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[11]迫撃!トリプルポーン
-94-:やれるだけの事はやってみるか
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方法ならある!確かにある!
しかし!
まさか、存分にデーターを使えるこの時代に、あの攻撃方法を用いてくるとは…。
かつてPCゲーム及び家庭用ゲームでは8ビット機が主流で、データーメモリ数も今とは比較にならないほど少ないものだった。
当然、ゲームのキャラクターに割けるメモリ数も限られているため、キャラクター動画の削減を余儀なくされ、“歩く”動作を入れるのが関の山であった。
では、攻撃モーションはどうするか?
そんな余裕など無い。
なので、敵に体当たりさせて攻撃する方法が用いられた。
だが、そこに一つの問題点が生じてくる。
ただの体当たりでは、攻撃するのと同時に敵の攻撃を受けてしまう。
だから、“当り判定”なるものが設定された。
当り判定とは、キャラクターの上半身にはキャラクターの攻撃判定が、下半身には敵からの攻撃判定が適用されている事を差す。
これをうまく利用して、敵の攻撃を受けずにキャラクターの攻撃だけを当てるテクニック“半キャラずらし”が考案された。
これは当時のゲームの必須テクニックでもあった…。
すさまじい速度で迫りくる敵騎相手に照準など合わせられない。
それは向こうも同じ。
接近すれば、とにかく弾丸を叩き込む。そして―。
ヒューゴはベルタをうつ伏せに寝かせた姿勢へと変えた。
相手がピックで殴り掛かってきているのであれば、うつ伏せに寝た姿勢は恰好の的となるが、単にピックを当てに来ているだけならば、投影面積を小さくしてやれば攻撃は回避できる。
すさまじい衝撃波と共に、敵騎が近接距離を通り過ぎて行った。
ひとまずは、遣り過ごす事に成功。
あっという間に敵騎が遥か彼方へと過ぎ去ってゆく。
「やはり殴り掛かっては来なかったな。“半キャラずらし”とは、また博打のような攻撃を仕掛けてくれるぜ」
要は“当たらなければどうって事は無い”のだ。
しかし、ウラを返せば、“当たれば一発即死”の超難易度ゲーム。
敵が戻ってくるまでの、ごく限られた時間の中で頭を巡らせる。
敵に勝つ方法よりも先に考えるべき事。
それは。
どうして、あんな危険な戦い方をしているのか?
一歩間違えれば、共倒れのリスクが伴うというのに。
シルエットから判断して、敵の騎体はとても頑丈そうだ(空力特性ガン無視だけど)。
それなのに、想像を絶する超高速を誇る(バケモノじみた推力の成せる業)。
火器は…近づく前から撃ってきている事から察して、弾数はかなり豊富で冷却機関を備えていることからも、連続しての射撃が可能。
それに反して威力は相当犠牲にしている模様。
事実、当たっても、さしてダメージは計上されていない。
溶接マスクのようなバイザーが常に下りている事から、それがあの騎体のアドバンテージでもありリスクと観た。
そうでなければ、あんな超スピードの代物を操縦できるはずがない。
敵は操作性を犠牲にして、クロックアップを維持しているに違いない。
それらを踏まえて出した結論は!
☆敵騎の弱点はズバリ!“静止”できない。
チェスの女王の長所はその機動力にある。
が、その機動力を存分に発揮できる場面は1ゲーム中でも限られたものとなっている。
それは、敵はともかく味方の駒に行く手を阻まれるケースが生じてくるから。
他に敵騎がいないこの状況で、それをあの敵騎に当てはめるのは強引とも思えるが、ヤツが単騎で来たという事は、なるべく障害物の少ない状況に持ち込みたいという意志の表れかな?
「まっ、やれるだけの事はやってみるか」
ヒューゴは唇を舐めた。
敵騎が再び接近!
