコリと満面の笑顔を助六に向けた。
助六は体を低くして身構えた。
「貴様、ライク様のところの魔者ではないな。ラーナ様の手の者か?それともミュッセ殿の手の者か?」
問う助六にジョーカーは。
「君の言う通りボクはアンデッドではないし、ニセ天使でもなければ悪魔でもないヨ。うーん」
人差し指を顎に当てて考え込む。
そして再び満面の笑みをたたえて。
「一体、何なんだろうね?ボク」
瞬間!
助六は体毛を硬化させてジョーカーへと向けて針を発射した。と、同時に後ろへと飛び退く。
「なっ!?」
針は天井に突き刺さっているだけ。どこだ!
助六の体は、はいつの間にか右側に現れたジョーカーによって蹴り飛ばされてしまった。
「ぐぁっ!」
壁に叩きつけられ、口から吐血。
「大人しく猫ちゃんを演じていたら、ボクをやり過ごせていただろうに」
ジョーカーはしゃがみ込んで、床に伏す助六を見下ろす。
「だけど、このまま殺しちゃうと、ただの動物虐待になっちゃうし、後々寝覚めが悪いよね」
やさしく助六を撫でる。
「でさぁ、君たちの中に、面白い娘がいたね」
「お、面白い…娘だと?あ、ああ、あの目つきの悪い娘の事か…」
この場はジョーカーの話に付き合って、体力の回復を試みる。
この少女の言う通り、確かにクレハの霊力には目を見張るものがある。だけど。
「ノンノン。そっちの彼女じゃないさ。御陵・御伽っていう、大勢にオモチャにされていた子の方さ。あの子、先祖代々たくさんの人たちから恨みを買っているみたいだし、ボクの遊び相手にピッタリなんだ」
この魔者の狙いはオトギ。
それと、この魔者が、今回の魔導書チェスに召喚された者ではなく、元々こちらの世界に住み着いている魔者なのも掴めた。
報せなくては。
助六は、ボロボロになった体を、力を振り絞って立ち上がらせる。
「随分と仕事熱心なんだね、猫ちゃん。皆にボクの存在を報せる気だね」
ジョーカーが立ち上がる助六の頭を撫でる。
頭を撫でられながら、助六は悟った。
この病院に張り巡らせておいた結界を破ったのは、クレハではなく、このジョーカーという魔者だったのだと。
今まで気づきもしなかった魔者の存在。
恐ろしい魔者がいたものだ。
女王が張り巡らせた結界を、一つばかりか複数破るほどの強力な魔者が。
「こんなヤツがいたなんて…」
思わず呟く。
とはいえ、再びあの病室へ戻るにも、クレハと顔を合わせると思うと、やはり素直に戻る気にもなれなかった。
行く手に。
コツーン、コツーンと硬い靴底が鳴る音。
この音は革靴か…。
身を低くして身構える。そして、壁伝いに音の鳴る方へと近づいて行く。
「もうひとり、チンピラ共の仲間が残っていやがったか」
サターンを始末したとはいえ、関わった全員の記憶を消しておく必要がある。
なおも慎重に、歩く足音へと近づいて行く。
だが、突然足音が聞こえなくなった。
気付かれて立ち止まったか?
しかし、猫を警戒して立ち止まる人間など、果たしているだろうか?
疑問に思いつつ、再び身を低くして周囲をうかがう。
「どうしたんだい?猫ちゃん」
助六は驚きのあまり硬直してしまった。
声は真上から聞こえてくる。
真上…だと!?天井からだとッ!?
はたと声の方へと顔を向けた。
すると、道化師の格好をした少女が天井に張り付いていた。
「き、貴様!魔者かッ!?」
だけど、伝七がココミやルーティから聞き伝えらえた情報では、こんな姿の魔者は聞いた事が無い。彼女たちが名前を聞いて姿を見ていないのは、叫霊のツウラだけ。
だが、ツウラなら、すでに天馬学府内でその姿を確認している。断じてコイツでは無い。
「誰だ!貴様!」
訊ねるも、いつの間にか少女の姿は消え失せている。
コツーン、コツーン。
後ろから、さきほどの足音が。
助六は振り返った。
「ジョーカー。ジョークを言うから、皆からジョーカーって呼ばれているんだヨ」
告げてニッコリと満面の笑顔を助六に向けた。
助六は体を低くして身構えた。
「貴様、ライク様のところの魔者ではないな。ラーナ様の手の者か?それともミュッセ殿の手の者か?」
問う助六にジョーカーは。
「君の言う通りボクはアンデッドではないし、ニセ天使でもなければ悪魔でもないヨ。うーん」
人差し指を顎に当てて考え込む。
そして再び満面の笑みをたたえて。
「一体、何なんだろうね?ボク」
瞬間!
助六は体毛を硬化させてジョーカーへと向けて針を発射した。と、同時に後ろへと飛び退く。
「なっ!?」
針は天井に突き刺さっているだけ。どこだ!
助六の体は、はいつの間にか右側に現れたジョーカーによって蹴り飛ばされてしまった。
「ぐぁっ!」
壁に叩きつけられ、口から吐血。
「大人しく猫ちゃんを演じていたら、ボクをやり過ごせていただろうに」
ジョーカーはしゃがみ込んで、床に伏す助六を見下ろす。
「だけど、このまま殺しちゃうと、ただの動物虐待になっちゃうし、後々寝覚めが悪いよね」
やさしく助六を撫でる。
「でさぁ、君たちの中に、面白い娘がいたね」
「お、面白い…娘だと?あ、ああ、あの目つきの悪い娘の事か…」
この場はジョーカーの話に付き合って、体力の回復を試みる。
この少女の言う通り、確かにクレハの霊力には目を見張るものがある。だけど。
「ノンノン。そっちの彼女じゃないさ。御陵・御伽っていう、大勢にオモチャにされていた子の方さ。あの子、先祖代々たくさんの人たちから恨みを買っているみたいだし、ボクの遊び相手にピッタリなんだ」
この魔者の狙いはオトギ。
それと、この魔者が、今回の魔導書チェスに召喚された者ではなく、元々こちらの世界に住み着いている魔者なのも掴めた。
報せなくては。
助六は、ボロボロになった体を、力を振り絞って立ち上がらせる。
「随分と仕事熱心なんだね、猫ちゃん。皆にボクの存在を報せる気だね」
ジョーカーが立ち上がる助六の頭を撫でる。
頭を撫でられながら、助六は悟った。
この病院に張り巡らせておいた結界を破ったのは、クレハではなく、このジョーカーという魔者だったのだと。
今まで気づきもしなかった魔者の存在。
恐ろしい魔者がいたものだ。
女王が張り巡らせた結界を、一つばかりか複数破るほどの強力な魔者が。
「こんなヤツがいたなんて…」
思わず呟く。
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