106 / 351
[11]迫撃!トリプルポーン
-101-:さすがは高砂・飛遊午。やりますね
しおりを挟む
昼休みに入って15分が経過―。
「鈴木さん、高砂くんを知らない?」
食事を終えたばかりの“鈴木くれは”に猪苗代・恐子が訊ねた。
「え?」
あからさまに怪訝な表情を見せ。
食事を終えたばかりなのに、急ぎの用事でもあるのかい?
「5時限目の選択科目が古典なんだけど、資料本を図書室から持ってくるのを手伝って欲しいなって」
ナニ可愛いコト言っていやがるのか、この女は。
今まで力仕事は全部男子生徒に任せきりだったくせに。何を急にタカサゴと一緒に行動しようと企むのかねぇ?ひょっとして。
「さてね。知らないけど、キョウコちゃん、もうちょっと二の腕を絞ったらカッコイイと思うけどな」
「そ、そう?ごめんなさいね、お昼休み中に」
プヨついてなどいない二の腕をさすりながら、キョウコは邪魔をしたと詫びを入れ。
「珍しいわね。高砂くんが昼休みに教室にいないなんて」
不思議そうに告げると、委員長は教室を後にした。
言われてみれば、その通りだ。
昼休みに教室で高砂・飛遊午の姿を見ないのは初めてだ。
同じころ、福井県・東尋坊より北へ80km付近の海上上空―。
迂闊。
すっかり用心を欠いていた。
高砂・飛遊午はただただ反省した。しかし。
ただちに双手の脇差しを最後の敵騎に構えて見せる。
一方の敵騎は。
ブンブンと三又槍を振り回してベルタを寄せ付けようとしない。
やはり、あれは槍の構えでは無い。明らかに棒術の構えだ。
相手に間合いを計らせないように、常に棍棒を動かし続けている。厄介だ。
それにしても。
先程まで槍の握り方から素人丸出しだった敵騎が、何でいきなり達人レベルの優れた棒術を披露しているのか?それが不可解だった。
敵騎の、サイコロの6の目のように並んだ6つ目が黄玉色に光る。
「まるで人が変わったように、先程と動きが全然違う」
ベルタが驚きの声を漏らした。
意外と答えは簡単なものだった。
ヒューゴはクククと含み笑いをした。
「どうしたのです?ヒューゴ。急に笑い出したりして」
ベルタが訊ねた。
「選手交代しやがった。たぶんな。俺たちも一度やっているだろ?」
なるほどと納得して「ああ」ベルタは漏らした。
「でも、一体誰と選手交代したのでしょう?」
訊かれても全く心当たりは無い。
しかし、ヒューゴ自身、異種の得物を操る達人相手に、ルールに守られた試合以外で戦うのは初めてのことだた。
今まで感じた事の無い、別の意味の命の危険を感じる…。
敵騎が、三又槍を振り回しながら体そのものを駒のように回転させながら接近。
時折敵騎は、一瞬ベルタに背を向ける形を見せる。しかし。
ここは迂闊に飛び込まない。
これは確実に罠だ。わざと隙を見せているに違いない。が、その判断は甘かった。
敵騎は回転しもってベルタとの距離を縮めると、三又槍の持ち方を本来の槍の持ち方へと戻して、槍先での刺突攻撃を繰り出してきた。
槍の間合い。
一目瞭然、脇差しの刀身では届かない。
連続での突き。これは槍術ではないか!
狭い城の中で、攻め入る敵を迎え撃つ時に槍はその効果を発揮する。
刀を思うように振り回せない敵を、遠い間合いから一方的に突き崩す。
開いた環境の中、横移動をして躱せれば何の問題も無いのだが、この連続しての突き攻撃、あまりにも速過ぎて切り払うしか身を守る術が無い。
不本意にも徐々にではあるが高度まで下げられつつある。この鬼攻撃、敵騎の蒼く光る6つ目からは槍の軌道は読む事ができない。が。
ベルタが右手の脇差しの刃部を水平にして、敵盤上戦騎の喉元めがけて刺突攻撃を仕掛けた。
敵は一歩分横移動して躱すも、脇差しの刃はホーミングするように敵騎の襟を切りつけた。
“平突き”
刀の刃を水平にして突きを繰り出し、躱した相手を追って斬撃に転じる剣技のひとつ。
「さすがは高砂・飛遊午。やりますね」
男性の声。
ようやく、敵さんの声を聴くことができた。
「鈴木さん、高砂くんを知らない?」
食事を終えたばかりの“鈴木くれは”に猪苗代・恐子が訊ねた。
「え?」
あからさまに怪訝な表情を見せ。
食事を終えたばかりなのに、急ぎの用事でもあるのかい?
