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[14]騎士と兵士
-132-:さぁ、ダンスパーティーの始まりよぉ~
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「うぅぅ、小癪な。さっきから、なかなかやるわね!このペリカン野郎!」
敵騎が、未だかすり傷すら与えらえていないクィックフォワードに吐き捨てた。
「うるさいぞ!オカマ野郎!私の名前はクィックフォワード!“突風翼竜”のクィックフォワードだ。覚えておけ!」
ペリカンと呼ばれる事に異常に反応を示す。
事実、現在頭上へと開いているバイザーはトンガリ帽子風に尖っている。アレが下りたら、見た目ペリカンと相違ない。
「『覚えておけ』、ですってぇ」
ホホホと人を小馬鹿にしたように、敵騎は手の甲を頬に充てて笑ってみせた。
「その必要は無いわ。あたし、殺した相手のコトなんて1ミリも覚えてやいやしないもの」
とんでもない自信家と言いたいトコロだが、単位が間違っているぞ。
それに。
こちとら、まだ殺されていない!
敵騎に円盾を構えて防御態勢に入る。
「だけど、名前も知らない相手に殺されるってのも不憫よねぇ」
テンガロンハットを被った敵騎は額に当てていた人差し指をクィックフォワードへと、ビシッと向けた。
「あたしは木乃伊のアルルカン!騎士の盤上戦騎よッ!!」
アイツがナイトかよ…。
確かに図体はデカイ。
ベルタよりも若干背が低いクィックフォワードの倍はあるだろうか。
アルルカンは、胸元に垂れ下がる、三つ編みに束ねられた深紅の髪を手で払いのけると。
「思い残す事は無い?さぁ、ダンスパーティーの始まりよぉ~」
アルルカンの体のあちこちにあるドラムリールから、一斉に包帯が射出された。
それらがクランクのように鋭角に折れながら、クィックフォワード目がけて襲い来る。
盾防御、剣による切り払いを駆使しながら、俊敏な機動を見せてそれぞれの攻撃をかわしてゆく。
包帯による攻撃はまったく当たらないどころか、かすりもしない。
だけど。
「全っ然アルルカンに近づけない。攻撃が激し過ぎる」
怒涛の攻撃に、ヒューゴは眼球をフル活動させながら焦る。
近づけないのなら。
ヒューゴは射撃戦へと方向転換。
籠手剣の根本、腕に装備されている砲口をアルルカンへと向けて、トリガーを引く。
………。
……「え?」
「何をやっている?ヒューゴ。弾を込めなければ、発射できないぞ。お前は頭が悪いのか?」
クィックフォワードの指摘に??「弾を込める?」思わず訊ねてしまった。
「まず、ボルトハンドルを起こしてボルトを引き出す」
レクチャーを開始してくれたが、いきなり知らない言葉が出てきた。
この状況、いちいち質問していると、クィックフォワードの機嫌を損ないかねないので、まず砲身(腕全体)を観る。
“見る”じゃなくて“観る”。とても注意深く。
ボルトハンドルとは、これじゃないかと思えるパーツが。
突起の先端が球になっている。これを起こしてみる→起きた→アレ?引き出せるぞ。
引き出してみる。
「次は弾を装填しろ」との指示が。
騎体のあちこちを触れて探すも「弾はどこだ?」
「左の脇腹、円盤状の前面装甲の一か所が開いているだろ。そこから弾を取り出すんだ」
クィックフォワードの胸部は円盤状の装甲で覆われている。この中全てに弾があるということは…。
ライフル弾をポケットから3発同時に取り出しながら「全部で何発ある?」訊ねると。
「48発」
愛想もなく弾数だけ答えながった。
「弾は一度に3発までしか装填できないから、余分に取り出すなよ」
3発しか入らないのかよ…。しかし、このアクション、古い戦争映画で見たことがあるな。
弾を入れると、ボルトを押し込んで、ボルトハンドルを…ガキンッ!力任せに倒し込む。
これで装填完了。
再びアルルカンを狙い撃つ!狙うは、口数の多いおしゃべりなド頭。
ドォォーン!と大きな音を響かせ、砲口から炎と煙を吐き出してライフル弾は発射された。
ついでに排莢。反動で肘が跳ね上がる。
的は大きく逸れ。
「オイオイ、片手で撃つなよ。銃身が不安定なままだろ。ちゃんと左手を添えて撃ってくれ」
それを先に言ってくれ。
それよりも、俺は真っ赤な全身タイツ姿の某宇宙海賊かよ…。
(コイツ、何から何まで使い勝手の悪いものばかりじゃないか…)
不満を垂れたい気持ちで山々だが、いまの衝撃、轟音、火力としては申し分ない。
当てればダメージを期待できる。
ベルタの最低火力の豆鉄砲とはレベルが違う!
