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[15]アルマンダルの天使たち
-159-:私をあざ笑っていたのか!?
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大きく肩で息をしているオフィエルに。
オフィエルの顔面に、ダナの放った左ジャブが炸裂。
HIT!!
しかし。
ダナの10倍速の世界はまだ終わらない。
打つべし、撃つべし、討つべし。
カイトシールドの防御に入るまで、オフィエルは、ひたすらジャブを受け続ける。
脳に酸素が行き渡らなくなっている状況下で、思考もままならない中、立て続けに頭部にジャブを受け続けている。
しかも、ダナは自らの拳を守るために、強固な超局所防御壁のグローブをはめて。
通常の時間の流れの中に身を置くクレハたちには、ダナの撃ち出すジャブが、マシンガンかガトリングガンの連射のように感じられた。
彼ら“アルマンダルの天使たち”が乱入してきた時は、とてつもない強敵感を覚えたものだが、まさかこれほどまでのワンサイドゲームになるとは予想もしなかった。
「アイツら、何をしにここへ来たの?」
もはや憐れにすら思えてしまう。
ダナのバイザーがせり上がった。
クロックアップ終了。
彼女の紺色の髪が風になびく。
「あぅ、おぁ、あがぁが」
オフィエルの顎部分は半壊状態に陥っていた。
肩で息をするオフィエルの視線が僚騎エプシロンへと向けられた。
「あぁッ!!」
魔竜となって圧倒していたはずのエプシロンの首に、刀が突き刺さっているではないか。
しかも、何を考えてか、突き刺さった刀を引き抜く事もせずに効果魔法で回復を図っている。
「何をやっている!?エプシロン!?」
思わず声を掛ける。だが、すでに効果魔法は発動済み、残念ながら不発に終わっていた。
しかも。
「ど、どうして視界が取り戻せていない!?修理は完了したはずだぞ!」
自分の身に何が起こっているのか、把握すらできていない有様。
「異物が突き刺さったままではリペアは不可能だぞ」
理由を伝えても「異物?何を言っている?教えてくれ!」未だ理解していない。
彼ら“天使”と呼ばれる、元々体を持たない霊体故に。
人間の体を得た時に不必要と、痛感をシャットアウトしたばかりに。
自らが伸ばした首に、ベルタが召喚した「お前の首にヤツの打刀が突き刺さっているのだ」事に気付けない。
「バカなッ!ヤツの手は全て塞がっているはず!手も足も出ないヤツが、どうやって私の首に剣を突き刺す事ができるのだッ!?」
ところが、足で刀を掴むという、誰もが考えそうで、まず実行に移される事の無い手段をベルタは用いていた。
エプシロンは必死に否定するも、現実に剣が首に突き刺さっているではないか。
「ベルタは、ヤツは召喚した刀を足で掴んでお前の首に突き刺したのだ」
まさか、あのような曲芸まがいの攻撃を繰り出してくるとは思いも寄らなかった。
「足でだと?」
再度訊ねてくるエプシロンに、オフィエルはいい加減嫌気が差してきた。
そんなオフィエルが見ていた光景に歪みが生じてきた。
“目の錯覚”か?