「5時限目の選択科目が古典なんだけど、資料本を図書室から持ってくるのを手伝って欲しいなって」
ナニ可愛いコト言っていやがるのか、この女は。
今まで力仕事は全部男子生徒に任せきりだったくせに。何を急にタカサゴと一緒に行動しようと企むのかねぇ?ひょっとして。
「さてね。知らないけど、キョウコちゃん、もうちょっと二の腕を絞ったらカッコイイと思うけどな」
「そ、そう?ごめんなさいね、お昼休み中に」
プヨついてなどいない二の腕をさすりながら、キョウコは邪魔をしたと詫びを入れ。
「珍しいわね。高砂くんが昼休みに教室にいないなんて」
不思議そうに告げると、委員長は教室を後にした。
言われてみれば、その通りだ。
昼休みに教室で高砂・飛遊午の姿を見ないのは初めてだ。
同じころ、福井県・東尋坊より北へ80km付近の海上上空―。
迂闊。
すっかり用心を欠いていた。
高砂・飛遊午はただただ反省した。しかし。
ただちに双手の脇差しを最後の敵騎に構えて見せる。
一方の敵騎は。
ブンブンと三又槍を振り回してベルタを寄せ付けようとしない。
やはり、あれは槍の構えでは無い。明らかに棒術の構えだ。
相手に間合いを計らせないように、常に棍棒を動かし続けている。厄介だ。
それにしても。
先程まで槍の握り方から素人丸出しだった敵騎が、何でいきなり達人レベルの優れた棒術を披露しているのか?それが不可解だった。
敵騎の、サイコロの6の目のように並んだ6つ目が黄玉色に光る。
「まるで人が変わったように、先程と動きが全然違う」
ベルタが驚きの声を漏らした。
意外と答えは簡単なものだった。
ヒューゴはクククと含み笑いをした。
「どうしたのです?ヒューゴ。急に笑い出したりして」
ベルタが訊ねた。
「選手交代しやがった。たぶんな。俺たちも一度やっているだろ?」
なるほどと納得して「ああ」ベルタは漏らした。
「でも、一体誰と選手交代したのでしょう?」
訊かれても全く心当たりは無い。
しかし、ヒューゴ自身、異種の得物を操る達人相手に、ルールに守られた試合以外で戦うのは初めてのことだた。
今まで感じた事の無い、別の意味の命の危険を感じる…。
敵騎が、三又槍を振り回しながら体そのものを駒のように回転させながら接近。
時折敵騎は、一瞬ベルタに背を向ける形を見せる。しかし。
ここは迂闊に飛び込まない。
これは確実に罠だ。わざと隙を見せているに違いない。が、その判断は甘かった。
敵騎は回転しもってベルタとの距離を縮めると、三又槍の持ち方を本来の槍の持ち方へと戻して、槍先での刺突攻撃を繰り出してきた。
槍の間合い。
一目瞭然、脇差しの刀身では届かない。
連続での突き。これは槍術ではないか!
狭い城の中で、攻め入る敵を迎え撃つ時に槍はその効果を発揮する。
刀を思うように振り回せない敵を、遠い間合いから一方的に突き崩す。
開いた環境の中、横移動をして躱せれば何の問題も無いのだが、この連続しての突き攻撃、あまりにも速過ぎて切り払うしか身を守る術が無い。
不本意にも徐々にではあるが高度まで下げられつつある。この鬼攻撃、敵騎の蒼く光る6つ目からは槍の軌道は読む事ができない。が。
ベルタが右手の脇差しの刃部を水平にして、敵盤上戦騎の喉元めがけて刺突攻撃を仕掛けた。
敵は一歩分横移動して躱すも、脇差しの刃はホーミングするように敵騎の襟を切りつけた。
“平突き”
刀の刃を水平にして突きを繰り出し、躱した相手を追って斬撃に転じる剣技のひとつ。
「さすがは高砂・飛遊午。やりますね」
男性の声。
ようやく、敵さんの声を聴くことができた。
0
お気に入りに追加
38
あなたにおすすめの小説
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】どうやら魔森に捨てられていた忌子は聖女だったようです
山葵
ファンタジー
昔、双子は不吉と言われ後に産まれた者は捨てられたり、殺されたり、こっそりと里子に出されていた。
今は、その考えも消えつつある。
けれど貴族の中には昔の迷信に捕らわれ、未だに双子は家系を滅ぼす忌子と信じる者もいる。
今年、ダーウィン侯爵家に双子が産まれた。
ダーウィン侯爵家は迷信を信じ、後から産まれたばかりの子を馭者に指示し魔森へと捨てた。
子持ちの私は、夫に駆け落ちされました
月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。
あの夕方を、もう一度
秋澤えで
ファンタジー
海洋に浮かび隔絶された島国、メタンプシコーズ王国。かつて豊かで恵まれた国であった。しかし天災に見舞われ太平は乱れ始める。この国では二度、革命戦争が起こった。
二度目の革命戦争、革命軍総長メンテ・エスペランサの公開処刑が行われることに。革命軍は王都へなだれ込み、総長の奪還に向かう。しかし奮闘するも敵わず、革命軍副長アルマ・ベルネットの前でメンテは首を落とされてしまう。そしてアルマもまた、王国軍大将によって斬首される。
だがアルマが気が付くと何故か自身の故郷にいた。わけもわからず茫然とするが、海面に映る自分の姿を見て自身が革命戦争の18年前にいることに気が付く。
友人であり、恩人であったメンテを助け出すために、アルマは王国軍軍人として二度目の人生を歩み始める。
全てはあの日の、あの一瞬のために
元革命軍アルマ・ベルネットのやり直しファンタジー戦記
小説家になろうにて「あの夕方を、もう一度」として投稿した物を一人称に書き換えたものです。
9月末まで毎日投稿になります。
いい子ちゃんなんて嫌いだわ
F.conoe
ファンタジー
異世界召喚され、聖女として厚遇されたが
聖女じゃなかったと手のひら返しをされた。
おまけだと思われていたあの子が聖女だという。いい子で優しい聖女さま。
どうしてあなたは、もっと早く名乗らなかったの。
それが優しさだと思ったの?
若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!
古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。
そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は?
*カクヨム様で先行掲載しております
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる