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[8]学園に潜む“魔”
-78-:高砂くん。絶好調じゃん
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フラウの提案に「え!?」と、思わず訊き返してしまう。
だけど。
「いいねぇ。鯉渕くん、高砂くんの相手をしてあげて」
またもや道場の端からミサキがこちらの会話に反応した。
指名された男子部員は「えぇー」と不満げだが、追い立てられるようにヒューゴ達の元へとやって来た。
「ヒューゴ。アレやるのか?」との問いに「もちろん。ちょっとは派手なところ見せておかないと、だろ?」
デモンストレーションに審判はナシ。自分たちで「礼!」一連の所作を経てお互いに剣を構えた。
「アレ?」
フラウがヒューゴと対戦相手を交互に見比べる。
ヒューゴは両手にそれぞれ竹刀を、相手は一本の竹刀を両手で構えている。
「ヒューゴさん、二刀流だったのデスか…」
2本の竹刀をそれぞれ目の高さに水平に、剣先を相手に向けて構えている。左の竹刀の握り手を顔の位置まで下げて。まるで“突き”をする構えのように見える。
絶えず声を出し合っている…。
(何コレ?奇声を上げて、何やってるの??)
ツウラは軽いカルチャーショックを受けた。
隣に座るフラウはワクワクして眺めている。と。
相手が仕掛けてきた!面狙いの垂直の振り下ろし。
その振り下ろされた竹刀をヒューゴは左手の竹刀で突き弾く。“切り払う”のではなく“突いて”軌道を逸らせたのだ。
そして今度は右手の竹刀の握り手を顔の位置まで下げる。構えが左右逆に入れ替わった。
切り払いもしくは鍔迫り合いだと、両手と片手では確実に力で両手の方が勝る。しかし、斬る “線”の攻撃に対して突きによる“点”で迎え撃つことにより力の差は解消される。
それと同時に間合いも開いて両手の竹刀を同時に下段へと構える時間も生まれた。
竹刀の“物打ち”と呼ばれる部分で2本の竹刀をを交錯させたまま左大腿部横まで引いて―。
相手ももう一度面狙いの打ち込みを仕掛けるが―。
「胴ぉーッ!」声と同時に右足で踏込み、そして竹刀を交錯させたまま相手の胴へと打ち込んだ。
その時、ツウラは我が目を疑った。
人が吹き飛ばされて尻餅をついている。
フラウは目が追い付かなかったらしく、相手が尻餅をついてから相手に目を向けていた。
「いつもより遠くへ飛ばしていますってか。高砂くん。絶好調じゃん」
どうでも良いが、遠くから感想を述べるのは止めてくれ。ヒューゴは相手を引き起こしながらミサキを見やった。そして、礼。
(じょ、冗談じゃないわ。何なの?今の。アレが剣の技ですって?一撃目で霊力の爆弾を相手に仕掛けて、空気中に飛散する前に二撃目で着火、爆発させている“霊力爆弾”じゃないの!コイツ、モーション無しに“アタック・マジック”を使っているわ)
二天撃の正体に驚愕するばかり。
ド派手なデモンストレーションを終えて、今度は見学者たちに竹刀を手に取ってもらうことにした。
フラウは片手で竹刀を持つことがいかに難しいかを実感した。片手だと剣先がフラフラして安定しない。慣れよりも筋力が必要だと、竹刀を両手で握るに至った。
ツウラも同じく竹刀を握ってみる。両手でしっかりと。
(コイツ、ホンットに間抜けね。敵の私に剣を教えるなんて。いずれアンデスィデで当たった時に自分が教えた剣で…)
心の中であざ笑うツウラであったが、はたと思い出した己の失態に愕然とした。
アンデスィデで戦うのはあくまでもマスターで、ツウラが剣技を覚えようとも盤上戦騎の動作にはまったく反映されない。
「アンジェリーナさん」、「アンジェさん」…反応ナシ。
「津浦サン」
フラウの声に、ようやく「何?」
偽名を名乗ってはみたものの、まだ馴染めていない名前を呼ばれていた事に気づかずにいた。
だけど。
「いいねぇ。鯉渕くん、高砂くんの相手をしてあげて」
またもや道場の端からミサキがこちらの会話に反応した。
指名された男子部員は「えぇー」と不満げだが、追い立てられるようにヒューゴ達の元へとやって来た。
「ヒューゴ。アレやるのか?」との問いに「もちろん。ちょっとは派手なところ見せておかないと、だろ?」
デモンストレーションに審判はナシ。自分たちで「礼!」一連の所作を経てお互いに剣を構えた。
「アレ?」
フラウがヒューゴと対戦相手を交互に見比べる。
ヒューゴは両手にそれぞれ竹刀を、相手は一本の竹刀を両手で構えている。
「ヒューゴさん、二刀流だったのデスか…」
2本の竹刀をそれぞれ目の高さに水平に、剣先を相手に向けて構えている。左の竹刀の握り手を顔の位置まで下げて。まるで“突き”をする構えのように見える。
絶えず声を出し合っている…。
(何コレ?奇声を上げて、何やってるの??)
