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[17]沼へ
-169-:僕たちでここを切り抜けるんだ
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女子トイレの前でオロオロと行ったり来たりを繰り返すタツローの姿は、廊下を行き交う他の生徒たちの目に、さぞ不審人物と映る事だろう。
自ら確かめるべきか、人を呼ぶべきか。
しかし、人を呼ぶと言っても、気軽に頼める女子生徒などいない。
「こんな時にクレハさんがいてくれたらなぁ」
だけど、ここは1年生棟。廊下の突き当たりにある技術工作室には他の学年の生徒が来る事はあっても、女子の選択科目には工業機械を扱う技術工学は無い。
別学年の女子生徒が来るとすれば、せいぜいロボット工学部の部員くらいだ。
今は3時限目と4時限目の間…ダメだ。まだ部活の時間じゃない。
「困ったなぁ」
思わず感情が口に出てしまう。
そうだ!
非常にベタな手段だが、間違えて入ったフリをしよう。
慌てて走り込んで中をパッと見て出てくればいい。
ナイスアイデア。
では、と深呼吸をひとつ。
「いやぁぁ!目は止めてぇ!」
明らかに聞こえた!目だって!?目に何をされようとしているんだ?
思った時には、タツローはすでに女子トイレの中へと飛び込んでいた。
「ん?誰だ?オマエ」
ひとりの女子生徒が振り向いた。
「あっ!?」
4人の女子生徒たちによって、今まさに、壁に押し付けられている女子生徒が、火のついたタバコを押し当てられようとしていた。
しかも女子生徒は逃げられないように、前髪を掴まれ、壁へと押し当てられている。
「や、止めろ!」
タツローが止めに入るも。
「あぁーッ」
女子生徒の悲鳴。
だけど、すぐさま口にハンカチを押し込まれてしまい、くぐもった悲鳴しか上げられない。
無残にも、女子生徒の左の眉毛に火のついたタバコが押し当てられた。
ジュウゥゥ。
毛の焼ける匂いがタツローの鼻にも届いてきた。
「どうして…そんなヒドい事ができるんだ?」
イジメは今まで目撃した事はあるけど、だいたい無視するか、からかう程度のものだった。
こんな残酷で凄惨なイジメは見た事も無い。
「どうして?だって!お前、ナニ女子トイレに入って来ているんだよ!」
女子生徒たちの一人がタツローを恫喝した。
「悲鳴が聞こえたんだ。だから飛び込んで来た」
毅然とした態度を取る。も。
「悲鳴?ふーん」
独りがニヤニヤ笑っていたかと思えば、突然「キャーッ!!」悲鳴を上げた。
「な、何をしているんだ?突然悲鳴なんか上げて」
状況が理解できないタツローは女子生徒たちに訊ねた。すると。
「男子が!女子トイレを覗き見てるーッ!」
大騒ぎを始めた。
「う、ウソだろ…」
その場から一刻も離れようと、踵を返したタツローの腕を他の女子生徒が捕まえた。
「ち、痴漢ですーッ!!」
明らかな冤罪。
しかし、状況はタツローにとって、かなり不利。
女子生徒たちの中の一人が、「あっ」何かを思い出したかのように声を上げた。
その生徒に、他の生徒たちの注意が向いた。
「どうしたのよ。いきなり驚いてさ」
「コイツさぁ、ヴァルキリアの御手洗・寅美の弟だよ。姉ちゃんと違ってバスケの才能が全然な無いの」
事実を暴露されて、おまけに嘲笑されて。
タツローはあざ笑う生徒の手を振り払った。そして、痛みに顔を抑えてしゃがみ込んでいる女子生徒へと手を伸ばして。
「行こう。僕たちでここを切り抜けるんだ」
告げると、女子生徒は顔を上げてタツローの手を取ろうとした、その矢先!
