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[14]騎士と兵士
-148-:待たせたな。オカマ野郎
しおりを挟むクィックフォワードの口から出た思わぬワードに、ヒューゴは理解に苦しんだ。
「い、いま、“ベルタになれ”と言ったのか?」
何を言っているのか?さっぱり解らない。
「ベルタになるったって、どうやってなるんだ?」「お前は頭が悪いのか!?」
即答で返ってきた。これで『頭が悪い』と言われるのは何人目だ?
「効果魔法のカードの中に、ものまねのカードがあるだろ!?」
怒り気味の説明に、ヒューゴは納得がいかない。
「ああ、あったわ」
憮然として答える。
「そのカードで、現在残っている盤上戦騎と体を入れ替えるんだ」
現在残っているディザスター??
「何がいたっけ?」
思い出そうと努力を試みるヒューゴに、ココミが答えてくれた。
「現在残っている兵士は、今ご搭乗の直線機動特化のクィックフォワードさん、中長距離戦特化のガンランチャー、防御装甲強度特化のアーマーテイカーさん。それと近接戦特化のベルタさんの4騎です」
何気にガンランチャーだけ呼び捨て?そこが気になる。
「騎士は出払っていますし、他に僧正と女王がいますが、ルール上、現在搭乗しているクラス以上の盤上戦騎には入れ替えられないので、先程お伝えしました他の3騎の中から選んで頂きます」
うーん…。
どれも個性的だ。
中長距離戦特化は特に。しかし、ベルタ、クィックフォワードの両騎が偏った構成で組まれていたことから、新しい騎体を選ぶのはデンジャラスと言える。
それならば、安心して二天撃が繰り出せるベルタを選ぶのが得策。
防御装甲強度特化仕様騎のアーマーテイカーは最初から眼中に無かった。
凶刃に囲まれている状況で防御に徹するのは、無謀に思えたから。
ミミックのカードをカードリーダーにセット!
「俺は効果魔法!ミミックの効果を発動するぜ!そして、近接戦特化仕様騎のベルタを選択!」
檻の中で水色に光り輝く魔方陣が展開!
グルグルと回って、クィックフォワードの足元から一気に頭の天辺へと上昇。
そして水色の魔方陣はさらに高速回転をして一気に下降。
檻の中にはベルタの姿が。しかし、風になびいている髪の色は本来の空色ではなく、クィックフォワードの髪色と同じシルバーがかった金髪だ。
クィックフォワード=ベルタが囚われている剣の檻が爆散した。
変化を遂げて、いきなり二天撃で檻を破壊したのだ。
「あ、あたしの剣の檻が破られるなんて…」
アルルカンのプライドもろとも剣の檻を打ち砕いたのであった。
地面に着地するベルタ。
意外にも、フレームが大半を占める細い脚ではあるにも関わらず、接地圧を無視して地面に突き刺さる事は無かった。普通に着地できた。
「待たせたな。オカマ野郎」
右手に握る脇差を肩に担いでご挨拶。
ヒュ~~~。
何かの飛翔音が聞こえてくる。
「ん?」
すべての盤上戦騎が音の鳴る方へと顔を向けた。
ガンッ!高く土煙を上げて何かが墜落。
やがて晴れて行く土煙の中に、何かを発見!
それは、まぎれも無くこの世界に存在しないカタチ。
腕と脚をもがれた盤上戦騎だった。
「ココミ。確か、アンデスィデに参戦しているのは、白と黒、各2つずつの駒だったよな」
確認を取る。
「そんな…まさか!」
驚いた様子でココミは上空へと向き直った。
まるで宗教画のように、幾本もの地上へと差す日の光の中に。
天使たちの姿があった。
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