ツウラは軽いカルチャーショックを受けた。
隣に座るフラウはワクワクして眺めている。と。
相手が仕掛けてきた!面狙いの垂直の振り下ろし。
その振り下ろされた竹刀をヒューゴは左手の竹刀で突き弾く。“切り払う”のではなく“突いて”軌道を逸らせたのだ。
そして今度は右手の竹刀の握り手を顔の位置まで下げる。構えが左右逆に入れ替わった。
切り払いもしくは鍔迫り合いだと、両手と片手では確実に力で両手の方が勝る。しかし、斬る “線”の攻撃に対して突きによる“点”で迎え撃つことにより力の差は解消される。
それと同時に間合いも開いて両手の竹刀を同時に下段へと構える時間も生まれた。
竹刀の“物打ち”と呼ばれる部分で2本の竹刀をを交錯させたまま左大腿部横まで引いて―。
相手ももう一度面狙いの打ち込みを仕掛けるが―。
「胴ぉーッ!」声と同時に右足で踏込み、そして竹刀を交錯させたまま相手の胴へと打ち込んだ。
その時、ツウラは我が目を疑った。
人が吹き飛ばされて尻餅をついている。
フラウは目が追い付かなかったらしく、相手が尻餅をついてから相手に目を向けていた。
「いつもより遠くへ飛ばしていますってか。高砂くん。絶好調じゃん」
どうでも良いが、遠くから感想を述べるのは止めてくれ。ヒューゴは相手を引き起こしながらミサキを見やった。そして、礼。
(じょ、冗談じゃないわ。何なの?今の。アレが剣の技ですって?一撃目で霊力の爆弾を相手に仕掛けて、空気中に飛散する前に二撃目で着火、爆発させている“霊力爆弾”じゃないの!コイツ、モーション無しに“アタック・マジック”を使っているわ)
二天撃の正体に驚愕するばかり。
ド派手なデモンストレーションを終えて、今度は見学者たちに竹刀を手に取ってもらうことにした。
フラウは片手で竹刀を持つことがいかに難しいかを実感した。片手だと剣先がフラフラして安定しない。慣れよりも筋力が必要だと、竹刀を両手で握るに至った。
ツウラも同じく竹刀を握ってみる。両手でしっかりと。
(コイツ、ホンットに間抜けね。敵の私に剣を教えるなんて。いずれアンデスィデで当たった時に自分が教えた剣で…)
心の中であざ笑うツウラであったが、はたと思い出した己の失態に愕然とした。
アンデスィデで戦うのはあくまでもマスターで、ツウラが剣技を覚えようとも盤上戦騎の動作にはまったく反映されない。
「アンジェリーナさん」、「アンジェさん」…反応ナシ。
「津浦サン」
フラウの声に、ようやく「何?」
偽名を名乗ってはみたものの、まだ馴染めていない名前を呼ばれていた事に気づかずにいた。
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