突然の出来事に、辺りを見回すオフィエル。
周りの景色に所々ノイズが走る。
そして。
「魔法が解けたか…」
「魔法?」
リョーマの呟きに反応。すると、辺りの景色が。
空がかき消されてゆき、代わりに地上の風景が現れてきた。
足元に目を移すと、何と!青く澄み渡る空が見えるではないか。
空を流れる雲に足を向けている。
「な、何だとぉーッ!!?」
自身の体に異変を来した原因が、ようやく理解できた。
「き、貴様!ドラゴンの騎士!貴様ぁ、今まで私に幻覚を見せていたのか!?」
大鉈の切っ先をダナに向けて問い詰める。
「もう少し早く気付くと思ったが」
腕を組んだ状態から左手人差し指を顎に当てる。
野太刀でシニヨンを解いたダナの長い紺色の髪を弄びながら。
「高砂・飛遊午とクィックフォワードの漫才を聞いていて、君たちに痛感が無い事に気付いてね。ひとつ試してみたんだ」
「私に幻影を見せて、逆さの私をあざ笑っていたのか!?」
オフィエルの体は正位置へと戻ってゆく。
「あざ笑いなどしない。本来の君には到底敵わない僕なりに策を講じたのさ」
野太刀を正眼に構え…上段へと構えを移してゆく。
浮遊素を足元に大量に散布して足場を築く。
足場の上に、さらに浮遊素を散布してウエハース状に足場を築いてゆく。
「君は強い。だけど、僕は君に負ける訳にはいかない。いや君に負けている場合ではないと言い直そう」
「あぁ?」
リョーマの言っている意味が、まるで分からないオフィエルの眼前に、ダナが迫る。
上下から野太刀の刃が襲い来る。
「ば、馬鹿な!?一本の刀で同時攻撃だと!」
衝撃を受けつつも、左腕は何とかカイトシールドで防ぎ切った!!ものの。
右腕は肘間接からバッサリと斬り落とされてしまった。
オフィエル=クレイモアの戦士だったアレックスも初めて目にする。
巌流ツバメ返しの凶刃。
「こ、この男は!」
3撃目の剣が水平に放たれ、野太刀の切っ先が、オフィエルの胸元を火花を散らせながら駆け抜けて行く。
負ける!
驚愕すべき高速を超えた超高速の剣。
オフィエルは即座に、自らがこの地に持ち込んだ、相手盤上戦騎を探した。
が。
ま、真後ろにあるだとぉーッ!?
攻撃してアンデスィデを強制終了させようにも、真後ろにあるのでは、振り向いている間にダナによって切り捨てられてしまう。
頼りのエプシロンは、すでに光の粒となって消え去った後。
こ、殺される。
死線を幾つも潜り抜けてきた戦士の体を得たにも関わらずに、恐怖におののいている。
バカな!
思うも、否定のしようがない。
死なないにしても、体を失う恐怖には敵わない。
オフィエルは必死に模索する。
この場をしのぎ切る方法を。
生き残る手段を。
そして。
彼は見つけた。
たった一本の命綱を。
擱座しているウッズェの姿を捉えた。
「アイツを殺れさえすれば、コイツらはみんな消えていなくなる」
紛れも無く、それは起死回生のチャンス。
オフィエルの顔面に、ダナの放った左ジャブが炸裂。
HIT!!
しかし。
ダナの10倍速の世界はまだ終わらない。
打つべし、撃つべし、討つべし。
カイトシールドの防御に入るまで、オフィエルは、ひたすらジャブを受け続ける。
脳に酸素が行き渡らなくなっている状況下で、思考もままならない中、立て続けに頭部にジャブを受け続けている。
しかも、ダナは自らの拳を守るために、強固な超局所防御壁のグローブをはめて。
通常の時間の流れの中に身を置くクレハたちには、ダナの撃ち出すジャブが、マシンガンかガトリングガンの連射のように感じられた。
彼ら“アルマンダルの天使たち”が乱入してきた時は、とてつもない強敵感を覚えたものだが、まさかこれほどまでのワンサイドゲームになるとは予想もしなかった。
「アイツら、何をしにここへ来たの?」
もはや憐れにすら思えてしまう。
ダナのバイザーがせり上がった。
クロックアップ終了。
彼女の紺色の髪が風になびく。
「あぅ、おぁ、あがぁが」
オフィエルの顎部分は半壊状態に陥っていた。
肩で息をするオフィエルの視線が僚騎エプシロンへと向けられた。
「あぁッ!!」
魔竜となって圧倒していたはずのエプシロンの首に、刀が突き刺さっているではないか。
しかも、何を考えてか、突き刺さった刀を引き抜く事もせずに効果魔法で回復を図っている。
「何をやっている!?エプシロン!?」
思わず声を掛ける。だが、すでに効果魔法は発動済み、残念ながら不発に終わっていた。
しかも。
「ど、どうして視界が取り戻せていない!?修理は完了したはずだぞ!」
自分の身に何が起こっているのか、把握すらできていない有様。
「異物が突き刺さったままではリペアは不可能だぞ」
理由を伝えても「異物?何を言っている?教えてくれ!」未だ理解していない。
彼ら“天使”と呼ばれる、元々体を持たない霊体故に。
人間の体を得た時に不必要と、痛感をシャットアウトしたばかりに。
自らが伸ばした首に、ベルタが召喚した「お前の首にヤツの打刀が突き刺さっているのだ」事に気付けない。
「バカなッ!ヤツの手は全て塞がっているはず!手も足も出ないヤツが、どうやって私の首に剣を突き刺す事ができるのだッ!?」
ところが、足で刀を掴むという、誰もが考えそうで、まず実行に移される事の無い手段をベルタは用いていた。
エプシロンは必死に否定するも、現実に剣が首に突き刺さっているではないか。
「ベルタは、ヤツは召喚した刀を足で掴んでお前の首に突き刺したのだ」
まさか、あのような曲芸まがいの攻撃を繰り出してくるとは思いも寄らなかった。
「足でだと?」
再度訊ねてくるエプシロンに、オフィエルはいい加減嫌気が差してきた。
そんなオフィエルが見ていた光景に歪みが生じてきた。
“目の錯覚”か?
