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[4]主と従
-41-:それが私の使命に他ならないからです
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全く持って散々な一日だった。
高砂・飛遊午は泥のように眠った・・はずだった。
なのに、不意に夜中に目が覚めてしまった。
正確には、まだ瞼を開いていないが、意識は起きたという意味で。
もしかしたら、まだ夢の中かもしれない。むしろそうであって欲しいと願う。
部屋の中に誰かがいる!
気配を感じた。
父か?それとも妹か?
二人が帰宅した時に、入れ違いに床に就いた。それから寝入ったから、1時間以上は十分経過している。二人とも、もうぐっすりと眠っているはずだ。
では、母だろうか?
母は海防(海上防衛機関)に携わる仕事をしているせいで、これまでの人生で、両手で数える程しか会ったことがない。それでも帰ってくる時は必ず1日前には連絡を入れてくる。昨日はそんなメールも電話も無かった。だから今、部屋の中にいるのは母ではない。
ならば泥棒か?
動かないし、物音も立てない。だけど気配を消すこともしていない。いやいや普通は逆だろう。泥棒なら気配を消すように努め配慮しながらも必ず動いているし細心の注意を払っていようがわずかな物音を立ててしまっているものだ。
コイツは何をやっているのだ?
考えを巡らせている間に、“体が動く”という感覚を取り戻した・・気がした。
ヒューゴはベッドから転げ落ちるなり、後ろへ飛び退いた。
「誰だ!」掛け布団を広げて前へと突き出し身を守る。
「驚かせてしまったようですね」
布団越しに聞こえてきたのは、若い女性の声。周囲に配慮しているらしく声のトーンを抑えているようで本来の声とは言えずに、例え知っている声でも誰の声だか判断できない。
「誰?です?」
「私です、マスター。6つ脚火竜のベルタです」
「何だ、ベルタさんか」
安心すると共に布団を下して畳んでベッドの上に置いた。それからベルタへと目を移す。
カーテンを閉めずに寝てしまった窓から月明かりが差し込み、彼女を照らし出した。
そこには。
ソシャゲならば絶対に“姫騎士”に分類されるであろう、衣装と甲冑が織り交ざったドレスメイルを纏った、空色の髪をポニーテールで結った美しい顔立ちの少女の姿があった。
さすがに軽装甲冑。守っているのは胸と腰部、それに手と脚のみ。頭部を守るものは何一つ着けていない。最下級の歩兵の装備なんて簡素なものだ。
一応、盤上戦騎の時と同じく両腰に脇差しを下げている。
この状況、彼女から何か問われるのではないかと、ちょっと期待。
期待に胸膨らませ正面に立つ彼女を座ったまま見つめる・・彼女はそんなヒューゴを見下ろしたまま・・しかし、彼女からは何の言葉も発せられる事は無かった。
残念でならない。あの言葉を待っていたのに…。
「あ、あの、ベルタさん?どうして俺の部屋にいるのです?てか、どうやって入ってきたのですか?」
「本来ならばアンデスィデが終了した時点で貴方の傍に現れるはずだったのですが、何らかの手違いで今になって現化してしまったようです。どうして此処にいるのか?と尋ねられましても、それが私の使命に他ならないからです」
とにかく、ココミ・コロネ・ドラコットのやる事には手違いが多いなと感じる。
「はぁ・・色々大変だったのですね。で、あなたの使命とは何ですか?」
「もちろん、貴方の護衛です。強いマスター相手にアンデスィデでの戦闘では歯が立たないと判断した敵がまず取るであろう行動は、直接マスターを抹殺する事です。それを防ぐために私たちチェスの駒はこの姿ライフィング・ピースとなってマスターの身を護るのです」
そういったマスター直接狙いは想定していたが、わざわざ別に暗殺者を雇うのでは無く、待機しているピースが直接暗殺任務に赴く訳だ。
「でもねぇ・・ウチには貴女を置けませんよ。いきなり赤の他人を、しかも年端もいかない若い女性を家に同居させるのは不可能です。嬉しいと言っちゃ嬉しいけど、家族の世間体もありますし、いや、家族を危険に晒すワケにはいかないもので、あははは、はぁ・・」
「マスターも色々と大変なのですね・・。盤上戦騎の時と同じく、このライフの姿でも電話を頂ければ瞬時に貴方の元へと瞬間移動できるので、私は何処でも構わないのですが」
“バトル・ピース”を“ディザスター”と呼び換えているように、“ライフィング・ピース”は“ライフ”と呼称しているのか。そういえば、さっき“チェスの駒”を“チェス・マンと呼んでいたのを思い出した。あえて説明はされなかったが覚えておこう。
苦笑いを同情されてしまった。はてさて、どうしたものか?
