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[8]学園に潜む“魔”
-68-:出来る事なら、お手合わせ願いたくない相手だな
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クレハたち3人は、見た目自分たちと変わらないベルタの年齢が、とても気になる。
「年齢としては17歳で貴方たちとさほど変わりませんよ。ただ前回の戦いを終えた時点で冬眠に入ったので生物としての時間は止まったままだったのです」
年数の割に年端もいかないという訳か・・・いや、それでも納得できない事がある。
ヒューゴはベルタに質問をぶつけた。
「だったら何で中年オヤジの真似なんぞしたんだ?」
「それは、あの時の私は人間と関わりたくない一心から、マスターとなった貴方が関わりを望まない方向へと導くべくあのような人物を演じたのです」
早い話が単なる嫌がらせ。おかげでヒューゴはベルタの本当の年齢を知り得ても彼女を異性として見る事が出来ずにいた。すでにヒューゴの中の彼女は“中身はオッサン”として認識されてしまっている。
コイツとはもう友情しか育めないんだろうな…ヒューゴは遠い目をした。
「こちらのどこの国で戦っていたのか知らないけど、150年前なら剣を持ち歩いているだけでも十分不審がられたんじゃない?」
日本の歴史に換算すれば明治時代後期に当たる。剣や刀を帯刀していたら不審人物に思われるコト間違いナシ。クレハは素朴な疑問を投げ掛けた。
「武器は普段、護符として身に着けておき、戦う時に“霊力の武器”に変化させて用いていました。我々魔者を倒せるのは“霊力そのもの”もしくは“霊力を帯びた武器”のみで、通常の武器では傷一つ付ける事も叶いませんよ」
その点で言えば現在の盤上戦騎と何ら変わりは無い。
「なるほど。ライフとの戦闘も想定されていた訳か・・。そうだ!ベルタ。俺にもその霊力の武器になる護符とやらは貰えないか?」
「私との契約が解除された以上、貴方は武器を携行すべきではないと判断します。持てば、要らぬ警戒心を黒側に抱かせるだけです」
武器を持たぬ方が安全策であるという事か。ここは素直に聞き入れるとしよう。
「他にも違いは有るの?今やってるヤツと」
クレハの好奇心は止まる事を知らない。
「ええ。大きく異なるのは、前回の王位継承戦ではポーカーゲームをモチーフとしていた事でしょうか。4人の王位候補たちがそれぞれのアルカナを陣営としてAを筆頭にKまでの13人の魔者、そして彼らの能力を引き出すために霊力を供給するマスターを従えての総当たり戦を繰り広げていました」
また傍迷惑な。駒を取られない限りアンデスィデが発生しない今回のグリモワール・チェスの方が幾分かマシに思える。
「ポーカーをねぇ。じゃあ数字の2が最弱でAが最強のカード?」
「その通りです。私は最も弱いハートの2でしたが、早い段階で他のアルカナの2を揃えられたおかげで“フォー・オブ・ア・カインド”―」
聞き慣れぬ言葉に首を傾げているクレハにキョウコが「フォーカードの事です」
「―のポーカー・ハンド(ポーカーの役)を得て強力な絵札の魔者さえも圧倒しました」
「何それ、面白そう」
思わず口に出てしまったが、周りの視線を感じたクレハは「不謹慎でした」お詫びを入れて小さくなった。
ベルタが続けた。
「ですが、それが元で私のマスターだったシルヴィアは所属する組織から危険視され抹殺されてしまったのです。以降、私の意志など関係なく “魔剣”として他のマスターに使役され、ライフの姿になる事はありませんでした」
大きく横道に逸れてしまったが、おかげでベルタが人間嫌いになった理由を知り得る事ができた。
「辛い過去を語らせてしまったな、ベルタ。で、そのジェレミーアと戦ったような口ぶりだったけど、結果はどうだったんだ?」
「結果としては、私がシルヴィアから受け継いだ剣技では太刀打ちできず撤退を余儀なくされました。彼の剣は最初期の騎士と呼ぶに相応しい荒削りなもので、刃の向きなど構わず振り回され、殴る蹴るはもちろん、噛み付きや局部狙いも行う、それは武人の戦いと呼ぶには程遠いモノでした」
「うわぁ・・。出来る事なら、お手合わせ願いたくない相手だな」
「ですが、ヒューゴ。貴方から授かった二天一流の剣をもってすれば今度こそヤツから勝利を勝ち取れそうな気がします」
そこは断言してくれないのね…。少し残念でならない。
「人の姿のジェレミーアを倒せばロボット同士の戦いを回避できるのですか?」
キョウコの質問にベルタは首を振り。
「いえ、ライフの姿の彼を倒してもアンデスィデ発生時には盤上戦騎で参戦してきます。我々魔者の役目はあくまでも盤上戦騎での戦いを主としていますから」
