盤上の兵たちは最強を誇るドラゴン種…なんだけどさ

ひるま(マテチ)

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[14]騎士と兵士

-134-:“クレイモア”を精鋭部隊の名に冠したのです

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 クレイモア??

 訊きたい気持ちは山々だけど、あいにくヒューゴはお取込み中。

 だけど、ヒューゴは水泳時に呼吸を取り入れるかの如く、わずかな時間に脳内からデータを拾い出す。

 クレイモアとは?

 確か、スコットランドのハイランダーが使っていた大型の剣…だったはず。


 あながち、彼の知識は間違っていない。


 それが、どうにも組織の名称にはつながらない。…この戦闘の最中、そこまで頭が回らない。


「彼らの名前の由来なら、聞いたことがあります」
 空気を読んだかのように、ココミは説明を始めてくれた。

「その昔、彼らが仕える“教会”は、異教徒たちと幾度となく大きな戦争を繰り返していました」
 世界史の授業で習った。
 あの戦争は幾つもの年代をまたいで様々な地域で戦争を繰り広げていた。

「彼ら教会は、より強い力を求めて、異端としていた魔術や異教徒の使う武器をも貪欲に取り込んでいきました」
 教会に限った事ではなく、それは戦争状態に陥れば、どこの組織・国でも同じ行為に走るはず。非難などできようか。

「行き詰った彼らは、ついに名前に頼る“神頼み”に走ってしまいます。そして、はるか遠くに位置する地域の武器の名前の語源に頼るようになります」

「語源?」
 クレハは言葉を繰り返して首を傾げる。

「はい。より強い力を欲した教会は、“大きな剣”を語源とする“クレイモア”を精鋭部隊の名に冠したのです」

 “大きな剣”て…。

 他に頼るものは無かったのか?
 ツッコミどころではあるが、それすらも頼りたくなるほどのドロ試合(死合い)だった。
 よく現在まで血筋を残せたものだと感心すらする。

「彼らの活躍は目覚ましく、それでも、戦争はやがて互いに疲弊しきって終息に向かいます」
 いわゆる休戦というヤツだ。

 カタチはどうであれ、平和なのが一番。


「続いて、私の祖国ドラケン王国と彼らの関係に関してご説明致します」

 さっき、『前回の王位継承戦で、ドラゴンたちのマスターを務めた教会お抱えの騎士団』と言っていたのを思い出した。

「彼らクレイモアは、戦争時は英雄として称えられていましたが、平和な時代が訪れると、無駄飯食らいと揶揄され、次第に肩身の狭い組織となって行きます」

 それは武士の時代も同じ。
 だからと、いざとなった時の事を考えると邪険にも扱えない。

「そこで教会は、彼らを地下に押し込め、暗殺の任務を与えるようになります」

「汚れ仕事というヤツね。背に腹は代えられないからなぁ」
 ハイとココミは頷いて。

「そして現在に至り、より平和な時代が訪れると、教会はとうとう彼らの居場所さえも奪ってしまいます」

「より平和な時代って、先の王位継承戦が終わった時の事だよね」
 念を押したクレハに、ココミは頷いて見せた。

「破門。教会は彼らを切り捨ててしまいます。一方的な教会による決裂に、クレイモアは、教会にこれまでの汚れ仕事を世間に公表すると脅しを掛けましたが、教会はクレイモアによる独断と見なしてこれを全否定。クレイモアはただの戦闘集団に成り下がってしまいます」

 トカゲのしっぽ切り。

 番犬が野良犬に成り下がった瞬間であった。

「それ以降、彼らは自然解散したものとばかり思っていたのですが、まさか、未だに存在していたとは…」

「把握しとらんかったんかい!」
 思わずツッコミを入れてしまう。
 自然解散とは、どれだけ楽観視したら、そんな判断に至るのか?

 それにしても。

 栄えある騎士団のなれの果てが、ただの武装戦闘集団とはねぇ…。

 何とも、世知辛い世の中だわ。
 クレハはしみじみ思う。



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