一回に込められる弾数と弾の装填の手間さえ目をつむればのハナシだが。
銃撃戦を展開しつつ、パネルをフリックさせてクィックフォワードの情報画面を開く。
“直線機動力特化仕様騎”と記されている通り、クィックフォワードはベルタとは比較にならないほどに俊敏な機動で相手を翻弄している。
武器は…右手に籠手剣&アームライフルを内蔵とある。
ご冗談でしょう。
内臓と言うよりも、どちらも腕そのものが剣でありライフルの間違いではありませんか?
続いて、左手にはランタン・シールドとある。
今更文句は垂れない。盛り沢山が過ぎて、扱いに困る盾なのは理解した。
『ランタンでもぶら下げるのか?』のツッコミはこの際ご法度。
相も変わらず、ココミの構築した盤上戦騎の装甲は前面に集中しており、後面はフレームが剥き出しの部分がいくつか見受けられる。
ベルタと同じく、不思議な彩りを見せる装甲は水色で、背中には広げれば逆V字型の翼があり、髪はややシルバーがかった金髪。しかもハネ毛気味のロングヘアー。
(コイツ…男なのに、ロン髪なのかよ…)
動き回っていたせいで気付かなかった衝撃の事実。
ベルタよりも思い切ったステータス割をしていないだけマシとしよう。
戦いに集中しよう。
視線を再びアルルカンへと戻した。
敵騎が、未だかすり傷すら与えらえていないクィックフォワードに吐き捨てた。
「うるさいぞ!オカマ野郎!私の名前はクィックフォワード!“突風翼竜”のクィックフォワードだ。覚えておけ!」
ペリカンと呼ばれる事に異常に反応を示す。
事実、現在頭上へと開いているバイザーはトンガリ帽子風に尖っている。アレが下りたら、見た目ペリカンと相違ない。
「『覚えておけ』、ですってぇ」
ホホホと人を小馬鹿にしたように、敵騎は手の甲を頬に充てて笑ってみせた。
「その必要は無いわ。あたし、殺した相手のコトなんて1ミリも覚えてやいやしないもの」
とんでもない自信家と言いたいトコロだが、単位が間違っているぞ。
それに。
こちとら、まだ殺されていない!
