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[4]主と従
-39-:まだだ!復活してやる!
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「来る?来ちゃう?」
盾を前面に構えてベルタを迎え討つ。
ソネの顔面に拳を叩き込むべく、少々屈み気味に上体を沈めて。
右の拳を放つ―。
ソネの反応は早く、盾を向かってくる拳へと向けた。盾の口が開かれた。
ベルタの拳の勢いはもう止まらない。いや、止められない!
「ヒューゴさん!」
本の画面に向かって、ココミの悲痛な叫びが木霊した。
「ん?今、盾がガクンッと下がったかな?」
ミツナリは開かれたままの盾の開口部を見やった。
飛んで火に入るハズのベルタの腕がまだ入って来ていない。
それどころか、開口部の向こうにベルタの顔が見えている。
「な、何故だ!?」
「嫌ぁ!離してぇ!」
突然ソネが叫んだ。
「自ら盾で視界を塞いでいたからね」
クレハの言葉を耳にするも、ココミはきょとんとするばかり。
「まっ、やるとは思ってたけどね。右手のパンチを繰り出すと見せかけて、実は盾で死角になるように左手で盾の下部を掴みに入っていたのよ。身を屈ませたのは盾から見えにくくする小細工ってとこかしらね。ヤツも盾を掴まれた瞬間に一瞬下がるから全力で後退していれば良いものを呑気に確認なんかしているから盾の上部まで掴まれてジ・エンドって訳」
クレハの解説を受けても、なおもきょとんとしたまま。
「離せよぉ。いつまでも掴んでいるんじゃねえ!」
引き離そうともがくも、ベルタは両手でガッチリと掴んでいるので離れない。ソネは肘辺りに細い2本の棒によって盾を保持している。それに対しベルタは両手で。単純に力比べをしても勝てない構図である。
さらに。
ベルタがソネの腕を軸に盾を右回転しようと力を加えているではないか。と思った矢先、一気に逆方向へ左回転させた。
「ぎゃああぁぁー!」
ソネの悲鳴と共に、彼女の左腕は音を立てて肘から捩じ切られてしまった。
「うわぁ、エグイな・・。考えれば分かるでしょ?あんなの。そもそもハンドルってさ、直接軸を回すよりも力が少なくて済むように付けられているんだよ。それを軸側が頑張ったところで力を入れ易いハンドル側に敵うワケないじゃない」
水道の蛇口にしろ、バルブにしろ、軸を回すよりも少ない力で回し易くするために備え付けられているもので、ハンドル部分を大きくすればより力は少なくて済むが、場所を取るデメリットが生じてしまうので、ある程度の大きさに留めてあるのだ。
「さっさと逃げておけば良かったものを」
その気すらない憐みの素振りを見せるクレハであった。
「ふざけるな!テメェ!」
タルワールで斬りに掛かるも、ベルタは回避推力を吹かして横へと回り込み「!?」ミツナリが驚く間も無く、刀を振り下ろす肘には下から、速度を殺す事無く手首には上から、同時に手を掛けられてさらに一気に力を加えて。
「うぎゃぁぁーッ!」相対速度を一点集中に受けた肘から右腕をへし折られてしまった。
「な、な、何で?アイツ瞬間移動なんかしているんだよぉ??」
うろたえながらミツナリはベルタに背を向けてソネを急発進!が、すぐに背中に気配を感じ取り振り向くと。「まさか!」
振り向けば、そこにはベルタの顔が。後ろに垂れていた2本の縦ロールの髪をグイ!と掴まれた。
「ロボットアクションゲームの回避用ダッシュと同じかぁ。あれだったら連続で吹かせば通常の移動よりも高速で動けるよね」
偏ったゲームの趣向を持つクレハの説明はココミにとって未知の内容であった。
ちなみにココミは“落とし系パズルゲーム”が好みである。
家庭用ゲーム機のコントローラーは手の中に納まるサイズであるが、ベルタの操縦桿は戦闘機の物に形状、大きさ共に近い。
その操縦桿を小刻みにタタンッと倒して回避ダッシュを連続で行うその様は異様を極めた。
ルーティはそんなヒューゴの姿に戦慄を覚えた。
ベルタはソネの髪をロープを手繰るように引っ張り、這い上がるかの如く彼女のバイザーに手を掛けた。
ギシギシと軋み音を立ててバイザーを引き剥がしに掛かる。
×印の口を展開させてビーム刃を発生させるもベルタは真後ろ。首を動かそうにも手綱のように髪を引っ張られては自由に動けない。もはや「あがぁ、あぁぁぁ」ただソネの言葉になっていない悲鳴だけが聞こえる。
「ヒューゴ!これまでや。もう止めてくれ。堪忍したってくれ」
ルーティの願いも空しくソネのバイザーはメキメキと引き剥がされてしまった。
「くっそぅ、まだだ!復活してやる!」
ミツナリは、ホルダーから損傷全回復のカードを引いた!だが。
「止めて!ミツナリ。私、もうイヤなの!こんな痛い思いするのは、もう沢山!」
思いもよらない制止の声にミツナリの手が止まった。
「お、お前はいいよ。死なねぇんだからな。俺はどうなるんだよ。俺はまだ死にたく無い!」
後は手にしたカードを読み込み台上に置くだけ…なのだが。
「嫌ぁぁぁッ!2度も死ぬ思いをするなんてイヤだよぅ。お願いだから復活させないで・・。戦線離脱もイヤ!このまま楽にさせて・・。御願いだから…」
悲痛なまでの懇願に、手の震えが治まらずに、とうとう手からカードが滑り落ちてしまった。
盾を前面に構えてベルタを迎え討つ。
ソネの顔面に拳を叩き込むべく、少々屈み気味に上体を沈めて。
右の拳を放つ―。
ソネの反応は早く、盾を向かってくる拳へと向けた。盾の口が開かれた。
ベルタの拳の勢いはもう止まらない。いや、止められない!
