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[13]ミドルゲームスタート!!
-116-:話し口調に気をつけてよ。ママ
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6月15日朝―。
“鈴木・くれは”は目覚めるも、すぐにベッドから起き上がる事もせず。
「もう一回寝よ」
校則を破っての、自宅謹慎を申し付けられた分際でありながら、すっかりとぐうたら癖が染み付いていた。
反省の色が見られない彼女には、この謹慎処分が、ただの連休に思えてならないのだろう(どうせ勉強の遅れはタカサゴやキョウコちゃんに頼れば良いんだし)。
人間としてダメになってゆく自身に、まったく気付かないクレハであった。
そんなクレハの家の前を通り過ぎる女性の影がふたつ。
津浦・アンジェリーナこと叫霊のツウラと、宿呪霊のナバリィのふたり。
高砂・飛遊午に顔を知られているナバリィではあるが、ブラウスまで黒の、黒のスーツ姿に黒縁眼鏡プラス黒のストッキングと、一見教育ママ風な姿に、天馬学府の制服姿のツウラを連れ立っていることから、二人は親子という設定。
しかし、当のナバリィは不服な模様。
(どうしてこの我が、こ奴の母親を演じねばならぬのだ…)
不遜な態度は、気難しい親だと周りは受け止めてくれるだろう。
「どうだ?高砂・飛遊午の霊力は回復しているのか?」
ツウラに訊ねた。
「話し口調に気をつけてよ。ママ」
「マ、ママぁ!?」
「そういう設定でしょ?オヤジじゃないんだし、命令口調はやめてよね」
注意を受けるも、素直に聞き入れる事なんてできない。
「口惜しや…。なにゆえ我が、貴様の母親なんぞを演じねばならぬのだ…。貴様の親などアルルカンに任せておけばよいものを」
「冗談ッ!あんなオカマの出来損ないが私の親なんて、こっちから願い下げよ!それにアイツ、今まで素顔を見せたことすら無いじゃない。いつも包帯グルグル巻きにしちゃってさ」
彼は、見るからに不審人物そのもの。
「言い争っていても仕方がない。用件を済ませて、さっさとここを立ち去るぞ」
ナバリィが促す。
「だぁかぁらぁ。その喋り方をやめてって。もう!いいわ。解ったから」
仕方ないと言わんばかりに、霊力感知に集中する。
「高砂・飛遊午の霊力はもう回復しているわ。これも-」
視線をクレハの家へと、そして彼女の部屋がある3階へと向けた。
「あの子の無駄に強力な霊力のおかげってトコロかしら」
一応顔見知りになった事だし、クレハの呼び方は“ブス”から“子”へと、少しだけマイルドに変化を遂げていた。
「それにしても…」
恐るべきはクレハの霊力。
ライクに狼藉を働こうとしたクレハを拘束したアルルカンの包帯が、彼女を解放した後、所々焼け焦げていた。
それも、彼女の強力な霊力の成せる業なのか。
しかし、幸運な事に、もしもあの場所にウォーフィールドがいたのならば、ライクを手に掛けようとした時点で彼女は即刻葬られていた事だろう。
今も呑気に寝ていられるのも、運が良かったからに過ぎない。
突然、ガラガラと引き戸が開けられる音がした。
高砂・飛遊午が登校しようとしているのだ。
「マズイ!」
変装しているとはいえ、ヒューゴと鉢合わせになるのはリスクが高い。
ナバリィはツウラの影に隠れた。
が。
「ア、アイツ…」
ツウラも焦りに焦った。
何と!