心配事は山積みだが、今のところはひとまず安心といったところか。
「年齢としては17歳で貴方たちとさほど変わりませんよ。ただ前回の戦いを終えた時点で冬眠に入ったので生物としての時間は止まったままだったのです」
年数の割に年端もいかないという訳か・・・いや、それでも納得できない事がある。
ヒューゴはベルタに質問をぶつけた。
「だったら何で中年オヤジの真似なんぞしたんだ?」
「それは、あの時の私は人間と関わりたくない一心から、マスターとなった貴方が関わりを望まない方向へと導くべくあのような人物を演じたのです」
早い話が単なる嫌がらせ。おかげでヒューゴはベルタの本当の年齢を知り得ても彼女を異性として見る事が出来ずにいた。すでにヒューゴの中の彼女は“中身はオッサン”として認識されてしまっている。
コイツとはもう友情しか育めないんだろうな…ヒューゴは遠い目をした。
「こちらのどこの国で戦っていたのか知らないけど、150年前なら剣を持ち歩いているだけでも十分不審がられたんじゃない?」
日本の歴史に換算すれば明治時代後期に当たる。剣や刀を帯刀していたら不審人物に思われるコト間違いナシ。クレハは素朴な疑問を投げ掛けた。
「武器は普段、護符として身に着けておき、戦う時に“霊力の武器”に変化させて用いていました。我々魔者を倒せるのは“霊力そのもの”もしくは“霊力を帯びた武器”のみで、通常の武器では傷一つ付ける事も叶いませんよ」
その点で言えば現在の盤上戦騎と何ら変わりは無い。
「なるほど。ライフとの戦闘も想定されていた訳か・・。そうだ!ベルタ。俺にもその霊力の武器になる護符とやらは貰えないか?」
「私との契約が解除された以上、貴方は武器を携行すべきではないと判断します。持てば、要らぬ警戒心を黒側に抱かせるだけです」
武器を持たぬ方が安全策であるという事か。ここは素直に聞き入れるとしよう。
「他にも違いは有るの?今やってるヤツと」
クレハの好奇心は止まる事を知らない。
「ええ。大きく異なるのは、前回の王位継承戦ではポーカーゲームをモチーフとしていた事でしょうか。4人の王位候補たちがそれぞれのアルカナを陣営としてAを筆頭にKまでの13人の魔者、そして彼らの能力を引き出すために霊力を供給するマスターを従えての総当たり戦を繰り広げていました」
また傍迷惑な。駒を取られない限りアンデスィデが発生しない今回のグリモワール・チェスの方が幾分かマシに思える。
「ポーカーをねぇ。じゃあ数字の2が最弱でAが最強のカード?」
「その通りです。私は最も弱いハートの2でしたが、早い段階で他のアルカナの2を揃えられたおかげで“フォー・オブ・ア・カインド”―」
聞き慣れぬ言葉に首を傾げているクレハにキョウコが「フォーカードの事です」
「―のポーカー・ハンド(ポーカーの役)を得て強力な絵札の魔者さえも圧倒しました」
「何それ、面白そう」
思わず口に出てしまったが、周りの視線を感じたクレハは「不謹慎でした」お詫びを入れて小さくなった。
ベルタが続けた。
「ですが、それが元で私のマスターだったシルヴィアは所属する組織から危険視され抹殺されてしまったのです。以降、私の意志など関係なく “魔剣”として他のマスターに使役され、ライフの姿になる事はありませんでした」
大きく横道に逸れてしまったが、おかげでベルタが人間嫌いになった理由を知り得る事ができた。
「辛い過去を語らせてしまったな、ベルタ。で、そのジェレミーアと戦ったような口ぶりだったけど、結果はどうだったんだ?」
「結果としては、私がシルヴィアから受け継いだ剣技では太刀打ちできず撤退を余儀なくされました。彼の剣は最初期の騎士と呼ぶに相応しい荒削りなもので、刃の向きなど構わず振り回され、殴る蹴るはもちろん、噛み付きや局部狙いも行う、それは武人の戦いと呼ぶには程遠いモノでした」
「うわぁ・・。出来る事なら、お手合わせ願いたくない相手だな」
「ですが、ヒューゴ。貴方から授かった二天一流の剣をもってすれば今度こそヤツから勝利を勝ち取れそうな気がします」
そこは断言してくれないのね…。少し残念でならない。
「人の姿のジェレミーアを倒せばロボット同士の戦いを回避できるのですか?」
キョウコの質問にベルタは首を振り。
「いえ、ライフの姿の彼を倒してもアンデスィデ発生時には盤上戦騎で参戦してきます。我々魔者の役目はあくまでも盤上戦騎での戦いを主としていますから」
心配事は山積みだが、今のところはひとまず安心といったところか。
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