ビリビリビリッ!左右両側から、いきなりブラウスを引き裂かれて、女子生徒の胸元が露わとなった。
女子生徒は恥ずかしさのあまり、再びしゃがみ込んでしまった。
「なぁ、イオリを襲ったのは、御手洗・寅美の弟だよなぁ?」
タツローは絶体絶命の窮地に立たされた。
自ら確かめるべきか、人を呼ぶべきか。
しかし、人を呼ぶと言っても、気軽に頼める女子生徒などいない。
「こんな時にクレハさんがいてくれたらなぁ」
だけど、ここは1年生棟。廊下の突き当たりにある技術工作室には他の学年の生徒が来る事はあっても、女子の選択科目には工業機械を扱う技術工学は無い。
別学年の女子生徒が来るとすれば、せいぜいロボット工学部の部員くらいだ。
今は3時限目と4時限目の間…ダメだ。まだ部活の時間じゃない。
「困ったなぁ」
思わず感情が口に出てしまう。
そうだ!
非常にベタな手段だが、間違えて入ったフリをしよう。
慌てて走り込んで中をパッと見て出てくればいい。
ナイスアイデア。
では、と深呼吸をひとつ。
「いやぁぁ!目は止めてぇ!」
明らかに聞こえた!目だって!?目に何をされようとしているんだ?
思った時には、タツローはすでに女子トイレの中へと飛び込んでいた。
「ん?誰だ?オマエ」
ひとりの女子生徒が振り向いた。
「あっ!?」
4人の女子生徒たちによって、今まさに、壁に押し付けられている女子生徒が、火のついたタバコを押し当てられようとしていた。
しかも女子生徒は逃げられないように、前髪を掴まれ、壁へと押し当てられている。
「や、止めろ!」
タツローが止めに入るも。
「あぁーッ」
女子生徒の悲鳴。
だけど、すぐさま口にハンカチを押し込まれてしまい、くぐもった悲鳴しか上げられない。
無残にも、女子生徒の左の眉毛に火のついたタバコが押し当てられた。
ジュウゥゥ。
毛の焼ける匂いがタツローの鼻にも届いてきた。
「どうして…そんなヒドい事ができるんだ?」
イジメは今まで目撃した事はあるけど、だいたい無視するか、からかう程度のものだった。
こんな残酷で凄惨なイジメは見た事も無い。
「どうして?だって!お前、ナニ女子トイレに入って来ているんだよ!」
女子生徒たちの一人がタツローを恫喝した。
「悲鳴が聞こえたんだ。だから飛び込んで来た」
毅然とした態度を取る。も。
「悲鳴?ふーん」
独りがニヤニヤ笑っていたかと思えば、突然「キャーッ!!」悲鳴を上げた。
「な、何をしているんだ?突然悲鳴なんか上げて」
状況が理解できないタツローは女子生徒たちに訊ねた。すると。
「男子が!女子トイレを覗き見てるーッ!」
大騒ぎを始めた。
「う、ウソだろ…」
その場から一刻も離れようと、踵を返したタツローの腕を他の女子生徒が捕まえた。
「ち、痴漢ですーッ!!」
明らかな冤罪。
しかし、状況はタツローにとって、かなり不利。
女子生徒たちの中の一人が、「あっ」何かを思い出したかのように声を上げた。
その生徒に、他の生徒たちの注意が向いた。
「どうしたのよ。いきなり驚いてさ」
「コイツさぁ、ヴァルキリアの御手洗・寅美の弟だよ。姉ちゃんと違ってバスケの才能が全然な無いの」
事実を暴露されて、おまけに嘲笑されて。
タツローはあざ笑う生徒の手を振り払った。そして、痛みに顔を抑えてしゃがみ込んでいる女子生徒へと手を伸ばして。
「行こう。僕たちでここを切り抜けるんだ」
告げると、女子生徒は顔を上げてタツローの手を取ろうとした、その矢先!
ビリビリビリッ!左右両側から、いきなりブラウスを引き裂かれて、女子生徒の胸元が露わとなった。
女子生徒は恥ずかしさのあまり、再びしゃがみ込んでしまった。
「なぁ、イオリを襲ったのは、御手洗・寅美の弟だよなぁ?」
タツローは絶体絶命の窮地に立たされた。
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