草間・涼馬が、こちらにやって来るではないか。
変装しているとはいえ、リョーマと鉢合わせになるのはリスクが高い。
ツウラはナバリィの影に隠れた。
二人して、変装はしているつもりでも、絶対的な自信は持てていない。
「貴様、何で私の影に隠れる!?」
「それはこっちのセリフよ!私の影に隠れないでよ」
お互いの影に隠れようとする二人は、その場でグルグルと周り始めた。
二人のやりとりは、まるで対戦型アクションゲームにおいて、クリティカルヒットが見込める背後からの攻撃(いわゆる“ケツの取り合い”)を彷彿とさせる。
不審な動きを見せる二人を遠くから目にしたリョウマは、その場で足を止めた。
「何をしているんだ?アノ人たちは」
明らかにもみ合っているように見える。こんな住宅地で。
理由はともあれ、あれでは世間迷惑も甚だしい。
リョーマはすぐさまスマホを取り出すと警察へと通報しようと―。
「アレ?今の人たちは…」
一瞬、スマホ画面に目をやった隙に、二人の姿は消えて無くなっていた。
「もしかして、あいつらが高砂・飛遊午の命を狙っているヤツらなのか…」
同じく、ヒューゴの命を狙っている身でありながら、自覚すら抱いていない張本人が呟いた。
“鈴木・くれは”は目覚めるも、すぐにベッドから起き上がる事もせず。
「もう一回寝よ」
校則を破っての、自宅謹慎を申し付けられた分際でありながら、すっかりとぐうたら癖が染み付いていた。
反省の色が見られない彼女には、この謹慎処分が、ただの連休に思えてならないのだろう(どうせ勉強の遅れはタカサゴやキョウコちゃんに頼れば良いんだし)。
人間としてダメになってゆく自身に、まったく気付かないクレハであった。
そんなクレハの家の前を通り過ぎる女性の影がふたつ。
津浦・アンジェリーナこと叫霊のツウラと、宿呪霊のナバリィのふたり。
高砂・飛遊午に顔を知られているナバリィではあるが、ブラウスまで黒の、黒のスーツ姿に黒縁眼鏡プラス黒のストッキングと、一見教育ママ風な姿に、天馬学府の制服姿のツウラを連れ立っていることから、二人は親子という設定。
しかし、当のナバリィは不服な模様。
(どうしてこの我が、こ奴の母親を演じねばならぬのだ…)
不遜な態度は、気難しい親だと周りは受け止めてくれるだろう。
「どうだ?高砂・飛遊午の霊力は回復しているのか?」
ツウラに訊ねた。
「話し口調に気をつけてよ。ママ」
「マ、ママぁ!?」
「そういう設定でしょ?オヤジじゃないんだし、命令口調はやめてよね」
注意を受けるも、素直に聞き入れる事なんてできない。
「口惜しや…。なにゆえ我が、貴様の母親なんぞを演じねばならぬのだ…。貴様の親などアルルカンに任せておけばよいものを」
「冗談ッ!あんなオカマの出来損ないが私の親なんて、こっちから願い下げよ!それにアイツ、今まで素顔を見せたことすら無いじゃない。いつも包帯グルグル巻きにしちゃってさ」
彼は、見るからに不審人物そのもの。
「言い争っていても仕方がない。用件を済ませて、さっさとここを立ち去るぞ」
ナバリィが促す。
「だぁかぁらぁ。その喋り方をやめてって。もう!いいわ。解ったから」
仕方ないと言わんばかりに、霊力感知に集中する。
「高砂・飛遊午の霊力はもう回復しているわ。これも-」
視線をクレハの家へと、そして彼女の部屋がある3階へと向けた。
「あの子の無駄に強力な霊力のおかげってトコロかしら」
一応顔見知りになった事だし、クレハの呼び方は“ブス”から“子”へと、少しだけマイルドに変化を遂げていた。
「それにしても…」
恐るべきはクレハの霊力。
ライクに狼藉を働こうとしたクレハを拘束したアルルカンの包帯が、彼女を解放した後、所々焼け焦げていた。
それも、彼女の強力な霊力の成せる業なのか。
しかし、幸運な事に、もしもあの場所にウォーフィールドがいたのならば、ライクを手に掛けようとした時点で彼女は即刻葬られていた事だろう。
今も呑気に寝ていられるのも、運が良かったからに過ぎない。
突然、ガラガラと引き戸が開けられる音がした。
高砂・飛遊午が登校しようとしているのだ。
「マズイ!」
変装しているとはいえ、ヒューゴと鉢合わせになるのはリスクが高い。
ナバリィはツウラの影に隠れた。
が。
「ア、アイツ…」
ツウラも焦りに焦った。
何と!
草間・涼馬が、こちらにやって来るではないか。
変装しているとはいえ、リョーマと鉢合わせになるのはリスクが高い。
ツウラはナバリィの影に隠れた。
二人して、変装はしているつもりでも、絶対的な自信は持てていない。
「貴様、何で私の影に隠れる!?」
「それはこっちのセリフよ!私の影に隠れないでよ」
お互いの影に隠れようとする二人は、その場でグルグルと周り始めた。
二人のやりとりは、まるで対戦型アクションゲームにおいて、クリティカルヒットが見込める背後からの攻撃(いわゆる“ケツの取り合い”)を彷彿とさせる。
不審な動きを見せる二人を遠くから目にしたリョウマは、その場で足を止めた。
「何をしているんだ?アノ人たちは」
明らかにもみ合っているように見える。こんな住宅地で。
理由はともあれ、あれでは世間迷惑も甚だしい。
リョーマはすぐさまスマホを取り出すと警察へと通報しようと―。
「アレ?今の人たちは…」
一瞬、スマホ画面に目をやった隙に、二人の姿は消えて無くなっていた。
「もしかして、あいつらが高砂・飛遊午の命を狙っているヤツらなのか…」
同じく、ヒューゴの命を狙っている身でありながら、自覚すら抱いていない張本人が呟いた。
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