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[3]チェスを始めましょう
-28-:美人さんが怒ると本当に怖いんだから
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ヒューゴの発想は、とても正気の沙汰とは思えない。
そもそも毎時限教師たちにケンカを売るような態度を取り続けていた彼の行動に、クレハは疑念を抱きつつ、共に職員室へと向かった。
絶対に叱られるだけだよね…。
でも、考え様によっては、これはチャンス。
叱咤叱責を食らう結果になろうとも、素直に謝り倒せばいいのだ。
これで教師たちの心証は少しは回復するというもの。
だが、果たしてヒューゴが機転を利かせて謝ってくれるだろうかが心配。
「こんにちはです。クレハさん、ヒューゴさん」
道中、声を掛けてきたのは御手洗・達郎だった。
なぜか息を切らせながら。
「あら、こんにちは。タツローくん。走ってきたの?」
「え?えぇ、まあ」答えながら後ろを振り返る。
「お前、誰かに追われているのか?」
「ひょっとしてイジメ?」
「そんなんじゃないですよ。御陵・御伽さんが僕を探しているみたいなんです」
オトギは弓道部の後輩なので1-A組なのは知っている。タツローは1-D組だったはず。「あなた達違うクラスだよね?」
「ええ彼女とは別のクラスです。今朝、姉さんと彼女の話をしているのを本人に聞かれちゃったのかな?参ったなぁ・・」
「何々?悪口でも話していたの?」嬉しそうに顔を寄せる。
「言ってません!誰がそんな小さい事!」
そんな小さい事を細やかな心の癒しとしているクレハにキッパリと言い切った。
「その、彼女、この学校の有名人だし。気に障った事を言ってしまったのならどうしよう・・」
「お前、小っせぇなぁ。相手が気に障ったって言ったなら謝れば済むの話じゃねぇか。頭下げるくらい、痛くも何とも無いぜ」
「心の話を言ってるのよ、タツローくんは。ストレスで胃が痛くなったことが無いのかねぇ、タカサゴは」
タツローへと向き直り。
「まっ、この休み時間は逃げ遂せなさい。部活の時にオトギちゃんにどんな用件なのか?そこはかとなく訊いておいてあげるから。連絡はメールで良いよね?」
お願いしますと丁寧にお辞儀をするとタツローは二人の元から立ち去った。
職員室へとあともう少しのところで。
「こんにちは。クレハ先輩」今度は、その御陵・御伽に遭遇した。
「こんにちは。オトギちゃん」
「ちゃん?」オトギから笑みが消えた。
「真顔で訊き直さないでよぉ。美人さんが怒ると本当に怖いんだから」
「怒ってなどいません。ただそこまで親しく名前を呼ばれる事に慣れていなくて、つい。気を悪くなさったのなら謝ります」
「いえいえ。こちらこそ。謝ってもらうなんて、とんでもない」続けて「ちょっと目線が泳いでいるようだけど、何方かお探し?」
理由と経緯を知りつつ、敢えて訊ねてみた。
「えっ、私がですか?そ、そんな男性を探しているなんて」
あからさまに動揺を隠せずにボロまで出して。
どうやら怒っている様子は無さそうで、ひとまずは安心。
なので。
「ふぅん。男性をお探しで。ひょっとして気になる人?」その言葉にオトギの耳が真っ赤に染まった。
へぇーと驚嘆するばかり。
あの誰もが才色兼備と絶賛する御陵・御伽が、お世辞にも成績は良いとは言えずバスケ部でただ一人ベンチメンバーにすら入っていないタツローに関心を抱くとは。
まるで一度捕えたネズミを再び放して弄ぶネコのようにオトギを見やる。
だが、このままイジってやりたい気持ちを抑えて。
「そだ!オトギちゃん。突然で何だけど、チェスに詳しい?」
訊ねた。
そもそも毎時限教師たちにケンカを売るような態度を取り続けていた彼の行動に、クレハは疑念を抱きつつ、共に職員室へと向かった。
絶対に叱られるだけだよね…。
でも、考え様によっては、これはチャンス。
叱咤叱責を食らう結果になろうとも、素直に謝り倒せばいいのだ。
これで教師たちの心証は少しは回復するというもの。
だが、果たしてヒューゴが機転を利かせて謝ってくれるだろうかが心配。
「こんにちはです。クレハさん、ヒューゴさん」
道中、声を掛けてきたのは御手洗・達郎だった。
なぜか息を切らせながら。
「あら、こんにちは。タツローくん。走ってきたの?」
「え?えぇ、まあ」答えながら後ろを振り返る。
「お前、誰かに追われているのか?」
「ひょっとしてイジメ?」
「そんなんじゃないですよ。御陵・御伽さんが僕を探しているみたいなんです」
オトギは弓道部の後輩なので1-A組なのは知っている。タツローは1-D組だったはず。「あなた達違うクラスだよね?」
「ええ彼女とは別のクラスです。今朝、姉さんと彼女の話をしているのを本人に聞かれちゃったのかな?参ったなぁ・・」
「何々?悪口でも話していたの?」嬉しそうに顔を寄せる。
「言ってません!誰がそんな小さい事!」
そんな小さい事を細やかな心の癒しとしているクレハにキッパリと言い切った。
「その、彼女、この学校の有名人だし。気に障った事を言ってしまったのならどうしよう・・」
「お前、小っせぇなぁ。相手が気に障ったって言ったなら謝れば済むの話じゃねぇか。頭下げるくらい、痛くも何とも無いぜ」
「心の話を言ってるのよ、タツローくんは。ストレスで胃が痛くなったことが無いのかねぇ、タカサゴは」
タツローへと向き直り。
「まっ、この休み時間は逃げ遂せなさい。部活の時にオトギちゃんにどんな用件なのか?そこはかとなく訊いておいてあげるから。連絡はメールで良いよね?」
お願いしますと丁寧にお辞儀をするとタツローは二人の元から立ち去った。
職員室へとあともう少しのところで。
「こんにちは。クレハ先輩」今度は、その御陵・御伽に遭遇した。
「こんにちは。オトギちゃん」
「ちゃん?」オトギから笑みが消えた。
「真顔で訊き直さないでよぉ。美人さんが怒ると本当に怖いんだから」
「怒ってなどいません。ただそこまで親しく名前を呼ばれる事に慣れていなくて、つい。気を悪くなさったのなら謝ります」
「いえいえ。こちらこそ。謝ってもらうなんて、とんでもない」続けて「ちょっと目線が泳いでいるようだけど、何方かお探し?」
理由と経緯を知りつつ、敢えて訊ねてみた。
「えっ、私がですか?そ、そんな男性を探しているなんて」
あからさまに動揺を隠せずにボロまで出して。
どうやら怒っている様子は無さそうで、ひとまずは安心。
なので。
「ふぅん。男性をお探しで。ひょっとして気になる人?」その言葉にオトギの耳が真っ赤に染まった。
へぇーと驚嘆するばかり。
あの誰もが才色兼備と絶賛する御陵・御伽が、お世辞にも成績は良いとは言えずバスケ部でただ一人ベンチメンバーにすら入っていないタツローに関心を抱くとは。
まるで一度捕えたネズミを再び放して弄ぶネコのようにオトギを見やる。
だが、このままイジってやりたい気持ちを抑えて。
「そだ!オトギちゃん。突然で何だけど、チェスに詳しい?」
訊ねた。
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