盤上の兵たちは最強を誇るドラゴン種…なんだけどさ

ひるま(マテチ)

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[11]迫撃!トリプルポーン

-93-:俺らなんて、止まって見えるのかねぇ?

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 レーダーに反応アリ。しかし。

「え?えぇッ??」
 ココミの驚きの声しか聞こえてこない。

「どうした!ココミ!」
 思わず訊ねる。

「さ、3騎のうち1騎が、も、モノ凄いスピードでヒューゴさんたちの、えと??南―」
 報告している最中にベルタの背後を、何かが高音を立てながら、すさまじい速度で通過していった。

 音を追って視線を向けるも、もはや二条の白煙が連なって遥か遠くへと伸びているだけ。

 すると、カンカンカン!と、何かが装甲に当たる音が聞こえた。

 ダメージカウントは算出されない。だが、確かに何かが騎体に当たった。

 何だかよく解らないが、今はとりあえず敵騎を捉える事が先決だ。


 白煙が遠くで弧を描きつつ、いくつもの白い輪をくぐり抜けながら、こちらに回り込んできているのが見える。

 キーンと高音を鳴らして飛ぶ様は、まさにロケット…いやアレはミサイルだ。

「何だ?ありゃ」
 背腰部からハンドチェーンガンを取り出すと、フォアエンドをスライドさせて弾を装填。

 また向かって来る!

 光の粒を撒き散らせながら。

 しかし、真っ直ぐこちらにではなく、1500メートルほど離れた場所を通り過ぎざまに、マシンガンらしきものを連射してきた。
 いや、はるか手前からも射撃を続けていたようだ。

 敵騎が撒き散らせていた光の粒は弾丸だ。

 ベルタも反撃!お互いがすれ違いざまに弾丸の応酬をし合う。

 雨霰あめあられのごとく浴びせられる敵騎からの弾丸。
 しかし、相当威力が低いらしく、結構命中しているにも関わらず、わずかダメージ総数1パーセントをカウントしただけ。

 一方のベルタが放った弾丸は、すでに何も無い空へと消えて行った。

 あれほどの速度の相手を、目視で捉える事も、ましてや弾を命中させる事など至難の業だ。

 未だに形状すら把握できていないぞ。


「ヒューゴさん。敵の速度が算出できました。マッハ11です。それと、ベルタさんから贈られてきた画像の鮮明解析ができましたので、そちらに送ります」

 送られてきた画像から、ようやく敵騎のシルエットが確認できた。

 頭には溶接に使われるマスクを装備。
 まあ、ある意味バイザーではあるが、すでに下している。

 どうやら敵騎は、10倍速反応ができるクロックアップ中のようだ。

 どちらかと言えば、リアルロボット系に分類される、ミリタリー色の強い直線的なパーツで構成されたデザイン。
 しかし、足にロケットを、下駄のようにして履いているデザインは、あまりにも無茶としか言いようがない。

 あれを操作するのは、さぞ難儀する事だろう…。

 肩に担いだ大型の火器には、後部に液体が入っていると思われるタンクが見受けられる。
 恐らく、あの火器の冷却手段は水冷式なのだろう。

 今さっき、ココミはサラッと軽く言ってのけたが、マッハ11の速度とは大陸間弾道ミサイルの初速に匹敵するスピードではないか!

 おおまかに計算しても1秒間に4km弱進むモノなど、果たして人間に操作できのだろうか?

 また来た!

 今度はこちらもクロックアップで対応するか…。

 しかし、相手はマッハ11。

 それでも、1秒間に約374メートルで移動する相手を捉えられるものなのか?

 結論から言おう。無理ムリだ!


 敵騎が先程よりも遥かに近くを通り過ぎて行った。
 風圧をもろに受けたためベルタの騎体がよろめいた。

「あっぶねぇなー。接触したら、お互いにお陀仏だぞ」
 過ぎ去る白煙に呟く。


「残る2騎はまだ確認できません。今はその盤上戦騎ディザスター1騎のみです」
 今更ながらの報告。しかも、やはり3対1の構図に間違いは無かった。

 とにかく、この場所で戦うのは避けよう。最悪、観光客を巻き込みかねない。
 ベルタを全速で北へと移動させる。

「向こうからしたら、俺らなんて、止まって見えるのかねぇ?」
 ふとベルタに訊ねた。

「それよりも、先程の接近が気になりますね」
 ベルタの言う通りだ。
 再度ココミに鮮明解析した画像を送ってもらおう。


 遠くでまた、真っ白な飛行機雲が、いくつもの白い輪をくぐっている。

 アレは…。

 わずかな軌道修正においても、音速の壁を突き破り続けている証拠。

 とにかくハデだなぁ…。
 

 眺めている最中、画像が送られてきた。


「何を考えているんだ?アイツは!」
 画像と遠くの飛行機雲と、視線を往復させる。

 敵騎が左手に握っているのは、棒の先に90度角に鋭利な先端部を取り付けた、“ピック”と呼ばれる打撃武器だった。

 本来は馬上から降りた甲冑の騎士が、相手の装甲をかち割る為に用いた、いわば最終兵器。

 なので、さほど丈は長くは無く、腰に下げてもさほど妨げにならない程度に短い。


 あの速度で!あんな短い武器で!殴り掛かってきているのか!?


 どう考えても最悪の組み合わせだ。

 しかも一歩間違えれば接触事故で共倒れになりかねない。

 だが、それでも攻撃を仕掛けてきたという事は、相手を仕留める自信があるという事。
 何か策でもあるのか?

「あぁッ!!」
 閃いたかのごとく、ヒューゴはある事に気付いた。

 方法ならある。

 あるにはある。

 あの方法ならば、確かに攻撃可能だ。


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