80 / 351
[8]学園に潜む“魔”
-78-:高砂くん。絶好調じゃん
しおりを挟む
フラウの提案に「え!?」と、思わず訊き返してしまう。
だけど。
「いいねぇ。鯉渕くん、高砂くんの相手をしてあげて」
またもや道場の端からミサキがこちらの会話に反応した。
指名された男子部員は「えぇー」と不満げだが、追い立てられるようにヒューゴ達の元へとやって来た。
「ヒューゴ。アレやるのか?」との問いに「もちろん。ちょっとは派手なところ見せておかないと、だろ?」
デモンストレーションに審判はナシ。自分たちで「礼!」一連の所作を経てお互いに剣を構えた。
「アレ?」
フラウがヒューゴと対戦相手を交互に見比べる。
ヒューゴは両手にそれぞれ竹刀を、相手は一本の竹刀を両手で構えている。
「ヒューゴさん、二刀流だったのデスか…」
2本の竹刀をそれぞれ目の高さに水平に、剣先を相手に向けて構えている。左の竹刀の握り手を顔の位置まで下げて。まるで“突き”をする構えのように見える。
絶えず声を出し合っている…。
(何コレ?奇声を上げて、何やってるの??)
ツウラは軽いカルチャーショックを受けた。
隣に座るフラウはワクワクして眺めている。と。
相手が仕掛けてきた!面狙いの垂直の振り下ろし。
その振り下ろされた竹刀をヒューゴは左手の竹刀で突き弾く。“切り払う”のではなく“突いて”軌道を逸らせたのだ。
そして今度は右手の竹刀の握り手を顔の位置まで下げる。構えが左右逆に入れ替わった。
切り払いもしくは鍔迫り合いだと、両手と片手では確実に力で両手の方が勝る。しかし、斬る “線”の攻撃に対して突きによる“点”で迎え撃つことにより力の差は解消される。
それと同時に間合いも開いて両手の竹刀を同時に下段へと構える時間も生まれた。
竹刀の“物打ち”と呼ばれる部分で2本の竹刀をを交錯させたまま左大腿部横まで引いて―。
相手ももう一度面狙いの打ち込みを仕掛けるが―。
「胴ぉーッ!」声と同時に右足で踏込み、そして竹刀を交錯させたまま相手の胴へと打ち込んだ。
その時、ツウラは我が目を疑った。
人が吹き飛ばされて尻餅をついている。
フラウは目が追い付かなかったらしく、相手が尻餅をついてから相手に目を向けていた。
「いつもより遠くへ飛ばしていますってか。高砂くん。絶好調じゃん」
どうでも良いが、遠くから感想を述べるのは止めてくれ。ヒューゴは相手を引き起こしながらミサキを見やった。そして、礼。
(じょ、冗談じゃないわ。何なの?今の。アレが剣の技ですって?一撃目で霊力の爆弾を相手に仕掛けて、空気中に飛散する前に二撃目で着火、爆発させている“霊力爆弾”じゃないの!コイツ、モーション無しに“アタック・マジック”を使っているわ)
二天撃の正体に驚愕するばかり。
ド派手なデモンストレーションを終えて、今度は見学者たちに竹刀を手に取ってもらうことにした。
フラウは片手で竹刀を持つことがいかに難しいかを実感した。片手だと剣先がフラフラして安定しない。慣れよりも筋力が必要だと、竹刀を両手で握るに至った。
ツウラも同じく竹刀を握ってみる。両手でしっかりと。
(コイツ、ホンットに間抜けね。敵の私に剣を教えるなんて。いずれアンデスィデで当たった時に自分が教えた剣で…)
心の中であざ笑うツウラであったが、はたと思い出した己の失態に愕然とした。
アンデスィデで戦うのはあくまでもマスターで、ツウラが剣技を覚えようとも盤上戦騎の動作にはまったく反映されない。
「アンジェリーナさん」、「アンジェさん」…反応ナシ。
「津浦サン」
フラウの声に、ようやく「何?」
偽名を名乗ってはみたものの、まだ馴染めていない名前を呼ばれていた事に気づかずにいた。
