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[15]アルマンダルの天使たち
-157-:変に器用だったりするのよね…
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武器召喚した打刀を足で掴んで相手の首に突き刺す。
確かに、ベルタの踵部分は2連に分かれており、つま先と合わせれば3本指になるけれど。
それにしても。
よくもまぁ器用なマネをするものだわ。
クレハは高校受験を控えた、ある日の出来事を思い出していた。
クレハたちが現在通っている天馬学府高等部は、それはそれは進学校とまでは言わないけれど、なかなかレベルの高い高校である。
秀才のヒューゴは難なく合格できるだろうが、クレハは人並み以上の努力を強いられていた。
そこでクレハは手っ取り早く、斜向かいに住んでいる幼馴染という立場を最大限に活かして、彼の家で勉強を見てもらう日々を送っていた。
時に、想いは想像を絶する力を発揮する。
クレハの成績は、それまで平均値を上下しているだけだったのが、平均値を引っ張り上げる側に回っていた。
そんな、ある日。
二人が高砂家で勉強に励んでいた時、ヒューゴの父、高砂・一馬が帰ってきた。
成績が上り調子のクレハに、もはや教える事の無かったヒューゴは寝そべってテレビを見ている始末。
「ただいま」
茶の間へ顔を出した彼の父が帰宅を報せると、お邪魔しているクレハへの挨拶もそこそこに、すかさず「新聞」
ここの家庭は会話というものが無いのか?
まるで冷めきった夫婦のようなやり取り。
「あ、おかえり」
ヒューゴは起き上がる事もせずに、脚の指に新聞を挟んで、それを座布団回しのようにグルグルと回転させて父の方へと放り投げたのだった。
―!?
クレハの驚きはなおも続く。
投げられた新聞を、今度は彼の父が、まるでピザ職人のようにグルグルと回転させたかと思えばキャッチ。新聞を広げると読みながら自室へと姿を消した。
あの親にして、この息子あり。
あの時は、そう思ったものだ…。
遠い目をして、過去を振り返る。
「タカサゴのヤツ、変に器用だったりするのよね…」
今さら驚きはしない。
どれほどパワーが勝っていようが、どれほど手数が勝っていようが、当たらなければどうって事はない。
一方的にベルタが、視覚を失ったエプシロンの手足の関節部分に脇差を刺し込んで斬り落としてゆく。
最後に長く伸びた魔竜の首を落として、エプシロンは光に包まれ始めた。
総ダメージの60パーセント以上を失ったのだ。
「デカい口を叩いていた割には大した事の無いヤツだったわね」
意外にもあっけなく勝負が着いた事に、クレハは肩透かしを食らった気分だ。
「確かにエプシロンは強力な盤上戦騎でした。魔力も身体能力もヒューゴさんたちをはるかに凌駕していました」
その事に関してはクレハも同感だった。
ヒューゴが、文永の役(元冠または蒙古襲来)時のモンゴル兵さながらの、鎌倉武士の名乗りの途中で奇襲を仕掛けて、力の差を縮めた事も要因ではあるが。
それでも、やはりエプシロンはあっけないと感じてならない。
「まぁ、あれだけ長く相手と接触をしていたら、相手のデータを深層まで拾う事ができますよ」
ココミに言われて、そう言えば…キャサリンやソネと戦った時も、接触している時間によって取得できる相手データの重要度が違っていたのを思い出した。
「おかげでエプシロンがどのような魔者なのか?把握する事ができました」
ジャーンと誇らしげに魔導書のモンスター図鑑のページを開いて見せてくれた。
「スペクター?聞いた事の無いモンスターね」
?何々?と顔を近づけて詳細を読む。
**スペクターとは?**
実体を持たない意志を持った光体であり。他者に寄生して体を乗っ取り生命エネルギーを吸収する。生命エネルギーを吸い尽くしたら、また他の宿主へと寄生する。
説明文を読むに。
「何だか、カマキリに寄生しているハリガネムシみたいな連中ね」
彼らに対して、良い印象が粒ほども持てない。
「アイツら自分たちの事を“天使”とか名乗っていたけど、ただ単に光っているだけじゃん」
正体を知って、さらにガッカリ。
「マスターに寄生する事によって完全に騎体を支配していた訳ですが、彼らは元々感覚を持たない生命体。生物が持つ痛感が煩わしく感じられてシャットアウトしていたのでしょう。だからヒューゴさんの雑技団もビックリな攻撃に気付かなかったようです」
見事なまでの分かり易い解説、有難うございます。
こっちは片付いたようなので、リョーマたちのライブ映像を観る事にした。
「ココミちゃん。あっちの方は?」
クレハに急かされて、魔導書のページを急いでめくる。
リョーマたちの映像が映し出された。
「二人とも上下逆さになって…。アイツら、ナニ面白いコトをやっているの?」
向こうも向こうで摩訶不思議な戦いを繰り広げていた。
確かに、ベルタの踵部分は2連に分かれており、つま先と合わせれば3本指になるけれど。
それにしても。
よくもまぁ器用なマネをするものだわ。
クレハは高校受験を控えた、ある日の出来事を思い出していた。
クレハたちが現在通っている天馬学府高等部は、それはそれは進学校とまでは言わないけれど、なかなかレベルの高い高校である。
秀才のヒューゴは難なく合格できるだろうが、クレハは人並み以上の努力を強いられていた。
そこでクレハは手っ取り早く、斜向かいに住んでいる幼馴染という立場を最大限に活かして、彼の家で勉強を見てもらう日々を送っていた。
時に、想いは想像を絶する力を発揮する。
クレハの成績は、それまで平均値を上下しているだけだったのが、平均値を引っ張り上げる側に回っていた。
そんな、ある日。
二人が高砂家で勉強に励んでいた時、ヒューゴの父、高砂・一馬が帰ってきた。
成績が上り調子のクレハに、もはや教える事の無かったヒューゴは寝そべってテレビを見ている始末。
「ただいま」
茶の間へ顔を出した彼の父が帰宅を報せると、お邪魔しているクレハへの挨拶もそこそこに、すかさず「新聞」
ここの家庭は会話というものが無いのか?