敵騎に円盾を構えて防御態勢に入る。
「だけど、名前も知らない相手に殺されるってのも不憫よねぇ」
テンガロンハットを被った敵騎は額に当てていた人差し指をクィックフォワードへと、ビシッと向けた。
「あたしは木乃伊のアルルカン!騎士の盤上戦騎よッ!!」
アイツがナイトかよ…。
確かに図体はデカイ。
ベルタよりも若干背が低いクィックフォワードの倍はあるだろうか。
アルルカンは、胸元に垂れ下がる、三つ編みに束ねられた深紅の髪を手で払いのけると。
「思い残す事は無い?さぁ、ダンスパーティーの始まりよぉ~」
アルルカンの体のあちこちにあるドラムリールから、一斉に包帯が射出された。
それらがクランクのように鋭角に折れながら、クィックフォワード目がけて襲い来る。
盾防御、剣による切り払いを駆使しながら、俊敏な機動を見せてそれぞれの攻撃をかわしてゆく。
包帯による攻撃はまったく当たらないどころか、かすりもしない。
だけど。
「全っ然アルルカンに近づけない。攻撃が激し過ぎる」
怒涛の攻撃に、ヒューゴは眼球をフル活動させながら焦る。
近づけないのなら。
ヒューゴは射撃戦へと方向転換。
籠手剣の根本、腕に装備されている砲口をアルルカンへと向けて、トリガーを引く。
………。
……「え?」
「何をやっている?ヒューゴ。弾を込めなければ、発射できないぞ。お前は頭が悪いのか?」
クィックフォワードの指摘に??「弾を込める?」思わず訊ねてしまった。
「まず、ボルトハンドルを起こしてボルトを引き出す」
レクチャーを開始してくれたが、いきなり知らない言葉が出てきた。
この状況、いちいち質問していると、クィックフォワードの機嫌を損ないかねないので、まず砲身(腕全体)を観る。
“見る”じゃなくて“観る”。とても注意深く。
ボルトハンドルとは、これじゃないかと思えるパーツが。
突起の先端が球になっている。これを起こしてみる→起きた→アレ?引き出せるぞ。
引き出してみる。
「次は弾を装填しろ」との指示が。
騎体のあちこちを触れて探すも「弾はどこだ?」
「左の脇腹、円盤状の前面装甲の一か所が開いているだろ。そこから弾を取り出すんだ」
クィックフォワードの胸部は円盤状の装甲で覆われている。この中全てに弾があるということは…。
ライフル弾をポケットから3発同時に取り出しながら「全部で何発ある?」訊ねると。
「48発」
愛想もなく弾数だけ答えながった。
「弾は一度に3発までしか装填できないから、余分に取り出すなよ」
3発しか入らないのかよ…。しかし、このアクション、古い戦争映画で見たことがあるな。
弾を入れると、ボルトを押し込んで、ボルトハンドルを…ガキンッ!力任せに倒し込む。
これで装填完了。
再びアルルカンを狙い撃つ!狙うは、口数の多いおしゃべりなド頭。
ドォォーン!と大きな音を響かせ、砲口から炎と煙を吐き出してライフル弾は発射された。
ついでに排莢。反動で肘が跳ね上がる。
的は大きく逸れ。
「オイオイ、片手で撃つなよ。銃身が不安定なままだろ。ちゃんと左手を添えて撃ってくれ」
それを先に言ってくれ。
それよりも、俺は真っ赤な全身タイツ姿の某宇宙海賊かよ…。
(コイツ、何から何まで使い勝手の悪いものばかりじゃないか…)
不満を垂れたい気持ちで山々だが、いまの衝撃、轟音、火力としては申し分ない。
当てればダメージを期待できる。
ベルタの最低火力の豆鉄砲とはレベルが違う!
一回に込められる弾数と弾の装填の手間さえ目をつむればのハナシだが。
銃撃戦を展開しつつ、パネルをフリックさせてクィックフォワードの情報画面を開く。
“直線機動力特化仕様騎”と記されている通り、クィックフォワードはベルタとは比較にならないほどに俊敏な機動で相手を翻弄している。
武器は…右手に籠手剣&アームライフルを内蔵とある。
ご冗談でしょう。
内臓と言うよりも、どちらも腕そのものが剣でありライフルの間違いではありませんか?
続いて、左手にはランタン・シールドとある。
今更文句は垂れない。盛り沢山が過ぎて、扱いに困る盾なのは理解した。
『ランタンでもぶら下げるのか?』のツッコミはこの際ご法度。
相も変わらず、ココミの構築した盤上戦騎の装甲は前面に集中しており、後面はフレームが剥き出しの部分がいくつか見受けられる。
ベルタと同じく、不思議な彩りを見せる装甲は水色で、背中には広げれば逆V字型の翼があり、髪はややシルバーがかった金髪。しかもハネ毛気味のロングヘアー。
(コイツ…男なのに、ロン髪なのかよ…)
動き回っていたせいで気付かなかった衝撃の事実。
ベルタよりも思い切ったステータス割をしていないだけマシとしよう。
戦いに集中しよう。
視線を再びアルルカンへと戻した。
応援ありがとうございます!
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