今度は真っ直ぐこちらに向かって来る。
あの速度の相手にチェーンガンは命中させられない。
かと言って、刀で斬り付けるのも不可能。だけど。
ベルタの推進器を全て停止。
騎体が自由落下を始めた。
ベルタの体が鉄棒の回転をするかのように、縦軸に回りはじめた。
上半身に受ける空気抵抗が、下半身に受けるそれよりも大きいのだ。
敵騎による攻撃は空振りに終わり、先程までと同じく大回りをして方向転換をしてくると思いきや、上昇を開始して大きく旋回を始めた。
「やはり急な高度変更に戸惑っているようだな」
ヒューゴの呟きにベルタは「?」意図が掴めないでいた。
「あの速度で海面に衝突したら一発で即死だからな。次の手段を考えるにしても、あの速度だ。そんなに余裕は無いだろうさ。さて、どう仕掛けてくるかな」
上空に敵騎、100メートル下は海面。これでチェック・メイトだ。
迂闊に攻撃が仕掛けられない状況が続けば、自ずと根競べとなる。
あんな超スピードでの操縦を長時間続けるのは身体的・精神的共にゼッタイ無理が生じてくるはず。
あとは相手が疲弊するのを待つだけ…楽勝だぜ。
万が一にも、敵騎が低空飛行を行い、モーゼのように!生じる衝撃波で海を割ってくるなら、その時はその時。腹をくくるしかない。
「ヒューゴさん!背後に敵反応アリです。距離!70メートル!」
突然、ココミからの緊急通信。
「何ィ!」
海面から上半身を現した、新たな敵盤上戦騎の頭部には、火の点いた蚊取り線香のようなものが。
「アイツ、タツローを襲った魔者か!?」
上空へと掲げられた左腕は、ベルタへと向けられ、腕に折り畳まれていた2本のレールらしきものが伸びて雷のような青白い火花をバチバチと散らせた。
「しまった!レーダーでは海底の敵を発見できない!」
気付くのが遅かった。
敵の狙いはベルタを海面近くまで降下させる事。
海面上の敵騎の6つ目が同時に光ると、左腕から一条のオレンジ色の光が青白い雷と共に放たれた。
超電磁砲が発射された!
しかし!
まさか、存分にデーターを使えるこの時代に、あの攻撃方法を用いてくるとは…。
かつてPCゲーム及び家庭用ゲームでは8ビット機が主流で、データーメモリ数も今とは比較にならないほど少ないものだった。
当然、ゲームのキャラクターに割けるメモリ数も限られているため、キャラクター動画の削減を余儀なくされ、“歩く”動作を入れるのが関の山であった。
では、攻撃モーションはどうするか?
そんな余裕など無い。
なので、敵に体当たりさせて攻撃する方法が用いられた。
だが、そこに一つの問題点が生じてくる。
ただの体当たりでは、攻撃するのと同時に敵の攻撃を受けてしまう。
だから、“当り判定”なるものが設定された。
当り判定とは、キャラクターの上半身にはキャラクターの攻撃判定が、下半身には敵からの攻撃判定が適用されている事を差す。
これをうまく利用して、敵の攻撃を受けずにキャラクターの攻撃だけを当てるテクニック“半キャラずらし”が考案された。
これは当時のゲームの必須テクニックでもあった…。
すさまじい速度で迫りくる敵騎相手に照準など合わせられない。
それは向こうも同じ。
接近すれば、とにかく弾丸を叩き込む。そして―。
ヒューゴはベルタをうつ伏せに寝かせた姿勢へと変えた。
相手がピックで殴り掛かってきているのであれば、うつ伏せに寝た姿勢は恰好の的となるが、単にピックを当てに来ているだけならば、投影面積を小さくしてやれば攻撃は回避できる。
すさまじい衝撃波と共に、敵騎が近接距離を通り過ぎて行った。
ひとまずは、遣り過ごす事に成功。
あっという間に敵騎が遥か彼方へと過ぎ去ってゆく。
「やはり殴り掛かっては来なかったな。“半キャラずらし”とは、また博打のような攻撃を仕掛けてくれるぜ」
要は“当たらなければどうって事は無い”のだ。
しかし、ウラを返せば、“当たれば一発即死”の超難易度ゲーム。
敵が戻ってくるまでの、ごく限られた時間の中で頭を巡らせる。
敵に勝つ方法よりも先に考えるべき事。
それは。
どうして、あんな危険な戦い方をしているのか?