だけど。
「いいねぇ。鯉渕くん、高砂くんの相手をしてあげて」
またもや道場の端からミサキがこちらの会話に反応した。
指名された男子部員は「えぇー」と不満げだが、追い立てられるようにヒューゴ達の元へとやって来た。
「ヒューゴ。アレやるのか?」との問いに「もちろん。ちょっとは派手なところ見せておかないと、だろ?」
デモンストレーションに審判はナシ。自分たちで「礼!」一連の所作を経てお互いに剣を構えた。
「アレ?」
フラウがヒューゴと対戦相手を交互に見比べる。
ヒューゴは両手にそれぞれ竹刀を、相手は一本の竹刀を両手で構えている。
「ヒューゴさん、二刀流だったのデスか…」
2本の竹刀をそれぞれ目の高さに水平に、剣先を相手に向けて構えている。左の竹刀の握り手を顔の位置まで下げて。まるで“突き”をする構えのように見える。
絶えず声を出し合っている…。
(何コレ?奇声を上げて、何やってるの??)
ツウラは軽いカルチャーショックを受けた。
隣に座るフラウはワクワクして眺めている。と。
相手が仕掛けてきた!面狙いの垂直の振り下ろし。
その振り下ろされた竹刀をヒューゴは左手の竹刀で突き弾く。“切り払う”のではなく“突いて”軌道を逸らせたのだ。
そして今度は右手の竹刀の握り手を顔の位置まで下げる。構えが左右逆に入れ替わった。
切り払いもしくは鍔迫り合いだと、両手と片手では確実に力で両手の方が勝る。しかし、斬る “線”の攻撃に対して突きによる“点”で迎え撃つことにより力の差は解消される。
それと同時に間合いも開いて両手の竹刀を同時に下段へと構える時間も生まれた。
竹刀の“物打ち”と呼ばれる部分で2本の竹刀をを交錯させたまま左大腿部横まで引いて―。
相手ももう一度面狙いの打ち込みを仕掛けるが―。
「胴ぉーッ!」声と同時に右足で踏込み、そして竹刀を交錯させたまま相手の胴へと打ち込んだ。
その時、ツウラは我が目を疑った。
人が吹き飛ばされて尻餅をついている。
フラウは目が追い付かなかったらしく、相手が尻餅をついてから相手に目を向けていた。
「いつもより遠くへ飛ばしていますってか。高砂くん。絶好調じゃん」
どうでも良いが、遠くから感想を述べるのは止めてくれ。ヒューゴは相手を引き起こしながらミサキを見やった。そして、礼。
(じょ、冗談じゃないわ。何なの?今の。アレが剣の技ですって?一撃目で霊力の爆弾を相手に仕掛けて、空気中に飛散する前に二撃目で着火、爆発させている“霊力爆弾”じゃないの!コイツ、モーション無しに“アタック・マジック”を使っているわ)
二天撃の正体に驚愕するばかり。
ド派手なデモンストレーションを終えて、今度は見学者たちに竹刀を手に取ってもらうことにした。
フラウは片手で竹刀を持つことがいかに難しいかを実感した。片手だと剣先がフラフラして安定しない。慣れよりも筋力が必要だと、竹刀を両手で握るに至った。
ツウラも同じく竹刀を握ってみる。両手でしっかりと。
(コイツ、ホンットに間抜けね。敵の私に剣を教えるなんて。いずれアンデスィデで当たった時に自分が教えた剣で…)
心の中であざ笑うツウラであったが、はたと思い出した己の失態に愕然とした。
アンデスィデで戦うのはあくまでもマスターで、ツウラが剣技を覚えようとも盤上戦騎の動作にはまったく反映されない。
「アンジェリーナさん」、「アンジェさん」…反応ナシ。
「津浦サン」
フラウの声に、ようやく「何?」
偽名を名乗ってはみたものの、まだ馴染めていない名前を呼ばれていた事に気づかずにいた。
0
お気に入りに追加
38
あなたにおすすめの小説
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