突然の出来事に、辺りを見回すオフィエル。
周りの景色に所々ノイズが走る。
そして。
「魔法が解けたか…」
「魔法?」
リョーマの呟きに反応。すると、辺りの景色が。
空がかき消されてゆき、代わりに地上の風景が現れてきた。
足元に目を移すと、何と!青く澄み渡る空が見えるではないか。
空を流れる雲に足を向けている。
「な、何だとぉーッ!!?」
自身の体に異変を来した原因が、ようやく理解できた。
「き、貴様!ドラゴンの騎士!貴様ぁ、今まで私に幻覚を見せていたのか!?」
大鉈の切っ先をダナに向けて問い詰める。
「もう少し早く気付くと思ったが」
腕を組んだ状態から左手人差し指を顎に当てる。
野太刀でシニヨンを解いたダナの長い紺色の髪を弄びながら。
「高砂・飛遊午とクィックフォワードの漫才を聞いていて、君たちに痛感が無い事に気付いてね。ひとつ試してみたんだ」
「私に幻影を見せて、逆さの私をあざ笑っていたのか!?」
オフィエルの体は正位置へと戻ってゆく。
「あざ笑いなどしない。本来の君には到底敵わない僕なりに策を講じたのさ」
野太刀を正眼に構え…上段へと構えを移してゆく。
浮遊素を足元に大量に散布して足場を築く。
足場の上に、さらに浮遊素を散布してウエハース状に足場を築いてゆく。
「君は強い。だけど、僕は君に負ける訳にはいかない。いや君に負けている場合ではないと言い直そう」
「あぁ?」
リョーマの言っている意味が、まるで分からないオフィエルの眼前に、ダナが迫る。
上下から野太刀の刃が襲い来る。
「ば、馬鹿な!?一本の刀で同時攻撃だと!」
衝撃を受けつつも、左腕は何とかカイトシールドで防ぎ切った!!ものの。
右腕は肘間接からバッサリと斬り落とされてしまった。
オフィエル=クレイモアの戦士だったアレックスも初めて目にする。
巌流ツバメ返しの凶刃。
「こ、この男は!」
3撃目の剣が水平に放たれ、野太刀の切っ先が、オフィエルの胸元を火花を散らせながら駆け抜けて行く。
負ける!
驚愕すべき高速を超えた超高速の剣。
オフィエルは即座に、自らがこの地に持ち込んだ、相手盤上戦騎を探した。
が。
ま、真後ろにあるだとぉーッ!?
攻撃してアンデスィデを強制終了させようにも、真後ろにあるのでは、振り向いている間にダナによって切り捨てられてしまう。
頼りのエプシロンは、すでに光の粒となって消え去った後。
こ、殺される。
死線を幾つも潜り抜けてきた戦士の体を得たにも関わらずに、恐怖におののいている。
バカな!
思うも、否定のしようがない。
死なないにしても、体を失う恐怖には敵わない。
オフィエルは必死に模索する。
この場をしのぎ切る方法を。
生き残る手段を。
そして。
彼は見つけた。
たった一本の命綱を。
擱座しているウッズェの姿を捉えた。
「アイツを殺れさえすれば、コイツらはみんな消えていなくなる」
紛れも無く、それは起死回生のチャンス。
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