「ところでベルタさん。どうして女の子の姿をされているのですか?貴方は男性だったはずじゃ・・」
当面の問題はさて置き、目の前の疑問から解決していこう。
高砂・飛遊午は泥のように眠った・・はずだった。
なのに、不意に夜中に目が覚めてしまった。
正確には、まだ瞼を開いていないが、意識は起きたという意味で。
もしかしたら、まだ夢の中かもしれない。むしろそうであって欲しいと願う。
部屋の中に誰かがいる!
気配を感じた。
父か?それとも妹か?
二人が帰宅した時に、入れ違いに床に就いた。それから寝入ったから、1時間以上は十分経過している。二人とも、もうぐっすりと眠っているはずだ。
では、母だろうか?
母は海防(海上防衛機関)に携わる仕事をしているせいで、これまでの人生で、両手で数える程しか会ったことがない。それでも帰ってくる時は必ず1日前には連絡を入れてくる。昨日はそんなメールも電話も無かった。だから今、部屋の中にいるのは母ではない。
ならば泥棒か?
動かないし、物音も立てない。だけど気配を消すこともしていない。いやいや普通は逆だろう。泥棒なら気配を消すように努め配慮しながらも必ず動いているし細心の注意を払っていようがわずかな物音を立ててしまっているものだ。
コイツは何をやっているのだ?
考えを巡らせている間に、“体が動く”という感覚を取り戻した・・気がした。
ヒューゴはベッドから転げ落ちるなり、後ろへ飛び退いた。
「誰だ!」掛け布団を広げて前へと突き出し身を守る。
「驚かせてしまったようですね」
布団越しに聞こえてきたのは、若い女性の声。周囲に配慮しているらしく声のトーンを抑えているようで本来の声とは言えずに、例え知っている声でも誰の声だか判断できない。
「誰?です?」
「私です、マスター。6つ脚火竜のベルタです」
「何だ、ベルタさんか」
安心すると共に布団を下して畳んでベッドの上に置いた。それからベルタへと目を移す。
カーテンを閉めずに寝てしまった窓から月明かりが差し込み、彼女を照らし出した。
そこには。
ソシャゲならば絶対に“姫騎士”に分類されるであろう、衣装と甲冑が織り交ざったドレスメイルを纏った、空色の髪をポニーテールで結った美しい顔立ちの少女の姿があった。
さすがに軽装甲冑。守っているのは胸と腰部、それに手と脚のみ。頭部を守るものは何一つ着けていない。最下級の歩兵の装備なんて簡素なものだ。
一応、盤上戦騎の時と同じく両腰に脇差しを下げている。
この状況、彼女から何か問われるのではないかと、ちょっと期待。
期待に胸膨らませ正面に立つ彼女を座ったまま見つめる・・彼女はそんなヒューゴを見下ろしたまま・・しかし、彼女からは何の言葉も発せられる事は無かった。
残念でならない。あの言葉を待っていたのに…。
「あ、あの、ベルタさん?どうして俺の部屋にいるのです?てか、どうやって入ってきたのですか?」
「本来ならばアンデスィデが終了した時点で貴方の傍に現れるはずだったのですが、何らかの手違いで今になって現化してしまったようです。どうして此処にいるのか?と尋ねられましても、それが私の使命に他ならないからです」
とにかく、ココミ・コロネ・ドラコットのやる事には手違いが多いなと感じる。
「はぁ・・色々大変だったのですね。で、あなたの使命とは何ですか?」
「もちろん、貴方の護衛です。強いマスター相手にアンデスィデでの戦闘では歯が立たないと判断した敵がまず取るであろう行動は、直接マスターを抹殺する事です。それを防ぐために私たちチェスの駒はこの姿ライフィング・ピースとなってマスターの身を護るのです」
そういったマスター直接狙いは想定していたが、わざわざ別に暗殺者を雇うのでは無く、待機しているピースが直接暗殺任務に赴く訳だ。
「でもねぇ・・ウチには貴女を置けませんよ。いきなり赤の他人を、しかも年端もいかない若い女性を家に同居させるのは不可能です。嬉しいと言っちゃ嬉しいけど、家族の世間体もありますし、いや、家族を危険に晒すワケにはいかないもので、あははは、はぁ・・」
「マスターも色々と大変なのですね・・。盤上戦騎の時と同じく、このライフの姿でも電話を頂ければ瞬時に貴方の元へと瞬間移動できるので、私は何処でも構わないのですが」
“バトル・ピース”を“ディザスター”と呼び換えているように、“ライフィング・ピース”は“ライフ”と呼称しているのか。そういえば、さっき“チェスの駒”を“チェス・マンと呼んでいたのを思い出した。あえて説明はされなかったが覚えておこう。
苦笑いを同情されてしまった。はてさて、どうしたものか?
「ところでベルタさん。どうして女の子の姿をされているのですか?貴方は男性だったはずじゃ・・」
当面の問題はさて置き、目の前の疑問から解決していこう。
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