8分間のパピリオ
横田コネクタ
SF
人間の血管内に寄生する謎の有機構造体”ソレウス構造体”により、人類はその尊厳を脅かされていた。
蒲生里大学「ソレウス・キラー操縦研究会」のメンバーは、20マイクロメートルのマイクロマシーンを操りソレウス構造体を倒すことに青春を捧げるーー。
というSFです。
グラッジブレイカー! ~ポンコツアンドロイド、時々かたゆでたまご~
尾野 灯
SF
人類がアインシュタインをペテンにかける方法を知ってから数世紀、地球から一番近い恒星への進出により、新しい時代が幕を開ける……はずだった。
だが、無謀な計画が生み出したのは、数千万の棄民と植民星系の独立戦争だった。
ケンタウリ星系の独立戦争が敗北に終ってから十三年、荒廃したコロニーケンタウルスⅢを根城に、それでもしぶとく生き残った人間たち。
そんな彼らの一人、かつてのエースパイロットケント・マツオカは、ひょんなことから手に入れた、高性能だがポンコツな相棒AIノエルと共に、今日も借金返済のためにコツコツと働いていた。
そんな彼らのもとに、かつての上官から旧ケンタウリ星系軍の秘密兵器の奪還を依頼される。高額な報酬に釣られ、仕事を受けたケントだったが……。
懐かしくて一周回って新しいかもしれない、スペースオペラ第一弾!
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
あの夕方を、もう一度
秋澤えで
ファンタジー
海洋に浮かび隔絶された島国、メタンプシコーズ王国。かつて豊かで恵まれた国であった。しかし天災に見舞われ太平は乱れ始める。この国では二度、革命戦争が起こった。
二度目の革命戦争、革命軍総長メンテ・エスペランサの公開処刑が行われることに。革命軍は王都へなだれ込み、総長の奪還に向かう。しかし奮闘するも敵わず、革命軍副長アルマ・ベルネットの前でメンテは首を落とされてしまう。そしてアルマもまた、王国軍大将によって斬首される。
だがアルマが気が付くと何故か自身の故郷にいた。わけもわからず茫然とするが、海面に映る自分の姿を見て自身が革命戦争の18年前にいることに気が付く。
友人であり、恩人であったメンテを助け出すために、アルマは王国軍軍人として二度目の人生を歩み始める。
全てはあの日の、あの一瞬のために
元革命軍アルマ・ベルネットのやり直しファンタジー戦記
小説家になろうにて「あの夕方を、もう一度」として投稿した物を一人称に書き換えたものです。
9月末まで毎日投稿になります。
魔法の数はステータス!? 転移した先は女性ばかりが魔法を使う世界!
三原みぱぱ
ファンタジー
ある日、剣と魔法のファンタジー世界に放り込まれた竜ヶ峰清人(リュウガミネ キヨト)。
美少女レイティアが嫁として現れる。
しかし、そんな甘い事ばかりではない。
強力な魔法が使えるのは女性のみ!
使える魔法の数がステータス(社会的地位)となる女性が強い世界。
男は守られるべき存在のこの世界で、魔法も剣も使えない主人公。
モンスターと戦えば足手まといと怒られ、街中で暴漢を止めようとするとぼこぼこにされる。
そんな俺Yoeee主人公は、金髪美少女のレイティアに恋人として認められるのか?
師匠である剣豪ムサシマル助けられながら、恋のライバル、アレックスやソフィアを交えて進む、ラブコメファンタジー!
感想、心よりお待ちしております。
完結しました!
ノベルアッププラスで「ゼロの転移者」としてリニューアル連載していますよ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる