盤上の兵たちは最強を誇るドラゴン種…なんだけどさ

ひるま(マテチ)

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[11]迫撃!トリプルポーン

-101-:さすがは高砂・飛遊午。やりますね

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 昼休みに入って15分が経過―。

「鈴木さん、高砂くんを知らない?」
 食事を終えたばかりの“鈴木くれは”に猪苗代・恐子いなわしろ・きょうこが訊ねた。

「え?」
 あからさまに怪訝な表情を見せ。
 食事を終えたばかりなのに、急ぎの用事でもあるのかい?

「5時限目の選択科目が古典なんだけど、資料本を図書室から持ってくるのを手伝って欲しいなって」
 ナニ可愛いコト言っていやがるのか、この女は。

 今まで力仕事は全部男子生徒に任せきりだったくせに。何を急にタカサゴと一緒に行動しようと企むのかねぇ?ひょっとして。

「さてね。知らないけど、キョウコちゃん、もうちょっと二の腕を絞ったらカッコイイと思うけどな」

「そ、そう?ごめんなさいね、お昼休み中に」
 プヨついてなどいない二の腕をさすりながら、キョウコは邪魔をしたと詫びを入れ。

「珍しいわね。高砂くんが昼休みに教室にいないなんて」
 不思議そうに告げると、委員長は教室を後にした。

 言われてみれば、その通りだ。
 昼休みに教室で高砂・飛遊午たかさご・ひゅうごの姿を見ないのは初めてだ。




 同じころ、福井県・東尋坊より北へ80km付近の海上上空―。


 迂闊うかつ

 すっかり用心を欠いていた。
 高砂・飛遊午はただただ反省した。しかし。

 ただちに双手の脇差しを最後の敵騎に構えて見せる。

 一方の敵騎は。

 ブンブンと三又槍トライデントを振り回してベルタを寄せ付けようとしない。

 やはり、あれは槍の構えでは無い。明らかに棒術の構えだ。

 相手に間合いを計らせないように、常に棍棒を動かし続けている。厄介だ。


 それにしても。


 先程まで槍の握り方から素人丸出しだった敵騎が、何でいきなり達人レベルの優れた棒術を披露しているのか?それが不可解だった。

 敵騎の、サイコロの6の目のように並んだ6つ目が黄玉色に光る。

「まるで人が変わったように、先程と動きが全然違う」
 ベルタが驚きの声を漏らした。

 意外と答えは簡単なものだった。
 ヒューゴはクククと含み笑いをした。

「どうしたのです?ヒューゴ。急に笑い出したりして」
 ベルタが訊ねた。

「選手交代しやがった。たぶんな。俺たちも一度やっているだろ?」
 なるほどと納得して「ああ」ベルタは漏らした。

「でも、一体誰と選手交代したのでしょう?」
 訊かれても全く心当たりは無い。

 しかし、ヒューゴ自身、異種の得物を操る達人相手に、ルールに守られた試合以外で戦うのは初めてのことだた。

 今まで感じた事の無い、別の意味の命の危険を感じる…。


 敵騎が、三又槍を振り回しながら体そのものを駒のように回転させながら接近。

 時折敵騎は、一瞬ベルタに背を向ける形を見せる。しかし。

 ここは迂闊に飛び込まない。
 これは確実に罠だ。わざと隙を見せているに違いない。が、その判断は甘かった。

 敵騎は回転しもってベルタとの距離を縮めると、三又槍の持ち方を本来の槍の持ち方へと戻して、槍先での刺突攻撃を繰り出してきた。

 槍の間合い。

 一目瞭然、脇差しの刀身では届かない。

 連続での突き。これは槍術ではないか!
 狭い城の中で、攻め入る敵を迎え撃つ時に槍はその効果を発揮する。

 刀を思うように振り回せない敵を、遠い間合いから一方的に突き崩す。

 開いた環境の中、横移動をしてかわせれば何の問題も無いのだが、この連続しての突き攻撃、あまりにも速過ぎて切り払うしか身を守る術が無い。

 不本意にも徐々にではあるが高度まで下げられつつある。この鬼攻撃、敵騎の蒼く光る6つ目からは槍の軌道は読む事ができない。が。

 ベルタが右手の脇差しの刃部を水平にして、敵盤上戦騎ディザスターの喉元めがけて刺突攻撃を仕掛けた。

 敵は一歩分横移動して躱すも、脇差しの刃はホーミングするように敵騎の襟を切りつけた。


 “平突き”


 刀の刃を水平にして突きを繰り出し、躱した相手を追って斬撃に転じる剣技のひとつ。

「さすがは高砂・飛遊午。やりますね」
 男性の声。

 ようやく、敵さんの声を聴くことができた。

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