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[6]魔者たち
-51-:おとといの戦い、見せてもらったよ
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明けて6月10日の朝・・。
奇跡が起きた。
何が一体どうなっているのだろう?
クレハは鏡に向かって髪を両手でワシャワシャと掻き上げた。
するとフワッと一瞬浮き立つものの、しばらくすると真っ直ぐに下りてくる。
何て事だろう・・。夢にまで見たサラサラストレートヘアー。寝癖がまったく立っていない。
いつもはドライヤーで髪を整えている時間。それでも間に合わずにピンを複数使ってようやく髪を整えている有様なのに、今日はゆっくりとテレビを見ながらもう一杯豆乳オーレが飲めるなんて。
『昨日、夕方の5時過ぎに能登川町の望湖神社で高校生が首を吊っているとの報せを受けて近くの能登川署の警察官が駆けつけ病院へ搬送されましたが、午後6時30分に死亡が確認されました。高校生の身元は学生証から私立黒玉工業高校1年の皇・令恵さん(16)と判明。なお皇さんは昨日付けで黒玉工業高校を自主退学しており、学校によりますと自殺の原因は、ネットに投稿した自身がコンビニの冷蔵庫に入った写真がネット上で非難を浴びたことを苦にしての自殺ではないかと思われ―』
いつもならドライヤーの音でテレビの音なんてほとんど聞こえていない。
ただ、父の「ノリエ?何だ、男か」という言葉は不思議と耳に残った。
新鮮な気持ちに浮かれているのもあるが、慣れない状況に、テレビで放送されている内容など1割くらいしか耳に入っていない。それでも。
ウケると思って投稿した動画が非難轟々となった挙句、それを苦にしての自殺では、残された親御さんが気の毒に思えてならない。せめて今まで掛かった元本くらいは返してあげないと、と。
ついつい高砂・飛遊午みたいな考えを抱いてしまったと、ふとテレビの左上に表示されている時刻に目をやった。なのに、時刻の上に速報が流れている。
『昨日市松市内のダルメシアン公園とホルスタイン公園で発見された、首と両手の無い複数の遺体について。
警察発表によりますと、遺体は、いずれも白人男性で体脂肪率が一般男性よりも低い事からスポーツ選手か警察、軍隊などで訓練を受けた人物たちではないかと思われる。
依然全員の身元は不明。現在、各国大使館に問い合わせ中との事』
血生臭いニュースなんて右から左へとスルー。爽やかな朝なのだから、こんな耳を塞ぎたくなるニュースは流さないで欲しい。いっその事、テレビ局に抗議してやろうかしら?
ようやく時間が表示され、そろそろタカサゴが迎えにくる時間だ。
今日は驚かせてやろうと玄関で待つ事に。と、様子を見たいので引き戸を少し開けておこう。
引き戸の隙間から高砂・飛遊午が家を出てくる姿が見えた。
何やら用心深くキョロキョロと左右を確かめている。
(いつも、あんなにコソコソ用心深く家を出ているのかな?)
そんなワケは無く、昨日は、朝から人間関係を疑われかねない奇妙な格好をした高校生に声を掛けられて慌てたので、今日は用心に用心を重ねているのだ。
引き戸に手を掛けられた。と中から引き戸を勢いよく開けて「おはよう!タカサゴ!」元気に朝の挨拶。
「お、おはよう」驚いた様子で反射的に挨拶をくれた・・が、髪には気付いてくれず。
まあ、待っていればそのうち髪に話題を振ってくれるだろう。
一緒に学校へと向かう。
最初の角を曲がったところで。
「元気そうじゃないか。高砂・飛遊午」
マウンテンバイクに跨った少年がヒューゴたちを待ち受けていた。
「何が“元気そうじゃないか”よ!よくもタカサゴの前に顔を出せたものね!」
クレハがいきなり少年に噛み付いた。
クレハもヒューゴもこの少年をよく知っている。
彼こそが、ヒューゴに顔面を二分するほどの大きな傷を与えた張本人、私立城砦西高校の草間・涼馬であった。
「アンタのおかげでタカサゴの顔に傷が残っちゃったじゃない!」
憎悪に駆られたクレハがリョーマの胸座を掴み上げる。
「止めるんだ、スズキ。俺なら気にしていない。あと5年もすれば傷跡は消えて無くなるってお医者さんも言っていたし、後遺症も無ければ痛みも無い」
後ろから組み付いてクレハをリョーマから引き離した。
「すまないな、クサマ。で、こんな朝っぱらから何の用だ?」
ヒューゴの問いにリョーマは眼鏡を人差し指でクイッと上げて。
「おとといの戦い、見せてもらったよ」
リョーマの言葉に、クレハは咄嗟にヒューゴの方へと向いてしまった。
「何の事を言っているのか知らないが、ここから城砦西高校だと、結構時間が掛かるだろ?急がなくていいのか?」
「なぁに、一日くらい穴を開けたところで、どうって事も無い。それよりも、何だ?あの無様な戦いぶりは?」
「コラコラ、イカンだろ。いくら授業に付いて行けないからって、ヤケを起こしてサボったら、それこそ益々授業に置いて行かれるぞ」
「僕を見くびってもらっては困るな!学年1位の成績を誇る僕ならば、1日の遅れくらい取り戻す事など造作無い!」
噛みあわない会話をしている二人を見ていると、リョーマの言動に既視感を覚えてならない。
「あんなド素人共相手に何を手間取っているんだ!あそこまでレベルダウンしているとは、君との決着を付ける気も失せてしまいそうだ!」
言っている意味が解らないが、草間・涼馬はベルタのパイロットが高砂・飛遊午だと気付いているのは分かった。
奇跡が起きた。
何が一体どうなっているのだろう?