「ヒューゴさん!」
本の画面に向かって、ココミの悲痛な叫びが木霊した。
「ん?今、盾がガクンッと下がったかな?」
ミツナリは開かれたままの盾の開口部を見やった。
飛んで火に入るハズのベルタの腕がまだ入って来ていない。
それどころか、開口部の向こうにベルタの顔が見えている。
「な、何故だ!?」
「嫌ぁ!離してぇ!」
突然ソネが叫んだ。
「自ら盾で視界を塞いでいたからね」
クレハの言葉を耳にするも、ココミはきょとんとするばかり。
「まっ、やるとは思ってたけどね。右手のパンチを繰り出すと見せかけて、実は盾で死角になるように左手で盾の下部を掴みに入っていたのよ。身を屈ませたのは盾から見えにくくする小細工ってとこかしらね。ヤツも盾を掴まれた瞬間に一瞬下がるから全力で後退していれば良いものを呑気に確認なんかしているから盾の上部まで掴まれてジ・エンドって訳」
クレハの解説を受けても、なおもきょとんとしたまま。
「離せよぉ。いつまでも掴んでいるんじゃねえ!」
引き離そうともがくも、ベルタは両手でガッチリと掴んでいるので離れない。ソネは肘辺りに細い2本の棒によって盾を保持している。それに対しベルタは両手で。単純に力比べをしても勝てない構図である。
さらに。
ベルタがソネの腕を軸に盾を右回転しようと力を加えているではないか。と思った矢先、一気に逆方向へ左回転させた。
「ぎゃああぁぁー!」
ソネの悲鳴と共に、彼女の左腕は音を立てて肘から捩じ切られてしまった。
「うわぁ、エグイな・・。考えれば分かるでしょ?あんなの。そもそもハンドルってさ、直接軸を回すよりも力が少なくて済むように付けられているんだよ。それを軸側が頑張ったところで力を入れ易いハンドル側に敵うワケないじゃない」
水道の蛇口にしろ、バルブにしろ、軸を回すよりも少ない力で回し易くするために備え付けられているもので、ハンドル部分を大きくすればより力は少なくて済むが、場所を取るデメリットが生じてしまうので、ある程度の大きさに留めてあるのだ。
「さっさと逃げておけば良かったものを」
その気すらない憐みの素振りを見せるクレハであった。
「ふざけるな!テメェ!」
タルワールで斬りに掛かるも、ベルタは回避推力を吹かして横へと回り込み「!?」ミツナリが驚く間も無く、刀を振り下ろす肘には下から、速度を殺す事無く手首には上から、同時に手を掛けられてさらに一気に力を加えて。
「うぎゃぁぁーッ!」相対速度を一点集中に受けた肘から右腕をへし折られてしまった。
「な、な、何で?アイツ瞬間移動なんかしているんだよぉ??」
うろたえながらミツナリはベルタに背を向けてソネを急発進!が、すぐに背中に気配を感じ取り振り向くと。「まさか!」
振り向けば、そこにはベルタの顔が。後ろに垂れていた2本の縦ロールの髪をグイ!と掴まれた。
「ロボットアクションゲームの回避用ダッシュと同じかぁ。あれだったら連続で吹かせば通常の移動よりも高速で動けるよね」
偏ったゲームの趣向を持つクレハの説明はココミにとって未知の内容であった。
ちなみにココミは“落とし系パズルゲーム”が好みである。
家庭用ゲーム機のコントローラーは手の中に納まるサイズであるが、ベルタの操縦桿は戦闘機の物に形状、大きさ共に近い。
その操縦桿を小刻みにタタンッと倒して回避ダッシュを連続で行うその様は異様を極めた。
ルーティはそんなヒューゴの姿に戦慄を覚えた。
ベルタはソネの髪をロープを手繰るように引っ張り、這い上がるかの如く彼女のバイザーに手を掛けた。
ギシギシと軋み音を立ててバイザーを引き剥がしに掛かる。
×印の口を展開させてビーム刃を発生させるもベルタは真後ろ。首を動かそうにも手綱のように髪を引っ張られては自由に動けない。もはや「あがぁ、あぁぁぁ」ただソネの言葉になっていない悲鳴だけが聞こえる。
「ヒューゴ!これまでや。もう止めてくれ。堪忍したってくれ」
ルーティの願いも空しくソネのバイザーはメキメキと引き剥がされてしまった。
「くっそぅ、まだだ!復活してやる!」
ミツナリは、ホルダーから損傷全回復のカードを引いた!だが。
「止めて!ミツナリ。私、もうイヤなの!こんな痛い思いするのは、もう沢山!」
思いもよらない制止の声にミツナリの手が止まった。
「お、お前はいいよ。死なねぇんだからな。俺はどうなるんだよ。俺はまだ死にたく無い!」
後は手にしたカードを読み込み台上に置くだけ…なのだが。
「嫌ぁぁぁッ!2度も死ぬ思いをするなんてイヤだよぅ。お願いだから復活させないで・・。戦線離脱もイヤ!このまま楽にさせて・・。御願いだから…」
悲痛なまでの懇願に、手の震えが治まらずに、とうとう手からカードが滑り落ちてしまった。
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