まるで冷めきった夫婦のようなやり取り。
「あ、おかえり」
ヒューゴは起き上がる事もせずに、脚の指に新聞を挟んで、それを座布団回しのようにグルグルと回転させて父の方へと放り投げたのだった。
―!?
クレハの驚きはなおも続く。
投げられた新聞を、今度は彼の父が、まるでピザ職人のようにグルグルと回転させたかと思えばキャッチ。新聞を広げると読みながら自室へと姿を消した。
あの親にして、この息子あり。
あの時は、そう思ったものだ…。
遠い目をして、過去を振り返る。
「タカサゴのヤツ、変に器用だったりするのよね…」
今さら驚きはしない。
どれほどパワーが勝っていようが、どれほど手数が勝っていようが、当たらなければどうって事はない。
一方的にベルタが、視覚を失ったエプシロンの手足の関節部分に脇差を刺し込んで斬り落としてゆく。
最後に長く伸びた魔竜の首を落として、エプシロンは光に包まれ始めた。
総ダメージの60パーセント以上を失ったのだ。
「デカい口を叩いていた割には大した事の無いヤツだったわね」
意外にもあっけなく勝負が着いた事に、クレハは肩透かしを食らった気分だ。
「確かにエプシロンは強力な盤上戦騎でした。魔力も身体能力もヒューゴさんたちをはるかに凌駕していました」
その事に関してはクレハも同感だった。
ヒューゴが、文永の役(元冠または蒙古襲来)時のモンゴル兵さながらの、鎌倉武士の名乗りの途中で奇襲を仕掛けて、力の差を縮めた事も要因ではあるが。
それでも、やはりエプシロンはあっけないと感じてならない。
「まぁ、あれだけ長く相手と接触をしていたら、相手のデータを深層まで拾う事ができますよ」
ココミに言われて、そう言えば…キャサリンやソネと戦った時も、接触している時間によって取得できる相手データの重要度が違っていたのを思い出した。
「おかげでエプシロンがどのような魔者なのか?把握する事ができました」
ジャーンと誇らしげに魔導書のモンスター図鑑のページを開いて見せてくれた。
「スペクター?聞いた事の無いモンスターね」
?何々?と顔を近づけて詳細を読む。
**スペクターとは?**
実体を持たない意志を持った光体であり。他者に寄生して体を乗っ取り生命エネルギーを吸収する。生命エネルギーを吸い尽くしたら、また他の宿主へと寄生する。
説明文を読むに。
「何だか、カマキリに寄生しているハリガネムシみたいな連中ね」
彼らに対して、良い印象が粒ほども持てない。
「アイツら自分たちの事を“天使”とか名乗っていたけど、ただ単に光っているだけじゃん」
正体を知って、さらにガッカリ。
「マスターに寄生する事によって完全に騎体を支配していた訳ですが、彼らは元々感覚を持たない生命体。生物が持つ痛感が煩わしく感じられてシャットアウトしていたのでしょう。だからヒューゴさんの雑技団もビックリな攻撃に気付かなかったようです」
見事なまでの分かり易い解説、有難うございます。
こっちは片付いたようなので、リョーマたちのライブ映像を観る事にした。
「ココミちゃん。あっちの方は?」
クレハに急かされて、魔導書のページを急いでめくる。
リョーマたちの映像が映し出された。
「二人とも上下逆さになって…。アイツら、ナニ面白いコトをやっているの?」
向こうも向こうで摩訶不思議な戦いを繰り広げていた。
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