一歩間違えれば、共倒れのリスクが伴うというのに。
シルエットから判断して、敵の騎体はとても頑丈そうだ(空力特性ガン無視だけど)。
それなのに、想像を絶する超高速を誇る(バケモノじみた推力の成せる業)。
火器は…近づく前から撃ってきている事から察して、弾数はかなり豊富で冷却機関を備えていることからも、連続しての射撃が可能。
それに反して威力は相当犠牲にしている模様。
事実、当たっても、さしてダメージは計上されていない。
溶接マスクのようなバイザーが常に下りている事から、それがあの騎体のアドバンテージでもありリスクと観た。
そうでなければ、あんな超スピードの代物を操縦できるはずがない。
敵は操作性を犠牲にして、クロックアップを維持しているに違いない。
それらを踏まえて出した結論は!
☆敵騎の弱点はズバリ!“静止”できない。
チェスの女王の長所はその機動力にある。
が、その機動力を存分に発揮できる場面は1ゲーム中でも限られたものとなっている。
それは、敵はともかく味方の駒に行く手を阻まれるケースが生じてくるから。
他に敵騎がいないこの状況で、それをあの敵騎に当てはめるのは強引とも思えるが、ヤツが単騎で来たという事は、なるべく障害物の少ない状況に持ち込みたいという意志の表れかな?
「まっ、やれるだけの事はやってみるか」
ヒューゴは唇を舐めた。
敵騎が再び接近!
今度は真っ直ぐこちらに向かって来る。
あの速度の相手にチェーンガンは命中させられない。
かと言って、刀で斬り付けるのも不可能。だけど。
ベルタの推進器を全て停止。
騎体が自由落下を始めた。
ベルタの体が鉄棒の回転をするかのように、縦軸に回りはじめた。
上半身に受ける空気抵抗が、下半身に受けるそれよりも大きいのだ。
敵騎による攻撃は空振りに終わり、先程までと同じく大回りをして方向転換をしてくると思いきや、上昇を開始して大きく旋回を始めた。
「やはり急な高度変更に戸惑っているようだな」
ヒューゴの呟きにベルタは「?」意図が掴めないでいた。
「あの速度で海面に衝突したら一発で即死だからな。次の手段を考えるにしても、あの速度だ。そんなに余裕は無いだろうさ。さて、どう仕掛けてくるかな」
上空に敵騎、100メートル下は海面。これでチェック・メイトだ。
迂闊に攻撃が仕掛けられない状況が続けば、自ずと根競べとなる。
あんな超スピードでの操縦を長時間続けるのは身体的・精神的共にゼッタイ無理が生じてくるはず。
あとは相手が疲弊するのを待つだけ…楽勝だぜ。
万が一にも、敵騎が低空飛行を行い、モーゼのように!生じる衝撃波で海を割ってくるなら、その時はその時。腹をくくるしかない。
「ヒューゴさん!背後に敵反応アリです。距離!70メートル!」
突然、ココミからの緊急通信。
「何ィ!」
海面から上半身を現した、新たな敵盤上戦騎の頭部には、火の点いた蚊取り線香のようなものが。
「アイツ、タツローを襲った魔者か!?」
上空へと掲げられた左腕は、ベルタへと向けられ、腕に折り畳まれていた2本のレールらしきものが伸びて雷のような青白い火花をバチバチと散らせた。
「しまった!レーダーでは海底の敵を発見できない!」
気付くのが遅かった。
敵の狙いはベルタを海面近くまで降下させる事。
海面上の敵騎の6つ目が同時に光ると、左腕から一条のオレンジ色の光が青白い雷と共に放たれた。
超電磁砲が発射された!
応援ありがとうございます!
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