クレハは鏡に向かって髪を両手でワシャワシャと掻き上げた。
するとフワッと一瞬浮き立つものの、しばらくすると真っ直ぐに下りてくる。
何て事だろう・・。夢にまで見たサラサラストレートヘアー。寝癖がまったく立っていない。
いつもはドライヤーで髪を整えている時間。それでも間に合わずにピンを複数使ってようやく髪を整えている有様なのに、今日はゆっくりとテレビを見ながらもう一杯豆乳オーレが飲めるなんて。
『昨日、夕方の5時過ぎに能登川町の望湖神社で高校生が首を吊っているとの報せを受けて近くの能登川署の警察官が駆けつけ病院へ搬送されましたが、午後6時30分に死亡が確認されました。高校生の身元は学生証から私立黒玉工業高校1年の皇・令恵さん(16)と判明。なお皇さんは昨日付けで黒玉工業高校を自主退学しており、学校によりますと自殺の原因は、ネットに投稿した自身がコンビニの冷蔵庫に入った写真がネット上で非難を浴びたことを苦にしての自殺ではないかと思われ―』
いつもならドライヤーの音でテレビの音なんてほとんど聞こえていない。
ただ、父の「ノリエ?何だ、男か」という言葉は不思議と耳に残った。
新鮮な気持ちに浮かれているのもあるが、慣れない状況に、テレビで放送されている内容など1割くらいしか耳に入っていない。それでも。
ウケると思って投稿した動画が非難轟々となった挙句、それを苦にしての自殺では、残された親御さんが気の毒に思えてならない。せめて今まで掛かった元本くらいは返してあげないと、と。
ついつい高砂・飛遊午みたいな考えを抱いてしまったと、ふとテレビの左上に表示されている時刻に目をやった。なのに、時刻の上に速報が流れている。
『昨日市松市内のダルメシアン公園とホルスタイン公園で発見された、首と両手の無い複数の遺体について。
警察発表によりますと、遺体は、いずれも白人男性で体脂肪率が一般男性よりも低い事からスポーツ選手か警察、軍隊などで訓練を受けた人物たちではないかと思われる。
依然全員の身元は不明。現在、各国大使館に問い合わせ中との事』
血生臭いニュースなんて右から左へとスルー。爽やかな朝なのだから、こんな耳を塞ぎたくなるニュースは流さないで欲しい。いっその事、テレビ局に抗議してやろうかしら?
ようやく時間が表示され、そろそろタカサゴが迎えにくる時間だ。
今日は驚かせてやろうと玄関で待つ事に。と、様子を見たいので引き戸を少し開けておこう。
引き戸の隙間から高砂・飛遊午が家を出てくる姿が見えた。
何やら用心深くキョロキョロと左右を確かめている。
(いつも、あんなにコソコソ用心深く家を出ているのかな?)
そんなワケは無く、昨日は、朝から人間関係を疑われかねない奇妙な格好をした高校生に声を掛けられて慌てたので、今日は用心に用心を重ねているのだ。
引き戸に手を掛けられた。と中から引き戸を勢いよく開けて「おはよう!タカサゴ!」元気に朝の挨拶。
「お、おはよう」驚いた様子で反射的に挨拶をくれた・・が、髪には気付いてくれず。
まあ、待っていればそのうち髪に話題を振ってくれるだろう。
一緒に学校へと向かう。
最初の角を曲がったところで。
「元気そうじゃないか。高砂・飛遊午」
マウンテンバイクに跨った少年がヒューゴたちを待ち受けていた。
「何が“元気そうじゃないか”よ!よくもタカサゴの前に顔を出せたものね!」
クレハがいきなり少年に噛み付いた。
クレハもヒューゴもこの少年をよく知っている。
彼こそが、ヒューゴに顔面を二分するほどの大きな傷を与えた張本人、私立城砦西高校の草間・涼馬であった。
「アンタのおかげでタカサゴの顔に傷が残っちゃったじゃない!」
憎悪に駆られたクレハがリョーマの胸座を掴み上げる。
「止めるんだ、スズキ。俺なら気にしていない。あと5年もすれば傷跡は消えて無くなるってお医者さんも言っていたし、後遺症も無ければ痛みも無い」
後ろから組み付いてクレハをリョーマから引き離した。
「すまないな、クサマ。で、こんな朝っぱらから何の用だ?」
ヒューゴの問いにリョーマは眼鏡を人差し指でクイッと上げて。
「おとといの戦い、見せてもらったよ」
リョーマの言葉に、クレハは咄嗟にヒューゴの方へと向いてしまった。
「何の事を言っているのか知らないが、ここから城砦西高校だと、結構時間が掛かるだろ?急がなくていいのか?」
「なぁに、一日くらい穴を開けたところで、どうって事も無い。それよりも、何だ?あの無様な戦いぶりは?」
「コラコラ、イカンだろ。いくら授業に付いて行けないからって、ヤケを起こしてサボったら、それこそ益々授業に置いて行かれるぞ」
「僕を見くびってもらっては困るな!学年1位の成績を誇る僕ならば、1日の遅れくらい取り戻す事など造作無い!」
噛みあわない会話をしている二人を見ていると、リョーマの言動に既視感を覚えてならない。
「あんなド素人共相手に何を手間取っているんだ!あそこまでレベルダウンしているとは、君との決着を付ける気も失せてしまいそうだ!」
言っている意味が解らないが、草間・涼馬はベルタのパイロットが高砂・飛遊午だと気付いているのは分かった。
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