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[11]迫撃!トリプルポーン

-97-:早くボクを助けろォーッ!!

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 ふと、思い出したのだが、あの超高速の敵騎はどうしたのだろう?

 荷電粒子砲の光に気を取られてしまい、すっかりと忘れていた。


 辺りを見回すと。

 遥か遠くに、アクロバット飛行などで空に描かれる8の字なのか?ハート型なのか?はたまたバネ?を描いているのか?とにかく目茶苦茶な軌道を2本の白線で描いていた。

「あっ」

 眺めている最中に空中にYの字が描かれた。

「あれまぁ」
 驚きの声を上げると、ベルタが「どうしました?ヒューゴ」訊ねてきた。

 あれは。

 スキーの初心者がよくやってしまう、左右のスキー板がそれぞれの方向へと滑っていってしまい、最後は股裂きのようにして転倒してしまうミスを彷彿させる。

「攻撃態勢に入っている最中に、荷電粒子砲のビームが割り込んできたら、そりゃあ驚いて操縦をミスってしまうわな」

 まさに空中分解。
 胴体と両脚の3つに分かれて。

 それぞれのパーツがほぼ同時に爆散。
 しかし、煙の中から胴体部分が飛び出してくると、中から何かが飛び出して翼を展開、飛行機のようなものに変形した。


 コアブロックシステム。


 緊急脱出機能を備えていたようだ。

 どうやらパイロットは死んでいないらしい。
 安堵の溜息が漏れる。が、それもやがて光の粒となって消滅した。

 情報獲得のアラームが鳴り響き、正面ディスプレーにメッセージが表示された。


 ◆◆ 黒側盤上戦騎バトル・ピースの情報を獲得しました。 ◆◆


 こちらから手を下す事なく、勝利条件の総ダメージ数60パーセント以上に達したのだ。
 例え緊急脱出システムを搭載していようとも、だ。

 メッセージが流れる。
 カンシャク持ちの女スピット・ファイアのアッチソンの情報を獲得しました。


 今の状況、表示されたステータスに目を通している暇はない。
 でも、武装くらいは目を通しておこう。


 ミニガン×1丁(総弾数10億発)、ピック×1本。


「10億発って、またスゴい弾数だな・・。10分の一に減らして威力を上げれば良かったのに」
 とはいえ、こういう痛恨のミスは大歓迎なヒューゴの口元は緩みまくっていた。

 敵騎の接近を知らせるアラームが鳴る。
 荷電粒子砲を撃ってきた敵騎は、両腕に内蔵されたバルカン砲を撃ちつつ、ベルタに接近してきた。

 腕そのものが銃身だけあって命中精度は高く、肩部、胸部に被弾するも、やはり牽制武器のようで威力は低く、ベルタの装甲を撃ち抜くことは無かった。

 ベルタも負けずに応射。
 こちらは、やはり期待するだけ無駄で、命中はすれどもダメージカウントに数字は上がらなかった。

 敵騎が射撃を止めてポールアームを振り被った。

 ベルタは一旦ハンドチェーンガンを後腰部に収納すると、両腰に差しているキバ(折り畳み式脇差し)を抜刀、一度ブンッと大きく振って展開させた。

 敵騎が、ポールアームを薙ぎ払うように振ってきた。
 脇差しのような刃の薄い刀剣をあの質量にぶつけてしまうと、一撃で折られてしまう。
 受け流しも考えものだ。

 襲い来るポールアームの鉄球部分を、脇差しのつかの底部に当たるかしらで叩き弾く!
 敵騎がよろめいた。

 刀剣とは、刃の付いた刀身部で相手を斬り付けるだけが使い道ではない。
 かしらで打撃攻撃を行うのも立派な剣技である。
 だけど、これをやると、次の攻撃に転じにくいのよね。

 右手のキバを逆手に持ち替える。これで頭が先となり“突き”を繰り出すことで盾の代わりとなる。

 剣を交えたことにより、敵騎の低階層データを取得した。

 敵騎の名前はスグルと言う。
 真名が判明するほど、まだ敵騎体に接触もできていない上にダメージも与えてはいない。


「ノブオーッ!何してる!?早くボクを助けろォーッ!!」
 今まさにベルタに切っ先を向けられんとするスグルのマスターが叫んだ。

 レーダーでは。

 レールガンを撃った敵影はベルタたちと重なっている。
 改めて探すまでもなく、ヤツは上空の雲の中にいる。

 上空を警戒。するとディスプレー越しに水滴が落ちてくるのを確認できた。

「??」

 不思議に思い上空へと視線を向けると、今度は4本の筒状の何かが落ちてきた。

 アレは何?

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